プロセス・イノベーション

本日はプロセス・イノベーションに関して記載します。

【プロセス・イノベーション】

プロセス・イノベーションとは、企業が製品やサービスを生産していく活動や業務に関わるもので、従来通りのやり方から劇的な変革を行い、業界の標準よりも優れた方法を確立し、他に類を見ない高効率やコスト優位を実現していくことです。例えば、トヨタが無駄や過剰を減らして、会社のあらゆる部署での効率向上と製品・プロセスの継続的な改善を推し進めたような手法はこの事例となります。プロセス・イノベーションにはトヨタが実施したようなシステムのあらゆる部分から無駄とコストをそぎ落とす“リーン生産方式”、共通の手順を使うことでコストと複雑さを抑える“プロセスの標準化”、過去の実績データをモデル化して未来を予測する“予測分析”などがあります。

【ZARAのプロセス・イノベーション】

ZARAはデザインや生産、ロジスティックス、配送を統合した生産システムを使用することにより、注文を受けてから商品の配送にかかるまでの時間を短縮しています。同社はターゲットとする「流行を先取りする顧客」と接点を持ちやすくするために主要ショッピング地区の高級店街に店を配置していて、そこから入ってくる顧客の願望や要望といった情報が、同社の200人のクリエイティブ・チームに伝えられていきます。それにより、クリエイティブ・チームが生産面の課題をすぐさま検討することができ、ファッション・トレンドの変化に素早く対応することが出来るようになっています。またサプライヤーや配送業者は、効率を高めるために世界各地に適切に配置されるように選定され、社内ロジスティック・システムは配送センターで注文を受けてから商品が実際に店舗に届けられるまでの時間をできるだけ短くするように構築されています。

【IKEAのプロセス・イノベーションの事例】

IKEAはフラットパック家具を開発して、国や地域による修正を行うことなく、どこに行っても全く同じハードウエアと取扱説明書で商品を販売しています。このことにより、同社は社内生産プロセスの合理化を図ることができています。

プロセス・イノベーションには企業のコア・コンピテンシー(核となる競争力)を形作ることが多く、理想的に展開すれば競合他社が真似できないものとなると言います。模倣されないということは企業の優位性を高めますので、このプロセス・イノベーションが実施できるということは成長するための一つ手法と言えます。

(参考文献 ビジネスモデル・イノベーション ブレークスルーを起こすフレームワーク10)

ホールフーズ・マーケットの組織構造イノベーション

本日はホールフーズ・マーケットの組織構造イノベーションに関して記載します。

【ホールフーズ・マーケット】

ホールフーズ・マーケットは1980年に設立されたアメリカにある比較的高級志向な食料品スーパーマーケットで、2012年現在、アメリカ、カナダ、イギリスに310店舗を超える店舗を持ち65,000人強の従業員を擁するまで成長した企業です。同社の発表によると2011年の売上高は100億ドルを超えているといいます。同社は、人材や資産を独自の形で編成することで価値を生み出す“組織構造イノベーション”を実施し成長してきました。

【ホールフーズ・マーケットの組織構造イノベーション】

ホールフーズ・マーケットでは徹底的な経営管理の分権化を行っています。各店舗がチームを構成し自律的に各部門を管理。どの商品を仕入れるか、その商品をどのようにディスプレイするかなどもチームが決定しています。同社は組織の力を発揮するために、チームプレイを重視しているのです。採用についても誰をチームに採用するかはチームで決めており、チームに入るためには現行メンバーの2/3以上の賛成が必要となります。各店舗は損益計算書で独立した事業部門として評価され、店舗内の各チームを明確な成果目標を持っています。

またチーム間・チーム内での情報も密なものとなっています。商品の売上・利益率などの詳細な情報が店舗の垣根を超えて共有され、その情報が共有されているレベルは、一時期、同社の従業員が全員証券取引委員会にインサイダーに分類されていたほどでした。この情報の共有化により、チームが会社全体でうまくいっていることを把握するとともに、チーム間が切磋琢磨することに繋がり、同社の成長を支えるエンジンとなっているのです。

