「レモンを搾りつくすようにデータ分析する」  イギリスのテスコ

本日は「レモンを搾りつくすようにデータ分析する」イギリスのテスコに関して記載します。

 現在では、世界の小売業の中でウォルマート、カルフールに次いで売上高第3位のテスコですが、以前はイギリスで首位のセインズベリーを追いかける万年2位の企業でした。そして当時、安売りチェーンのイメージが浸透していたテスコは、他チェーンとの価格競争にさらされていました。そのため店舗の合理化を重ねて利益を創り出していたわけですが、一方でローコストオペレーションによる反動で店舗の魅力が後退し、利用者からのイメージが低下してきていました。そこで顧客との関係性を回復する打開策として「クラブカード」と呼ぶ、カード会員サービスを1995年に導入します。これは現在ではよく見かける、購入金額に応じて所定のポイントを付与し、一定ポイントに達すると買物券を還元するサービスプログラムです。しかしながら当時、テスコの試みはイギリスのスーパーでは初で、カード会員は半年間で850万人と急速に伸び、それに伴って売上高も急速に伸びていきます。クラブカードの導入がターニングポイントとなり、テスコはセインズベリーを抜き躍進していきます。この成長のきっかけは、クラブカード会員から得られる情報の有用性に着目し、その分析に力を注いだことにありました。その徹底ぶりは社内で「レモンを搾りつくすようにデータ分析する」と言われるほどのようです。

まず、消費者を大きな一塊で捉えるのではなく、購買者のタイプや特徴を踏まえ、できるだけ個別具体的にアプローチしていきます。1990年代後半、カード会員向けに送付する「クラブカード・マガジン」という情報誌を創刊したのですが、学生や成人、シニアなど年代層に応じて顧客をセグメント化し、対象層ごとに編集内容をアレンジしていました。

また、顧客の嗜好や関心を把握することが重要と考え、テスコが扱う1万点近くの主要商品を対象に「商品DNA」と呼ぶ、属性コードを付与します。商品DNAとは、例えば「健康に良い」「鮮度がある」「調理が簡単」「お買い得」「高級品」「ベジタリアン向け」など、商品の性格を表す構成要素のことを指します。野菜飲料であれば「健康に良い」「ベジタリアン向け」という商品DNAがつけられます。

 各種商品の購買傾向から、顧客のタイプを「価格重視派(経済的に豊かではない)」「主流派(平均的顧客)」「保守派(保守的で高齢者)」「利便性追求派(惣菜好きで若いカップル)」などといったセグメント群に分類も行っています。そして、顧客がどのセグメントに属しているのかが判明できる仕組みを整え、それぞれのセグメント別にプロモーションを展開。各店舗でどのようなタイプの顧客が良く利用しているのかも調査し、店舗ごとに顧客タイプの構成比を把握し、それにそった商品アイテムの物量を展開しています。

クラブカードから得られる情報を基にPBの企画・開発も行っています。テスコは顧客のタイプに応じて「Finest(ファイネスト)」「テスコ」「Value(バリュー)」と呼ばれる3つのPBを取り扱っています。「ファイネスト」は高品質・高価格な製品で富裕層を意識したもの。「テスコ」は、一般メーカーが扱うNBに相当するスタンダードクラスの製品でNBよりも安めの価格設定。「バリュー」は低価格品を好む層に対応する廉価な製品です。日本でも最近は高価格PBが出てきていますが、テスコのPBを見てみるとデータ分析を基にしたきめ細かい企画・開発が行われていることがわかります。

カード導入によるデータ分析は様々な店舗で実施されていると思いますが、徹底した活用が顧客との結びつきを強め、企業としての強みになっていくことがテスコの例から伺えます。

 (参考文献 ショッパー・マーケティング)

FSP:オギノの事例

FSP:オギノの事例に関して記載します。

FSPとはCRMで用いられる手法の一つで、高頻度で自店へ来店される優良顧客に注目して、階層に応じてプロモーションを展開することを言います。この手法を上手に取り入れている企業に山梨県を地盤とする「オギノ」という食品スーパーがあります。

オギノでは、顧客データを分析し、顧客を年代や好み、ライフスタイルなどで分類する“顧客クラスター分析”とその活用をFSPの最重要課題に設定。顧客を「健康志向だがレトルト食品などをよく利用する簡単調理派」「素材にこだわる健康志向派」など約20種類に分類。その分類別に最も適したサービスや特典ポイントを付与し顧客の維持・拡大につなげたり、店舗ごとの販促や品揃えにも活用したりもしています。この顧客クラスターを活用したFSPでは、単純に前にレトルトカレーを買った顧客に、レトルトカレーの割引クーポンを発行するというものではなく、レトルトカレーに加え、レトルトカレーと同じ属性を持っている商品の提案も行っていくものとなります(レトルトカレーを買う人は簡単に料理をしたいという観点から、冷凍ハンバーガーを進める等)。

