2014年経済予想

2013年もいよいよカウントダウンに入ってきましたので、本日は来年の経済面の予想という点に関して記載します。

【2013年の振り返り】

2013年の日本のマーケットと経済環境は、アベノミクスの“大胆な金融緩和”“機動的な財政出動”“成長戦略”という3本の矢を矢継ぎ早に放つという政策によって、一定の日本経済への期待を投資家や国民に与えることに成功しました。実際に、企業活動活性化の目が出つつありますし、為替は12月11日の1ドル=80円から13年12月は1ドル=103円程度と26%もの円安となり、日経平均株価は70%以上も上昇しました。

【消費税増税に伴う、日本経済への影響】

2014年4月に消費増税がなされますが、その影響により4~6月くらいにかけて、経済成長率がマイナスになる可能性がありますし、当然、株価にもマイナスの影響が出てくることが想定されます。安倍政権は8%の消費増税の判断の際、5.5兆円の補正予算と1兆円の減税をセットで打ち出しており、そのことによりある程度、消費増税のマイナスの影響をオフセットできることが想定されます。しかしながら、それだけでは力不足で、金融緩和第2弾か構造改革的な政策の実施がしっかりとなされなければ、成長率や株価に影響してくる可能性もあるようです。

15年10月からの消費税10%への増税判断時にも、8%増税の時と同様、何らかの経済対策が行われる可能性があります。2014年度の税制改正で争点となった、消費税に対する軽減税率の動きが出てくる可能性もあるようです。この軽減税率は13年11月に税調が始まるや否や中小企業や小売業者を含む各種経済団体から一斉に反対されました。軽減税率が必ずしも低所得者対策になるとは限りませんし、事業者の経理作業も煩雑になり、特に中小企業では対応が追い付かなくなるというデメリットがあるからです。14年度の税制改正大綱では、対象品目など制度の詳細について14年12月までに結論を出し、15年度の大綱に盛り込むとされています。14年12月は消費増税に向けて首相が決断を迫られる時期ですので、何らかの動きが出てくることが想定されます。

また、14年末までに景気悪化を回避するための補正予算や法人税減税が再び議題にされる可能性もあります。

【日銀の動き】

13年10月の全国消費者物価指数上昇率は前年同月比0.9%と堅調に上昇しているように見えますが、その背景には「円安による輸入物価の上昇」「原油価格の上昇」「原発停止によるエネルギー価格の上昇」などが寄与度の半分以上を占めていると言います。

14年4月の消費増税に伴い経済が悪化し、物価上昇率も鈍化している可能性があります。黒田総裁は13年12月7日の講演で異次元緩和の効果性について強気の発言をしているそうで、そのことを受けると当然、この政策は継続されるでしょうし、14年4月以降の景気悪化を受けて、金融緩和第2弾が実施さえる可能性も高いと想定できそうです。

【TPPに関して】

2013年内妥結を目指していたTPP交渉は14年に持ち越されました。合意の先送りは11年、12年に続いて3度目となります。TPP交渉の難航には知的財産などを巡って先進国と新興国が対立しているという構造があります。オバマ大統領の支持率が下がる中、オバマ政権は業界団体など各利害関係者を代表する議会を意識し、TPP交渉で強硬姿勢を緩めませんでした。14年11月には中間選挙も控えていますので、利害関係者の票を意識した議会の突き上げは更に強まる見通しです。このため、アメリカは日本や新興国に対して強硬路線を緩めず、このままTPP交渉が漂流していく可能性もあるようです。また、韓国がTPP交渉への参加に舵を切っていますので、今後、新たな利害関係が増え、交渉が更に複雑化してくことが想定されます。

【成長戦略に関して】

アベノミクスの成長戦略に関しては、投資家からの評価が低く、構造改革がなされていないという話があります。成長戦略は日本経済の低い雇用流動性を改善し、新しい産業の付加価値を高め、減少する労働人口を補うことで中長期の潜在成長率を高めようとしていますが、14年6月~7月には新たな成長戦略が再び策定される可能性があるといいます。

