ドラッグストアの現状

本日はドラッグストアの現状について記載します。

【競合が激化するものの利益をしっかり上げているドラッグストア業態】

ドラッグストア業態は以前よりオーバーストア状態だと言われており、なおかつ、コンビニチェーンの中にも医薬品の取り扱いを始めるところが増えるなど競合環境が激しくなっていると言えます。そのような状況下において、九州地盤のコスモス薬局が京都や兵庫まで出店範囲を拡大したり、北海道のツルハHDが関東・関西圏での出店やM&Aを加速したりしており、大手の大量出店やM&Aによる拡大路線は依然続いています。

このような中で、多くのドラッグストアチェーンが取り組んでいることが、食品の品揃えの充実です。これは客数を食品で増やし、利益を医薬品で稼ぐ戦略です。“商品別売上高構成比と粗利益率”を見てみると、「医薬品の売上高1兆8,810億円(31%)、粗利益率35%」「化粧品の売上高1兆3,466億円(23%)、粗利益率30%」「日用雑貨の売上高1兆2,937億円(22%)、粗利益率20~25%」「その他(食品等)の売上高1兆4,195億円(24%)、粗利益率10~15%」となっています。医薬品や化粧品の粗利益率が高いのに比べ、食品の粗利益は低いことがわかります。低価格のお菓子などを販売するドラッグストアをよく見るようになりましたが、食品を徹底的に値下げすることにより、その低価格をアピールし食品スーパーやGMSから顧客を奪っているのです。値下げした食品で集客し売上高を増やすとともに、医薬品や化粧品で利益を取っているのです。

【ドラッグストアの新たな動き】

ドラッグストアは大型化が進んでいましたが、その動きは近年一段落し、超高齢化社会を見据えて狭い商圏でも利益が出せる小型店開発をするチェーンが目立つと言います。サンドラッグはコンビニチェーンと組まず独自に「サンドラッグCVS」を開店しています。また、ウエルシアHDもJR浦和駅前に店舗面積100平方メートルのコンビニ程度の大きさの小型店を出店。首都圏の駅前への立地を拡大する動きを見せています。

小型店の出店以外の動きとして、サンドラッグやスギHDが自社内に持つディスカウントストア業態を郊外中心に拡大しているとも言います。

食品スーパーにみられる小商圏化の動きはドラッグストアにも現れているようです。

【ドラッグストアの今後の動き】

ドラッグストアの競合環境は厳しいですが、大手の利益は依然として高水準にあります。先ほど食料品で集客し医薬品や化粧品で利益を取ると記載しましたが、高い利益率を取れる理由には調剤事業もあるようです。高齢化に伴い、調剤の総売上高が拡大する中で、厚生労働省の面分業化政策を後ろ盾にドラッグストアでの処方箋受付枚数も増加しているようです(面分業:医院を限定せず広い地域からの処方箋を受けること。)。この傾向はしばらく続きそうで、各社とも調剤の取扱店と薬剤師の採用数を増やしているようです。

今後、ネット販売も進んでいきますので、調剤事業の動きを含めて、ドラッグストアの形は変化していくことが想定されます。

【参考 ドラッグストア各社の現在の状況】

・マツモトキヨシHD(ドラッグストア1位)

関東圏に強みを持つ。売上高4,563億円 営業利益196億円

・サンドラッグ(ドラッグストア2位)

東京西部地盤。戦略的買収で拡大。売上高4,074億円 営業利益247億円

・スギHD(ドラッグストア3位)

東海3県地盤。調剤併設型のドラッグを展開。売上高3,436億円 営業利益184億円

・ツルハHD(ドラッグストア4位)

北海道を起点に南下。売上高3,430億円。営業利益220億円

・ココカラファイン(ドラッグストア5位)

関東地盤のセイジョー、関西地盤のセガミが核。売上高3,358億円 営業利益86億円

・アインファーマシーズ(調剤薬局1位)

北海道地盤。ドラッグストアも展開。売上高1,545億円 営業利益97億円

・日本調剤(調剤薬局2位)

ジェネリック医薬品の販売や薬剤師派遣も行う。売上高1,394億円 営業利益32億円

(参考文献 会社四季報業界地図)

家電量販店の現状

本日は家電量販店の現状に関して記載します。

【家電量販店市場の状況】

日本国内の家電販売店市場は、2010年度にアナログ停波によるテレビの買い替え特需により10兆2,887億円とピークとなった後、11年度8兆9,533億円、12年度7兆9,788億円と急速に縮小しました。しかしながら、2013年度には市場規模の縮小は下げ止まりを見せており、更に14年度は4Kテレビの登場によるテレビの買い替え需要があるのではないかと期待されています。