 上記のように購買歴のない商品までDM等でお客様にお勧めしていくということは、顧客に魅力ある商品を幅広く提案できるだけでなく、PB商品のようにより収益性の高い商品を提案できるというメリットもあります。こういったことを効率よく実行するためにオギノでは全商品に対して、「この商品は手間を短縮したい顧客に向いている」「この商品は健康志向が強い顧客に向いている」など、顧客のライフスタイルを考慮したコードを付けています。これにより、それぞれのクラスターの顧客ニーズに対応する属性を持つ商品をDMに載せることが効率的に行え、FSPの活用のスピードを上げることができます。このような作業は顧客ニーズを分析する情報処理能力と時間・労力を伴う大変な作業となります。しかしFSPの実行をしっかりと行うことでオギノは競争基盤を作り上げているのです。

また、オギノはFSPを活用したDMの精度を高めると同時にコスト削減の目的から「ダイレクトレシート(DR)」という新しい販促手段を開発しました。DRはレシートにDMの内容を告知するものです。事前に分類されている顧客クラスターに基づき、顧客にレジで渡すレシートに同じ属性の商品をポイント付きで印刷するのです。

FSPを導入する小売企業の中には、他社が採用しているからという理由で、活用計画や情報分析能力強化、費用節減への対策が行われないままに、急いで採用し、結果としてFSPが時間の経過とともに経営を圧迫する要因になってしまうということがあるようです。オギノの例でみるようにFSPの活用には手間と時間と情報処理能力が必要になってきます。隣の芝生が青いという理由で導入するものではなく、覚悟を決めて導入する類の物のようです。新しいものは輝いて見えますが、結果的には泥臭い作業も行わなければならず、その作業一つ一つこそが企業を強くしていくものなのかもしれません。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

幅広い顧客の囲い込み

幅広い顧客の囲い込みに関して記載します。

 「この商品はこの店で買う」という店舗のファンの新規獲得並びに固定客化するための競争相手は、同じエリアの小売店でした。少し前まで、価格や品ぞろえに大差がない場合は、一度来店してくれたお客様にポイントカードなどの特典を付ければ、それ相応に優位に立てました。ところが今では、ネットの影響により、消費者は人気商品の最安値はネットを探索すればすぐに出てくるし、これまでは集めることができなかった不特定多数の口コミも簡単に手に入れられるようになっています。一般の消費者がお得情報を簡単に大量に入手できるようになったことにより、少しくらいのポイントでは顧客の囲い込みを行えなくなってきました。

その影響から、新たな顧客の囲い込みの考え方がここ10年~15年の間に出てきました。「ポイント探検倶楽部(www.poitan.net/)」というサイトがあるのですが、ここを見ると小売店やサービス業で貯められるポイントはかなりの範囲で互換性を持っていることがわかります。例えばイオンリテールの「WAONポイント」や洋服の青山の「AOYAMAポイント」をJR東日本のSuicaポイントに交換できたり、「りそな銀行」や「東京電力」のポイントを高島屋のポイントに交換できたりします。中でも「Tポイントカード」はこのポイントの互換性に関しては代表的で、20以上の業種、100を超える店舗で同一のポイント(100円で1ポイントの「Tポイント」)を貯めることができます。その中には「ファミリーマート」や「ガスト」など、生活に密着した消費行動と深く関わりを持つ店舗が数多くあります。

また新たな顧客の囲い込みという視点から行くと「地域密着型のポイント」というものもあります。2009年より池袋の「ヤマダ電機LABI1」が池袋の飲食店が加盟する地域密着型ポイントサービス「エクポ」と連携を開始し、池袋の飲み屋でヤマダポイントが貯まるし、貯めたヤマダポイントを使って池袋の飲み屋で使うことができるようになりました。今ではヤマダ電機の新宿進出とともにエクポの使用範囲も広がり、池袋・渋谷・新宿・上野の加盟店で使えるようにもなっているようです。

 最近、どこでもかしこでもポイントカードを発行していて財布の中がカードでパンパンになって、結局使わずに捨ててしまう、なんてこともありました。結局、興味が持たれないものは捨てられてしまうのです。情報が簡単に手に入るようになった時代だからこそ、自らの店舗や商品のファンになってもらうために、魅力のアップが必要不可欠でしょうし、上記のような新たな視点での考え方も必要になってきていると思われます。

 (参考文献 「衝動買い」が止まらない!)

