情報と消費者の関係

情報と消費者の関係に関して記載します。

 野村総合研究所の「なぜ、日本人はモノを買わないのか?」によると、現在、日本の消費者の7割が、商品やサービスを購入する際、「情報が不足していて困る」というよりも「情報が多すぎて困る」と感じているということです。インターネット上の各種評価サイト、企業ホームページ、身近な人の口コミ、店頭販売員のおススメといった、多くの断片的な情報がいろいろと入ってくることにより、意思決定が難しくなって、どれを買うべきか、そもそも買う必要があるのか判断が難しい状況になっているというのです。確かに選択肢が増えれば増えるほど選ぶのは難しくなります。

IT化が進む以前は消費者にとって情報源はマス広告やリアル店舗から入ってくるのがほとんどでした。情報は売り手側が消費者側に流していました。ところが、IT化が進むとインターネットの情報から、それまで売り手が発信していなかった情報も消費者が集められるようになってきました。消費者はインターネットによって手に入れた情報を活用し、お買い得な買い物ができるようになってきたのです。ITスキルが低い人は不利益を被るという“デジタルディバイト”なる言葉も登場します。ところが最近、多様な発信主体による大量の情報が発信され、消費者が入手する情報がますます増えてきています。その情報には矛盾するものも当然あります。このような情報過多の中、情弱と言われる状態になる人も多くいるようです。大量の情報の中で「自分が間違った判断をしてしまうのではないか」と考えている人が46%にもなるそうなのです。

 上記に関連して、2004年、コロンビア大学のシーナ・イェンガーが行った調査で面白いものがあります。年金の401Kプランの選択で、選択肢の幅が2から11に増えると年金プランの参加者が75%から70%に減少し、さらに59まで増やすと61%まで減ってしまったというのです。更に残った人もリターンの少ないプランを選択するという結果となったそうです。過度の選択の要求が選択を放棄させ、判断を誤らせたというのです。確かに選択肢が多いとこういうことがあると思います。携帯電話のプランなどは上記のような感じだと思います。

 情報化社会に伴い、消費者が商品を選ぶことが難しくなっている、ということは興味深い現象だと思います。消費者は情報に踊らされずに自ら選ぶ力をつけていく、小売り側はどんなに情報が多くても消費者を引き付ける魅力をつけていく、そんなことが大事になってきている時代なのかもしれません。

 (参考文献 なぜ、日本人はモノを買わないのか?)

求められる感覚的な情報

情報化社会にリアル店舗で求められる感覚的な情報という内容で記載します。

インターネット通販が急成長をしていますが、そのような状況の中においても約7割の消費者が「インターネットで商品を買う場合でも、実物を店舗などで確認する」といいます。この理由のトップとしてあがっているのが「微妙な色合いや質感、サイズなど、見ないとわからない詳細な情報を知りたい」というものです。その次に「手触り、におい、フィット感など、感覚的に気に入るかを確認したい」というものです。つまり、消費者は「文字ではわからない感覚情報」を求めてリアル店舗に訪れているのです。詳しい商品説明や、わかりやすい説明、売れ筋情報や裏話、ブランド自体の人気などは、インターネットで簡単に誰でも入手することができるようになっています。そのために消費者はリアル店舗に、視覚・触覚・感覚などの五感で判断する感覚情報を求めるようになってきているようなのです。ちょっとネットで調べれば、どんどん知識が手に入るので、消費者は知識を補完するためにリアル店舗での感覚的な情報を求めるということでしょう。

 最近では、リアル店舗では商品の検討や確認だけを行い、実際の購入は検索が簡単なオンラインショップで価格の安いところなどを探して行うという、“ショールーミング”という消費者の行動があると言われています。このショールーミングに対するため、ヨドバシカメラでは店内の全商品に専用アプリで読み込み可能なバーコードの設置を行っています。これにより、商品情報検索、価格、商品レビューやQ&Aなどの情報照会、リアルタイムの店舗在庫検索と店舗受け取りの申し込み、オンラインでの注文が行えます。ヨドバシカメラはスマホやPCと店舗を専用アプリで融合し、店頭でしか得られない楽しさを演出しているとも言えます。

また、ここ数年、菓子メーカーのアンテナショップが話題になっています。これらのお店では話題作りのための限定品販売などともに、ショップ内で調理して、良い香りを漂わせたり、出来立ての製品を味わってもらったりするなど五感に訴えかける取り組みがなされています。例えば横浜中華街の「ベビースターランド」では出来立てのベビースターラーメンが食べられますし、東京駅一番街にあるカルビーのアンテナショップ「カルビープラス」では、揚げたてのポテトチップスをイートインコーナーで食べることができます。お菓子はコモディティ化が進みやすく、価格競争に陥ることがありますが、上記のようにショップで五感を通した経験を味わってもらうことにより、消費者の経験価値を高め、ブランドロイヤリティを高めるという効果が期待されます。

 情報化社会という社会環境の変化に伴い、消費者の購買行動に変化が訪れています。この変化を踏まえ、リアル店舗の強化を図っていくことが求められています。時代が変わっても、リアル店舗が消費者に足を運んでもらうためには、立地や品揃え、サービス、接客などなど、強みを尖らし、消費者に感動を与えられるような店づくりを目指していくことが必要そうです。