2012年度、家電販売店市場が縮小する中、大型再編が相次ぎました。採算悪化に苦しむコジマは生き残りを懸けてビッグカメラの傘下へ。それにより売上高8000億円規模の2位連合が誕生しました。首位のヤマダ電機も12年12月にベスト電器を子会社化。13年2月にベスト電器の店舗システムをヤマダ電機に合わせるなど、スピード感を持った経営統合を行っているようです。このような状況から見て、家電量販店のライフサイクルは成熟期に入ったと言えるのかもしれません。

【ネット通販の台頭】

アマゾンなどのネット通販専業が拡大してきていますが、そのことは家電量販店にとっては脅威となります。ショールーミングと言われる購入スタイルをよく耳にもしますが、ネットで最安値をチェックして購入を決める消費者が増えています。大手各社とも対抗のためにネット通販を強化しているようですが、販売から数か月経過したような商品ではネット専業者の方が安い場合が多いようです。価格勝負になれば利益率は低下し企業体力が落ちていくことにもつながります。大型店ならではの品揃えやサービスを行い、消費者にその魅力を伝えていくことが生き残る上で重要になるように思われます。

【家電量販店、生き残りの一つのスタイル:ピーシーデポコーポレーション】

ピーシーデポコーポレーションという、神奈川県を地盤とし、関東甲信越地方へのドミナント戦略を徹底している家電量販店・パソコンショップがあります。同社は会員を対象にしたサービス収入やデジタル雑誌の定期購読で粗利益の過半を稼いでいるようで、家電量販店の生き残り策の一つを体現していると言います。

同社は2006年にPCの月額会員制保守サービス「プレミアムサービス」を販売。ハード・ソフトメーカー、OSやインターネットプロバイダーなど21社の企業と協力し、ウィルス・スパイウェアのブロックと有害サイト閲覧制限などを行う「パソコンの継続的な安全性の確保」、不意な故障やトラブルに対応する「パソコン延長保証」などのセットメニューを用意し販売しました。このサービスは問題解決型の商品という切り口となりPCのトラブルが煩わしく感じられる人にとって非常に便利に感じられるだろうと思われます。

また、同社は2013年6月に扶桑社と協業し、全国300セット限定で扶桑社の発行する月刊誌「ESSEデジタル版」とiPad miniなどのタブレット端末をセット販売しました。iPad miniの場合は、当時毎月税込1,050円で3年購読を前提に販売しました。同社は扶桑社以外にも、東洋経済、プレジデント、学研、日経BP社等とも協業しています。

家電はショールーミングがされやすい商品だとも言われます。家電量販店各社が今後生き残りを懸けて、その在り方を変えていくようにも思われます。

【参考 家電量販店各社の現状】

・業界1位 ヤマダ電機

郊外と駅前大型店の全方位戦略で出店攻勢。売上高1兆7,014億円 経常利益479億円

・2位 エディオン

広島のデオデオと名古屋のエイデンなどが母体。売上高6,851億円 経常利益14億円

・3位 ケーズHD

北関東地盤。買収を重ねて全国区へ。売上高6,374億円 経常利益233億円

・4位 ヨドバシカメラ

カメラ卸売が前身。駅前の一等地のみに大型店出店。売上高6,371億円 経常利益469億円

・5位 ビックカメラ

駅前出店に特化。コジマ買収により合算では業界2位。売上高5,180億円 経常利益61億円(12年8月期)

・6位 コジマ

北関東地盤。ビックカメラ傘下となるが店舗ブランドは継続。売上高3,703億円 経常利益42億円(12年3月期)

・7位 上新電機

大阪地盤。売上高3,659億円 経常利益53億円

・8位 ノジマ

神奈川地盤。ノジマモバイルの店舗名で携帯電話販売強化。売上高1,999億円、経常利益34億円

(参考文献 会社四季報業界地図2014年版)

ホームセンター・ディスカウントストアの現状

本日はホームセンター・ディスカウントストアの現状に関して記載します。

【ホームセンターの動きに関して】

ホームセンターの市場規模は2005年から減少が続いていましたが、震災復興需要を支えとして2011、12年度と2年連続でプラス成長を遂げました。

ホームセンターの強みは園芸やDIYなどの地域密着型商品にあります。2012年のホームセンターの商品構成を見てみると、DIY用品・素材25%、家庭日用品20%、園芸・エクステリア13%、電気8%、ペット8%と続いていきます。家庭用品を中心にドラッグストアやスーパーなどの多業態との競争が激化しており、利益率の高いDIYや園芸・エクステリアの構成比が上昇する一方で、家庭用品の構成比は価格競争の影響により下降傾向にあります。

