ノンフリル実践企業例

本日はノンフリル実践企業例に関して記載します。

【ノンフリルを実践する企業】

ノンフリルとは、余剰サービスを極力省き、コアのサービスだけを質を下げることなく、低価格で提供するビジネスモデルです。このビジネスモデルの代表例として挙げられるものとしてLCC(ローコストキャリア)があります。また他の事例として『QBハウス』『スーパーホテ』『IKEA』の取り組みも挙げることができます。上記、4つの企業に関して以下にそれぞれ取り組み内容を記載していきます。

【LCC】

LCCの元祖は1967年に創業したサウスウエスト航空です。共同創業者のハーバード・ケレハーらが「高額な航空運賃を安くできないか」と、必要性の低いサービスを省きました。その後、アイルランドのライアンエアー、オーストラリアのジェットスター、マレーシアのエア・アジアなど世界各地でLCCが誕生していきます。各社は「座席の幅を従来よりも狭くする」「食事や飲み物の提供・機内サービスの有料化」「手荷物預かりの有料化」「不便な郊外の空港を発着地に選ぶ」といったことを実践しコアのサービス以外でかかっているコストを削減。航空券を安くすることに成功し、低価格指向の顧客の心を掴むことに成功します。

【QBハウス】

QBハウスと言えば、10分1000円のヘアカット専門店。創業者の小西國義氏が「散発の時間をもっと短くしたい」と考えて生み出されました。一般的な理美容室では“カット”“シャンプー”“マッサージ”“ブロー”“セット”が一連のサービスとして行われますが、QBハウスは“カット”のみを行い、それ以外のサービスは切り捨てました。短時間でカットすると質が劣るのではとも考えてしまいますが、一般的な理美容室でもカット時間は10~15分だそうです。また、QBハウスは事前の予約や理美容師の指名もなくし、レジ作業の効率化を図ります。このような取り組みにより顧客から支持を受け、1号店オープンの1996年から20年足らずで、国内に500店舗を構えるほどの成長を遂げることができています。

【スーパーホテル】

スーパーホテルは「ぐっすり眠れる」というコンセプトして成長している企業です。1989年創業以来売上は右肩上がり、店舗数は全国100店舗を超えています。同社は「ノーキー・ノーチェックアウト・システム」を採っています。このシステムは、まず宿泊者はチェックインの際に部屋番号と暗証番号がプリントされた領収書を受け取ります。そして宿泊者はそこに記載されている暗証番号を部屋の扉に設置されているボタンに押すと鍵が開きます。これにより同社はチェックアウト時の顧客対応を省くことができました。また、部屋に電話を置いていないため、問い合わせによるスタッフ対応の手間も省きました。このように、スーパーホテルは宿泊者の安眠に注力し他のサービスを省くことで顧客からの支持を得ています。同社の宿泊代は、平均1泊7000円程度のビジネスホテル業界で、一泊・朝食付き4980円という価格設定に成功しています。

【IKEA】

IKEAで買い物をする際には、“気に入った商品を見つけたら番号をメモし倉庫に行く”→“家具の番号を見ながら倉庫で自分の家具を探す”→“家具を見つけたら、カートに積みレジまで運ぶ”→“会計を終えたら車まで自分で家具を運ぶ”→“家で自ら家具を組み立てる”という流れになります。日本の開梱設置まで行うシステムとは随分違います。この仕組みによりIKEAは「商品を倉庫からレジまで運ぶ要員」「配送費」「組み立てを行う要員」を削減。商品の低価格での販売につなげることに成功しています。(同社は80年代に一度日本に上陸しましたが、上記システムが日本人に受け入れられずに撤退しています。再上陸は2006年になるのですが、その際には有料での宅配サービスや組み立てサービスも組み込んでの上陸となります。)

消費者が必要とするサービスを絞り込み提供する“ノンフリル”というビジネスモデルは、長引いたデフレに慣れた日本の消費者に支持を受けているのではないかと思われます。

(参考文献 図解&事例で学ぶ ビジネスモデルの教科書)

