ナイキタウンのチャネル・イノベーション

本日はナイキタウンのチャネル・イノベーションに関して記載します。

【チャネル拡大の役割を担う旗艦店“ナイキタウン”】

スニーカーやスポーツウェアなどスポーツ関連商品を扱う世界的企業であるナイキは、ナイキタウンという店舗を運営しています。このナイキタウンは1990年11月にスタートしたのですが、熱狂的な人気を誇っているそうです。ナイキタウンは消費者が一般的な靴屋を超えた店舗だと思ってもらうように作られていて、例えばニューヨークにあるナイキタウンでは店内のあちらこちらに有名選手のサインや写真が飾られ、スポーツのテーマパークのような作りになっているそうです。また、ニューヨークに限らず、たいていの店舗ではルームランナーが置かれていて、来店者がそこでシューズの性能を試すことが出来るようになっていると言います。従業員についても変わった採用方法を採っていて、運動能力を基準にしています。実際、シカゴ店ではバスケットボールの元プロ選手が採用されたこともあるようです。建物自体については、ニューヨーク、ロンドン、シカゴ、北京など世界で最も地価の高い商業地区に作られていて、設計と建設に何百万ドルもかかったそうで、投資額も大きく贅沢な作りになっています。

ナイキタウンは上記のような巨額の投資を行っているため、シューズの販売額では投資額を回収することが難しくなっていて、実際、ナイキタウンのコストは宣伝費が当てられています。このような状況であってもナイキタウンが運営を続けていられる理由は、経営陣がナイキタウンという旗艦店を設けることによって、どんな宣伝キャンペーンにも劣らないくらい自社のブランドイメージの向上に貢献してくれるはずだと判断しているためです。またナイキタウンでは、閉店した後に大手アパレルメーカーのバイヤーを招待して、一流スポーツ選手やデザイナーと懇談してもらうということをしています。このような取り組みを行うことで、他の小売業者にナイキのシューズや用具をより効果的に売り込むにはどうしたら良いかを教えているのです。

ナイキはナイキタウン以外に、消費者がナイキのデザイナーと協力してシューズをカスタマイズできるナイキ・スポーツウエアの小売店を出店しており、チャネルを押し広げる取り組みを進めています。

【ナイキタウンから見る、チャネル・イノベーション】

自社の製品やサービスをどのようにして顧客に届けるかを考えるにあたって、昨今注目を集めるeコマース以外にも、ナイキタウンのような旗艦店を開設し、リアル店舗という従来型のチャネルを活用していくことも重要であると言えます。自社の製品やサービスを顧客に届けるために、一つのチャネルだけでなく複数のチャネルが補完し合うような方法を採っていくこと(チャネル・イノベーション)が重要となってくるということです。

(参考文献 ビジネスモデル・イノベーション ブレークスルーを起こすフレームワーク10)

tabのO2Oサービス

本日はtabのO2Oサービスに関して記載します。

【多くの企業が注目するO2Oサービス“tab”】

ファッション性の強い商業施設から注目されているO2Oサービスに、頓智ドット株式会社が提供するtab”があります。“tab”のサービスは2012年6月末にスタートしたのですが、13年9月時点でのパートナー企業となっているところは「三越伊勢丹」「六本木ヒルズ」「東京ミッドタウン」「高島屋」「三菱地所」「ビームス」「東急ハンズ」等、その数200社に上っています。そして、アプリダウンロード数は30万人強、月間アクティブユーザー数は約17万人となっています。

このtabの特徴として『キュレーション』が挙げられます。キュレーションとは、ネット上の情報やコンテンツを収集・編集し、新たな価値を生み出して、それを他者と共有することを意味します。かつて企業や店舗から消費者へ情報は一方通行でした。それに対してネットが普及した現在では情報は双方向となっています。その流れの中で、自分の友人・知人、興味・関心が合う人、参考にしたい人をフォローすることで、その人が収集・編集された情報が自動的に自分の下へ流れてくるようなサービスが生まれています。

“tab”のコンセプトは「“行ってみたい”を集めた、みんなの“My雑誌”」。ユーザーは自分の興味・関心・センスで独自の特集を作っていきます。ユーザーはテーマごとに“行ってみたい”“食べてみたい”“買いに行きたい”といったリアルな場所を集め、自分のtab帳をまとめていきます。そのtab帳は公開されていますので、雑誌を見る感覚で他人のtab帳を見て、行きたい場所を見つけることができるのです。気に入ったユーザーをフォローすることもできます。