そのような中、各社は自社で開発し海外企業などに生産委託するPB商品に注力しています。PB商品の販売をすることで、他社との差別化を図ることができますし、利益率の改善につなげていくことができるためです。

一方でPB商品にはPBの罠と言われるデメリットが生じることもあります。PBの罠とは、低価格化・粗利益改善を進めても、売上高自体を伸ばせなければ利益が減る危険性があることを指します。利益を減らさないためには、商品の戦略的な値下げをしなければなりませんし、商品開発力向上に向けた組織力強化や、在庫リスクに対応できる財務力も問われることとなります。

ホームセンター業態においても多業態との競争が激化しています。多業態にも言えることではありますが、顧客の求めるPB商品の開発・販売並びに販売にあたっての価格戦略が、利益を創出するためのキーポイントとなります。

【100円ショップの動きに関して】

100円ショップ業態は「ダイソー」を展開する大創産業が1991年に始めたのですが、節約志向を追い風に急成長を遂げました。ところが、2000年代後半に入ると効率的に買い物をする顧客が増えたことに合わせ、スーパーなども対抗値下げに動きました。このように100円ショップ業態を取り巻く環境が厳しくなってきた中で「セリア」が大きな成長を遂げています。2013年3月期の売上高で、2009年との売上高伸び率を見てみると、大創産業が4.1%に対して、セリアが43.8%と、セリアがその数字を大きく伸ばしています。これはセリアがPOSを活用し、個々の商品の顧客支持率から立地・規模などを考慮した上で、店ごとに理想的な商品構成を予測し、データ分析により「おしゃれ雑貨店」として他社との差別化を進めたことに要因があります。また、セリアの商品アイテム数は大創産業の半分以下の1万9000点ですが、毎月500点以上を入れ替えており、新商品比率は約3倍となっています。

100円ショップ業態も自社を成長させていくためには、低価格の商品を提供するだけではなく、その質が顧客から問われるようになってきていることが伺えます。

海外では消費税改定時に従来の小売業が衰える一方で、ディスカウント業態が成長するということが起こりました。日本においては消費増税後、小売業がどのような動きとなるのか今後注目されます。

【参考 ホームセンター・ディスカウントストア各社の現状】

■ホームセンター

・DCMホールディングス

カーマ、ダイキ、ホーマックが統合し最大手に。売上高4,342億円 営業利益190億円

・カインズ

ベイシアグループ。関東を中心に全国へ展開。売上高3,413億円

・コメリ

新潟地盤。農家や建築向け小型店に強み。売上高3,192億円 営業利益191億円

・コーナン商事

近畿圏のドミナント展開から関東や東北進出。売上高2,849億円。営業利益163億円

・ナフコ

家具店とホームセンターの併合店に特色。売上高2,241億円。営業利益112億円

・ジョイフル本田

北関東で巨艦店を運営。売上高1,817億円

・ケーヨー

かつての業界首位。関東地盤。売上高1,808億円。営業利益34億円

・LIXILビバ

埼玉地盤。「ビバホーム」「建デポ」等を全国展開。売上高1,546億円。営業利益50億円

・島忠

埼玉県地盤に家具・ホームセンターを大都市で展開。売上高1,594億円。営業利益136億円

■100円ショップ

・大創産業(ザ・ダイソー)

海外展開強化中。売上高3,519億円

・セリア

ファッション性の高い店舗、商品開発で先行。売上高982億円。営業利益83億円

・キャンドゥ

食品軸に主婦向け強い。売上高626億円

・ワッツ

小型店柱で小商圏向け日用消耗品に強み。売上高407億円。営業利益20億円

■ディスカウントストア

・ドン・キホーテ

HCドイトや長崎屋買収で多角化。PBに強み。売上高5,683億円 営業利益323億円

・トライアルカンパニー

九州から全国展開。売上高2,784億円。営業利益42億円

・オーケー

首都圏でPB食品に強みを持つディスカウントスーパー。売上高2,503億円。営業利益136億円

・MrMax

九州地盤。ショッピングセンターに入居の家電、日用品ディスカウントストア。売上高1,061億円

・大黒天物産

岡山地盤の食品ディスカウントストア。「ラムー」「ディオ」など。売上高976億円

(参考文献 会社四季報業界地図2014年版 週刊東洋経済2014 4/26)

ショッピングセンターの現状

本日はショッピングセンター(SC)の現状に関して記載します。

【SC業界の店舗数・売上高に関して】

SCの既存店売上は2009年を底に回復傾向にあり、2012年は既存店売上が0.5%増と6年ぶりにプラスに転じました。SCのキーテナントとなる総合スーパー等の売上高については1.6%減と停滞が続く一方で、専門店などの一般テナントが1.5%増と伸びています。

