新潟戦争とCGC

本日は新潟戦争とCGCに関して記載します。

2003年。長岡駅前にはイトーヨーカ堂とダイエー、駅から離れたところにジャスコがあり、原信という長岡市を本拠地とするスーパーもありました。そこにスーパーセンター(非食品中心の総合ディスカウントストアと食品スーパーが融合した店舗のこと)のベイシア(群馬県)とPLANT(福井県)、地元のスーパーのウオロクが一斉に長岡市の半径10キロメートル以内に出店。それをきっかけに、かつてないほどの厳しい値下げ競争が始まりました。その競争の激しさは、“豆腐1丁(300~400g)8~18円”“500mlペットボトル飲料69円”“もやし1パック18円”というものでした。新潟戦争ではスーパーで一番利益を確保していた日配品の価格を叩きあったと言います(日配品:工場で生産されて毎日配送され、数日中には消費されるものをいい、牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの洋日配、豆腐、漬物、納豆などの和日配がある)。

原信に関しては「日本一のサービスの提供」を目指した企業で、そもそも低価格での販売を武器にするというスタイルではありませんでした。例えば1998年からレジでの商品の袋詰めサービスを続けてきていました。この袋詰めに対する熱意は、レジ係が処理スピードを落とさずに、一人で会計と袋詰めを同時にこなせるように、専用のショッピングカートや買物袋、袋詰め台まで開発するほどのものでした。しかしながら、新潟戦争の勃発で値引き合戦が起こったことで、その渦中に巻き込まれ、1998年当時約4%あった経常利益率は1.5%まで落ち込んでしまいました。

この経験を下に原信は自分の城は自分で守るしかないという発想で自社PBの開発に至ります。2013年に原信とフレッセイ(群馬県)が経営統合し、アクシアルリテイリングが設立されました。両社はともに仕入れ機構CGCのグループの一員で、以前から交流がありました。CGCは全国各地の中小規模の独立したスーパーによって構成される、さまざまな事業活動を協業するために組織されたチェーンで、商品開発・調達、物流システム、情報システム、営業支援の4つをグループ活動の柱としています。そして「商品こそすべて」という事業理念を掲げて、創業当時から一貫して商品開発を重視してきました。代表的な加盟社はラルズ、リオン・ドール、スーパーマルモ、三徳、Olimpic、成城石井、オギノ、カネスエ、マルヤス、フレスタ、西鉄ストアなど、全国220社、売上高は総計4兆円にも及び、PB開発でもメーカーとの交渉においてイオンやセブン&アイにも対抗できる規模を持っています。それでもアクシアルリテイリングとしてはCGCのPBだけでは競争力として十分ではなく、自社PBを強化する必要があると考えているようです。上記の新潟戦争での価格競争や、少子高齢化で商環境が厳しくなる中で、際立った特徴を持った会社以外は、売場面積の広さで競争力が決まってしまうという考え方が基になっているようです。

商品のコモディティ化が進み価格競争に陥った際には、物流機能やPBなどで利益を創出しやすい企業にしたり、自社の強み・特徴を出して差別化を図り、他社との競争に打ち勝っていくことが必要となってきます。新潟戦争を経た原信の動きはそのことの必要性を物語っているように感じます。

(参考文献 「週刊ダイヤモンド2013 12/7」「1からのリテール・マネジメント」)

オムニチャネルに関して

本日はオムニチャネルに関して記載します。

オムニチャネルとはリアル店舗やオンラインストアを始めとした、あらゆる販売チャネルや流通チャネルを統合すること、および、そうした統合販売チャネルの構築によってどのような販売チャネルからも同じように商品を購入できる環境を実現することです。つまり、リアル店舗とネットの境目をなくし、顧客と様々な接点を持つことで、いつでもどこでも同様に買物ができる環境を作るということになります。オムニチャネルでは、実店舗、オンラインモールなどの通販サイト、自社サイト、テレビ通販、カタログ通販、ダイレクトメール、ソーシャルメディアなど、あらゆる顧客接点から、同じような利便性を持って、商品を注文・購入できるという点、および、ウェブ上で注文して店舗で商品を受け取ったり、店舗で在庫がなかった商品を即座にオンラインでの問い合わせで補ったりできるような要素が含まれています。