【組織構造イノベーションの他の事例】

ホールフーズ・マーケットのように企業の人材や組織を独自の形で編成し価値を生み出している事例は他にも多々あります。その取り組みとしては報奨制度を構築したり、営業コストや複雑さを縮小するために資産を標準化したり、高度な訓練を継続的に提供するための企業内大学を創設したりといったものがあります。この組織構造イノベーションは競合他社が模倣することが困難となることから、自社の長期的な成長を支えてくれるものとなります。ホールフーズ・マーケット以外では以下のような事例があります。

■W・L・ゴア:フラットな格子型組織モデルを構築。社内のチームは意図的に小さくされていて、活動は命令ではなくコミットメントによって管理される。

■ファビンディア:インドの織物・衣料・家庭用品小売り企業。美術品や工芸品を供給している現地の職人たちが所有、経営している。

■ゼネラル・エレクトリック(GE):GE幹部向けの社内ビジネススクールを立ち上げた。

組織構造イノベーションを実施することにより、企業が独自の進化を遂げることとなります。他社から成功モデルが模倣されにくいということは自社の競争力を高めることに繋がりますので、重要なことと言えます。

(参考文献 ビジネスモデル・イノベーション ブレークスルーを起こすフレームワーク10)

ターゲットのネットワーク・イノベーション

本日はターゲットのネットワーク・イノベーションに関して記載します。

【アメリカのディスカウント百貨店チェーン「ターゲット」】

ターゲットは「ファッション界の最良をディスカウント界の最良と合体させる」ことを意図した「高品質の商品をディスカウント価格で提供する良心的な店」として、地方百貨店のデイトン社の新しいディスカウント小売戦略の一環として1962年に1号店をオープンさせました。そしてターゲットを運営するターゲット・コーポレーションは、今ではアメリカの売上高第5位の小売業となっています。同社は社外の人や組織とつながることにより実績を上げてきたのです。

【ターゲット 他社とのつながりによる価値の創出】

ターゲットはアメリカのポストモダン建築を代表する建築家マイケル・グレイブスと1999年に提携し、グレイブスがデザインし、ターゲットが独占販売するキッチン用品のラインを生み出しました。それ以後、75人以上のプロダクト・デザイナーや10人以上の世界的に有名なファッション・デザイナーと提携し、同社でしか買えない商品を開発していきます。アイザック・ミズラヒ(数多くの賞を受賞している実力派デザイナー)との5年間の協働は1年あたりで3億円の利益を生み出したと言います。

また、同社はイギリスの百貨店リバティオブロンドンを始めとした小売業者と提携したり、短期間しか営業しない期間限定の店舗を出店したりしています。そして、婦人用バッグがメインのブランド、アニヤ・ハインドマーチがデザインしたハンドバッグの販売も行ったのですが、なんとオンラインで2分足らずで売り切れるという結果を残したと言います。

このような戦略を採ることで、同社は消費者の口コミと関心を高め売上の嵩上げを図ってきました。

【ネットワーク・イノベーション 他社との協働による価値の創出】

自社が単独で事業を行うのではなく他社との協働を行うことにより、自社の強みを活かしながら他社の“生産工程”“製品・サービス”“チャネル”“ブランド”といった能力や資産を利用できるようになります。また、自社が新しい製品・サービスや事業を開発する際のリスクを他社と分かち合うことにもなります。まさしくターゲットは協働を行うことにより上記のようなメリットを活用し実績を上げてきたということが言えます。

ネットワーク・イノベーションは他企業でも行われています。例えば東芝とUPSは、東芝製パソコンを配送センターでUPSが修理するように契約を結んだことにより、“東芝が修理時間の短縮”“UPSが新しい利益の獲得”という双方にメリットのある結果を生み出しました。また、ブラジルの化粧品会社ナトゥーラは世界各地の25の大学との高度な人的ネットワークを構築することで、社内の開発能力を超える成果を上げていると言います。