アメリカの予算教書

本日はアメリカの予算教書に関して記載します。

【世界経済に影響を与えるアメリカの予算教書】

3月4日にオバマ大統領が予算教書を提出しました。この予算教書とはアメリカの大統領が連邦議会に対して提出する、翌会計年度の予算案の編成方針を示す文書のことです。アメリカの会計年度は10月~翌年9月となっていて、本教書は毎年2月ごろに提出されています。日本においては総理大臣が中心となって予算案を作成しますが、アメリカの場合は予算を決定する権利が大統領にはなく連邦議会に所属する形となっています。その点、日本とアメリカで予算の組み立てられ方が違うと言うことになります。

予算教書は大統領が必要と思う政策や歳入・歳出の見積もりを議会に示し、それに沿った予算編成を議会に促す「勧告」の性格が強いものです。そして、議会は予算教書を受けて予算関連法案の作成にかかり、大枠を決める予算決議を採択し、個別の歳出法案や歳入法案を審議します。なお、大統領には議会が可決した予算関連法案に対して拒否権があるため、本教書の内容に特に問題がない限り、概ね反映されると言われています。

日本では予算教書はあまりなじみのないものとなっています。しかしながら予算教書は中長期的にアメリカの経済や財政がどのようになっていくかをマクロ的な枠組みで示す役割を担っていて、世界経済に与える影響が極めて大きいため、世界中の注目を集めるものとなっています。

【2015会計年度(2014年10月~15年9月)の予算教書】

3月4日に提出された予算教書は、高額所得者や企業に対する新税、教育、研究開発、低所得層向けの政策への支出計画が盛り込まれたものとなっています。

さて、今回の予算教書を受けて、多くの人が失望する結果となっているという声があるようです。その理由としては歳出の拡大にあります。今回の歳出総額は14年度と比べて約3500億ドル増加の3.9兆ドル。このことが財政赤字削減への努力がなされていないと判断されているようです。なお、この歳出総額の増加分の大半は社会保障支出や高齢者医療保険、低所得者向け医療保険の支出に充てられます。

かといって財政赤字を減らす努力をしていないわけではなく、削減に向けた道筋は立てているようです。15年度の財政赤字は5640億ドルで対GDP比3.1%と見通しですが、その後、税収増を主因として18年度までに財政赤字は減り続け、同年度のGDP比は1.9%まで低下すると予想しています。なお、税収増に関しては、今後10年で約1兆ドルの新税を提案していて、その大半は不動産や高額所得者への増税となっています。

【注視すべきアメリカ経済】

現在、FRBの金融緩和が続いてきた効果により、2009年1月に8000ドルだったNYダウ平均株価は、現在16000ドルを超す水準になっています。このことからアメリカの株価は近いうちに調整局面に入るのではないかという声もあるようです。調整局面に入れば日本の株価や為替に影響してくることは必至です。世界経済1位のアメリカの経済の行方は日本経済に大きく影響していきますので、しっかりとみておくことが必要なのでしょう。

(参考資料 エコノインサイト iFinance)

ロングテールを実践するリアル店舗

本日はロングテールを実践するリアル店舗に関して記載します。

【ロングテールに関して】

従来、小売店では店舗面積や在庫コストなどの物理的な条件があるため、一部の人気商品が売上のほとんどを占める形になります。そのため、効率よく売れ筋商品を販売するためにPOSに頼った仕入れが行われるわけです。一方で、近年、アマゾンもビジネスモデルとして実践している“ロングテール”が注目を集めています。ロングテールとは売れ筋商品の売上数量はダントツに大きいけれども、死に筋商品は恐竜の長い尻尾のようにその売上数量が少なくなることを踏まえ、売れ筋商品だけでなく、死に筋商品も数多く揃え「何でも揃う場」を創造し、その結果、幅広い顧客層を獲得して、安定的な売上を得る手法です。このロングテールは店舗面積という物理的な制約がないeコマースの世界で成立することが一般的です。しかしながら、リアル店舗においてもこのロングテールのビジネスモデルを採っている企業もあります。