このオムニチャネルの動きが、ショールーミング(リアル店舗で商品を見て、実際に買い物をするのは価格の低いネットで買う)の動きに対抗するかのように、活発化してきているようです。セブン&アイ・ホールディングスはコンビニから百貨店までグループ全社で取り扱う約300万商品をネットで購入できるように決め、今後100億円を投じて在庫情報を一元化するシステムを構築していきます。イオンでは2013年12月20日以降、店内端末を利用し、店内で取り扱っていない商品を自宅や店頭で受け取ることが出来るサービスを開始。当面は総合スーパー約500店で展開する予定ですが、2016年度までに食品スーパー約1100店とコンビニのミニストップやミニスーパーのまいばすけっとなど約2500店で商品の受け取りを可能にする予定です。ルミネでは2013年9月末、自社ECサイト「アイルミネ」をリニューアルし、スマホサイトを開設して、いつでもどこでも商品を買えるようにしました。また、ショップ販売員によるコーディネート画像も充実させ、一部ショップについては店舗の在庫状況を確認できるようにしました。大丸松坂屋百貨店においては2013年11月中旬、アパレル大手のワールドの23ブランドの商品をいつでも販売できるサービスを開始。自宅や指定した店舗で商品を受け取れ、店舗で試着してから購入することが出来ます。

オムニチャネルにより、リアル店舗をプラットホームにして、様々な販売チャネルのハブとして機能させていき、売上の嵩上げを狙っていく、と言ったところが期待できるということでしょうか。O2Oの動きが活発化する中で、オムニチャネルの動きを含め、今後のリアル店舗にとってネットの活用はより重要な位置づけになってくることが想定できます。

 (参考文献 「週刊ダイヤモンド2013 12/7」  インターネットから「オムニチャネルとは-IT用語辞典バイナリ」)

売場内の顧客誘導

本日は売場内の顧客誘導に関連して記載します。

店舗の売上の構成は“売上高=来店客数×客単価(買上金額)”となります。そのうちの客単価の構成を見ると“客単価=動線長×立寄率×視認率×買上率×買上個数×商品単価”となります。そこから、来店されたお客様にどれだけ多くの商品を買ってもらえるかには、店舗内をどれだけ歩いてもらえるかということがポイントとしてあり、そのためには売場の配置・位置の工夫であったり、店内の見通しを良くしたりということが重要となってきます。また、お客様が店舗内を歩く過程において、個々の売場にどれだけ立寄ってもらえるかということもポイントであり、POPやディスプレイによる情報提供やマグネットポイント(磁石のように顧客を引き付ける売場、商品)の設置や関連陳列(CMD)などの取り組みが必要となってきます。

売場レイアウトを構成するに当たり、顧客を売場内誘導するための経験法則として“ワンウェイ・コントロール”というものがあります。これは店舗レイアウトの工夫によりお客様の歩く距離を増やし、個々の売場に立ち寄ってもらえるようにする手段です。これを実施するに当たり、まず、通路上の顧客の大部分をより奥へ、長く誘導するために物理的に工夫することが必要です。例えば通路の在り方として、“お客様がカートを押したり、かごやお客様自身が自分のバッグを持ったままで、お客様同士が通路内ですれ違えるだけの、幅の広さがあること”“什器が凸凹通路に飛び出したりしていないこと(まっすぐな通路)”“曲がり角が少ないこと”“売場内の平均照度よりも通路上の照度の方が、やや明るいこと”“見通しを良くするために障害物をなくすこと”ということを行っていきます。上記のようなことを実施することにより、来店されたお客様がストレスを感じず快適に店内を回遊しやすくなる、なおかつ、広々とした感じ(豊富な品揃えがあると感じる)を持ってもらえる、という効果が期待できます。上記の他にワンウェイ・コントロールを実施するに当たり、売場の商品の関連で、顧客を次の売場へ誘導するような工夫も行っていきます。例えばマグネットポイントの考え方として、売場には“陳列されている商品が魅力を持っており、それだけでお客様を引き付ける”磁石のようなポイントが必要となってくるのですが、磁石となる売場や磁石となる品目を計画的に配置していくことが重要となってきます。例えば顧客を奥へ誘導するために店舗の壁面に沿って出入り口側の壁面以外を取り囲むように“消費量が多く、消費頻度が高い”商品を配置します。食品なら生鮮食品(野菜・魚・肉)、日配品、家電なら大型家電ではなく小型家電、乾電池、寝具なら布団よりも、毛布、シーツや枕カバーやパジャマ、ネグリジェ、といった具合になります。また通路の突き当りにも磁石となる売場を配置し、通路上の顧客を遠方から奥へ向けて、ぐいぐいと引き寄せていくことも重要となります。ここに配置する商品は、“消費量が多く、消費頻度が高いということを前提とした、急激に売れ筋となりつつある商品、またはトレンド商品、華やかさ・季節感あふれる商品”となります。またエンド陳列(ゴンドラ陳列の両端)も重要となり、主通路を歩いているお客様を副通路に誘導する役割を持っています。ここには“一般に周知されていないPBを一挙に知ってもらうために短期間に特価で商品提供する”“季節商品”“必需品・生活用品ではあっても、低購買頻度商品、あるいは通常の価格帯よりも値段の高いい商品を臨時に短期間クローズアップ”“特価品”“NBでメーカーが一気に知名度を上げたい新製品の特価”などを配置します。食品のゴンドラ線のエンド陳列が非食品でも問題ありません。実際に、全然関連しない商品を陳列するほうが、際立って顧客に注目してもらえるようです。

