スマイルカーブ

本日は“スマイルカーブ”に関して記載します。

【スマイルカーブとは】

メーカーから消費者までの商品の流れを水の流れに例え、メーカーを上流、中流を問屋、小売業を下流と呼ぶ場合がありますが、このスマイルカーブとは「上流や下流は高い利益率を上げることができるけれど、中流の利益率が低く、上流から下流へ利益率を線で引くと、笑った時の人間の口の形のように両端が少し上がった形の曲線になる」ことを言います。

スマイルカーブは市場が成熟すると、その傾向が強くなります。その理由としては以下のようになります。まず、市場が成熟すると企業間の競争が激しくなり、利益を上げるためには差別化が必要となってきます。上流にある企業は製品で差別化をしやすい立場にあります。そして下流にある企業は、消費者やユーザーに近いところにいるので、ビジネスモデルなどで差別化を図ることが出来ます。しかしながら、中流にある企業ではそのどちらの差別化も難しくなります。

【スマイルカーブの例】

スマイルカーブはいろいろな業界で見られると言いますが、その典型として繊維・アパレル業界があります。上流で世界的ブランドを展開している企業や、東レのように炭素繊維などの素材を提供している企業は高い利益率を上げられます。一方、下流ではユニクロのようなファストファッションに見られるように、消費者の価値を取り込んだビジネスモデルを構築し利益を上げています。

【スマイルカーブ、中流にある問屋の生き残り策】

スマイルカーブ下での市場縮小で、問屋は生き残りをかけて大きく変化していきます。それは業界の再編、大手問屋による地方の中小問屋の吸収、大手問屋間での合併といった変化です。また、問屋の廃業や倒産もありその数を急速に減らしていきます。

合併等による問屋の生き残り策以外に、中流にある問屋が下流の顧客により深く入り込み、高い付加価値を生み出し、利益を上げるという手法があります。アメリカで医薬品や医療機器などの問屋をしているカーディナルヘルスでは社長の“Follow the pill”の指示の下、自分の商品の動きを追うということを実施しました。その中で、ある担当者が医薬品を管理している場所へ行くと、無駄な在庫があったり危険な薬の管理が悪かったりしていることを発見します。それを受けて、同社は薬の容器の提案や医薬品の在庫管理による無駄の削減を提案し、病院の薬品管理の機能を引き受けることとなりました。病院の困っていることの解決策を提案することで、同社は高い利益を上げることに成功したのです。

市場が飽和している時、メーカー・問屋・小売業ともに差別化を図っていくことが重要であるということが言えます。

(参考文献 「流通大変動 現場から見えてくる日本経済」)

総合電機メーカーから見る日本企業と韓国企業の強みの違い

本日は総合電機メーカーから見る日本企業と韓国企業の強みの違いに関して記載します。

【日本企業と韓国企業 経営スタイルの違い】

最近、経営が日本の総合電機メーカーより、マーケティングに力を入れることによって業績を伸ばしたサムスンやLGなどの韓国企業が注目されることがあります。日本企業と韓国企業の大きな違いは経営スタイルにあり、韓国企業は、自社の技術を活かすという観点よりも売れるモノを作ることを重視する「マーケティング指向経営」であるのに対して、日本企業は自社の技術を使って良い製品を創り出す「モノ作り指向経営」となっています。双方、それぞれに別々の経営スタイルを持っていて、それがマネジメントにも影響を与えることとなっているのです。どちらが良い、悪いというわけではなく、活躍の場が異なるということです。

【マーケティング指向】

マーケティング指向経営は、自社に足りない技術があれば企業買収や他社から技術者を引き抜くことによってマーケットで必要とされる商品を開発するスタイルで、液晶テレビやスマートフォン、タブレットPCなどの消費者向けの商品を作るBtoCの領域に向いている経営スタイルとなります。このことは流行り廃りが激しい、短い時間軸で考えなければならない製品が向いているということに繋がります。なお、サムスンの利益の約半分を稼ぎ出している半導体事業は、大規模な投資が必要であるとともに、価格の上下変動と製品サイクルが短いハイリスク・ハイリターンな事業となっています。