【ロングテール実践企業例】

■東急ハンズ

1976年に設立された東急不動産傘下の市街地立地型のホームセンターです。東急ハンズはDIYなどに適した資材や部材を中心にした多彩な品揃えで有名です。数多くのユニークな商品もそろっているので楽しく買い物ができる店です。豊富な商品を取り扱っているにもかかわらず、驚くべきことに、仕入れを行うにあたってPOSに頼っていないそうです。現場に裁量を持たせて「これはお客様に喜ばれる」「こういった商品がないかと問い合わせがあった」等の売場で拾い上げた情報を基にした仕入れを奨励しているのです。このことから同社は元祖ロングテールとも言われています。

■ハンズマン

ハンズマンは宮崎県に本社を持つホームセンターチェーンで、2013年3月現在、九州に11店舗展開しています。九州にしか店舗はないものの、「ズームイン!!SUPER」などの全国放送の番組で度々放送されていると言います。ハンズマンは1店舗あたり21万アイテムを品揃えしていて、1年に1個しか売れない商品が大半を占めているそうです。このような商品の多さが、ワンストップで購入したいプロや日曜大工などのユーザーの心を掴んでいると言います。また同社も東急ハンズと同様、POSを導入していません。1店舗当たり100名いる従業員が商品に接しながら、顧客の要望を反映した品揃えができるよう取り組んでいます。

■ダイシン百貨店

東京都大田区山王にある百貨店。近所に数シニア層の心を掴むため、売れ筋商品だけでなく死に筋商品も数多く取り揃え、取扱品目は約18万点に達します。「ポマード」「粉歯磨」「チリ紙」「ちりとり」「ハタキ」など、ここにしかない商品を取り揃え、近隣に住む良質なリピーターを集めることに成功しました。

ロングテールは消費者にワンストップショッピングの場を提供するためには重要な取り組みだと考えます。一方で店舗面積や在庫管理など物理的な条件を鑑みなければならないことも確かです。

(参考文献 図解&事例で学ぶビジネスモデルの教科書)

フリーミアム

本日はフリーミアムに関して記載します。

【無料ユーザーが9割以上を占めていても利益が出る“フリーミアム”とは】

フリーミアムという言葉を最近耳にすることがあります。このフリーミアムとは「フリー(無料)」と「プレミアム(割り増し)」を合わせた造語で、無料サービスを提供することでユーザー数を増やし、そのうちの一部のユーザーに高度な機能を持つ付加価値の高い有料サービスを購入してもらい利益を出すビジネスモデルのことを言います。無料のサービスという観点から言うと、昔から「無料サンプル」を配布するという手法もあります。しかしながら、フリーミアムは無料サンプルと“無料”という点では同じですが、双方には大きな違いがあります。それは無料ユーザーと有料ユーザーの比率が異なるということです。無料サンプルの場合、無料で商品を配布するにはコストがかかりますので、多くの商品を無料サンプルとして配布することが出来ません。一方でフリーミアムの場合、IT化によりコンテンツやサービスのコストを下げることが出来ているので、無料ユーザーがどれだけ増えたとしても、少数の有料ユーザーを獲得できれば利益を上げることが出来ます。フリーミアムを実践する企業は、たいてい1割に満たない有料ユーザーからの課金で利益を上げていると言います。

【フリーミアムを実践している企業例】

■エバーノート

エバーノートは無料で活用できるネット上のスクラップブックのようなアプリケーションソフトです。テキスト、写真、音声、動画などを自分のアカウントにアップロードすれば、クラウドによって、どこのパソコンやスマホからでもアクセスして利用・編集・共有ができます。エバーノートのユーザー数は5000万人以上いるそうですが、無料版と有料のプレミアム版のユーザー比率は96対4程度だそうです。クラウドを活用することでランニングコストを低く抑え利益を生み出しています。個人的にはちょっとしたメモをとる時に便利だと思っています。