このようにネットワーク・イノベーションを起こすことは、企業が大きなメリットを得る結果につながるのです。

ジョイントベンチャーという言葉を聞きますが、これなども双方の強みが活かせれば単独では不可能であっただろう利益を生み出すことができます。一方で、双方の強みが活かせなかった場合はそれほど大きな利益の創出にはつながらないと思います。ネットワーク・イノベーションは協働する相手とのベクトルを合わせるということが重要にも思われます。

(参考文献 ビジネスモデル・イノベーション ブレークスルーを起こすフレームワーク10)

法人税引き下げとタックスヘイブン

本日は法人税引き下げとタックスヘイブンに関して記載します。

【アベノミクスの重要政策 法人税引き下げ】

2014年1月のダボス会議にて安倍首相が強い意欲を見せた法人税引き下げの議論が始まっているようです。マクロを中心とした経済財政を議論する経済財政諮問会議と企業に根差したミクロを議論する産業競争力会議との合同会議も行われました。政府税制調査会内の専門部会において座長の大田弘子元経済財政政策担当相が「法人税の税率引き下げが必要である」と明記した論点案を提出しています。

今回の法人税引き下げの論点は、現在35%程度の法人実効税率をアジア近隣諸国並みの25%程度まで引き下げるかどうか、ということです(日本の法人税は諸外国と比べて高い)。法人税を10%引き下げれば5兆円の税収が消えることになりますが、一方で減税を行えばGDPの拡大が見込めるとも思います。(数式で言うと△Y=-c/(1-c)×△Tです。税金(T)を変化させると-c/(1-c)(租税乗数)分だけGDP(Y)は変化します。減税の効果が何倍ものGDPの増加につながっていきます。)海外投資家からも注目されていますので、この法人税引き下げができるか否かは株価にも影響してくると思われます。

法人税引き下げによる課題として減税による減収ということ以外の課題として、中小企業を中心に74%の法人が赤字で法人税を払っていないということもあります(2011年度)。日本において法人税を払っていない企業は多いようで、外国と比較すると、アメリカ54%(2009年度)、イギリス50%(2010年度)、ドイツ34%(2007年度)、韓国32%(2011年度)となっています。欠損金の繰り越し控除の仕組みや租税特別措置などの見直し、課税ベースを広げることが検討されています。

法人税引き下げを実施するにあたっては簡単な道のりではなくハードルがあるわけです。

【タックスヘイブン 資本流入を目的とした国家戦略】

法人税引き下げと関連する議論にタックスヘイブンがあります。タックスヘイブンとは、外国の企業や富裕層の資本流入を目的に、税金を無税または極端に低くしている国や地域のことを言います。タックスヘイブンが行われている国は、カリブ海周辺で“コスタリカ”“パナマ”“ドミニカ”“ケイマン諸島”など、アジアでは“マカオ”“香港”“シンガポール”、中東の“バーレーン”“レバノン”“ヨルダン”、ヨーロッパでは“スイス”“ルクセンブルク”“モナコ”“サンマリノ”“リヒテンシュタイン”などが挙げられます。タックスヘイブンによりF1グランプリで有名なモナコでは大富豪が移住したり別荘を持ったりして、世界有数の富豪国家に生まれ変わることに成功しています。モナコの事例ようにタックスヘイブンを行うことにはメリットがありますので、国際的に企業の投資を呼び込むために小国を中心に法人税率の引き下げ競争が起きているのです。このことは日本の法人税引き下げの話と無関係ではない話だと思います。

多くの海外投資家がアベノミクスの成果に注目しています。消費増税により景気は悪化しますが、その後回復していくかどうかは、アベノミクスの成長戦略がどういう成果を出せるかということが重要なポイントの一つです。法人税引き下げの議論は注視です。

(参考文献 週刊東洋経済3/29)

利益モデルのイノベーション

本日は利益モデルのイノベーションに関して記載します。

【「カミソリと替え刃」の利益モデル】

最近のカミソリは昔と比べて、製品として随分改良が加えられているようです。前に使っていたカミソリが古くなったので、新しい物を買いに行きました。前は2枚刃くらいが普通かと思っていたのですが、売場には5枚刃且つ電池でカミソリの刃の部分が振動する商品なども置いてあり、カミソリが製品として進化を遂げているように感じました。