【モノ作り指向】

一方でモノ作り指向経営は、研究開発や製品の改良を積み重ねていくことにより結果を出す素材産業や部品産業のように、長い時間軸で考える製品が向いています。このことはマーケティング指向経営がBtoC の領域に向いているのに対して、BtoBの領域に向いているということとなります。一方で冷蔵庫や洗濯機のような改良を積み重ねていく家電製品も得意分野となります。

【韓国の貿易数字で見ると】

早急に結果を出すことを求める韓国企業は、長い時間をかけて改良を重ねる素材や電子部品などの分野は苦手となります。そのため、韓国企業は日本企業から多くの部品を購入していて、サムスンなどの韓国企業の売上が増えれば増えるほど、日本の部品メーカーの売上も増えるという関係にあります。韓国の2010年の貿易数字を見ると、日本への輸出が282億ドル(2兆2,560億円)、日本からの輸入が643億ドル(5兆1,440億円)と対日貿易では3兆円近い赤字となっています。この対日赤字の主な原因は部品素材の輸入によるものと言われます。

経営スタイルの違いは時流に乗れば結果を残せることになるでしょうし、逆であればマイナスの報道として伝えられることとなります。単純に売上数字だけを見ていると見えてこない部分もあるということが言えるような気がします。

(参考文献 ビジネスモデル分析術)

コーヒー戦争

本日はコーヒー戦争に関して記載します。

【コンビニコーヒー、ブレイク】

2013年1月、セブン-イレブンはドリップ式コーヒー「セブンカフェ(Sサイズ100円)」の販売を始めました。この商品は大ヒットとなり2013年12月12日で累計3億杯を販売するに至りました。そしてこの「セブンカフェ」が登場したことにより、競合他社はコーヒー戦略を見直し、その結果コンビニコーヒーの販売数は各社合計で7億杯以上となりました。コンビニ業界2位のローソンは「マチカフェ」というコンセプトを打ち出しました。「マチカフェ」はスターバックスなどを手本としており、本格的なコーヒー関連商品を10種類以上販売するとともに、同業他社がセルフ方式なのに対し「挽きたて、淹れたてコーヒー」を店員が作ります。ローソンはさらに2015年春までに商品を店内で調理し、出来立て、手作り感にこだわった「まちかど厨房」を5000店に広げる計画を立てています。この「まちかど厨房」はカツサンドやハンバーガーなどを店内で調理したり、惣菜の量り売りをしたりしています。ローソンは「まちかど厨房」によりカフェやファストフードから顧客を奪うことを狙っているのです。コンビニ業界3位のファミリーマートも「ファミマカフェ」を展開するとともに、新店ではイートインコーナーを設ける方針で、「すぐに食べられるコンビニ」への転換を進めようとしています。2014年にはコンビニコーヒーは10億杯を突破すると想定されています。

【コンビニコーヒーに浸食される缶コーヒー・チルド系のコーヒー】

セブン-イレブンが「セブンカフェ」で100円コーヒーを展開した時に、最初に影響を受けたのが缶コーヒーとチルド系のコーヒーでした。もともと缶コーヒーとチルド系のコーヒーは店内でカニバリズム(共食い)を起こしていたのですが、そこに「セブンカフェ」が登場し、それらのシェアを奪っていったのです。缶コーヒーの上位銘柄には日本コカ・コーラの「ジョージア」、UCCの「UCCミルク&コーヒー」、サントリーの「BOSS」がありますが、軒並み売上を落としています。そもそも缶コーヒー自体、競合が激しい商品となっており、スーパーやディスカウントストアでは安売りされるため、利幅が取りにくくなっています。コンビニで販売すれば、110円以上で販売できるので利益が取りやすいのですが、そこをコンビニコーヒーに奪われている形となっています。

【コーヒーを取り巻く企業の変化】

コンビニコーヒーの勢いは回転ずしの「くら寿司」や牛丼の「すき家」などにもコーヒーメニューを登場させることとなりました。また、「ミスタードーナツ」は2013年9月にコーヒーの刷新に取り組み逆襲に転じようとしています。

ドトール・日レスホールディングス傘下の「ドトールコーヒー」では、古くなった店舗を「白ドトール」と呼ばれる新店舗に改装。白ドトールは外壁や店内の壁紙を白で統一し、女性が入店しやすい雰囲気作りを行っています。また、ブランド力の落ちる「エクセルシオールカフェ」の見直しも進めるとともに、コメダ珈琲店を参考にフルサービス型の喫茶店「星乃珈琲店」も展開。また、都心部立地の「銀座ルノアール」も2013年にキーコーヒーと資本提携し、郊外型立地「ミヤマ珈琲」で成功を収めています。