【伊勢丹新宿店リニューアル時の“tab”とのコラボレーション】

伊勢丹新宿店が総工費約90億円をかけて大規模な改装を実施し、2013年春にグランドオープンしましたが、この際にプロモーションの一環として“tab”と手を組みました。同キャンペーンは、伊勢丹新宿店とタイムアウト東京がリニューアルした伊勢丹新宿店の楽しみ方やおすすめスポットを各々の視点で集めて“tab”で発信するというものでした。発信した情報は40項目で「世界一“自分”が進化するヘアショップ」「伊勢丹でしか聞けない坂本龍一を聴く」などで、ユーザーは自分の興味ある情報を“tab”に入れていくという仕組みです。

さて、 “tab”の特徴として上記のキュレーション以外に「プッシュ通知」があります。自分が行きたいと思っていた場所でも、しばらくするとそのこと自体忘れているということは多々あります。“tab”ではユーザーがtab帳に入れたスポットの半径500m付近に立ち入ると、ユーザーのスマホに通知されるような仕組みにしています。そのことで「行きたいと思っていたけれど忘れていた」ということを防ぐことができます。

伊勢丹新宿店の同キャンペーンにおいては、ユーザーが伊勢丹新宿店の情報をプッシュ通知された件数は13年5月から1か月間で約1600件あったと言います。

技術の進歩とともにO2Oも進化を遂げています。“tab”と伊勢丹新宿店、タイムアウト東京は「新宿でしかできない101のこと」という新宿の街に焦点を当てたキャンペーンも実施しています。O2Oを活用し街全体の活性化を図る取り組みと言えます。今後、商業施設がO2Oを活用して街全体を活性化していくことが増えてくるのではないかとも思われます。

(参考文献 O2O、ビッグデータでお客を呼び込め! ネットとリアル店舗連携の最前線)

催促相場から見るアベノミクス

本日は催促相場から見るアベノミクスに関して記載します。

【今年の株価の推移から見えてくる日本経済】

2013年、日本の株価は57%上昇し、この上昇の勢いはバブルの時と同じくらいになっていて、先進国の中でもダントツに高いものとなっています。昨年発表された実質成長率は1.6%と株価の上昇から見ると低い水準となっていますが、内需を見ると3%成長していて、日銀短観においても製造業、非製造業、大企業、中企業、小企業、すべての分野で経済は良くなっています。アベノミクスの成果により日本の景気は概ね好調と言えます。

この株価上昇を支える要因は外国人投資家の買い越し額が15兆円に達したということにあります(これまでで一番買い越し額が多かったのは郵政民営化を決めた2005年)。株価上昇により資産効果が出て日本経済は好調に推移している形となりますが、その株価を支えているのは外国人投資家の影響もあるということが言えます。

さて、2013年に株価は57%上昇しましたが、2014年に入ってからは日本の株に大きな動きがありません。2月においては1万5千円~1万4千円くらいで株価が推移しています。この株価の動きに関して、マーケットが政府に催促をしている“催促相場”だという話があると言います。

【催促相場とは】

催促相場とは、企業や政府などに対して決定などを促すために株価を始めとした相場の動きによってそれを推し進めさせようとする相場状況のことを言います。例えば東京市場やニューヨーク市場へ公定歩合の引き下げを期待して日経平均株価やダウ平均が上昇して、中央銀行にその決定を促すというパターンです。今回の相場においては、アベノミクスの成長戦略に対する期待もあり、株価が先行して上昇したものの、その成長戦略にきちっとした政策が出てこないことから、投資家たちが様子見をしているといったところでしょうか。投資家が日本の株に対する投資を引き上げる前にしっかりとした政策が実施されることが、マーケットから政府に求められている状況になっているということです。

【注目されるアベノミクスの今後の動き】

2013年11月に、今年の6月をめどに新たな成長戦略を策定していくという話になっています。2020年の東京オリンピック開催を見据えてのインフラ整備や「日本ブランド」の海外発信、農業の振興策やベンチャー企業の育成、成長戦略第1弾で詰め切れなかった規制緩和などを検討していくとなっています。