■ドロップボックス

パソコンのフォルダをクラウド上に保存できます。無料版は容量が限られていますが、有料版にすると大幅に増量されます。iPhoneで撮った写真や動画がiPhoneをパソコンにつなぐと自動的にドロップボックスに保存されるので便利です。

■Avira

ドイツのAvira GmbHが販売するアンチウィルスソフトウェア。無料で利用できますが、起動するたびに有料版の広告が出ます。また一部機能が使えないなどの制限もあります。日本語版は2009年12月1日にリリースされ、1年で日本のユーザー数が250万人を突破しました。

■スカイプ

2003年に創業した無料電話サービス。インターネット回線を利用することで、パソコン(スマホ)の会話を無料にしています。有料サービスにすると固定電話への通話もかけ放題になります。

■Flickr(フリッカー)

画像投稿サイト。写真をウェブ上で整理・分類・展示できます。また、他人と共有してお互いにコメントを書き込むこともできます。有料版は広告表示がなくなります。

IT化が進むことにより、無料で多くの顧客を一気に集め、一部のコアの利用者へ課金をすることで利益を生み出すことが可能になりました。フリーミアムは社会環境の変化にともなって登場した新たなビジネスモデルと言えそうです。

(参考文献 図解&事例で学ぶビジネスモデルの教科書)

オープンビジネスモデル

本日はオープンビジネスモデルに関して記載します。

【オープンビジネスモデルとは】

オープンビジネスモデルとは、自社のみならず社外とのコラボレーションによって新しい価値を作り出し、これまで以上の利益を得るビジネスモデルのことを言います。近年、技術や製品のライフスタイルが短くなり、研究開発のスピードがより求められるようになっています。そこで自社の技術をオープンにして製品開発などをすることで、自社のみでやるよりずっと早く、斬新な技術開発を促すオープンビジネスモデルに注目が集まりました。

このオープンビジネスモデルを大きく分けると社内のアイデアや資産を社外のパートナーにオープンする「インサイドアウト」と外部のアイデアを社内に取り込む「アウトサイドイン」という二つの種類があります。

【ゴアテックスのインサイドアウト】

ゴアテックス(GORE-TEX)はアメリカのゴア社が開発した防風・防水性と透湿性を両立させた(水蒸気は通すけれど雨は通さない)画期的な繊維素材です。部品メーカーや素材メーカーはエンドユーザーにブランドの価値を見出してもらうことが難しい業種なのですが、ゴア社はゴアテックスの良さを伝えることが、良い素材を求めているエンドユーザーに対して大きなメリットとなると考えました。また、付加価値の高い製品づくりを目指す製品メーカーにとってもゴアテックスの良さを知ってもらうことは大きなメリットがあると考えました。そこでゴア社はインサイドアウトのビジネスモデルを活用します。同社は限定した生地メーカーやアパレルメーカーに対してのみ製品を提供するとともに、彼らと高い防水性や透湿性の製品を作り上げるために協働しました。この結果、ゴアテックス素材の「防水性・透湿性」はより磨きがかかっていくこととなりました。

【プリングルズのアウトサイドイン】

P&Gのポテトチップスにプリングルズという人気商品があります(P&Gが食品事業撤退により、2012年以降はケロッグが商標権を所有)。アメリカにはプリングルズ1枚ずつにスポーツや音楽などに関するクイズや豆知識などを印刷した「プリングルズ・プリンツ」という商品があります。この商品はパーティーで盛り上がるという新しい価値を消費者に届けることで大ヒット商品になったそうです。この商品はP&Gの社内の研究開発から生まれたのではなく、外部研究者とのやり取りから生まれたそうです(P&Gに当初ポテトチップスに絵や文章を印刷する技術がありませんでしたが、イタリアの大学教授が経営する小さなパン屋が食用のインクの技術を持っていることを知り製品改良を行いました)。まさしくアウトサイドインの手法を使って開発された商品ということが言えます。