2014年の日本経済のポイントは消費税増税後に想定される景気悪化に対して、どのような政策が打たれるかということになりそうです。また、長期的なビジョンで見て「成長戦略」の中身がしっかりしたものが出てくるということも期待されると思われます。

(参考文献 週刊東洋経済12/28-1/4新春合併特大号 週刊エコノミスト12/31・1/7迎春合併号)

訪日外国人旅行者

訪日外国人旅行者に関して記載します。

【国内内需対策としての訪日外国人旅行者数増に向けた動き】

日本は人口減少していきます。2010年には1億2800万人だったのに対し、東京オリンピックが予定されている2020年は推定1億2400万人、2030年に1億1700万人と徐々に減少していきます。人口が減少するということは国内の内需が縮小していくことが想定されます。その対抗策として、今、日本政府は訪日外国人旅行者数をどんどん増やしていこうと目論んでいます。直近の訪日外国人旅行者数のピークは2010年で860万人だったのですが、2030年には3000万人まで増やそうとしています。12月20日に2013年の外国人旅行者が1000万人を超えたという報道もありました。

【訪日外国人が日本に来る理由】

まず、訪日外国人が日本に来る理由としては、円安が進んだことがもちろんあります。それ以外の理由として、例えば7月1日にタイとマレーシアからの観光客向けにビザの取得を免除する措置が講じられるなどがなされています。それにより、7月のタイの訪日客は前年同月比の85%増の3万人。マレーシアも同25%増の9900人となりました。

訪日外国人が国内で消費する額は2010年には1.3兆円だったと言います。これを訪日外国人の数を増加させることにより2030年には4.7兆円にまで増やそうとしています。

訪日外国人は2012年総計836万人。そのうち626万人がアジアからの観光客となります。今後、活力ある日本を作り上げていくためには、アジアを意識した国際化が重要なポイントとなりそうです。

 (参考文献 週刊東洋経済 9/14号)

都道府県別の人口推移

都道府県別の人口推移に関して記載します。

 日本全体の人口が減っていく中で、その減り方には場所ごとに差があります。県別の2010年から2040年の想定値の推移を見てみると、例えば、北海道では551万人から419万人(△24.0%)、青森県では137万人から93万人(△32.1%)、岩手では133万人から94万人(△29.3%)、南の方では鹿児島県が171万人から131万人、宮崎県が114万人から90万人(△21.1%)、長崎県では143万人から105万人(△26.6%)というような推移となっていて、大体の道府県で人口が2割から3割ほど減っていくことが想定されます。一方で東京都が1316万人から1231万人(△6.5%)、神奈川県が905万人から834万人(△7.8%)と、人口減少が他の道府県と比較して緩やかになっていて、今後、東京都心部への人口の集中が進んでいくことが想定できます。ちなみに埼玉や千葉においては団塊の世代が多く住んでいることから、埼玉△12.4%、千葉△14.0%と東京都近郊ではあるものの、人口の減少は東京・神奈川と比べると大きくなると想定されています。(ちなみに人口の減少が最も少ないことが想定されているのは沖縄県で139万人から137万人(△1.4%)。)

 地方においても、比較的都市部への人口の集中が想定されていて、農山村では人口が減り続けます。日本全体の中で東京という大都市を中心に人口が集まるように、地方でも都市部へ人口が集中していくようです。そうなると、地方の中でも特に田舎の方では、全く人が住まない地域が増えていきます。人口の半数以上が65歳以上の地域を「限界集落」というようですが、そういった地域では人口がどんどん減っていき、医者や店がどんどんなくなっていき、その地域だけでは生活ができなくなってきます。

 人口の面では、少子高齢化社会と言われていますが、同時に都市部への人口集中が起こっていくことが想定されます。人口の推移によって地域の経済力も決まってきますので、このことは今後注視しておきたい内容です。

 (参考文献 データでわかる2030年の日本)