消費増税により景気が押し下がることも想定される中、いかにこの6月の成長戦略第2弾が効果のあるものが登場するのかが、2014年の日本経済を占う重要なカギとなりそうです。

(参考資料 エコノインサイト)

「World of Warcraft」の顧客エンゲージメント・イノベーション

本日は「World of Warcraft」の顧客エンゲージメント・イノベーションに関して記載します。

【World of Warcraft 世界的なヒットにつながるその戦略】

最近、例えばスマホアプリでゲームを見ているとMMORPGという言葉を目にすることがあります。MMORPGとはMassively Multiplayer Online Role-Playing Game:大規模多人数同時参加型RPGのことで、オンラインゲームの一種となります。プレイヤーはPCなどからサーバーに接続し、コマンドを入力して自分のキャラクターを行動させたり、同じサーバーに接続しているプレイヤーとチャットを行ったりします。10~20年くらい前にやっていたRPGと異なりセーブしたところからやり直すということが出来ないので(他のプレイヤーの操作と矛盾が引き起こるため)、個人的には少し違和感ある気もします。

さて、このMMORPGで世界的にヒットした「World of Warcraft」というゲームがあるのですが、このゲーム2004年11月にリリースし、2006年11月には約750万のアカウント数に達し、2008年11月には世界中に1100万人もの月額課金ユーザーを持つまでに成長しました。日本ではその名をあまり聞かないような気もしますが、中国ではコカ・コーラのキャンペーンにも利用されTVCMにもなった、まさしく世界規模のヒット作です。

このWorld of Warcraftを世に送り出した会社ブリザード・エンターテインメントの創業者たちは最初から、プレイヤーを強力にぐいぐい引き込むことに力を注ぐ重要性を強調していたと言います。このゲームのコンテンツの多くがプレイヤー同士の協働を促すようにデザインされていて、プレイヤーがゲームのステージを段階的に上がっていくために、リアルな人間とバーチャルなグループ(ギルド)を組んでいきます。そして、ギルドによっては自分たちのロゴやプレー戦略を作成することもあるそうです。

ブリザード・エンターテインメントは顧客に対して一方的に発信するコミュニケーションを行うのではなく、顧客と企業が双方向にコミュニケーションを行うこと(顧客エンゲージメント・イノベーション)によって成功したのです。

【顧客エンゲージメント・イノベーション】

顧客エンゲージメント・イノベーションは、顧客のニーズやウォンツを理解し、その理解を踏まえた上で、顧客と会社の間に意味のある繋がりを築いていく戦略となります。どのように消費者とつながり、消費者を喜ばせられるかということが重要となってくるのです。例えば、World of Warcraftとは他の事例として、ファブ・ドットコムというウェブサイトが挙げられます。このサイトでは一流のデザイン専門家が選んだ商品を販売していて、次に流行るクールなアイテムを見つけたいときに行くべきサイトという顧客の信頼感を築いています。この事例も顧客と会社の間に意味のある繋がりを作っている事例だと言えます。

2013年現在、World of Warcraft登録プレイヤー数は770万人にまで減少してきているようです。これは他のオンラインゲームの登場による影響があるようで、人気になれば必ず他社からの模倣が始まり、シェアの奪い合いになっていくという事例のようにも感じます。ただ、一方でWorld of Warcraftが長い期間にわたって世界的なヒット作になっているという事実は、“顧客を引き込む”工夫をして、顧客と会社の間での関係性を構築するということの重要性を感じさせます。

(参考文献 ビジネスモデル・イノベーション ブレークスルーを起こすフレームワーク10)

プロセス・イノベーション

本日はプロセス・イノベーションに関して記載します。

【プロセス・イノベーション】

プロセス・イノベーションとは、企業が製品やサービスを生産していく活動や業務に関わるもので、従来通りのやり方から劇的な変革を行い、業界の標準よりも優れた方法を確立し、他に類を見ない高効率やコスト優位を実現していくことです。例えば、トヨタが無駄や過剰を減らして、会社のあらゆる部署での効率向上と製品・プロセスの継続的な改善を推し進めたような手法はこの事例となります。プロセス・イノベーションにはトヨタが実施したようなシステムのあらゆる部分から無駄とコストをそぎ落とす“リーン生産方式”、共通の手順を使うことでコストと複雑さを抑える“プロセスの標準化”、過去の実績データをモデル化して未来を予測する“予測分析”などがあります。