自社と他社の情報の垣根をどう取り払って、どう自社の成長につなげていくか。情報を囲い込むのではなく、情報をどのように使っていくのかが企業の成長につながる時代になってきたのかもしれません。

(参考文献 図解&事例で学ぶ ビジネスモデルの教科書)

鴻海(こうかい)精密工業の“アンバンドリング”

本日は鴻海(こうかい)精密工業の“アンバンドリング”に関して記載します。

【成長する企業 鴻海精密工業】

フォックスコンの名前でも知られる鴻海精密工業は、台湾に本社を構え主な生産拠点を中国とする企業です。1974年の創業当時は小規模な企業でしたが、2011年にはグループの年間9兆7126億円の売上高に達し、その額は日立製作所や日産自動車の連結売上高を超える規模です。アップルのiPhone、ソニーのゲーム機やパソコン、モトローラ社の携帯電話など世界各地の大企業から高度な製品の生産を請け負っていて、各種パーツのOEM供給・筐体の組み立てを行っている老舗企業として世界規模の市場では名高い企業となっています(OEM:発注元企業のブランドで販売される製品を製造すること)。この鴻海精密工業の成長の理由には“アンバンドリング”というビジネスモデルにありました。

【アンバンドリングとは】

アンバンドリングとはビジネスの特色ごとにバリューチェーンを分け、特定の業務だけに特化するビジネスモデルを言います。ビジネスの特色は「顧客ビジネス」「インフラビジネス」「製品ビジネス」の3つに分けます。

・顧客ビジネス:顧客のニーズに即した商品やサービスを見つけて顧客に結び付ける。

・製品ビジネス:創造的な新製品やサービスを開発。

・インフラビジネス:物流、製造、取引処理など、毎日の業務を支える設備を管理する業務。

上記3つの仕事はそれぞれ求められるスキルや経済原理が異なりますので、一つの組織として活動していると、組織に矛盾が出たり、妥協が生まれたり、効率が悪くなったりします。そのことから、特色が違うビジネスは別会社にした方が、それぞれが強い企業になれるというわけです。例えば日本の電力会社を発電と送電部門を別会社にするということは、このアンバンドリングの考え方の一種となります。

【鴻海精密工業のアンバンドリング】

鴻海精密工業は自社の事業を上記の「インフラビジネス」に特化し、生産だけに経営資源を集中し、高度な製造ノウハウを蓄積していくことで、成長を遂げていきました。かつてはメーカーが自社で工場を持つのが普通のスタイルでしたが、近年、自社工場を持たず、企画と設計だけを手掛けるファブレスメーカーが増えています(例:任天堂・セガ・ダイドードリンコ等)。そうした企業は請負会社に対して、難解な設計や製造、並びに大量生産を求めてきます。それに対して鴻海精密工業はインフラビジネスに特化することにより、その期待に応えたのです。

企業の成長には強みを伸ばすことが一つの手段ですが、アンバンドリングはまさしくそのような手法であると思います。

さて、鴻海精密工業は3月10日に年内に1万5000人の新規採用を計画していて、新規採用者の配属先はクラウドやeコマースなどの次世代事業領域が含まれるという報道がなされました。同社は携帯端末市場の飽和により、その利幅が縮小していて、従来のビジネスモデルからの脱却を図ろうとしています。同社のこの選択が吉と出るか凶と出るか、注目されます。

(参考文献 図解&事例で学ぶ ビジネスモデルの教科書)

男性のいないフィットネスクラブ“カーブス”の戦略

本日は男性のいないフィットネスクラブ“カーブス”の戦略に関して記載します。

【フィットネスクラブ カーブス】

カーブスは1992年のアメリカテキサス州の一号店開業から10年程度で世界的な規模となったフィットネスチェーンです。日本では2005年10月から展開をスタートし、わずか8年間で1300店舗を達成しています。また会員数も58万人に上っています。店舗面積が40坪程度で、それほどスペースも取らない形なので、気づかなかったのですが、自宅の近所にもありました。意外と身近なフィットネスチェーンなのでしょう。