クレジットカードによる既存顧客の囲い込み

クレジットカードによる既存顧客の囲い込みに関して記載します。

 現在、いろいろな小売業でクレジットカードによる顧客の囲い込みを行っています。例えば日本のあるドラッグストアでは、前月の購入金額に応じて当月のポイント還元率が変わるという制度を取っているところがあるそうです。お買い上げ額に応じてポイント還元率を増やしていくという方法は百貨店のカードでもよく見られ、例えば「東武百貨店 東武カード(年会費無料):年間お買上げ 20万円未満3%→20~50万円未満5%→50万円以上7%」「大丸 DAIMARU CARD(年会費1,050円・初年度無料):半年お買上げ 10万円未満5%→10~20万円未満6% 20~30万円未満7.5% 30万円以上10%」などといったようになっています。自社カードを活用した顧客の囲い込みは日本だけではなくアメリカでも行われていて、チェーンデパートメントストア「ブルーミングデールズ」においては、自社のクレジットカードを使用しての買物で3ポイント→化粧品やフレグランスの買物はダブルポイント→セールによっては2倍、3倍のポイント取得、となっているようで、5000ポイントにつき25ドルの買物券がもらえるとのことです。様々な施策を行い、顧客の再来店を促し固定客化することは小売業が生き残る上で非常に重要なことです。

さて、近年において日本のクレジットカードの発行枚数は年々増加傾向にあります。全体的なクレジットカードの発行枚数でみると1998年度に245百万枚が2010年度には322百万枚へ増加。その中で流通系(百貨店・量販店・流通系クレジットカード会社)を見ると1998年度63百万枚だったのに対し2010年度103百万枚へ増加。クレジットカードの発行枚数で一番多い銀行系の発行枚数が1998年度97百万枚、2010年度134百万枚の増で38.0%伸びているのに対し、流通系の伸びが62.9%ですから、流通系のクレジットカード発行枚数の伸びの高さが伺えます。流通系クレジット枚数の発行枚数の増加を踏まえると先ほどの囲い込み戦略が流通業界全体において積極的に行われているだろうことが見て取れます。

 業種別の販売信用供与額の推移を見てみましても、「流通系クレジット会社 1999年35,864億円→2010年111,762億円」「サービス・小売業者等 1999年18,371億円→52,646億円」「百貨店 1999年18,156億円→2010年9,805億円」と百貨店を除いてその額は増加傾向にあります(百貨店の販売信用供与額が低下しているのは売上高が1998年9兆1773億円から2011年6兆1525億円と市場規模が縮小していることが要因として考えられます。)。この結果は、以前よりも買物の際にお客様がクレジットカードを利用することが多くなっているという証左だと思われます。昔はニコニコ現金払いとか言いましたけど時代が変わったものです。企業側はクレジットカードにより顧客の囲い込みを狙い、消費者側は買物の際、自分のメリットを最大化するにはどうしたらよいかを考えるようになってきているということでしょう。

 最近、どこに行ってもポイントカードはどうですか的な流れになって、1回しか言ってない店のポイントカードが結構たまっているなんてこともあります。ポイント還元による店舗の魅力化は非常に重要なことと思いますが、一方でそれ以外の魅力も同時に高めていかないと、店側からすればポイントカード代の無駄にもなってしまうかもしれません。バランスよく全体を良くしていけるように目指すことが重要だと思います。

顧客の深耕度

本日は顧客の深耕度に関して記載します。

アメリカの企業でアウトドア製品で知られるL.L.ビーン社という会社があります。この会社ですが、ネットのサイトを見ると次のようなコメントが出てきます。「すべてのL.L.Bean商品はお客様に100%ご満足いただけるよう、保障されています。もしお買い上げの商品にご満足いただけない場合には、いつでもご返品ください。」というコメントです。