【ZARAのプロセス・イノベーション】

ZARAはデザインや生産、ロジスティックス、配送を統合した生産システムを使用することにより、注文を受けてから商品の配送にかかるまでの時間を短縮しています。同社はターゲットとする「流行を先取りする顧客」と接点を持ちやすくするために主要ショッピング地区の高級店街に店を配置していて、そこから入ってくる顧客の願望や要望といった情報が、同社の200人のクリエイティブ・チームに伝えられていきます。それにより、クリエイティブ・チームが生産面の課題をすぐさま検討することができ、ファッション・トレンドの変化に素早く対応することが出来るようになっています。またサプライヤーや配送業者は、効率を高めるために世界各地に適切に配置されるように選定され、社内ロジスティック・システムは配送センターで注文を受けてから商品が実際に店舗に届けられるまでの時間をできるだけ短くするように構築されています。

【IKEAのプロセス・イノベーションの事例】

IKEAはフラットパック家具を開発して、国や地域による修正を行うことなく、どこに行っても全く同じハードウエアと取扱説明書で商品を販売しています。このことにより、同社は社内生産プロセスの合理化を図ることができています。

プロセス・イノベーションには企業のコア・コンピテンシー(核となる競争力)を形作ることが多く、理想的に展開すれば競合他社が真似できないものとなると言います。模倣されないということは企業の優位性を高めますので、このプロセス・イノベーションが実施できるということは成長するための一つ手法と言えます。

(参考文献 ビジネスモデル・イノベーション ブレークスルーを起こすフレームワーク10)

ホールフーズ・マーケットの組織構造イノベーション

本日はホールフーズ・マーケットの組織構造イノベーションに関して記載します。

【ホールフーズ・マーケット】

ホールフーズ・マーケットは1980年に設立されたアメリカにある比較的高級志向な食料品スーパーマーケットで、2012年現在、アメリカ、カナダ、イギリスに310店舗を超える店舗を持ち65,000人強の従業員を擁するまで成長した企業です。同社の発表によると2011年の売上高は100億ドルを超えているといいます。同社は、人材や資産を独自の形で編成することで価値を生み出す“組織構造イノベーション”を実施し成長してきました。

【ホールフーズ・マーケットの組織構造イノベーション】

ホールフーズ・マーケットでは徹底的な経営管理の分権化を行っています。各店舗がチームを構成し自律的に各部門を管理。どの商品を仕入れるか、その商品をどのようにディスプレイするかなどもチームが決定しています。同社は組織の力を発揮するために、チームプレイを重視しているのです。採用についても誰をチームに採用するかはチームで決めており、チームに入るためには現行メンバーの2/3以上の賛成が必要となります。各店舗は損益計算書で独立した事業部門として評価され、店舗内の各チームを明確な成果目標を持っています。

またチーム間・チーム内での情報も密なものとなっています。商品の売上・利益率などの詳細な情報が店舗の垣根を超えて共有され、その情報が共有されているレベルは、一時期、同社の従業員が全員証券取引委員会にインサイダーに分類されていたほどでした。この情報の共有化により、チームが会社全体でうまくいっていることを把握するとともに、チーム間が切磋琢磨することに繋がり、同社の成長を支えるエンジンとなっているのです。

【組織構造イノベーションの他の事例】

ホールフーズ・マーケットのように企業の人材や組織を独自の形で編成し価値を生み出している事例は他にも多々あります。その取り組みとしては報奨制度を構築したり、営業コストや複雑さを縮小するために資産を標準化したり、高度な訓練を継続的に提供するための企業内大学を創設したりといったものがあります。この組織構造イノベーションは競合他社が模倣することが困難となることから、自社の長期的な成長を支えてくれるものとなります。ホールフーズ・マーケット以外では以下のような事例があります。