普段、スーパーで買い物をすると上記のような店舗レイアウトが行われています。そういった観点で買物をすると、また別の買物の面白さが出てくるようにも思われます。

(参考文献 店舗レイアウト)

無印良品のスマホアプリを活用したCRM施策

本日は無印良品のスマホアプリを活用したCRM施策に関して記載します。

以前、良品計画は会員カードを導入しポイントが付与することは実質的な割引となると考えていました。そのため会員カードを導入しておらず、良品計画は本格的なCRM施策に踏み切れずにいました。しかしながら、消費増税に伴い消費意欲の減退が想定される中で、CRMの不在が喫緊の課題となってきました。CRMは、会員カードを通じたデータベースなどを用いて各顧客の詳細な属性情報や購買履歴、問い合わせやクレームの内容などを記録・管理し、問い合わせに速やかに対応したり、その顧客に合った商品を紹介したり、という活動のことを指します。消費増税後を見据え、価格優位性がない無印良品にはCRMの取り組みにより顧客との関係性を強固にすることが必要だと考えられるようになってきたのです。

そして2013年5月15日に良品計画はスマートフォン向けアプリ「MUJI passport」をリリースしました。MUJI passportはアプリ化された会員カードで、アプリ提供開始から約3週間でダウンロード数が35万件を超えたと言います。このアプリを立ち上げると画面の下部にバーコードが表示され、そのバーコードを利用者が店舗で買物をするときに提示し、店員に読み取ってもらうことで、購入金額に応じて「MUJIマイル」が貯まります。

また、アプリを使って利用者が様々な情報を紐付けするとマイルが貯まりやすくなるようにしています。例えばMUJI.netメンバーの情報をアプリに登録すれば、通販サイトで購入した時に取得したマイルと合算できますし、MUJI passportにFacebookやTwitterといったソーシャルメディアのアカウントを登録することによってもマイルが貯まります。また、良品計画が発行するクレジットカード「MUJI Card」のカード番号を登録すれば、優良顧客と判断されて、よりお得なクーポンなどがもらえるようにもなっているそうです。良品計画では、このようにオンラインとオフラインの購買行動、クレジットカード会員情報、ソーシャルメディアアカウントをMUJI passportというプラットホーム上ですべてつなぎ合わせ、顧客の利用動向を一貫して把握するようにしていくようです。

この会員カードをアプリしにて、そこをハブとして様々な情報を結び付けてこうとする発想が面白いと思いますし、わざわざ会員カードを持ち歩かなくてもいいので、利用者にとっても便利なものだと思います。良品計画はこの会員カードアプリを活用し、顧客データを分析することでアンバサダーを発見できる可能性もあると考え、同社の根強い顧客による口コミ効果につなげていくことも考えているようです。アプリの提供開始直後、利用者の購買単価が全体平均の2倍になったという結果も出ているようです。良品計画の会員カードのアプリ化は今後のCRMの方向性の一つとしての試金石であるような気もします。