さてこの会社、創業した1912年に革張りの上に防水のゴムでカバーしたハンティング・シューズを100足販売しました。このシューズに100%満足保障のタグをつけて販売していたのですが、3週間で返品が始まり、最終的には100足中90足が返品されました。返品理由はシューズをカバーしていたゴムがはがれたからなのですが、この会社は90足すべての靴を取り替え、100%満足保障を実行したことにより、消費者の信頼を勝ち取りました。そして、商品の品質も向上させ、ビジネスを軌道に乗せたのです。似たような例で、全米最大の高級デパート「ノード・ストローム」もだいぶ履いてしまった靴ですら、苦情を言えば交換してくれるそうです。以上のような顧客満足度向上を重要視する経営には『顧客が感じる価値を高める』という目的があります。企業が提供する商品・サービスを顧客が価値があると考えた際にお金を払うわけで、顧客から高い価格を支払ってもらおうとするならば、企業側はそれなりの価値を顧客に提供しなければなりません。

 企業にとって消費者には段階があります。1番目が見込み客。2番目が顧客。3番目がロイヤル顧客。見込み客の段階では企業と消費者の関係は弱く、消費者はあくまで潜在的な顧客に過ぎません。続いて顧客の段階においては競争企業と価格を比べながら自社で買うかどうかを決めている段階で、進んで高い価格を払ってまで自社で商品・サービスを買ってくれようとはしない段階です。そして最後にロイヤル顧客ですが、この段階にまでなると消費者は自社にとって熱心なファンになっていて、商品・サービスの価値を非常に大きく感じて、価格が高くても喜んで支出してくれるようになります。ロイヤル顧客が増えれば企業は長期的に利益を確保しやすくなります。ロイヤル顧客をたくさん抱えている例としてカルティエやルイ・ヴィトンなどのラグジュアリーブランドが挙げられます。

 自社が消費者に与えている価値を高めていくことにより、見込み客から顧客へ、顧客からロイヤル顧客へ、徐々に消費者が自社のファンになっていきます。「与えられる存在になる」ということが生き残っていくうえでの前提になるようです。

 (参考文献:日本一わかりやすい価格決定戦略)

JR東日本 自動販売機のビッグデータ活用

本日はJR東日本、自動販売機のビッグデータ活用に関して記載します。

【JR東日本の駅構内にある『カメラ付きの自動販売機』】

JR東日本の駅構内を歩いていると、大型ディスプレイで商品を映し出している自動販売機をよく見かけるようになりました。この自動販売機のディスプレイの大きさは47インチとかなり大きなものとなっているので、近くを歩くと目を引きます。この自動販売機が初めて登場したのは、2010年8月10日。JR東日本の自動販売機事業などを行うJR東日本ウォータービジネスが品川駅のコンコースとホームに2台設置したことに始まります。今では様々な駅で見られるようになりました。

この自動販売機、上の方を見上げてみるとカメラがあることに気づきます。このカメラを活用して顧客の顔画像を捉え、性別や年齢を推定。その顧客にあった最適な商品をおすすめしたりしています。性別と年齢の両方を正しく判断する確率は75%にもなるそうです。顔画像以外にも時間帯や気温などの要素を考慮に入れて商品をおすすめしているようです。

このようにJR東日本ウォータービジネスが設置している自販機は、今までの自販機と異なり、様々なデータを収集することができるものとなっているのです。

【ビッグデータ 自動販売機のデータ活用】

JR東日本ウォータービジネスは自販機から得られた大量のPOSデータを分析して、商品開発や販売戦略に役立てています。まさしく自販機のビッグデータの活用と言えると思います。

自販機からは大量にデータが得られるわけですが、同社がそのデータ分析から生み出した成果の一つに、2012年にリニューアル販売したペットボトル入り飲料水「フロムアクア」があります。同社は自販機から集めたデータを基に「フロムアクアは移動中に飲まれる場合が多い」という仮説を立てて、片手での飲みやすさを重視した、落ちないキャップを開発しました。リニューアル後、フロムアクアの年間売上は従来比で1.5倍に増えたと言います。確かに、実際に使ってみると、落ちないキャップは便利だと感じます。

その他にもデータ分析を基に自販機内の商品選定を行い、売上の増加を実現しています。例えば、午後の早い時間に自販機の売上が落ち込みやすい点に着目しデータ分析をした結果、500ミリペットボトル飲料は朝に売上のピークがあるのに対し、280ミリペットボトル飲料は全体の売上が下がる午後によく売れるということがわかりました。また午後の販売状況を細かく分析すると、40代女性が280ミリペットボトル飲料を買っていることがわかりました。そこで、40代女性にヒットしそうな商品を積極的に投入したところ、その時間帯の売上増につながったそうです。40代女性の購入者層は全体からみると少なかったため、データ分析を行う前まではその層に販売施策を打ち出すことはしていなかったそうです。しかし、購入者の属性、買った商品のカテゴリ、時間帯などを複合的に分析することで、隠れたニーズが発見され、売上の増加につながったのです。