■W・L・ゴア:フラットな格子型組織モデルを構築。社内のチームは意図的に小さくされていて、活動は命令ではなくコミットメントによって管理される。

■ファビンディア:インドの織物・衣料・家庭用品小売り企業。美術品や工芸品を供給している現地の職人たちが所有、経営している。

■ゼネラル・エレクトリック(GE):GE幹部向けの社内ビジネススクールを立ち上げた。

組織構造イノベーションを実施することにより、企業が独自の進化を遂げることとなります。他社から成功モデルが模倣されにくいということは自社の競争力を高めることに繋がりますので、重要なことと言えます。

(参考文献 ビジネスモデル・イノベーション ブレークスルーを起こすフレームワーク10)

ターゲットのネットワーク・イノベーション

本日はターゲットのネットワーク・イノベーションに関して記載します。

【アメリカのディスカウント百貨店チェーン「ターゲット」】

ターゲットは「ファッション界の最良をディスカウント界の最良と合体させる」ことを意図した「高品質の商品をディスカウント価格で提供する良心的な店」として、地方百貨店のデイトン社の新しいディスカウント小売戦略の一環として1962年に1号店をオープンさせました。そしてターゲットを運営するターゲット・コーポレーションは、今ではアメリカの売上高第5位の小売業となっています。同社は社外の人や組織とつながることにより実績を上げてきたのです。

【ターゲット 他社とのつながりによる価値の創出】

ターゲットはアメリカのポストモダン建築を代表する建築家マイケル・グレイブスと1999年に提携し、グレイブスがデザインし、ターゲットが独占販売するキッチン用品のラインを生み出しました。それ以後、75人以上のプロダクト・デザイナーや10人以上の世界的に有名なファッション・デザイナーと提携し、同社でしか買えない商品を開発していきます。アイザック・ミズラヒ(数多くの賞を受賞している実力派デザイナー)との5年間の協働は1年あたりで3億円の利益を生み出したと言います。

また、同社はイギリスの百貨店リバティオブロンドンを始めとした小売業者と提携したり、短期間しか営業しない期間限定の店舗を出店したりしています。そして、婦人用バッグがメインのブランド、アニヤ・ハインドマーチがデザインしたハンドバッグの販売も行ったのですが、なんとオンラインで2分足らずで売り切れるという結果を残したと言います。

このような戦略を採ることで、同社は消費者の口コミと関心を高め売上の嵩上げを図ってきました。

【ネットワーク・イノベーション 他社との協働による価値の創出】

自社が単独で事業を行うのではなく他社との協働を行うことにより、自社の強みを活かしながら他社の“生産工程”“製品・サービス”“チャネル”“ブランド”といった能力や資産を利用できるようになります。また、自社が新しい製品・サービスや事業を開発する際のリスクを他社と分かち合うことにもなります。まさしくターゲットは協働を行うことにより上記のようなメリットを活用し実績を上げてきたということが言えます。

ネットワーク・イノベーションは他企業でも行われています。例えば東芝とUPSは、東芝製パソコンを配送センターでUPSが修理するように契約を結んだことにより、“東芝が修理時間の短縮”“UPSが新しい利益の獲得”という双方にメリットのある結果を生み出しました。また、ブラジルの化粧品会社ナトゥーラは世界各地の25の大学との高度な人的ネットワークを構築することで、社内の開発能力を超える成果を上げていると言います。

このようにネットワーク・イノベーションを起こすことは、企業が大きなメリットを得る結果につながるのです。

ジョイントベンチャーという言葉を聞きますが、これなども双方の強みが活かせれば単独では不可能であっただろう利益を生み出すことができます。一方で、双方の強みが活かせなかった場合はそれほど大きな利益の創出にはつながらないと思います。ネットワーク・イノベーションは協働する相手とのベクトルを合わせるということが重要にも思われます。

(参考文献 ビジネスモデル・イノベーション ブレークスルーを起こすフレームワーク10)

法人税引き下げとタックスヘイブン

本日は法人税引き下げとタックスヘイブンに関して記載します。

【アベノミクスの重要政策 法人税引き下げ】

2014年1月のダボス会議にて安倍首相が強い意欲を見せた法人税引き下げの議論が始まっているようです。マクロを中心とした経済財政を議論する経済財政諮問会議と企業に根差したミクロを議論する産業競争力会議との合同会議も行われました。政府税制調査会内の専門部会において座長の大田弘子元経済財政政策担当相が「法人税の税率引き下げが必要である」と明記した論点案を提出しています。