(参考文献 最新マーケティングの教科書)

100円ショップ「セリア」のPOSシステム活用

本日は100円ショップ「セリア」のPOSシステム活用に関して記載します。

2012年度、100円ショップ大手各社はおおむね増収となっていて、各社が都市部の商業施設に出店しました。首位の大創産業(ザ・ダイソー)は2012年12月にはブラジル・サンパウロ市に現地1号店を出店。積極的な海外展開により業績を底上げしています。100円ショップ2位はセリア。セリアは2008年度にキャンドゥを抜いて2位に躍り出た企業です。同社はデザイン重視の商品を集め、女性に人気となっています。特徴は質の高い品揃えとPOSシステムを利用した効率の高い経営です。

POSシステムとは、光学式自動読取方式のレジスタにより、単品別に販売情報を収集・蓄積し、様々な用途に利用するものです。最大の特徴としては“単品レベルでの管理”が可能になる、つまり、商品ごとに「いつ」「いくらで」「いくつ」売れたかというデータがリアルタイムに把握できることです。

セリアは2004年に100円ショップ業界でいち早くリアルタイムPOSシステムを導入し、売れ筋商品と死に筋商品を把握。売れ筋商品を中心とした品揃えを行うことで、商品の回転を速め、在庫コストを減らし、経営効率を高めました。ザ・ダイソーとセリアでアイテム数を比較すると、ザ・ダイソーが約7万点あるのに対し、セリアは1万9000点と、アイテム数は少なくなっていますが、品揃えの質を高めることにより競争力をつけているのです。

同社が品揃えの基準としていることに「お客さま支持率」というものがあるそうです。これは、店舗ごとに各商品の販売数を1日の客数で割って算出するもので、この数値を持って商品ごとに全店の平均支持率と比較します。そして、低い支持率の商品の取り扱いをやめ、高い支持率の商品の類似商品を即座に増やすということを行っていきます。POSデータを品揃えや売価設定などに活用する際にPI値を見るというものがありますが、まさしくそう言った考え方を基にして、市場の変化に適切に対応し品揃えを変えているということでしょう。

(PI(Purchase Incidence)値とは、ある一定(1000人あたり)の購買客数の中で当該商品を購買する確率を表す指標。自社内の同カテゴリー商品の比較や、自社と他社・全国的なPI値との比較を行うことで、売れ筋分析、商品陳列を行う際の棚割り、今後の商品戦略の策定などに活用します。PI値には「金額PI」と「数量PI」があります。金額PIは『総販売金額/レジ通過客数(レシート枚数)(1000人単位)』で表せ、数量PIは『総販売点数/レジ通過客数(レシート枚数)(1000人単位)』で表せます。)

セリアがPOSデータの活用をしっかり行ったことでキャンドゥを抜けたように、所有している仕組みを有効活用することが店舗の強みにつながるということが言えそうです。

(参考文献 「週刊ダイヤモンド 2013 12/7」「日経MJトレンド情報源2014」TAC中小企業診断士講座)

ビッグデータを活用した各社の対応

本日はビッグデータを活用した各社の対応に関して記載します。

ビッグデータとは、従来は扱うことが難しかった、大量かつ多量なデータのことを指します。大量のデータを分析することで同時に購入される頻度の高い商品を明らかにしたり、一人ひとりの顧客に向く商品を薦められたり、といったことができます。

ローソンは一人ひとり異なるIDを付与したポイントカードを活用して、購買データを収集し、POSデータだけでは分からない個々人の購買行動を分析していると言います。例えば「プレミアムロールケーキ」という売れ筋スイーツよりも「エッグタルトパイ」の方が、同じ人が複数回購入していて、リピート率が高いということがわかりました。更に来店頻度が高い顧客ほど「エッグタルトパイ」を購入する割合が高いことを突き止めたのです。このことからエッグタルトパイを棚に陳列すると、リピート率の高い顧客の来店促進につながることが期待できる、ということが判明しました。