 (参考文献 「なぜ、日本人はモノを買わないのか?」「リアル店舗で商品を売るにはどうしたら良いか!?」)

シニア対策

小売業が取り組んでいるシニア対策に関して記載します。

 日本においては全人口に占める65歳以上の年齢の割合が、2010年に約23%、2013年に約25%、2040年に36%、2060年には約40%と、どんどん増えていくことが想定されています。また、2011年の世帯主の年齢階級別の1ヶ月平均の消費支出(二人以上世帯)を見ると、働き盛りと思われる30~39歳が263,197円に対して60~69歳が281,022円という具合に、高齢者も多くの支出をしています。高齢になればなるほど保健医療の支出が増え(保険医療の支出 30~39歳9,424円→60~69歳14,721円)、洋服や通信の支出は40代以降減るという年齢に伴う消費構造の変化は見られますが、家庭用耐久財や書籍など支出の割合にそれほど大きな変化の見られないものもあります。何れにせよ高齢者市場は今後確実に拡大することが想定されますし、最近では元気で活動的なアクティブシニアが増加していることから、その年齢層の方を対象とした商品・サービスが強化されてきています。

イオンは2011年を起点とする3ヶ年のイオングループ中期経営計画において、グループ共通戦略の一つに、シニア層への商品・サービスなどを強化し飛躍的な成長を目指す「シニアシフト」を掲げています。その一環としてシニア世代を年齢にとらわれず豊かに人生を楽しむ世代と捉え、「GRAND GENERATION(グランド・ジェネレーション)」と名付けました。そして、2012年9月に55歳以上を対象とした「G.Gイオンカード」「G.G WAON」を誕生させ、年金支給日の15日を「G.G感謝デー」に制定し、「イオン」「マックスバリュ」「イオンスーパーセンター」などの店舗でこれらのカードを使用すると支払額が5%引きとなるサービスを実施しています。イオン同様、セブン&アイ・ホールディングスに関しても、電子マネー「ナナコ」に2012年4月から65歳以上対象の「シニアナナコカード」を設け、年金支給日の15日をシニアナナコデーとして、衣料、食料、住まい品を表示価格より5%引きしています。また、店舗購入商品の宅配サービス「きいろい楽だ」の配送料金を通常315円から80円に割引なども実施しています。

2012年3月1日に新しい建物に建て替えてオープンしたダイエー赤羽店はヤングと子供をカットした「アクティブシニアの館」へとリニューアルを行いました。商圏の居住者の4割が50歳以上、2人以下の少人数世帯が72%という状況の中、シニア向けのMDを強く意識して「こだわり」「美容・健康」「趣味・ライフスタイル」をキーワードに店づくりを行っています。なお、施設面から見ても、この店舗のエスカレータ、とてもゆっくりです。

コンビニもシニアの取り込みを大きな課題としていまして、ファミリーマートは、元気で毎日はつらつと過ごすアクティブシニアを「おとな」と位置付け、新しいおとなのコンビニ文化創造を目指し、2010年9月に「おとなコンビニ研究所」を立ち上げました。実際にアクティブシニアの声を聞いて開発した「おとなコンビニ研究所」の商品は、見た目や彩り、素材、ひと手間かけた調理、健康や環境への配慮などをコンセプトに作られています。また、シニア扱いされることを嫌うアクティブシニアの声を反映して、まとめてコーナー化するのではなく、各カテゴリーの商品の一つとして陳列されています。

シニア世代がかわいい孫に買ってあげるということを狙って、アメリカでは10月の第3日曜日を「孫の日」としてキャンペーンを展開しています。日本においても日本百貨店協会が10月第3日曜日をまごの日と制定しPRを図っています。アメリカにおいては特定の日の設定だけでなく、多くの小売業が「Upromise(ユープロミス)」と提携して、孫の教育資金としてポイントを蓄えることもしています(Upromiseとはお買い物額の何%かを大学の学資としてUpromiseの口座に貯金することができるシステム)。

 社会の変化に対応して様々な動きが出てきています。そして身近なところで変化が着々と進んでいます。気づかずスルーしてしまいそうなことの中にも社会の変化を裏付ける何かがある場合があるのかもしれません。

 (参考文献:実店舗で商品を売るにはどうしたら良いのか!? データ:流通統計資料集)

東日本大震災が消費行動に与えた影響

本日は東日本大震災が消費行動に与えた影響を見てみます。

 過日、山形県にお住まいの方と話をする機会があり、その際に福島第一原発の事故による影響で食料品を販売されている方が苦労なさっているといったような感じの話を伺いました。今では東京ではだいぶ放射線に対する意識が薄れてきているように感じますが、東北にお住まいの方は今なお放射線の被害と戦われているのだと感じました。

 日本政策金融公庫の資料より2013年1月段階の「福島第一原子力発電所事故の影響」を見てみると、現在もその影響が残っていると答えた方が、岩手・宮城・福島で71.2%(うち福島93.8%)、茨城・群馬・栃木で63.6%、青森・秋田・山形で41.4%という結果が出ていました。原発事故当初話題になったセシウム137の半減期が約30年。当然のことながら長い時間をかけて原発事故が起こした問題とは向き合っていかなければならなくなってしまっています。