今回の法人税引き下げの論点は、現在35%程度の法人実効税率をアジア近隣諸国並みの25%程度まで引き下げるかどうか、ということです(日本の法人税は諸外国と比べて高い)。法人税を10%引き下げれば5兆円の税収が消えることになりますが、一方で減税を行えばGDPの拡大が見込めるとも思います。(数式で言うと△Y=-c/(1-c)×△Tです。税金(T)を変化させると-c/(1-c)(租税乗数)分だけGDP(Y)は変化します。減税の効果が何倍ものGDPの増加につながっていきます。)海外投資家からも注目されていますので、この法人税引き下げができるか否かは株価にも影響してくると思われます。

法人税引き下げによる課題として減税による減収ということ以外の課題として、中小企業を中心に74%の法人が赤字で法人税を払っていないということもあります(2011年度)。日本において法人税を払っていない企業は多いようで、外国と比較すると、アメリカ54%(2009年度)、イギリス50%(2010年度)、ドイツ34%(2007年度)、韓国32%(2011年度)となっています。欠損金の繰り越し控除の仕組みや租税特別措置などの見直し、課税ベースを広げることが検討されています。

法人税引き下げを実施するにあたっては簡単な道のりではなくハードルがあるわけです。

【タックスヘイブン 資本流入を目的とした国家戦略】

法人税引き下げと関連する議論にタックスヘイブンがあります。タックスヘイブンとは、外国の企業や富裕層の資本流入を目的に、税金を無税または極端に低くしている国や地域のことを言います。タックスヘイブンが行われている国は、カリブ海周辺で“コスタリカ”“パナマ”“ドミニカ”“ケイマン諸島”など、アジアでは“マカオ”“香港”“シンガポール”、中東の“バーレーン”“レバノン”“ヨルダン”、ヨーロッパでは“スイス”“ルクセンブルク”“モナコ”“サンマリノ”“リヒテンシュタイン”などが挙げられます。タックスヘイブンによりF1グランプリで有名なモナコでは大富豪が移住したり別荘を持ったりして、世界有数の富豪国家に生まれ変わることに成功しています。モナコの事例ようにタックスヘイブンを行うことにはメリットがありますので、国際的に企業の投資を呼び込むために小国を中心に法人税率の引き下げ競争が起きているのです。このことは日本の法人税引き下げの話と無関係ではない話だと思います。

多くの海外投資家がアベノミクスの成果に注目しています。消費増税により景気は悪化しますが、その後回復していくかどうかは、アベノミクスの成長戦略がどういう成果を出せるかということが重要なポイントの一つです。法人税引き下げの議論は注視です。

(参考文献 週刊東洋経済3/29)

利益モデルのイノベーション

本日は利益モデルのイノベーションに関して記載します。

【「カミソリと替え刃」の利益モデル】

最近のカミソリは昔と比べて、製品として随分改良が加えられているようです。前に使っていたカミソリが古くなったので、新しい物を買いに行きました。前は2枚刃くらいが普通かと思っていたのですが、売場には5枚刃且つ電池でカミソリの刃の部分が振動する商品なども置いてあり、カミソリが製品として進化を遂げているように感じました。

上記のように今日のカミソリは企業間で競い合う中で製品自体進化しているのですが、過去にはこの業界は「カミソリと替え刃」という長年にわたって称賛され続けている有名な利益モデルを生み出しています。この利益モデルはジレットが始めた仕組みで、システムの耐久性のある部分(カミソリの本体)を低価格で販売することで固定された顧客基盤をつくり、それから使い捨ての部分(替え刃)をプレミアム価格で販売して反復的な収益を得る、というものです。「カミソリと替え刃」の利益モデルはプリンターとカートリッジからコーヒーメーカーとカプセルコーヒーまで、他の産業にまで応用されています。

【利益モデルのイノベーションの事例】

「カミソリと替え刃」のように、それまでに気づかれていなかった新たな価値を斬新な方法でお金に換えることによって、利益を生み出している企業があります。

■ネクスト・レストラン

シカゴにあるレストラン「ネクスト」。このレストランでは顧客に前売り券を買ってもらっています。これによりネクストは予約客が来店しないリスクを押さえています。また、顧客がいつ来店するかによって前売り券の価格を決めています。ディナーで込み合う時間帯ではその価格は高く設定し、逆にアイドルタイムではその価格を低くしています。