コンビニの店舗数の飽和が言われる中、セブンカフェのような商品を販売することにより、その存在感をますます強めているように思われます。今後、国内市場が縮小していく中で、「どこで新規市場を作るか」「どこからパイを奪うか」という考え方が、より重視されていくのかもしれません。

(参考文献 月刊BOSS 2014年3月号臨時増刊号)

エンターテインメント系非物販テナント

本日はSCを特徴化するエンターテインメント系 非物販テナントに関して記載します。

【コト消費に特化した新しいショッピングセンター(SC)イオンモール幕張新都心】

2013年12月20日に「コト消費」に特化したSCイオンモール幕張新都心がグランドオープンしました。年間来街者数目標3500人を目標に掲げ、現在のところ計画通りの推移をしているようです(ちなみに同SCの近くにある東京ディズニーランド並びにシーの来場者数は直近で2750万人なので、その目標数字の大きさが伺えます)。同SCの新しい試みとして、エンターテインメント性にあり、「よしもと幕張イオンモール」、「東映ヒーローワールド」、お仕事体験パーク「カンドゥー」、体験型スポーツモールの売り「ボルダリング」などが施設内にあります。

【非物販テナント シネコン】

エンターテインメントを高める非物販テナントは、SCを特徴化し集客やその特徴化させることとなります。例えばSCのテナントとしてよく見られるシネマコンプレックス(シネコン)においてはスクリーン数でみると、単独の映画館が2013年1148→2012年525とその数を減らしているのに対し、シネコンは1533→2012年2765とその数を増やしています。

【ゲーム業界の攻撃】

また、SCと親和性が高いと言われるゲーム業界においては、2013年に新業態が3施設できました。

ⅠJ-WORLD TOKYO

2013年7月にナムコが運営主体となりサンシャインシティに開業。J-WORLD TOKYOは週刊少年ジャンプとコラボした企画で、「ドラゴンボール」や「ワンピース」といった人気コミックの世界観をテーマにしています。池袋にはアニメイトなどサブカルチャーの店舗が多くあることも踏まえ、コアなカテゴリーに挑戦しています。

Ⅱ東映ヒーローワールド

2013年12月に先ほど記載したイオンモール幕張新都心に東映とナムコの共同事業としてスタート。東映は以前から「仮面ライダー」など、男児向けプログラムを充実させていて、この施設のターゲットも小学生男児が中心となります。モール内に映画館もあることから映画上映との相乗効果も狙っています。J-WORLD TOKYO同様、コアなファンを狙った施設と言えると思います。

ⅢOrbi Yokohamaオービィ横浜

セガが運営主体となって、イギリスのBBCが保有するコンテンツを主題とした、2013年8月にオープンした体験型ミュージアム。横浜湾岸部にオープンした「MARK IS みなとみらい」に立地し、開業1ヶ月間で約10万人の入場者を集めました。コンセプトは「地球上の大自然を体感する」であり、年齢・性別を超えた集客が可能。

近年、若者のゲーム離れがあり、ゲーム業界は苦戦が続いています。2013年3月末のバンダイナムコホールディングスのアミューズメント施設事業の数字を見ると売上高約601億円、前年比で△1.4%、セガサミーグループは売上高約427億円、前年比△4.3%となっています。この業界不況を脱するために3つの新業態がSC内に開業したこととなりますが、これらはSCの差別化・集客強化を図る重要な要素となります。コト消費が言われる中、これらの非物販テナントが今後どれほどの力を発揮できるのか気になるところです。

(参考文献 販売革新2014 2月)

プライベートブランド(PB)の歴史

本日はプライベートブランド(PB)の歴史について記載します。

最近、イオンのトップバリュのCMをよく目にします。PBは少し前まで安いモノというイメージでしたが、このイメージが変わってきているようです。そこで、PBの歴史について以下見てみます。