カメラ付きの自販機によりJR東日本ウォータービジネスは顧客の年齢、性別ごとにどういった商品を購入しているかわかるようになったわけですが、この情報の蓄積は今後の自販機の販売活動にもプラスになっていくことと思われます。話は変わりますがローソンではPontaによる蓄積された情報を分析し、売上ランキングが上位でないけれど継続的に購入されている菓子を店頭に常に置くことによってリピート率を高めています。ビッグデータが言われる中、情報の活用は今後ますます重要になってくると思われます。

無印良品のスマホアプリを活用したCRM施策

本日は無印良品のスマホアプリを活用したCRM施策に関して記載します。

以前、良品計画は会員カードを導入しポイントが付与することは実質的な割引となると考えていました。そのため会員カードを導入しておらず、良品計画は本格的なCRM施策に踏み切れずにいました。しかしながら、消費増税に伴い消費意欲の減退が想定される中で、CRMの不在が喫緊の課題となってきました。CRMは、会員カードを通じたデータベースなどを用いて各顧客の詳細な属性情報や購買履歴、問い合わせやクレームの内容などを記録・管理し、問い合わせに速やかに対応したり、その顧客に合った商品を紹介したり、という活動のことを指します。消費増税後を見据え、価格優位性がない無印良品にはCRMの取り組みにより顧客との関係性を強固にすることが必要だと考えられるようになってきたのです。

そして2013年5月15日に良品計画はスマートフォン向けアプリ「MUJI passport」をリリースしました。MUJI passportはアプリ化された会員カードで、アプリ提供開始から約3週間でダウンロード数が35万件を超えたと言います。このアプリを立ち上げると画面の下部にバーコードが表示され、そのバーコードを利用者が店舗で買物をするときに提示し、店員に読み取ってもらうことで、購入金額に応じて「MUJIマイル」が貯まります。

また、アプリを使って利用者が様々な情報を紐付けするとマイルが貯まりやすくなるようにしています。例えばMUJI.netメンバーの情報をアプリに登録すれば、通販サイトで購入した時に取得したマイルと合算できますし、MUJI passportにFacebookやTwitterといったソーシャルメディアのアカウントを登録することによってもマイルが貯まります。また、良品計画が発行するクレジットカード「MUJI Card」のカード番号を登録すれば、優良顧客と判断されて、よりお得なクーポンなどがもらえるようにもなっているそうです。良品計画では、このようにオンラインとオフラインの購買行動、クレジットカード会員情報、ソーシャルメディアアカウントをMUJI passportというプラットホーム上ですべてつなぎ合わせ、顧客の利用動向を一貫して把握するようにしていくようです。

この会員カードをアプリしにて、そこをハブとして様々な情報を結び付けてこうとする発想が面白いと思いますし、わざわざ会員カードを持ち歩かなくてもいいので、利用者にとっても便利なものだと思います。良品計画はこの会員カードアプリを活用し、顧客データを分析することでアンバサダーを発見できる可能性もあると考え、同社の根強い顧客による口コミ効果につなげていくことも考えているようです。アプリの提供開始直後、利用者の購買単価が全体平均の2倍になったという結果も出ているようです。良品計画の会員カードのアプリ化は今後のCRMの方向性の一つとしての試金石であるような気もします。

(参考文献 最新マーケティングの教科書)

100円ショップ「セリア」のPOSシステム活用

本日は100円ショップ「セリア」のPOSシステム活用に関して記載します。

2012年度、100円ショップ大手各社はおおむね増収となっていて、各社が都市部の商業施設に出店しました。首位の大創産業(ザ・ダイソー)は2012年12月にはブラジル・サンパウロ市に現地1号店を出店。積極的な海外展開により業績を底上げしています。100円ショップ2位はセリア。セリアは2008年度にキャンドゥを抜いて2位に躍り出た企業です。同社はデザイン重視の商品を集め、女性に人気となっています。特徴は質の高い品揃えとPOSシステムを利用した効率の高い経営です。

POSシステムとは、光学式自動読取方式のレジスタにより、単品別に販売情報を収集・蓄積し、様々な用途に利用するものです。最大の特徴としては“単品レベルでの管理”が可能になる、つまり、商品ごとに「いつ」「いくらで」「いくつ」売れたかというデータがリアルタイムに把握できることです。