ファストファッションと激戦地東京

「ファストファッションとその最大の激戦地、東京」という視点で記載します。

 日本の人口は首都圏への集中が目立っていまして、国道16号(通称:東京環状 神奈川県横浜市→相模原市→東京八王子市→埼玉県川越市→さいたま市→千葉県柏市→千葉市を結ぶ。)の内側に2,800万人もの人が住んでいます。日本の人口の約22%が、国道16号が囲む半径30キロ以内に集中しているのです。その状況下で、日本へ参入してくる外資系小売業の狙いは首都圏に絞られてきました。理由としては、首都圏をはじめとした大都市とその周辺は消費が活発で小売業にとって魅力的であることと、バブル崩壊により地価が低落するとともに規制緩和が急展開で進んできているので市場に参入し易くなってきているということが挙げられます。イタリア・ビアンコ社の調査によると、イタリアの高級ブランドメーカー52社が世界に展開する直営店は98年度で約4,000、このうち世界主要都市への出店は1位東京188、2位ミラノ124、3位ソウル108、4位香港104、4位ローマ104、6位大阪92、6位パリ92、8位台北89、9位ニューヨーク76、10位ロンドンという状況で、東京への市場参入が圧倒的という状況です。

そのような感じですので、ファストファッションに関しても、原宿、銀座、新宿と東京はファストファッションの最大の激戦地となっています。世界を代表するSPAをビジネスモデルにした10強のうち、なんと8社が日本市場での覇権を競っている状況です。

 更にファストファッションにおいては先発組のギャップ、ザラ、H&Mに加え、新興勢力ユニクロ、フォーエバー21、プライマーク(プライマークは日本の出店はない)など業界内での競合も激化しています。

ユニクロはデザイン、流行トレンドの早さより、現代社会の中にある生活者の解決型ニーズ(ウォンツ)をいち早く、安価に商品化することで、他社と一線を画しています。ファッション業界がそれまで、どれだけ付加価値をつけるかという視点だったことに対し、ファッションを生活必需品・消耗品というように新たな視点でとらえたのです。例えば、アメリカのポーラテックが独占していたフリース市場に挑戦し、それまで1着3~4万円であったフリースを一気に1,980円にまで価格破壊しました。それ以外にも、手薄だったレディス用途にブラジャーのカップを内蔵した「ブラトップ」、保温性の高い下着「ヒートテック」など大ヒットを飛ばしています。

フォーエバー21は1984年にロサンゼルスで韓国系のアメリカ人ドン・チャンとジン・チャン夫妻が創業したのです企業ですが、徹底したODM(相手先ブランドによる設計製造)調達で経費カットを実行する企業です。また、5週間で売り切ることを基本とし、週1回の発注でバイヤーが即決していきます。このスピード感が同社を成長させている要因とも言われます。

 「早い」「安い」「おしゃれ」と牛丼のような評判で一躍、時代の寵児に駆け上がったファストファッション。東京における激戦は市場環境並びに新たな視点でビジネスモデルを構築した後発組の市場参入による合わせ技で起こっていることが想定されます。さらに今後ファストファッションがどのように変わっていくのか非常に興味深いです。

 (参照文献 現代アパレル産業の展開)

小売業各社の客層の拡大に向けた対策

本日は小売各社の客層の拡大に向けた対策に関して記載します。

 日本の家族の世帯数の推移をみると近年増加傾向にあり、国立社会保障・人口問題研究所の資料によると、世帯数総数は1980年に35,824千世帯に対し2010年には51,842千世帯に増加しています。この内訳を見ると単独世帯の増加の割合が大きく、1980年7,105千世帯に対し2010年に18,457千世帯と急増。核家族に関しては夫婦のみの世帯やひとり親と子の世帯が増加傾向にあるのに対し、夫婦と子の世帯は減少傾向にあり、1家族当たりの人数が減ってきているということが言えます。この流れの中、単独世帯、いわゆるお一人さまを取り込むための商品やサービスが増えています。年末年始のイベントのお一人さま需要が多いことを踏まえて、三越が小分けの歳暮「三越個包ギフト」を用意したり、ローソンが1~2人前のクリスマス用オードブル販売を行ったりするなど、個食向け商品の販売を始める企業が出てきています。また、焼き肉店「ひとり」という店では一人客専用の焼き肉店でテーブルとテーブルの間に背の高い仕切りを作り、一人でも気兼ねなく焼き肉を食べられるようにしています。このように時代の流れを見て、新たに増加してきている市場“お一人さま”をターゲットにして客層の拡大を狙う企業が出てきます。