■シブステッド・メディア・グループ

ノルウェーのオンライン広告会社「FINNno」は、ユーザーが投稿する広告を無料で掲載しています。その一方で希望に応じた掲載については料金をとっています。顧客は料金を支払うことによって、例えばシブステッド・メディア・グループ内の他の新聞に掲載したりすることが出来ます。

■ヒルティ

「ヒルティ」は建設業者向けの電動工具をコア・ビジネスとしている企業ですが、故障による予定外の作業中断や盗難など、工具を所有することによる隠れたコストから建設業者を守るためのプログラムを作りました。毎月一定額の料金を払っていれば、必要に応じて代わりの工具を貸し出したり、アップグレードのオファーをしたり、必要な修理の費用を負担したりします。このプログラムによりヒルティには反復的な収入が入ってくることとなりました。

従来から当たり前のように使われている利益モデルを見直すことにより新たな利益を生み出すことができます。当たり前と思っている集金・課金モデルを見直すことも重要なようです。

(参考文献 ビジネスモデル・イノベーション ブレークスルーを起こすフレームワーク10)

ダイエーの没落

本日はダイエーの没落に関して記載します。

【ダイエーの発展】

高度経済成長の中で人々が地方から大都市へ集まってくるのとともに、ダイエーは成長を果たしていきます。ダイエーのビジネスモデルの基本は『不動産の購入による成長』というものでした。そのビジネスモデルの流れとしては、住宅が増えていく地域に借金をして不動産を購入して店を建てる→その地域に人々が集まり、店舗に多くの顧客が集客でき、不動産の価値が上がる→価値の上がった不動産を担保に金融機関から更に借り入れをする→集めた資金を元手に新たな不動産へ再投資する、といったものでした。

ダイエーの不動産ビジネスは1980年代後半のバブルのころに、さらに加速。積極的な企業買収を行うようになります。銀座のリッカービル、リクルート、ハワイ最大のアラモアナショッピングセンターなどを次々に買収。同社の負債は増えていきますが、それ以上のスピードで同社の資産額は増え、小売業としての売上も拡大していきました。

【イトーヨーカ堂とダイエー ビジネスモデルの違いによる成長スピードの違い】

ダイエーの不動産を購入することにより売上を拡大していくビジネスモデルの成長スピードの速さは、イトーヨーカ堂と比較するとその速さがわかります。イトーヨーカ堂の創業は1958年。それに対しダイエーは、その前進である大栄薬品工業を1957年に設立しています。両社の創業した時期はそれほど変わりません。ところが、ダイエーが三越百貨店を抜いて日本一の売上規模になった1972年、イトーヨーカ堂はトップ10にも入っていませんでした。不動産の価値上昇を織り込んだ成長戦略は、当時の時代背景からいうと、それだけ競合から優位に立てる戦略だったと言えそうです。

【ダイエーの没落】

ところが、バブルが崩壊し資産価値の暴落が始まると、ダイエーの強さを支えてきた不動産購入による成長戦略が裏目に出ることとなります。巨額の負債を抱え続ける一方で、同社が保有する資産価値は急速に縮小していきます。こうした中で、銀行もダイエーに融資を続けることが困難となってきます。この状況に対して、ダイエーはアラモアナショッピングセンターやリクルートなどの資産を売却し借金返済をしていくこととなりますが、結局、産業活力再生特別措置法の下で事業再生するまでに追い詰められてしまいます。そして今ではイオングループの傘下となっています。それまで強みであった戦略が経済・社会環境の変化で一転して足かせとなってしまったのです。

バブル崩壊によりダイエーだけでなく、マイカル、そごう、長崎屋などの企業が凋落していくこととなりました。一気に成長路線に入るときには、何らかの手法によって資金を集め、投資に回すことが必要です。ダイエーの戦略はその点では正しかったようにも思われます。ただ、経済・社会の変化の先を読み間違えたために、そのような事態に陥ったのでしょう。バブル崩壊に伴う多くの企業の凋落は、経済・社会環境を理解し、出来うる限り先を読めるようにしておくことの必要性を表しているようにも感じられます。

(参考文献 「流通大変動 現場から見えてくる日本経済」)