また、同社は50代以上の女性をメインターゲットにしていて、30分健康体操教室を行い効率性もアピールしています。

【カーブスの戦略】

カーブスは従来のフィットネスクラブから、ターゲット顧客である中高年女性が不要だと感じていた3つの要素“3つのM”を排除することによって成功しています。3つのMとは以下のようなものとなっています。

■Men:カーブスは女性専用のフィットネスになっています。顧客もスタッフも男性はいません。体型に自身のない女性や必死に運動している姿を男性に見られるのが恥ずかしい女性からの支持を受けることが出来ます。

■Mirror:鏡で自分の体型を見ると不愉快になる女性の気持ちを考え、鏡を設置していません。

■Make up:カーブスのトレーニングは器具を使って30分程度で終わります。激しい運動は行いません。ですので、シャワー室も必要ありませんし、化粧が落ちてしまうということもないようです。ちなみにフィットネスクラブによくあるプールもありません。

これら3つのMを取り除くことにより、運動不足は気になるが従来店には行きたくない中高年女性を取り込むことに成功したのです。中高年女性が無駄だと感じていたことを省き、コアのサービスに絞り込む“ノンフリル(装飾(フリル)がない)”な戦略をとったわけです。月会費も5900円~6900円と手ごろな価格となっています。

カーブスのビジネスモデルは店舗数を拡大するのにも役に立ちました。同社はシャワー室やプールがなく店舗面積も40坪程度と狭い場所を活用できるので、住宅街や商店街など主婦が通いやすい場所に多く出店することが出来たのです。

カーブスはまさしく、無駄を省きコアのサービスに特化することで成長した企業ということです。

(参考文献 図解&事例で学ぶビジネスモデルの教科書)

『ドンドンダウン オン ウェンズデイ』の価格システム

本日は『ドンドンダウン オン ウェンズデイ』の価格システムによる成功に関して記載します。

【『ドンドンダウン オン ウェンズデイ』の価格システム】

『ドンドンダウン オン ウェンズデイ』はリサイクル古着屋で、「オシャレと笑いで地球を救う、フルギデパートメントストア」をコンセプトとしている企業です。 “笑い”がコンセプトに入っているだけあってか、同社の価格システムはとてもユニークなものとなっています。この価格システムが当社の人気の秘訣となり、当初は青森の小さな古着屋でしたが、8年間で全国60店舗以上を持つ古着・雑貨チェーン店へと成長しています。

この価格システムの具体的な内容は“毎週水曜日になると、商品の値段が、服の価値に関わらず機械的に下がる”というものです。商品には値札の代わりに野菜や果物のイラストが描かれたタグがついていて、商品の値段はそのタグをもとに店内に掲示された「今週の値段表」で確認をしていきます。「今週の値段表」は7,350円~105円の10段階に分かれていて、今週スイカのイラストが5,150円であれば来週は4,200円といったように、毎週水曜日に機械的に1段階ずつ値下がりしていきます。

毎週水曜日に商品の価格が機械的に下がっていくので、うまくいけば、顧客は相場よりもはるかに安い価格で商品を手に入れるチャンスが出てくることになります。その一方で価格が下がるのを待ちすぎると、他の顧客に商品を購入されてしまい、買うことが出来なくなってしまいます。毎週価格が自動的に下がるという分かりやすいシステムにより、顧客はゲーム感覚で駆け引きを楽しむことができるようになっているのです。

また、この価格システムの導入で同社は「目利きを排除」することができました。古道具はその商品を見極めて価格設定を行うことが一般的ですが、目利きを排除すれば従業員にそのスキルが必要なくなります。このことにより、同社はフランチャイズ展開を可能とし、店舗の拡大につながったのです。