 新たな客層の拡大という点で他の例としては、大丸松坂屋が2012年のクリスマスにO2Oによるネット客の獲得を図る動きをみせました。野村総合研究所の『インターネット経済調査報告書』によると、2010年度のデータを使用した結果、国内において市場規模約110兆円のリアル店舗での購買行動のうち、「インターネットからの情報収集に基づく消費(お2O)」による消費規模は約22兆円という結果になっています。その状況の中、大丸松坂屋はミクシィとの共同事業に取り組みクリスマス商戦の集客拡大を図ったのです。ミクシィがネット上で展開するクリスマスイベント「ミクシィクリスマス」には、期間中200万人以上の人々が参加するのですが、大丸松坂屋はそこに注目し、今まで百貨店をあまり利用しなかった年齢層の店舗への誘導を狙ったのです。

また、銀座三越とプランタン銀座は20~30代の女性客獲得策として女子会を活用。2012年に「GINZAテラスナイト」という、人気レストランの特別メニューの提供・コスメや占いの無料体験などが楽しめる女子会を開催しています。

 人口の減少が進む日本において、多くの業種業態において客層の拡大が必要となってきます。その中で上記のように新たな客層を取り込む動きを見せる企業が出てきています。自ら変化をしていかなければ生き残ることができない時代。このような動きは今後も継続していくと思われます。

 (参考文献:実店舗で商品を売るにはどうしたら良いのか!?)

中小企業の新事業展開

本日は中小企業の新事業展開に関して記載します。

【中小企業が新事業展開の検討を始めた時の業績傾向】

中小企業が既存事業と異なる事業分野・業種へと進出を図る“新事業展開”の検討を始める時は、必ずしも業績が良いことを背景に新たな収益源確保のためというわけではなく、業績が悪化している中で現状を打破するために実施するというパターンもあります。過去10年の間に新事業を実施し、10年前と比較して主力事業が変わった“業態転換した企業”と、過去10年の間に新事業展開を実施した場合で事業転換以外の“多角化した企業”それぞれで見てみると、事業転換をした企業では、新規事業展開の検討当時に業績が好転していたと答える企業は35.5%、それに対して、悪化していたと答える企業は30.5%、多角化した事業では、好転していたと答える企業が21.1%、悪化していたと答える企業が20.4%、という数値となっています。新事業展開を検討していた際の企業の業績は好転と悪化がほぼ拮抗している状態です。苦しい状況にある中で新たな成長を図ろうとして新事業展開を行うということもあるということです。

【新たな挑戦をしたことによる成長】

さて、新事業展開を実施した企業と実施・検討したことのない企業の業績見通しを見てみると興味深い数値が出てきます。それは売上見通し、利益見通しともに「増加傾向」の割合が最も高いのが事業展開した企業、そしてそれに続いて多角化した企業となっています。事業転換した企業や多角化した企業の方が、新事業展開を実施・検討したことがない企業よりも業績が良くなると見ています。雇用に関しても同様の結果となっています。