セリアは2004年に100円ショップ業界でいち早くリアルタイムPOSシステムを導入し、売れ筋商品と死に筋商品を把握。売れ筋商品を中心とした品揃えを行うことで、商品の回転を速め、在庫コストを減らし、経営効率を高めました。ザ・ダイソーとセリアでアイテム数を比較すると、ザ・ダイソーが約7万点あるのに対し、セリアは1万9000点と、アイテム数は少なくなっていますが、品揃えの質を高めることにより競争力をつけているのです。

同社が品揃えの基準としていることに「お客さま支持率」というものがあるそうです。これは、店舗ごとに各商品の販売数を1日の客数で割って算出するもので、この数値を持って商品ごとに全店の平均支持率と比較します。そして、低い支持率の商品の取り扱いをやめ、高い支持率の商品の類似商品を即座に増やすということを行っていきます。POSデータを品揃えや売価設定などに活用する際にPI値を見るというものがありますが、まさしくそう言った考え方を基にして、市場の変化に適切に対応し品揃えを変えているということでしょう。

(PI(Purchase Incidence)値とは、ある一定(1000人あたり)の購買客数の中で当該商品を購買する確率を表す指標。自社内の同カテゴリー商品の比較や、自社と他社・全国的なPI値との比較を行うことで、売れ筋分析、商品陳列を行う際の棚割り、今後の商品戦略の策定などに活用します。PI値には「金額PI」と「数量PI」があります。金額PIは『総販売金額/レジ通過客数(レシート枚数)(1000人単位)』で表せ、数量PIは『総販売点数/レジ通過客数(レシート枚数)(1000人単位)』で表せます。)

セリアがPOSデータの活用をしっかり行ったことでキャンドゥを抜けたように、所有している仕組みを有効活用することが店舗の強みにつながるということが言えそうです。

(参考文献 「週刊ダイヤモンド 2013 12/7」「日経MJトレンド情報源2014」TAC中小企業診断士講座)

ビッグデータを活用した各社の対応

本日はビッグデータを活用した各社の対応に関して記載します。

ビッグデータとは、従来は扱うことが難しかった、大量かつ多量なデータのことを指します。大量のデータを分析することで同時に購入される頻度の高い商品を明らかにしたり、一人ひとりの顧客に向く商品を薦められたり、といったことができます。

ローソンは一人ひとり異なるIDを付与したポイントカードを活用して、購買データを収集し、POSデータだけでは分からない個々人の購買行動を分析していると言います。例えば「プレミアムロールケーキ」という売れ筋スイーツよりも「エッグタルトパイ」の方が、同じ人が複数回購入していて、リピート率が高いということがわかりました。更に来店頻度が高い顧客ほど「エッグタルトパイ」を購入する割合が高いことを突き止めたのです。このことからエッグタルトパイを棚に陳列すると、リピート率の高い顧客の来店促進につながることが期待できる、ということが判明しました。

ビッグデータの活用は急速に広がっていて、企業が連携したり、業界の枠を超えて共同したりする例も出てきています。その例としてローソンが展開する「Ponta」やカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)系の「Tカード」などが挙げられますが、運営会社が加盟店での消費者の履歴を収集し、加盟企業の要望に応じてマーケティング分析をしたり、消費者に商品やサービスの推奨をしたりしています。CCCはTカードの利用履歴などから、缶コーヒーの購買者がカー用品店、ガソリンスタンド、レンタカー、駐車場を利用する頻度が高い傾向を発見。データから見て缶コーヒーの購入と「運転免許の所有」に強い相関関係があることを見出したと言います。

ヤフーはアスクルを買収していますが、両社は2012年10月より直販サイト「ロハコ」をスタートさせています。ロハコは主に30~40代の働く女性を対象にしたサイトで、日用品を中心として注文した日にその商品が届くことを売りにしています。ロハコのビッグデータの活用方法としては、商品ページが閲覧されているのに購入に結び付いていないデータを確認したら価格設定の変更を行ったり、検索にかからない商品が出たらそれをリスト化し仕入れに活かしたりしています。顧客の購買履歴からリアルタイムで仕入れや価格の見直しを行っているのです。カルビーの「フルーツグラノーラ」販売の際、価格と購買状況、さらにはリアル店舗の市場価格を踏まえ、段階的に価格を調整したことにより、爆発的に売れる価格を見出すことに成功したと言います。

膨大な情報がSNS等により発信されていますので、このビッグデータの活用は今後一層進んでいくと思われます。

(参考文献 「週刊ダイヤモンド2013 12/7」「最新マーケティングの教科書」)