上記のように今日のカミソリは企業間で競い合う中で製品自体進化しているのですが、過去にはこの業界は「カミソリと替え刃」という長年にわたって称賛され続けている有名な利益モデルを生み出しています。この利益モデルはジレットが始めた仕組みで、システムの耐久性のある部分(カミソリの本体)を低価格で販売することで固定された顧客基盤をつくり、それから使い捨ての部分(替え刃)をプレミアム価格で販売して反復的な収益を得る、というものです。「カミソリと替え刃」の利益モデルはプリンターとカートリッジからコーヒーメーカーとカプセルコーヒーまで、他の産業にまで応用されています。

【利益モデルのイノベーションの事例】

「カミソリと替え刃」のように、それまでに気づかれていなかった新たな価値を斬新な方法でお金に換えることによって、利益を生み出している企業があります。

■ネクスト・レストラン

シカゴにあるレストラン「ネクスト」。このレストランでは顧客に前売り券を買ってもらっています。これによりネクストは予約客が来店しないリスクを押さえています。また、顧客がいつ来店するかによって前売り券の価格を決めています。ディナーで込み合う時間帯ではその価格は高く設定し、逆にアイドルタイムではその価格を低くしています。

■シブステッド・メディア・グループ

ノルウェーのオンライン広告会社「FINNno」は、ユーザーが投稿する広告を無料で掲載しています。その一方で希望に応じた掲載については料金をとっています。顧客は料金を支払うことによって、例えばシブステッド・メディア・グループ内の他の新聞に掲載したりすることが出来ます。

■ヒルティ

「ヒルティ」は建設業者向けの電動工具をコア・ビジネスとしている企業ですが、故障による予定外の作業中断や盗難など、工具を所有することによる隠れたコストから建設業者を守るためのプログラムを作りました。毎月一定額の料金を払っていれば、必要に応じて代わりの工具を貸し出したり、アップグレードのオファーをしたり、必要な修理の費用を負担したりします。このプログラムによりヒルティには反復的な収入が入ってくることとなりました。

従来から当たり前のように使われている利益モデルを見直すことにより新たな利益を生み出すことができます。当たり前と思っている集金・課金モデルを見直すことも重要なようです。

(参考文献 ビジネスモデル・イノベーション ブレークスルーを起こすフレームワーク10)

ダイエーの没落

本日はダイエーの没落に関して記載します。

【ダイエーの発展】

高度経済成長の中で人々が地方から大都市へ集まってくるのとともに、ダイエーは成長を果たしていきます。ダイエーのビジネスモデルの基本は『不動産の購入による成長』というものでした。そのビジネスモデルの流れとしては、住宅が増えていく地域に借金をして不動産を購入して店を建てる→その地域に人々が集まり、店舗に多くの顧客が集客でき、不動産の価値が上がる→価値の上がった不動産を担保に金融機関から更に借り入れをする→集めた資金を元手に新たな不動産へ再投資する、といったものでした。

ダイエーの不動産ビジネスは1980年代後半のバブルのころに、さらに加速。積極的な企業買収を行うようになります。銀座のリッカービル、リクルート、ハワイ最大のアラモアナショッピングセンターなどを次々に買収。同社の負債は増えていきますが、それ以上のスピードで同社の資産額は増え、小売業としての売上も拡大していきました。

【イトーヨーカ堂とダイエー ビジネスモデルの違いによる成長スピードの違い】

ダイエーの不動産を購入することにより売上を拡大していくビジネスモデルの成長スピードの速さは、イトーヨーカ堂と比較するとその速さがわかります。イトーヨーカ堂の創業は1958年。それに対しダイエーは、その前進である大栄薬品工業を1957年に設立しています。両社の創業した時期はそれほど変わりません。ところが、ダイエーが三越百貨店を抜いて日本一の売上規模になった1972年、イトーヨーカ堂はトップ10にも入っていませんでした。不動産の価値上昇を織り込んだ成長戦略は、当時の時代背景からいうと、それだけ競合から優位に立てる戦略だったと言えそうです。