【『ドンドンダウン オン ウェンズデイ』の価格システム=ノンフリルな価格システムによる成功】

『ドンドンダウン オン ウェンズデイ』の価格システムは、価格設定を行うに当たり必要最小限の手間で事足りるようなものとなっています。このようなビジネスモデルを「ノンフリル」と言います。ノンフリルは“なくても支障のない余剰サービスを極力省き、コアのサービスだけを、質を下げることなく、低価格で提供する”ビジネスモデルですが、代表例としては航空会社のLCCが挙げられます。『ドンドンダウン オン ウェンズデイ』の価格システムを見てみると、従業員に古着の商品価値を見極める目利きの力が必要なく、古着の販売というコアのサービスに注力することができるシステムとなっています。また、この価格システムは商品の値段を変える際に値札を付け替えるという作業負担もカットできるものとなっています。

同社の開発した価格システムは、顧客が古着を買うことの楽しさを創出し、店舗運営を従来のものより単純化することに成功したのです。コアのサービスに絞り込むことによって新たなサービスを提供したこの価格システムは興味深いものがあります。

(参考文献 図解&事例で学ぶ ビジネスモデルの教科書)

JR東日本 自動販売機のビッグデータ活用

本日はJR東日本、自動販売機のビッグデータ活用に関して記載します。

【JR東日本の駅構内にある『カメラ付きの自動販売機』】

JR東日本の駅構内を歩いていると、大型ディスプレイで商品を映し出している自動販売機をよく見かけるようになりました。この自動販売機のディスプレイの大きさは47インチとかなり大きなものとなっているので、近くを歩くと目を引きます。この自動販売機が初めて登場したのは、2010年8月10日。JR東日本の自動販売機事業などを行うJR東日本ウォータービジネスが品川駅のコンコースとホームに2台設置したことに始まります。今では様々な駅で見られるようになりました。

この自動販売機、上の方を見上げてみるとカメラがあることに気づきます。このカメラを活用して顧客の顔画像を捉え、性別や年齢を推定。その顧客にあった最適な商品をおすすめしたりしています。性別と年齢の両方を正しく判断する確率は75%にもなるそうです。顔画像以外にも時間帯や気温などの要素を考慮に入れて商品をおすすめしているようです。

このようにJR東日本ウォータービジネスが設置している自販機は、今までの自販機と異なり、様々なデータを収集することができるものとなっているのです。

【ビッグデータ 自動販売機のデータ活用】

JR東日本ウォータービジネスは自販機から得られた大量のPOSデータを分析して、商品開発や販売戦略に役立てています。まさしく自販機のビッグデータの活用と言えると思います。

自販機からは大量にデータが得られるわけですが、同社がそのデータ分析から生み出した成果の一つに、2012年にリニューアル販売したペットボトル入り飲料水「フロムアクア」があります。同社は自販機から集めたデータを基に「フロムアクアは移動中に飲まれる場合が多い」という仮説を立てて、片手での飲みやすさを重視した、落ちないキャップを開発しました。リニューアル後、フロムアクアの年間売上は従来比で1.5倍に増えたと言います。確かに、実際に使ってみると、落ちないキャップは便利だと感じます。

その他にもデータ分析を基に自販機内の商品選定を行い、売上の増加を実現しています。例えば、午後の早い時間に自販機の売上が落ち込みやすい点に着目しデータ分析をした結果、500ミリペットボトル飲料は朝に売上のピークがあるのに対し、280ミリペットボトル飲料は全体の売上が下がる午後によく売れるということがわかりました。また午後の販売状況を細かく分析すると、40代女性が280ミリペットボトル飲料を買っていることがわかりました。そこで、40代女性にヒットしそうな商品を積極的に投入したところ、その時間帯の売上増につながったそうです。40代女性の購入者層は全体からみると少なかったため、データ分析を行う前まではその層に販売施策を打ち出すことはしていなかったそうです。しかし、購入者の属性、買った商品のカテゴリ、時間帯などを複合的に分析することで、隠れたニーズが発見され、売上の増加につながったのです。

