本日は44回目のダボス会議の安倍首相の基調演説に絡めて記載します。
【ダボス会議とは】
ダボス会議とは、スイスの実業家で大学教授でもあったクラウス・シュワブ氏が提唱した世界経済フォーラムが、毎年1月にスイスの東部の保養地“ダボス”で開催する年次総会のことです。ダボス会議は約2500名の選ばれた知識人、ジャーナリスト、多国籍企業経営者、国際的な政治指導者などのトップリーダーが一堂に会して討議するため、注目を集めてきました。2014年は44回目の会議となり、1月22日から25日まで開催。安倍首相が日本の首相として初めて基調講演を行うということで注目を集めました。
【基調講演:アベノミクスに関して】
安倍首相は22日の基調講演を行いましたが、その中で「日本は復活した」と宣言し、経済回復について語りました。そして自らが「ドリルの刃」となって既得権益の岩盤を打破し、日本経済の成長を阻む障害を破壊すると言明しました。また、「新しい日本が打ち出す新しいビジョン」と題した講演で「向こう、2年間、いかなる規制権益も私のドリルから無傷ではいられない」と述べ、アベノミクスの第3の矢である規制緩和を早急に実施する方針を明らかにしました。日本においてこのことは大きく報道され、安倍首相がこれから法人税減税や岩盤規制改革を進めていくのではないかという期待が盛り上がっています。
一方、ダボス会議から数日後に安倍首相は通常国会で所信表明演説を行いましたが、法人税減税に関しては復興のための法人税の増税を1年前倒しで廃止すること以外述べていませんし、岩盤規制改革についても国家戦略特区(※)と農業の減反について述べているだけでした(※国家戦略特区:規制緩和に向けて既得権益を持った人たちの反対を打ち破る装置として唯一期待されている)。これはダボス会議の基調講演については官邸で作成していますが、所信表明演説が各省庁の調整の上にできているということによります。各役所は総理がダボス会議で行ったことを受けての動きをつけていないという話もあります。長期的な経済成長を見据えた上で重要な“第3の矢”がうまく動いていないということが伺えます。この流れで行くと更なる金融緩和や追加的な財政出動が行われる可能性があります。
【労働市場に関して】
安倍首相はダボス会議で、硬直した労働市場を活性化し、人口が減少する中で労働力を伸ばすため、政府並びに民間企業のトップに占める女性の割合を30%に高める目標を掲げました。実際、昨年1年ほどの期間を取ると、日本の労働人口は増えているそうです。女性や高齢者が働くようになり、人口が減っている中で、生産が縮小することが懸念されていましたが、そうならないことも政策次第で可能ということです。
【基調講演:地政学的な問題】
世界の経済のリーダーたちは日中関係・日韓関係に大きな関心を持っています。靖国神社に関してクラウス・シュワブ氏から基調講演後に質問があり、安倍首相は「対話のドアはいつも開いている」と述べていますが、それだけこの問題は国際的に関心を寄せているということです。また基調演説後に記者団に対して安倍首相が今の日本と中国を第一次世界大戦のイギリスとドイツの対立になぞらえ話題となったりしています。地政学的なリスクは、2012年に日本企業が中国への進出を懸念したように、経済活動に大きな陰りを落とします。
ダボス会議から2014年の日本の経済を見通す状況が見受けられます。消費増税による景気減退、原発再稼働の問題と安倍政権としては悪影響が今後ある中で、いかに第3の矢を実行し日本経済を強くしていけるかが、今後注目されます。
(参考資料 エコノインサイト等)