ビッグデータの活用は急速に広がっていて、企業が連携したり、業界の枠を超えて共同したりする例も出てきています。その例としてローソンが展開する「Ponta」やカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)系の「Tカード」などが挙げられますが、運営会社が加盟店での消費者の履歴を収集し、加盟企業の要望に応じてマーケティング分析をしたり、消費者に商品やサービスの推奨をしたりしています。CCCはTカードの利用履歴などから、缶コーヒーの購買者がカー用品店、ガソリンスタンド、レンタカー、駐車場を利用する頻度が高い傾向を発見。データから見て缶コーヒーの購入と「運転免許の所有」に強い相関関係があることを見出したと言います。

ヤフーはアスクルを買収していますが、両社は2012年10月より直販サイト「ロハコ」をスタートさせています。ロハコは主に30~40代の働く女性を対象にしたサイトで、日用品を中心として注文した日にその商品が届くことを売りにしています。ロハコのビッグデータの活用方法としては、商品ページが閲覧されているのに購入に結び付いていないデータを確認したら価格設定の変更を行ったり、検索にかからない商品が出たらそれをリスト化し仕入れに活かしたりしています。顧客の購買履歴からリアルタイムで仕入れや価格の見直しを行っているのです。カルビーの「フルーツグラノーラ」販売の際、価格と購買状況、さらにはリアル店舗の市場価格を踏まえ、段階的に価格を調整したことにより、爆発的に売れる価格を見出すことに成功したと言います。

膨大な情報がSNS等により発信されていますので、このビッグデータの活用は今後一層進んでいくと思われます。

(参考文献 「週刊ダイヤモンド2013 12/7」「最新マーケティングの教科書」)

『WEAR』とショールーミング

本日は『WEAR』とショールーミングに関して記載します。

ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイが10月末から、スマートフォン用アプリWEARの提供を始めました。WEARはユーザーが気になった商品を店頭で見つけた際、スマホでWEARを立ち上げ、値札についているバーコードをスマホで読み取ると、その場で商品情報や様々なコーディネート画像を見ることができます。また、店頭での購入を決断しなかったとしても、閲覧履歴を残しておけば、いつでもどこでもスマホを使ってブランドのECサイトかZOZOTOWNから商品を購入することが出来ます。また、ZOZOTOWNで服を購入した人に、購入完了画面でその商品をWEARに登録するように促される仕組みになっているのですが、登録した商品はすべてWEAR上の仮想クローゼットに収納され、ここから服を選ぶと、その服を使ったコーディネートが表示されるようになっています。消費者サイドから見ると、自分が実際に見て気になっていた商品をいつでもどこでも買えるというメリットや自分がどのように服をコーディネートしようか参考にできるというメリットがあります。スタートトゥデイによるとWEARのサービスを開始した10月末以降、数日でダウンロード数は10万を超えたと言います。

アパレルブランド側のメリットとしては、WEARを使って店頭で様々なコーディネート画像を顧客に見てもらうことが出来るので、購買意欲を高めることができます。また、店頭での購入に至らなくても、あとから顧客が買ってくれる可能性もでてきます。店頭の販売員が個人単位で公式アカウントを持ち、自らもコーディネート画像を投稿することが可能となりますので、販売員のモチベーションが高まることも想定されます。

 上記のようなWEARのメリットがある一方で、商業施設側がその導入を避ける傾向もあるようです。理由としては、商業施設がテナントから得る賃料は、通常、固定額に加えて売上高に応じた歩合となっているため、店舗に来た顧客が店頭で商品を購入せずネットで購入してしまうと賃料収入が減ってしまうことからです。現在、セレクトショップなど約200ブランドが参加したものの、テナントが集まる商業施設で参加表明をしたのはパルコの一部店舗のみ。渋谷や池袋などの4店舗で約半年間(2013年11月8日~2014年4月30日)の実験的な導入となっています。