■売上高の3年後の見通しで増加傾向と答えた割合:事業転換した企業48.8%、多角化した企業35.2%、新規事業展開を実施・検討したことがない企業20.2%

■経常利益の3年後の見通しで増加傾向と答えた割合:事業転換した企業42.6%、多角化した企業32.4%、新規事業展開を実施・検討したことがない企業18.3%

■常用雇用者の3年後の見通しで増加傾向と答えた割合:事業展開した企業40.1%、多角化した企業25.6%、新規事業展開を実施・検討したことがない企業15.1%

また、新事業展開を実施した後の主力事業の後の見通しを見ると、事業転換した企業、多角化した企業ともに、新事業展開を実施・検討したことがない企業と比較して、主力事業の成長が期待できると回答するとともに、国内市場全体に対しても成長が期待できると見込んでいます。

そして、新事業展開を実施した企業は「企業のPR・知名度の向上(良い影響があった64.7%)」「企業の信用力向上(同60.7%)」「企業の将来性・成長性(同60.7%)」と回答しており、新事業展開は短期的な企業収益の改善というよりも、企業の知名度や信用力の向上や信用力の向上を通じて、経営基盤全般に好影響を与えているということが見て取れます。

なお、新事業展開を実施し、成果を上げた企業が、事前に取り組んだことを見ると、「自社の強みの分析・他社研修」や「既存の市場調査結果の収集・分析」の割合が高くなっています。しっかりとした分析を行った上で、新たな挑戦を行うことにより、新たな成長が成し遂げられる可能性が高いということがわかります。

※中小企業庁委託「中小企業の新事業展開に関する調査」(2012年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング)より

クール・ジャパン

本日はクール・ジャパンに関して記載します。

【クール・ジャパンとその戦略の背景】

クール・ジャパンとは、日本の文化的なソフトの面が国際的に評価されている現象のことを言います。また文化的なソフトの面でのコンテンツ自体や、日本政府が対外文化宣伝・輸出政策で使用している用語でもあります。ここでは日本政府が行っている対外文化宣伝・輸出政策に関して記載していきます。

このクール・ジャパンが行われる背景として経済的な事情があります。日本の名目GDPは2008年から2011年の3年間で55兆円減少しており、今後も少子高齢化により生産年齢人口が減少することが予測されますので、それに伴い潜在成長力も低下していくことが想定されます。また、昨今の海外生産による貿易収支の赤字に見られるように、過去急速に円高が進んだことにより、海外生産シフトが進んでいます。この海外生産へのシフトは国内の雇用に影響します。例えば国内の自動車産業が空洞化した場合、60万人程度の雇用が減少する恐れがあると言います。

日本には欧米やアジアで人気な、アニメや漫画、食文化、宅配便、旅館、伝統工芸品など、人気の高い商品・サービスが数多くあります。こうしたクール・ジャパンの人気を活かして「内需掘り起し」「外需取り込み」「産業構造転換」を行い、新たな収入源、中小企業の活路、若者の雇用の確保、地域経済の活性化につなげていこうとしているわけです。

【クール・ジャパンによる成長戦略】

クール・ジャパンを支えているのは、クリエイティブ産業です。

(クリエイティブ産業の例示業種:広告、建築、美術・骨董品、工芸、デザイン、ファッション、映画・ビデオ、TV・ゲーム、音楽、舞台芸術、出版、コンピュータソフトウェア・サービス、テレビ・ラジオ、家具、食器、ジュエリー、文具、食品、観光)

日本のファッションや食、コンテンツは海外で高い人気を誇っていますが、それによって儲かっているかというとそうでもないようです。中国ではVIVIなどの日本発のファッション雑誌が人気ですが、繊維産業の輸出量は485百万ドル(韓国2,183百万ドル、フランス9,166百万ドル、イタリア20,049百万ドル)(出典:繊維ハンドブック2009)と低い数字となっていますし、全米には日本食と称するレストランは約9000店あるけれども日系オーナー店舗は10%以下だと言います。

このような状況において、世界の文化産業全体の市場規模は2020年時点推計値で900兆円以上になることが見込まれていますが、そのうち日本は8~11兆円の獲得を目指していきます。