【PBの誕生】

日本でのPBの歴史は1959年に大丸が「TOROJAN(トロージャン)」というブランドのスーツを売り出したことに始まります。価格は1万3000円。低価格を武器にして勝負をしていくというものではありませんでした。低価格を武器とした商品としては、その翌年にダイエーが「ダイエーみかん」というみかんの缶詰を販売しています。これは缶詰自体にダイエーと入ってないノーブランド製品でした。ダイエーはこの後、1961年にダイエー社史の中で最初のPBとして紹介されているインスタントコーヒーを販売。翌62年に東洋紡と共同で「TOYOBOブルーマウンテンカッターシャツ」、食品分野で中小メーカーと組んで「ダイエー粉末ジュース」「ダイエー・マーガリン」「ダイエー・ラーメン」など販売。65年には日清製粉に依頼し、小麦粉の「ビーナー」を発売しました。こうして日本にPBが登場します。しかしながら、日本は高度成長期にあり、メーカーがモノを作れば飛ぶように売れた時代であったため、メーカー側からすると小売側に価格決定権を渡さなければならないPBを作る必要はありませんでしたし、小売側からしても手間をかけてPBを開発する必要はありませんでした。その様な中でダイエー創業者の中内功だけが、価格は消費者が決めるべきだという信念の下、PB作りを邁進していきます。

【第1次PBブーム】

1973年第4次中東戦争を受け、第1次オイルショックが起こります。これにより74年1年間で日本の消費者物価は23%も上がってしまいました。このインフレにより消費者は生活防衛のため低価格の商品を求めるようになります。そして、そのことが第1次PBブームを巻き起こすこととなります。74年にジャスコ(現イオン)は、日清食品がそれまで100円だったカップヌードルの価格を130円に値上げし、それを一方的に小売側に通告したことに対して抗議し取引を打ち切り、「Jカップ(カップ麺)」というイオン初のPBを88円で販売。80年には西友が無印良品を販売。ダイエー以外の他のチェーンストアもPB販売に踏み切っていきます。またダイエーは更にPBを充実させていき、80年に「セービング」を販売しています。

【第1次PBブームの終焉と第2次PBブームの到来】

第1次PBブームでのPBは価格上昇に対抗して作られたもので、価格訴求が主眼に置かれ品質が二の次になっていました。2度のオイルショックを受けて物価が落ち着くとPBに消費者は目を向けなくなり、バブル経済が始まると第1次PBブームは幕を閉じることとなります。

しかし、バブルが1991年崩壊すると消費者の財布の紐が固くなると同時に、急激な円高が進んでいきます。こうした状況下で円高による輸入価格の下落を利用して、ダイエーは再びPBの販売を強化していきます。また、94年にはイオンのトップバリュー(現トップバリュ)の販売がスタートしました。第2次PBブームは円高から円安に振れ、色あせていきます。

【現在の流れに至る、第3次PBブーム】

2007年頃からサブプライム・ローン問題が表面化し、2008年リーマンショックにより、日本の景気が悪化していきます。この状況下でトップバリュが売上を一気に伸ばします。その勢いは強く、08年は売上が対前年比40%増で3687億円、09年は同20%増で4424億円という結果でした。そこにセブン&アイのセブンプレミアムが加わり、現在の流れになってきています。

低価格が押しであったPBという形から、価値の高いPBという形へと時代とともに変わってきたことが伺えます。今の第3次PBブームは今までのブームと異なり、一過性に終わらず、日本の市場に定着しているという話もあります。PBで様々な価格帯のブランドを立ち上げているということも見られるようになってきています。長い不況を経て日本の小売市場が変化してきていることがPBの歴史を見ても伺うことができます。

(参考文献 月刊BOSS 2014年3月号臨時増刊号)

女性限定マラソン大会「ランガール・ナイト」のプライシングに関して

本日は女性限定マラソン大会「ランガール・ナイト」のプライシングに関して記載します。

「ランガール・ナイト」というお台場で開催される女性限定のマラソン大会があります。これは「ランガール」という一般社団法人が主催している大会で、同法人は自分たちのことを「走る女性ならではの視点・パワーを活かし、生活を浴衣にするアイデアを様々なカタチに変えていく企業集団」とし、先ほど記載したランガール・ナイトの企画・運営やランニングを通じての地域活性化などの活動を行っています。