【ダイエーの没落】

ところが、バブルが崩壊し資産価値の暴落が始まると、ダイエーの強さを支えてきた不動産購入による成長戦略が裏目に出ることとなります。巨額の負債を抱え続ける一方で、同社が保有する資産価値は急速に縮小していきます。こうした中で、銀行もダイエーに融資を続けることが困難となってきます。この状況に対して、ダイエーはアラモアナショッピングセンターやリクルートなどの資産を売却し借金返済をしていくこととなりますが、結局、産業活力再生特別措置法の下で事業再生するまでに追い詰められてしまいます。そして今ではイオングループの傘下となっています。それまで強みであった戦略が経済・社会環境の変化で一転して足かせとなってしまったのです。

バブル崩壊によりダイエーだけでなく、マイカル、そごう、長崎屋などの企業が凋落していくこととなりました。一気に成長路線に入るときには、何らかの手法によって資金を集め、投資に回すことが必要です。ダイエーの戦略はその点では正しかったようにも思われます。ただ、経済・社会の変化の先を読み間違えたために、そのような事態に陥ったのでしょう。バブル崩壊に伴う多くの企業の凋落は、経済・社会環境を理解し、出来うる限り先を読めるようにしておくことの必要性を表しているようにも感じられます。

(参考文献 「流通大変動 現場から見えてくる日本経済」)

道ナカ

本日は道ナカに関して記載します。

だいぶ前に中央道を利用した際に談合坂SAによったのですが、広々としてきれいなSAでした。どうも2011年に都心からの旅の入り口をコンセプトに再開発されたようです。長時間の車の運転で疲れている時にきれいな場所で休憩ができるのはいいものです。

さて、近年、高速道路のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)が鉄道の駅ナカと同様、流動的に人々が集まる立地場所として注目を集めていて、談合坂SAのように商業施設が再開発されています。

SAやPAが開発されるようになったきっかけは道路公団の民営化でした。2005年10月に道路公団は「東日本高速道路(NEXCO東日本)」「中日本高速道路(NEXCO中日本)」「西日本高速道路(NEXCO西日本)」の3社に分割されたのですが、その際に各社ともに経営効率が至上命題となり、SAとPAの再開発がなされるようになりました。

道ナカ開発が本格化したのは2008年、NEXCO東日本の100%子会社「ネクセリア東日本」が幕張PAをリニューアルして開設した「Passr幕張」からで、それを皮切りに次々と他の高速道路会社も開発を進めていきました。例えば、NEXCO中日本が東名高速道の海老名SAに開発したEXPASA(エクスパーサ)は全国最大級の道ナカ商業施設で、人気セレクトショップ「ユナイテッドアローズ」や高級スーパー「成城石井」など28店舗が入居しています。また、関越自動車道の南仏プロバァンスの雰囲気を演出した「寄居・星の王子さまPA」や東北自動車道の鬼平犯科帳をテーマとした「羽生・江戸村PA」のようにテーマパーク化された商業施設まで登場しています。羽生のPAでは従業員の「しぐさ」や「言葉づかい」も時代考証を踏まえた江戸様式を採用しているとのことです。

高速道路のSAやPAの商業施設が大型化する背景には一般道からの利用が可能になっているということもあるようです。小売業や外食業の側も道ナカの集客力を積極的に活用しようという動きも広がってきています。

今後も新たな商業施設として開発が続いていくのかもしれません。

(参考文献 立地ウォーズ)

イノベーションのジレンマ“シアーズ”と“ウォルマート”