【クリエイティブ産業の活性化による海外での成功事例】

クリエイティブ産業を活性化することにより先んじて成功している国があります。

イギリスは1997年にトニー・ブレア元首相が「クール・ブリタニア」を掲げ、クリエイティブ産業を成長させています(クリエイティブ産業の粗付加価値額1.8倍 1997年6300億円、2006年1兆1460億円。クリエイティブ産業の輸出額1.7倍 2000年1900億円、2006年3200億円。クリエイティブ産業の事業所数1.4倍 1997年112,900所、2008年157,400所。)

韓国では1997年、キム・デジュン大統領の「文化大統領宣言」以後、官民一体となったCool Korea戦略を採っています。韓流などの動きを思い出すとこの戦略も一定の成果を上げていると言えます。

【クール・ジャパン戦略 アウトバウンドとインバウンドのスパイラル】

クール・ジャパン戦略によって、ファッション、アニメ、食文化、地域産品・匠の技といった担い手である職人、クリエイター、中小企業を世界市場へ結びつけ、新たな輸出商品としていきます(アウトバウンド)。この際、当初からコンテンツ(映画、音楽などのCD/DVDの収入、テレビ番組の放映料、ライブ/興行収入)の輸出で収益を上げるだけでなく、二次利用(キャラクター商品のライセンス料、ファッション、美容、食などの文化派生商品の売上増)やスポンサー企業のプロモーション(CM出演などのプロモーション料、消費財など「Made in Japan」製品の売上増)によっても収益を上げていくことを目論んでいます。また、インフラ整備として、現地で日本のコンテンツが常に視聴され、「Made in Japan」ブランドの人気が維持されるよう、コンテンツの継続的な放送・配信等の場(プラットフォーム)を確保するように取り組みを行っています。これらにより「本物」「本場」を求め観光客やクリエイターが日本へ来訪することとなります(インバウンド:外国人旅行者を自国へ誘致する)。

アウトバウンドによって日本に憧れを持った人々が日本を聖地とし日本でしか体験できないコトを求めて訪れてきます。クール・ジャパンはインバウンド戦略として海外需要を日本国内へ呼び込む効果をもたらします。

日本の国内市場がこのままの流れでは縮小されることが想定される中、クール・ジャパンの動きは日本の経済力を保つための重要な施策の一つと言えそうです。一方で、クール・ジャパンを継続的に成功させ続けるためには、日本国内における「モノづくり」や「商品・サービスの提案力」を強化し続けることが重要なように感じます。

中小企業の事業承継

本日は中小企業の事業承継に関して記載します。

【高齢化する経営者】

中小企業の経営者の引退年齢は徐々に高齢化する傾向にあります。30年以上前には小規模事業者の平均引退年齢62.6歳、中規模企業は61.3歳だったのに対し、0~4年前には小規模事業者70.5歳、中規模企業67.7歳という状況になってきています。

また、経営者が高齢である企業ほど、経常利益の状況について減少傾向にあり、経営者の年齢が70歳以上になると、中規模企業が5割、小規模事業者の約7割が減益傾向という結果になっています。そのような状況の中で、経営者の年齢が高い企業ほど事業を縮小・廃業したいと考えているようです。

このことは少子高齢化が進む中で経営者自身の高齢化も進んでいる一方で、経営者が高齢になると事業を縮小・廃業したいと考えていることから、その事業の利益が縮小していっているということが言えると思われます。

【経営者の後継者】

中小企業の経営者の高齢化が進む中で、その経営者の後継者として、過去においては息子や娘といった親族へと引き継がれることが多かったのですが、最近では親族以外の役員や従業員・社外の第三者に引き継がれることが増えてきています。帝国データバンクのデータベースで2008年から2012年までの現経営者の承継形態を規模別にみると、小規模事業者は、親族の事業承継が6割強、中規模企業では4割強となっています。中規模企業では社外の第三者を含めた親族以外による承継が、親族による承継を上回っています。ちなみに、後継者を親族に継がせたいと考えている経営者はその理由を自社株式等や個人保証の問題があるようです。経営者の中には自らの資産を担保に借入を行っている場合があり、その場合、親族以外に承継しづらいということがでてくるようです。