さて、この女性限定のマラソン大会「ランガール・ナイト」ですが、2011年に開催された時には参加費が8000円に設定されていました。この価格設定は他の競合のマラソン大会の参加費と比較すると高額になります。東京マラソンだと参加費がフルマラソン1万円・10キロコース5000円、距離設定がランガール・ナイトと似通っている三浦国際市民マラソンだと、ハーフマラソン4000円・10キロ3500円・5キロ2500円となっています。2013年に開催された時にはランナーの参加費が6500円でしたので、2011年と比較すると若干安くなっていますが、それでも比較的高めの価格設定となっています。

このように高めの価格設定が行われているのには戦略的な意味合いがあります。

マラソンやランニングの価値構造を考えてみると、まず中核価値として「走ることによって得られる健康維持や体力作り」ということが挙げられます。それに加えてランガール・ナイトは女性の視点にこだわって作られていて、実体価値として「おしゃれに走ること」という価値が加わります。そして付随機能として“レース前のメイクレッスンやエクササイズレッスン”“レース後のパーティーやショー”がありますし、更衣室や託児所も用意されています。参加する女性にとっては高い参加費を払っても参加したいという価値があります。

また、あえて高い価格設定をすることによって、参加者をふるいにかける(フィルタリング)という効果があります。つまり、参加費を高額に設定することで、おしゃれに走る女性でありたいという意識の高い人が参加するよう絞り込みを行うのです。高い参加費を払って参加する人たちは共通の価値観を持っているため、イベント自体が盛り上がるという効果も期待できます。

フィルタリングという手法はよく見られるように思います。消費者側としては製品・サービスの価格が表している意味合いを考えることも重要なのでしょう。

(参考文献 ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)

カラオケの新たなコンセプト

本日はカラオケの新たなコンセプトに関して記載します。

【コアなファンを囲い込む「カラオケの鉄人」】

少し前にカラオケに行った時、アニメ好きの人たちのオフ会が開かれていて、ドリンクバーの前はコスプレした人たちが集まり、隣の部屋からはアニメソングらしき歌がずっと流れてくるという場面に遭遇しました。この時はたまたまなのでしょうけれど、たまに歌の履歴を見てみるとアニソンが連続して入っているということもよくあります。僕もカラオケに行くと金爆やら筋少やら偏って歌っているので気持ちは分かります。

さて、こういった時代背景を受けてか、大手カラオケチェーンとしては後発組である「カラオケの鉄人」では、アニメやボーカロイド、ご当地ヒーローなど多様なジャンルのカラオケ未配信曲を単独配信することで、ニッチな需要に応え、固定客を獲得しています。追加したオリジナル楽曲はこの取り組みを始めてから2年間で15000曲に及ぶといいます。また、楽曲配信しているアニメなどのコンテンツとタイアップし、期間限定でそのコンテンツの世界観で演出した部屋を用意しています。このように「カラオケの鉄人」ではニッチな需要に応えることでコアなファンの囲い込みを図っているわけです。

【価値構造の見直し:歌を歌わないカラオケルーム】

「シダックス」等、カラオケルームを会議室として使用することを提案する企業が現れています。フロントに貸し出し用のホワイトボードを用意し、室内大型モニターへのパソコン接続もできるようにしているそうです。当然のことながら、カラオケルームには防音が施されていますので、外に音が漏れる心配もありませんし、会議に参加する人数に応じて部屋の大きさを選ぶことが出来ます。

カラオケ本来の価値構造を見てみると、“顧客が手に入れる便益(中核価値)=歌を歌う”“製品の特性を構成する要素(実体価値)=個室・防音”“中核価値には直接影響を及ぼさないが、それがあることで製品の魅力が高まる要素(付随機能)=飲食の提供”ということになります。その中で「シダックス」等は実体価値の「個室・防音」に注目し、そこから「会議室として使用する」「プレゼンに使用する」という新たな中核価値が現れたのです。オフィス街隣接立地のカラオケであれば、昼間はアイドルタイムとなりますので、カラオケルームを会議室として使用してもらい、少しでも売上を上げられるようにした方が良いと言うことにもなります。

価値構造を見直すことにより、新たなコンセプトが現れるということです。

シダックスでは会議室という使用方法以外に楽器練習にも使えるとアピールしています。自らの価値を整理し見直すことで新たな価値が見えてくるようです。 (参考文献 「販促会議February 2014」「ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本」)