 商業施設としてはWEARによるショールーミングを懸念しているということです。ショールーミングとは、消費者が小売店の店頭で購入を検討している商品実物を手に取って確認し、そこで商品を購入せずにより安いECサイトを探し出して購入する買物手法のことを言います。アメリカで先行して見られている現象で、家電・AV機器など型番商品を扱う家電量販店などはその影響を受けやすいと言います。日本においてもこの現象は現れていて、インターワイヤードという会社が2013年4月に発表した調査によると、同社モニター回答者約5000人のうち、ショールーミング経験がある人は42.1%にもなるようです。またそのうちスマホ・タブレット利用者に限ると、その割合は50.1%と過半数を超える状況のようです。WEARのように、店頭で商品のバーコードを読み取り、ECサイトの商品価格を見ることで、店舗での価格とECサイトでの価格を比較できるスマホアプリが充実しているようで、今後より一層、ショールーミング化が進むことも想定されます。

WEARの登場は、今の世の中がネットとリアルが融合してきている例の一旦だと思われます。ウェアラブルデバイスが今後社会に普及するでしょうから、ネットとリアルの融合は今後加速していくと思われます。

 (参考文献 「週刊ダイヤモンド2013 12/7」 「最新マーケティングの教科書」)

アンバサダーに関して

本日はアンバサダーに関して記載します。

アンバサダーとはソーシャルメディアなどを使って、商品やブランド、サービスといったものの良さを、その企業や組織に成り代わってアピールしてくれる消費者のことをさします。かつては一般人の情報発信力は小さなものでしたが、ソーシャルメディアの普及に伴って、その状況は変わりつつあります。仮に、企業やブランドのファンが1000人いて、それぞれが100人の友達にブランドなどについての情報を発信したら10万人伝わるという可能性があります。それだけ大きなバイラル効果が期待できるのです。

そして、アンバサダーを組織化し、商品開発や改善のアイデアを募ったり、実売につなげたりする企業が出てきています(一般人による口コミの発信力に期待して、それをマーケティングに活用する手法を「アンバサダープログラム」と呼びます)。現在、アメリカが先行していますが、ネスレ日本をはじめとして、日本においても取り組み事例が増えてきているといいます。

日本ネスレのアンバサダープログラムは「ネスカフェ アンバサダー」という施策で、「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」という家庭用コーヒーマシンをアンバサダーになった人に無償提供し、コーヒーの詰め替え品を同社の通販サイトから定期的に購入してもらうことなどを期待しているものとなります。このネスカフェ アンバサダーへの応募者数は約10万人にも達していて、売上アップにも貢献しています。

ユニクロではUNIQLOOKSというFacebookと連動したファッションコミュニティーとして開始したWebサイトがあります。ユニクロファンにユニクロの服を着た写真を投稿してもらうことで、世界中のユニクロファンを可視化しようと試みたものです。

また、「ドロリッチなう」というものもあります。これは消費者から立ち上がっている特徴的なものだなと感じたのですが、グリコ乳業が販売する「ドロリッチ」のファンであるエンジニアが個人で開発したTwitterと連動したコンピュータプログラムになります。Twitterで「ドロリッチなう」とつぶやいたユーザーに自動的に話しかけるbotです。これにより累計で14万件もの「ドロリッチなう」投稿を生み出すことに貢献したといいます。

「ドロリッチなう」のような商品のファンから立ち上がったものは非常に興味深いものがあります。ファンとともに共創していく時代において、こういった動きは今後、さらに加速していくのかもしれません。

(参考文献 最新マーケティングの教科書)

戦略PR

本日は戦略PRに関して記載します。

戦略PRとは、販売する商品そのものにフォーカスしてPRするのではなく、世の中の時流と商品をつなぐテーマを開発し、そこから話題を喚起し、世論を作り出す「空気づくり」を行い、その盛り上がりを受けて商品の販売に落とし込んでいく手法のことを言います。

戦略PRはこの手法が先行するアメリカにおいて、ビジネス分野はもちろんのこと、オバマ大統領の選挙戦にも使われるほど普及しているといいます。このような手法が使われるようになってきた背景には、「インターネットの普及により情報量が今までの比にならないほど増大し、消費者は毎日のようにマーケティングメッセージを受け取るようになっている」「製品クオリティーや価格をアピールするだけでは購買意欲を刺激することが難しくなっている」「インターネットやソーシャルメディアの普及により情報の入手経路が多数化する中で、友達の口コミに対する信頼度の増加」といったものがあるようです。