【事業売却】

経営者の引退後にも事業を継続したいと考えているけれども、後継者がいない場合は事業を売却し、事業継承を行うということも考えられます。未上場企業間のM&A件数は2006年に752件から徐々に現業傾向にありましたが、2011年を底に回復の兆しを見せており、後継者がいない企業の約3割がM&Aに「大いに関心がある」「関心がある」という話をしているとのことです。また、総資産額3億円超の起業の3割強、5000万~3億円の起業の約3割が、事業買収への関心が「大いに関心がある」「関心がある」という話をしているとのことです。

この流れから中小企業間のM&Aが今後増えるのかもしれません。

中小企業の経営者の高齢化が進む一方で、その企業を継ぐ後継者の承継形態も過去と変わりつつあります。日本の企業の99.7%を占める中小企業も、時代の変化とともに変わっていくのでしょう。

日本の起業の状況

本日は日本の起業の状況に関して記載します。

【諸外国と比較した日本の起業の状況】

起業が行われるということは、産業構造に新陳代謝が行われるということとなり、起業した新たな企業が経済成長を牽引し、雇用を生み出していくということにつながります。また起業により社会に多様性が生み出されることになります。このように経済成長にプラスの要因をもたらす起業ですが、日本においては国際的にみてその活動は低調なものとなっています。各国の起業活動率を見てみると、最もその数値が高い国がアイスランドで10.6%となっています。アイスランドに次いで企業活動率が高いのがオーストラリアで7.8%。世界経済を牽引するアメリカで7.6%。お隣の韓国は6.6%。ドイツで4.2%。そして日本は3.3%、とその数値は低いです。それだけ日本においては起業が行われにくい環境になっていると言えると思われます。

(※起業活動率:18歳から64歳までの人口に占める、企業活動を行っている者(起業準備中の個人及び起業後3年半以内の会社を所有している経営者)の割合データ。)

【日本での起業の現状】

日本においては1980年代後半から開業率が廃業率を下回る状況が続いていると言います。これはバブル崩壊以降に長く続いた不景気の影響だと思われます。しかしながら、このように開業率が廃業率を下回る状況が続いている中で、情報通信業や医療・福祉においては開業率が廃業率を上回っています(2004年~2006年)。この点、ITや高齢化など時代の流れを感じさせるものがあります。

起業と一本で言ってもそれを行う人には男性も女性もいるわけですが、その性別によって起業する分野が違うという特徴があります。男性よりも女性が起業する割合が高いのは、小売業、飲食店・宿泊業、教育・学習支援業、洗濯・理容・美容・浴場業、生活関連サービス業となっています。2007年には女性の起業家が約3割を占めていました。

さて続いて、起業者数を年齢層で見てみると、男性が60歳代、30歳代、女性が30歳代、65歳以上の割合が高くなっています。2007年では60歳以上の起業家は約3割を占めていて、近年の起業家に占める60歳以上の割合が増加してきています(60歳以上の起業家の推移:1979年6.6%→1992年14.2%→2007年26.9%)。少子高齢化が起業家の数にも影響してきているということでしょうか。

【起業の段階における課題】

本業の製品・商品・サービスによる売上がない段階(萌芽期)において、「資金調達」「起業・事業運営に伴う各種手続」「経営に関する知識・ノウハウ」が起業・事業運営上の課題とする起業家の割合が高くなっています。「資金調達」の課題に関しては、萌芽期における資金調達先として、預貯金や副業収入を含む自己資金と回答する企業が9割に上がっています。起業をする際には自身の先立つものが必要となってくるということです。株式会社日本政策金融公庫総合研究所が行っている「新規事業実態調査」から、開業時に準備した自己資金額を見ると、中央値が230万円となっている一方で、2011年度の開業費用の中央値は620万円となっています(なお、開業費用の中央値は年々低下傾向にあります。1991年中央値970万円→2011年度620万円)。自己資金以外での調達を必要とする起業家が多く存在するということです。