金沢工業大学のSTP戦略

本日は金沢工業大学のSTP戦略に関して記載します。

【STP戦略】

STP戦略とはコトラー理論の中核的な位置づけのフレームワークでSegmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)のことを言います。このSTP戦略はセグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングの順番で進めていきます。まず、セグメンテーションで市場に点在する顧客の中から自社の顧客となるだろう塊を見つけ出します。そしてセグメントの切り口からターゲットを見つけます。そして最後にポジショニングとして、ターゲットの価値観に基づいて自社を見た時に、どうすれば競合よりも魅力的になるかを考えていきます。

【STP戦略で成功した金沢工業大学】

現在、少子化が進み18歳の人口が減少する一方、大学数は昭和60年460校→平成21年773校と増えてきています。大学経営はターゲットが減り続ける一方で競合相手が増える環境に置かれています。その中で、金沢工業大学は地方都市にある私立大学と、一見厳しい状況に置かれているにも関わらず、朝日新聞社が発行する大学ランキングでは2011年版で、学長からの評価で教育分野が6年連続1位、高校からの評価でも全国16位と、好評価を受けています。また、2008年度の就職率は99.5%で約7割が上場企業、大手企業、公務員に就職しています。

この結果を出すに当たり、金沢工業大学は1995年から、将来の少子化を見越し、地方の工業大学が生き残るために改革を実施します。同校は金沢に立地していますが、全国から入学者を集めています。入学者のターゲットとしては、偏差値50弱で理数系志望の生徒たちとしました。ターゲットとする生徒は、偏差値がそれほど高くない一方、数理系を毛嫌いする生徒ではありません。同校は研究より教育に力を注ぎ、入学してきた生徒を徹底的に教育していきます。それにより生徒たちの学力が伸びていくこととなります。また、地方にあるというデメリットを、遊ぶ場所が少ないため勉強に励めるというメリットと捉えています。こうして学力をつけた生徒たちはモチベーションが高くなっていき、企業側から見て必要な人材に育っていきます。同校のポジショニングは『教育付加価値の高い大学』です。

顧客を絞り込み自社の在り方を明確にすることで、厳しい競合環境に置かれ、その中で不利な状態にあるとしても、勝機があるということが、金沢工業大学の例から伺えます。

(参考文献 ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)

100円ショップ業界から見る5F分析

本日は100円ショップ業界から見る「5つの力(5F)分析」に関して記載します。

【5つの力(5F)分析】

自社を取り巻く環境を構造的に分析する際に使用する手法として、経営学者のポーターは「5F分析」という5つの競争要因に分けて分析する手法を紹介しています。5つの競争要因については以下のようになっていて、それぞれの要因に注目して自社の置かれた環境を考えていきます。

■業界内の競争:同じ業界内の競合企業との力関係と競争の激しさ。

■売り手の交渉力:商品を作る原材料を供給してくれる企業が、どの程度、供給価格に変化をつけてくれるか。

■買い手の交渉力:自社商品を購入してくれる顧客が、どの程度スイッチングの可能性を持っているか。

■新規参入の脅威:現時点では競合関係にない企業が、突如として競争に参入してくる可能性。

■代替品の脅威:自社が提供している商品より魅力的な商品が開発され、代替されてしまう可能性。

【環境変化に伴う100円ショップ業界を5F分析で見る】

100円ショップ業界は2002年ごろの勃興期と2008年ごろの成熟期で、その事業環境が大きく変化しました。その変化を5F分析で見てみると以下のようになります。

2002年ごろ(100円ショップ勃興期)

■業界内の競争:100円ショップのパイオニア「ダイソー」が圧倒的に強いポジションを確保していた。

■売り手の交渉力:ゼロに近い。ダイソーは一気に大量な商品を発注。メーカーはダイソーに仕入れてもらいたくて列をなすような状態。

■買い手の交渉力:ゼロに近い。顧客のほとんどが100円という安さに驚きながら商品を購入していた。

■新規参入の脅威:ダイソーの仕入れ先は中国で、ダイソーが商品を購入しているような中国のメーカーを見つければ、比較的容易に真似できるビジネスモデル。そのため、ダイソーの後を追って新規参入する企業が現れた。

■代替品の脅威:ゼロに近い。世の中全体がいろいろな商品が100円で変えることに驚くばかりだったため。

2008年ごろ(100円ショップ成熟期)