本日はイノベーションのジレンマ“シアーズ”と“ウォルマート”に関して記載します。

【世界最大の小売業だったシアーズと世界最大の小売業ウォルマート】

シアーズは過去、様々な分野で小売業の技術革新を行い、アメリカ最大(=世界最大)の小売業として君臨していました。同社はもともと通販ビジネスで成長した企業でした。その勢いは、19世紀、アメリカでどの家に行っても、聖書と同社のカタログがあったと言われているほどです。ところが1920年代にアメリカで自動車が普及し始めると、注文した商品が届くのを待つより、自動車で小売店に行って商品を購入することを好む消費者が増えていきました。この環境変化に対しシアーズはGMSと呼ばれるビジネスモデルを構築。大きな駐車場を完備した大型店舗に衣料品から雑貨まで様々な商品を置き、消費者がワンストップショッピングできるようにしました。この際のシアーズの店舗は日本型GMSであるイオンやイトーヨーカ堂とは異なり食料品の取り扱いは行っていませんでしたが、代わりに自動車保険や自動車修理を扱っていました。また同社はPBの取り組みを行ったり、シアーズカードを展開し、シアーズの店でのみ様々な付帯サービスを提供したりと、今では当たり前のようにある小売業の仕組みを生み出していったのです。まさしく当時のシアーズはイノベーションの先端を走る企業だったのです。

しかしながら、このシアーズはEDLP(エブリデイ・ロープライス:いつでも低価格で商品を提供)を掲げるウォルマートに売上世界第一位の小売業の座を奪われることになります。これは技術革新や社会の変化により、シアーズが作り出してきた様々なイノベーションが、同社以外にも簡単に利用できるようになってきたということが、要因として挙げられます。他のクレジットカードのサービスは充実し、商品の幅が広がったことによりシアーズだけではワンストップショッピングが成り立たなくなり、同社の開発するPBも様々な商品が流通することでその価値が相対的に低くなってしまったのです。そして、シアーズが開拓したサービスを踏まえて、より魅力的な価格と品揃えだけに集中したウォルマートのような店がより多くの消費者を引き付けるようになっていったのです。

【イノベーションのジレンマ】

シアーズが後発であるウォルマートに抜き去られたような事例は、イノベーションのジレンマという考え方に当てはまります。イノベーションのジレンマとは、業界トップになった企業が顧客の意見に耳を傾けて、今まで以上に高品質な製品・サービスを提供していくことが、かえってイノベーションを立ち遅らせ、結果として失敗を招くという考え方です。優良企業にとって、規模の大きい既存事業の前に現れる新興の事業や技術は魅力なく見えるとともに、既存事業とのカニバリズム(共食い)を起こす危険があるため、新興市場への参入が遅れる傾向にあるのです。

企業が継続的に成長していくためには、ライフサイクルの成熟期に入ったタイミングで破壊的イノベーション(従来製品の価値を破壊するかもしれない全く新しい価値を生み出すイノベーション)を起こしていくことが必要となってくるわけですが、成熟期に入ったタイミングでそれが起こせるかどうかは、非常に難しい経営判断となるのかもしれません。

(参考文献 「流通大変動 現場から見えてくる日本経済」)

チャネルリーダー

本日はチャネルリーダーに関して記載します。

【高い利益の確保に直結するチャネルリーダーのポジション】

流通経路の中で主導的な役割を果たし、商品や情報の流通をコントロールするものを“チャネルリーダー”と言いますが、このチャネルリーダーのポジションを確保できるかできないかは、企業が高い利益を出せるかどうかの重要なポイントとなってきます。

例えば、スティーブ・ジョブズが存命中のアップルは高い利益と株価を上げていましたが、その理由はアップルがチャネルリーダーだったためと言います。同社は製品の価格決定権を握っていましたし、同社と取引するために多くの企業は競い合っていました。同社は販売力のある製品を背景に、通信会社に対して有利な条件で契約を結ぼうと交渉を進めることができました。それと合わせ、世界各地のメーカーが作った部品を徹底的に比較し、より低コストで作られた部品を調達するということが行えたのです。

このようにチャネルリーダーのポジションを確保することは、企業が優位な立場に立つために重要であるということが言えます。

【チャネルリーダーのポジションの変遷の中で】

戦後日本では多くの商品でチャネルリーダーのポジションはメーカーが握っていました。しかし、近年、大量仕入・大量販売を広域に展開する小売業の方へチャネルリーダーはシフトしつつあります。こうした中で、メーカーが採るべき道は2つあると言います。一つはアップルのように同業他社に真似のできないような圧倒的に優れた製品を生産するということです。そしてもう一つが、影響力のある大きな小売業に対抗できるようなチャネル戦略を模索し、チャネルリーダーのポジションを維持するという方法です。