 原発事故後、セシウムと合わせてヨウ素131も話題になりました。東京の浄水場を汚染しまくりミネラルウォーターが軒並みスーパーからなくなっていたのを今でも思い出します。当時、僕がスーパーへ行ったらペットボトルというペットボトルが全て売り切れていて、残っていたのは確かヘルシア緑茶だけ。今ではヘルシア緑茶とかヘルシアウォーターとかよく飲むんですが、当時は衝撃を受けた記憶があります。2011年3月のミネラルウォーターの支出の対前年同月実質増減率を総務省統計局資料から見てみると161.3%増。ほかにも支出額の対前年同月実質増減率を見てみると電池が181.2%増、カップめん43.2%増、もち43.7%増という状況でした。反対に自粛ムードの広がりもあり、宿泊料は△33.8%、入場・観覧・ゲーム代△24.7%という結果でした。これは負の要因ですが、外部環境の影響で売れる物が大きく変化するということは事実です。時代が変化したときにその変化に対応できる力をつけておかなければ時代に取り残されるということもあるような気がします。

 東日本大震災の時は徹夜をして仕事をしていましたが、夜中にも東北のみならずそれ以外の地域を震源とした地震もあり、おびえる人々を見て、日本はこのまま沈没でもしてしまうのではないかという気持ちにもなりました。ただ今でも、震災の影響で苦しんでいる人がいます。また、日本は地震の活動期に入ったともいわれ、いつまた大きな地震が来るかもわかりません。園監督の「希望の国」でのセリフの中で「一歩、二歩、三歩」といった言葉に対し「これからの日本は一歩、一歩、一歩だよ」といったようなセリフがありました。一歩、一歩、一歩と、置かれた環境や自分自身と戦っていかなければならないのかもしれません。

エンターテインメント系非物販テナント

本日はSCを特徴化するエンターテインメント系 非物販テナントに関して記載します。

【コト消費に特化した新しいショッピングセンター(SC)イオンモール幕張新都心】

2013年12月20日に「コト消費」に特化したSCイオンモール幕張新都心がグランドオープンしました。年間来街者数目標3500人を目標に掲げ、現在のところ計画通りの推移をしているようです(ちなみに同SCの近くにある東京ディズニーランド並びにシーの来場者数は直近で2750万人なので、その目標数字の大きさが伺えます)。同SCの新しい試みとして、エンターテインメント性にあり、「よしもと幕張イオンモール」、「東映ヒーローワールド」、お仕事体験パーク「カンドゥー」、体験型スポーツモールの売り「ボルダリング」などが施設内にあります。

【非物販テナント シネコン】

エンターテインメントを高める非物販テナントは、SCを特徴化し集客やその特徴化させることとなります。例えばSCのテナントとしてよく見られるシネマコンプレックス(シネコン)においてはスクリーン数でみると、単独の映画館が2013年1148→2012年525とその数を減らしているのに対し、シネコンは1533→2012年2765とその数を増やしています。

【ゲーム業界の攻撃】

また、SCと親和性が高いと言われるゲーム業界においては、2013年に新業態が3施設できました。

ⅠJ-WORLD TOKYO

2013年7月にナムコが運営主体となりサンシャインシティに開業。J-WORLD TOKYOは週刊少年ジャンプとコラボした企画で、「ドラゴンボール」や「ワンピース」といった人気コミックの世界観をテーマにしています。池袋にはアニメイトなどサブカルチャーの店舗が多くあることも踏まえ、コアなカテゴリーに挑戦しています。

Ⅱ東映ヒーローワールド

2013年12月に先ほど記載したイオンモール幕張新都心に東映とナムコの共同事業としてスタート。東映は以前から「仮面ライダー」など、男児向けプログラムを充実させていて、この施設のターゲットも小学生男児が中心となります。モール内に映画館もあることから映画上映との相乗効果も狙っています。J-WORLD TOKYO同様、コアなファンを狙った施設と言えると思います。

ⅢOrbi Yokohamaオービィ横浜

セガが運営主体となって、イギリスのBBCが保有するコンテンツを主題とした、2013年8月にオープンした体験型ミュージアム。横浜湾岸部にオープンした「MARK IS みなとみらい」に立地し、開業1ヶ月間で約10万人の入場者を集めました。コンセプトは「地球上の大自然を体感する」であり、年齢・性別を超えた集客が可能。

近年、若者のゲーム離れがあり、ゲーム業界は苦戦が続いています。2013年3月末のバンダイナムコホールディングスのアミューズメント施設事業の数字を見ると売上高約601億円、前年比で△1.4%、セガサミーグループは売上高約427億円、前年比△4.3%となっています。この業界不況を脱するために3つの新業態がSC内に開業したこととなりますが、これらはSCの差別化・集客強化を図る重要な要素となります。コト消費が言われる中、これらの非物販テナントが今後どれほどの力を発揮できるのか気になるところです。

(参考文献 販売革新2014 2月)