カメラ付きの自販機によりJR東日本ウォータービジネスは顧客の年齢、性別ごとにどういった商品を購入しているかわかるようになったわけですが、この情報の蓄積は今後の自販機の販売活動にもプラスになっていくことと思われます。話は変わりますがローソンではPontaによる蓄積された情報を分析し、売上ランキングが上位でないけれど継続的に購入されている菓子を店頭に常に置くことによってリピート率を高めています。ビッグデータが言われる中、情報の活用は今後ますます重要になってくると思われます。

ブランド・イノベーション“ヴァージン・グループ”と“メソッド”

本日はブランド・イノベーション“ヴァージン・グループ”と“メソッド”に関して記載します。

【2つのブランド・イノベーションについて】

自社の製品やサービスのほうが競合他社の同種のモノより好ましいと消費者に感じてもらうためには、消費者に自社の製品やサービスについて認知してもらい、印象付けていくことが必要です。そのためには自社が競合他社よりも強いアイデンティティーを持つことが求められます。そのためにブランド・イノベーションを起こしていく必要があるわけですが、そのよくある例として、まず一つ目に、既存のブランドの傘の下で新しい製品やサービスを提供する“ブランドの拡充”があり、二つ目に、大きな理想や特定の価値観をわかりやすく一貫して表現する(“価値観の整合性”)ことで、企業をそれらの信条を象徴する存在として印象付けるという方法があります。上記2つについて“ブランドの拡充”については「ヴァージン・グループ」、“価値観の整合性”については「メソッド」を事例に以下記載していきます。

【ブランドの拡充 ヴァージン・グループ】

ヴァージン・グループはイギリスの多国籍企業です。その始まりはリチャード・ブランソンが1971年にロンドンのオックスフォード・ストリートにヴァージン・レコード1号店を開いたこととなります。1973年、レコード・レーベル、ヴァージン・ミュージックから映画「エクソシスト」のテーマ音楽として使われたマイク・オールドフィールドの『チューブラー・ベルズ』をリリースし、1977年にはパンク・ロックバンド、セックス・ピストルズと契約しています。

そして近年、ヴァージン・グループはヴァージンアトランティック航空やヴァージンアクティブといったブランドを持つ、34か国に5万人の従業員を擁する企業にまで成長しました。2011年のグループ総売上高は約210億ドルに達すると言います。最近ではブランソンが設立した、年500人の観光客を一人当たり25万ドルで宇宙へ送る計画を立てているヴァージンギャラクティックが注目を集めたりもしています。このような形でヴァージン・グループは携帯電話、輸送、金融サービス、メディア、フィットネスなど様々な分野への多角化を進めており、現在では、同社は自社のことを大手「国際投資グループ」と称しています。つまり、多角化を進めることによって消費者から自社と競合他社との差別化を図っているということが言えます。

【価値観の整合性 メソッド】

メソッドは2000年に設立された会社で、環境に害を与えない天然成分のホームケア製品を生み出しました。メソッドの商品は、今ではターゲット、ホールフーズ、クローガーをはじめとする世界各地の4万店以上の小売店で販売されています。この会社は持続可能性と環境感度を重視していて、メソッドの洗剤ボトルの大部分が100%再生プラスティックで作られています。また家庭用洗剤は有害化学物質を使っていません。オフィスも環境に配慮した建物となっていますし、動物実験も行わないとい徹底ぶりです。メソッドは環境に優しい企業としての特徴を尖らせて、消費者から自社のブランドをしっかりと認識してもらっているということが言えます。

製品やサービスが代替可能なものが増える中、企業がコーポレートアイデンティティー(IC)を確立し、消費者から自社のことをしっかりと認識してもらうことは、自社の商品・サービスを選んでもらうために重要なポイントだと思われます。

(参考文献 ビジネスモデル・イノベーション ブレークスルーを起こすフレームワーク10)