続いて成長初期(売上が計上されているが、営業利益が黒字化していない段階)の段階になると、「質の高い人材の確保」「販路開拓・マーケティング」「製品・商品・サービスの高付加価値化」を課題とする起業家の割合が上昇します。資金調達とともに人材の確保が課題となってくるのです。特に「経営者を補佐する人材」が求められてきます。

そして安定・拡大期(売上が計上され、少なくとも一期は営業利益が黒字化した段階)では資金調達を課題とする起業家の割合は低下し「新たな製品・商品・サービスの開発」が上昇してきます。この時期になると起業家は、事業の安定化のために既存の製品・商品・サービスに頼るだけでなく、新たな製品・商品・サービスの開発により、新たな市場を開拓する必要があると考えるようになるのです。

日本の起業に関してニュースなどで報道されることがあります。現状、日本の起業活動率が低いことを踏まえると、まだのびしろがあるでしょうし、今後、起業する人が増えてくるのかもしれません。

中小企業の果たしている役割

本日は中小企業の果たしている役割に関して記載します。

【日本における中小企業に関して】

4月の消費増税に備えた政府の経済対策の柱の一つとして、革新的な商品やサービスを提供する中小企業の設備投資や試作品開発を促す支援策“新・ものづくり補助金”というものがありますが、日本経済において中小企業は中心的な役割を果たしていると言われます。数値面から見ると、中小企業の割合は日本企業の99.7%を占めており、常時雇用者の69.4%が働いています。

どのような企業が中小企業と言われるのかというと、その範囲は中小企業基本法第2条において定義されていて、資本金基準と従業員基準によって判断されます。資本金基準と従業員基準両方を満たしている必要はなく、どちらかの条件に当てはまれば中小企業と判断されます。

〈参考〉中小企業基本法の定義

■中小企業の範囲

製造業・建設業・運輸業・その他の業種:資本金3億円以下、または従業者数300人以下

卸売業:資本金1億円以下または従業者数100人以下

小売業(飲食店):資本金5000万円以下または従業者数50人以下

サービス業:資本金5000万円以下または従業者数100人以下

※会社役員、および個人事業者の事業主は従業員に含まれない。

■小規模企業の定義

おおむね常時使用する従業員の数が20人(商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営むものについては5人)以下の事業者をいう。

※商業とは、卸売業、小売業(飲食店含む)を指す。

【地方での雇用を創出している中小企業】

中小企業・小規模事業者は地方経済で重要な役割を担っていて、雇用の7割弱を生み出していると言います。小規模事業者、中規模企業の常用雇用者・従業者の占める割合は、人口密度の低い都道府県ほど大きなものとなっています。三大都市圏中心市が所在する都府県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県)とそれ以外の道県で規模別の常用雇用者数・従業員割合を見てみますと以下のようになっています。

まず、三大都市圏中心市が所在しない道県では、大企業16.2%、中規模企業53.9%、小規模事業者29.9%。そして、三大都市圏中心市が所在する都府県では、大企業46.1%、中規模企業38.5%、小規模事業者15.4%となっています。三大都市圏中心市が所在しない道県で、雇用の約3割を小規模事業者が、5割強を中規模企業が占めていることになり、中小企業が地方の雇用に良い影響を与えていることが伺えます。

【女性が活躍する中小企業】

規模の小さな企業ほど、女性雇用者の割合が多く、かつ、管理的職業従事者の割合も多くなる傾向にあります。従業者規模別の女性雇用者割合を見てみると、300人以上の企業で女性雇用者の割合が36.5%なのに対し、1~4人の企業では46.7%という割合になっています。また、管理的職業従事者の割合を見てみると、従業者が1~4人の企業と300人以上の企業では、その割合に7倍以上の差があります。規模の小さな企業ほど女性が活躍しているということが数値面から想定できます。

中小企業は地方で雇用を創出することに大きな役割を担っていたり、女性の雇用の場も創出していたりしていることがわかります。