あるおむつメーカーは戦略PRを活用し売上を伸ばしたといいます。そのおむつメーカーはブランドの認知度は100%に近くTVCMでブランドを訴求するという戦略をとることにそれほどの効果性があるというわけでもない状態でした。また市場において商品はコモディティ化し厳しい価格競争の只中にありました。そこでメーカーは「赤ちゃんの睡眠」の話題を提起し「快適な睡眠環境を提供するおむつ」の購買に結び付けることに決定。小児睡眠の専門家と協力し「赤ちゃんの睡眠」に関する国際調査を実施します。そして「50%近くが夜10時以降まで起きている」など、日本の赤ちゃんには問題があるというデータを整備し報道発表を行いました。これにより、マスコミの報道、ソーシャルメディアでの口コミにより情報が拡散。「赤ちゃんの睡眠が問題である」という空気が、2か月ほどで醸成されていきました。そのタイミングでメーカーは「あなたの赤ちゃんの睡眠を考えたブランドです」というメッセージで広告と店頭施策を実施し、売上を向上させました。

この戦略PRで重要なことはテーマの設定になります。おむつの例では「赤ちゃんの睡眠」がそれに当たります。このテーマが“商品の便益”“世の中の関心事”“消費者の関心事とメリット”が結び付いていることが必要となります。日本における戦略PRの成功事例では「ハイボール流行の兆し」「生姜ブーム」「夫婦円満には食洗器」といったものがあるようです。

情報過多や商品のコモディティ化などにより、商品そのものに魅力を感じさせることが難しくなっている時代だと思います。そのような中で戦略PRという世の中の世論作りから行って商品の販売に結びつけていく手法が登場してきているということでしょう。商品を販売するということにおいても、新たな時代が来ているのかもしれません。

(参考文献 最新マーケティングの教科書)

LINEとその費用対効果に関して

本日はLINEとその費用対効果に関連して記載します。

LINEは2011年6月のサービス提供開始から、わずか2年で利用者数が2億人を超えるという急成長を遂げています。そしてLINEをマーケティングに活用する企業は延べ100社を超えるまでになっていると言います。LINEを商売に活用する上で基本となる戦法がLINE公式アカウントとスポンサードスタンプという2つのサービスになります。LINE公式アカウントは友だち登録した消費者に対してメールで情報を一斉配信できるサービスで、スポンサードスタンプは企業のキャラクターや商品をイラスト化したスタンプを制作・配信できるものとなります。

LINEを活用して成功する企業が出ていますが、その経費は意外と高いようです。日経デジタルマーケティングがLINE公式アカウントを利用する52社・ブランドに対して、その実態を探るアンケートを実施したところ、調査時の1ヶ月(2013年6月)にかかった配信コストは「250万円以上500万円未満」の企業・ブランドが6つと最も多くなっていました。1ヶ月で1000万円以上を投資している企業・ブランドも2つあったそうです。このようにLINEを活用することは決して安い投資ではないということが言えます。企業としては費用対効果を見ながらLINEの活用を行っていくということが重要になりそうです。

 一方で月額5250円から利用できる中小企業向けマーケティングサービスのLINE@というものがあり、費用対効果を高める観点からこちらを利用する企業もあります。パルコにおいては2012年12月からLINE@の活用をスタートしました。2013年3月時点で友だち数は数百人だったそうですが、同月に良品計画の協力を得て「無印良品」ブランドの商品が全品10%OFFとなるクーポンをLINE@、Facebook、自社のメルマガでそれぞれ配信したところ、来店者数が自社メルマガ(会員数10万人以上)をLINE@が上回る店舗があったそうです。その後、パルコは2013年5月にLINE@を公式アカウントに昇格させ、翌6月に自社キャラクター「パルコアラ」のスタンプを提供し、友だち数を420万人超まで増。2013年夏のバーゲンで来店者限定のLINEスタンプを配布して、対象14店舗で2万3000人の来店につなげるなど、大きな成果を残しています。

ネットを活用するというとイメージとして経費が安く済みそうだという感覚がありますが、LINEの例でみると決してそういうことはなく、しっかりと費用対効果を見ながら活用していくことが必要そうだと言えます。

 (参考文献 最新マーケティングの教科書)