■業界内の競争:過当競争になっている。

■売り手の交渉力:強まる。ダイソー以外の売り先が現れたことと、原油や金属の価格の高止まりで、売り手側が値上げ要請に走る。

■買い手の交渉力:強まる。リーマンショックによる不況で消費者が生活防衛に走る。

■新規参入の脅威:業界内の競争が過当競争のため、新規参入はない。

勃興期から成長期に移り変わる中で、100円ショップ業界を取り囲む「5つの力」のうち、買い手、売り手、業界内の競争の3つの力が高まり、業界全体の収益が圧迫されていくこととなります。

【環境変化を受けた100円ショップ各社の対応】

上記のような環境変化を受けて、100円ショップ各社はそれぞれ対応を取っています。業界トップのダイソーは海外へのシフトチェンジを図っていて、現在28か国に658店舗進出しています。また、業界2位のセリアがデザインや素材にこだわったPBを販売したり、業界4位のワッツは内容量を増やしたPBを販売したり、と各社特徴化を図っています。

日々の業務に追われるだけでなく、5F分析などによって自社の状況を把握し、戦略を変えていくことが生き残る上で重要だと言えそうです。

(参考文献 ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)

PEST分析

本日はPEST分析に関して記載します。

【PEST分析とは】

自社を取り巻く環境分析をマクロ的な視点を持って分析する際に使用されるフレームワークにPEST分析というものがあります。これはPolitical(政治的要因)、Economical(経済的要因)、Social(社会的要因)、Technological(技術的要因)の4つの視点から見ていくものとなります。Politicalは法改正や規制などの政治的な要因となり、例えば飲酒運転の取り締まりと罰則強化により、地方の居酒屋業界がダメージを受けたり、駐車違反の取り締まり強化により、外食産業がダメージを受けたりということが挙げられます。Economicalは業種・業態によって同じ出来事でもプラスに働く場合もマイナスに働く場合もあります。例えば円高になれば輸出産業には海外での販売価格が上昇し不利に働きますが、輸入産業には購買力を高めることができ有利です。Socialは人口動態を見ておくことが必須となります。日本では少子高齢化です。最後にTechnologicalですが、これはPESTの中でも最も短期間かつ劇的な影響を競争環境に及ぼす可能性があります。インターネットの普及・カメラのデジタル化・スマホなどが日常生活の変化に与えた影響を考えると分かりやすいです。

【PEST分析のPoliticalな要因からドラッグストアを見ると】

環境変化はPEST分析によって知ることが出来ますが、最も早くから確実に変化を読めるものがPoliticalとなります。法改正には、まず改正を促すための社会的な変化や事件があり、それを受けて現状の法律についての検討が行われます。その後国会等に諮られた後、法改正が成立しますが、その施行までには一定の猶予が与えられます。

この事例として薬事法の改正によるドラッグストア業界の変遷に見られます。もともとドラッグストア業界が出現した要因は、以前の法改正により、薬の販売を行う際には薬剤師による対面販売が原則だったところ、顧客が自分で選んで買うことが出来るようになった結果、店舗の大型化が進んでいきました。そして2007年に改正され2009年に施行された薬事法の改正法は、今度は大型ドラッグストアにマイナスの影響を与えていきます。以前は大衆薬の販売にも最低1名の薬剤師の常駐が必要とされましたが、ある種の大衆薬の販売に際して薬剤師が不要となったためです。これによりスーパーにドラッグコーナーができるようになったのです。

マツモトキヨシ傘下で都内で約140店舗を展開する中堅ドラッグストア「ぱぱす」は、このような環境変化に対応するため、2011年春以降、集客を狙いとして青果を扱うようになっています。また、青果販売に加えて500円以下の低価格弁当を揃えるなどの食品販売を強化しました。弁当導入によりぱぱすの築地店では購入客数や売上高が2割増えたと言います。戦略としては「ロスリーダープライシング」と言われる、商品単品では赤字を出しても、他の高収益商品を併売させることによって収益を出すという価格戦略を採ったわけです(ドラッグストアの平均粗利率は35%。この高い粗利率を基に食品や日用品の特売を行い集客につなげる)。このような形でぱぱすは、薬事法の改正に伴うスーパーとの競合に対応したのです。

PEST分析は状況を近視眼的に自社の状況を見るのを避けるのに便利な手法と言えます。

(参考文献 ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)