資生堂は二つ目に記載した方法を採ってチャネルリーダーのポジションを維持しようとしています。同社は自らの商品を販売するチャネルをいくつかに分け、それぞれのチャネルで違った商品と販売方法を選択しています。デパートでは資生堂自らが出店して高価格高サービスを維持。大型量販店では広告などを積極的に使ってブランドの認知度を高めて大きな市場を確保しつつ、価格については値引き販売も覚悟した販売戦略を実施。そして、全国に広がる資生堂の系列店には特徴のある独自の商品を投入し、地域の専門店ならではの接客によって顧客を確保します。このような戦略を採ることによって資生堂はチャネルリーダーのポジションを維持しようとしているのです。

日本において、チャネルリーダーは戦前までは卸売業が握っていたそうです。時代の変遷・社会の変化に伴ってチャネルリーダーのポジションに立つ企業は変わっていきます。時流を読み取り成長を続け、そのポジションに立てるようにしていくことが重要だと言えそうです。

(参考文献 「流通大変動 現場から見えてくる日本経済」)

六次産業とバリューチェーン

本日は六次産業とバリューチェーンに関して記載します。

【六次産業とは】

日本の農業を活性化していく手法として六次産業化という方法が注目を集めていると言います。農業は第一次産業に当たりますが、それに製造業である第二次産業、流通サービスである第三次産業の要素を加えていこうということが六次産業化の考え方となります。この六次産業という名称は、第一次産業、第二次産業、第三次産業の1、2、3をそれぞれ足して6になることをもじった造語、もしくは1×2×3=6とそれぞれが有機的に結びついているという足し算以上の効果が期待できるという掛け算であるという意味合いもあるようです。

この六次産業の事例として、以下のようなものがあります。

■農業のブランド化:(例)古くから飼育されていた「シャモ」をブランド化する

■消費者への直接販売:(例)自家生産の米からどぶろくを製造・販売

■レストラン経営:(例)トマト産地でファームカフェをオープン

【農業:分業体制から一連の流れへ】

従来の農業は、農業は農作業をするだけで、流通はJAや青果市場が独占し、下流は外食産業、スーパー、食品工場で行っていました。上流の農業は農業に特化し、流通や小売に口を出すようなことはしないという分業が行われていたのです。ところが、市場が成熟する中で、従来型の分業では高い価値を生み出すことが難しくなってきたのです。そこで、上流から下流まで一連の流れとするビジネスモデルが登場することとなったのです。例えば、大都市のスーパーや生協などに直接販売をするということを行っている場合、単純に販売チャネルを変えるということではなく、生産方法を改良し、生産の変動を調整するための仕組みを考案するという様々な試みに繋がっていると言います。その結果、旧来の農業に比べて高い収益を上げることができるのです。

上記のような農業の動きは、原材料の生産から製品・サービスを顧客に届けるまでの一連の活動を“価値のつながり〈バリューチェーン〉”として捉え、取り組みを進めているということが言えると思います。

【バリューチェーンとは】

バリューチェーンは主要活動と支援活動に大きく分かれ、主要活動は購買/物流、製造、出荷/物流、販売・マーケティング、アフターサービスなどの連続したプロセスから成り立ちます。企業はプロセスごとに価値を付け加えていきます。この主要活動をバックアップするのが支援活動で、購買活動、技術開発、人事労務管理、全般管理などがあります。

このバリューチェーンという企業活動一連の流れのプロセスをみていくことで“自らの強み・弱みを把握する”“コスト構造を把握する”ということを行い、収益率を上げていくということにつなげていくわけです。

まさしく六次産業化は今までバラバラだったバリューチェーンを一つの流れとして見ることで、より高い利益を上げられるようにしようとしているということが伺えます。バリューチェーンを分析し強み/弱み・コスト構造を把握することは自社が成長していく上で大切なことだと思われます。

(参考文献 「流通大変動 現場から見えてくる日本経済」「ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本」)