新規に開業するSCについては2007年の97をピークに減り続け、2012年は35まで減少しましたが、2013年は1~6月だけで31と増加へ転じました(2007年に改正まちづくり三法が施行されて、郊外型SCの開発が滞りました)。

また、SCの店舗面積は年々増加傾向にあり、それに伴いSCの売上高も2009年に一旦減少したものの総じて増加傾向にあります。

【人気のマストラ拠点】

マストラ拠点とは空港、高速道路、ターミナル駅など大量輸送機関(マストラフィック)拠点のことです。つまり、空ナカ、道ナカ、駅ナカと言われる立地ですが、近年はそれらの立地へ開業することが好まれる傾向にあります。少し前まで行われていた、郊外へ低コストで大型SCを開業するスタイルとは異なってきているということが言えます。なお、近年開業のSCは都心部や駅前好立地が多くなっています。2012年には「渋谷ヒカリエ」や「東京ソラマチ」、2013年には東京・丸の内の日本郵便が始めて手がける商業施設「キッテ」や大阪市の「グランフロント大阪」、2013年の12月には店舗面積13.5万平方メートルという巨大なSC「イオン幕張新都心」が開業しています。

【SCが成長を続けるために】

SCが利益を生み出す仕組みはテナントの新陳代謝にあります。開業当初は人気のテナントを集めて百貨店やスーパー単独店よりも多くの集客を実現し売上を伸ばします。その後数年を経て、個々の専門店ブランドの売上に陰りが出てきたら、一定割合を入れ替えて集客を維持し、売上を確保するのです。

SCの大量出店や他業態の小売業との競争激化もある中で、今後もSCが成長を続けていくためには、各SCがテナントの入れ替えを継続的に行うとともに、改装などを進めて常に新鮮なSCを作っていくことが求められるのでしょう。

【参考 ショッピングセンター各社の現状】

■不動産・商社系

・三井不動産

三井アウトレットパークを出店。

三井不動産商業マネジメン:売上高322億円

・三菱地所

プレミアム・アウトレット(御殿場プレミアム・アウトレット等)やアクアシティお台場等を出店

サンシャインシティ:売上高267億円 営業利益66億円

三菱地所・サイモン:売上高339億円 営業利益109億円

・森ビル

ラフォーレ原宿など出店

森ビル流通システム:売上高43億円 営業利益2.8億円

・東急不動産

東急ハンズ、二子玉川ライズなど出店。

小売事業の売上高828億円 営業利益8.6億円

■鉄道系

・東日本旅客鉄道(JR東日本)

ルミネやアトレを出店。駅の外へも本格的に出店してきている。

ルミネ:売上高3,082億円 営業利益107億円

アトレ:売上高337億円 営業利益55億円

仙台ターミナルビル:売上高158億円 営業利益18億円

・西日本旅客鉄道(JR西日本)

天王寺ミオ、京都駅ビルなど。大阪駅のルクアが好調。

JR西日本SC開発:売上高66億円 営業利益11億円

天王寺SC:売上高83億円 営業利益14億円

・九州旅客鉄道(JR九州)

JR博多シティ:売上高126億円 営業利益11億円

小倉ターミナルビル:売上高46億円 営業利益0.7億円

・京王電鉄

渋谷マークシティなど出店

売上高1,614億円 営業利益53億円

・東武鉄道

東京ソラマチなど出店

売上高2,094億円 営業利益19億円

・小田急電鉄

ハルク、ミロードなど

売上高2,236億円 営業利益38億円

■流通系

・高島屋

玉川高島屋SCなど

東神開発:売上高321億円 営業利益65億円

・セブン&アイホールディングス

アリオ14施設。売上高は焼く3,000億円弱

・イオン

イオンモール、イオンタウンを展開。

イオンモール:売上高1,614億円 営業利益417億円

イオンタウン:食品スーパーが核。施設数115

※ショッピングセンターの2012年の売上高は28兆1,876億円。百貨店の同年の売上高は6兆1,453億円。総合スーパーの同年の売上高は12兆5,340億円。売上高で見たショッピングセンターの市場規模は大きいことがわかります。

(参考文献 会社四季報業界地図2014年版)

家具・インテリア・生活雑貨店の現状

本日は家具・インテリア・生活雑貨店の現状に関して記載します。

【新設住宅着工戸数から見る、家具・インテリア業界】

家具の買い替え需要を生み出すために、家具市場の先行指標として注目される「新設住宅着工戸数」を見ると、その数が増加しており、家具・インテリア業界に回復の兆しがみられると言います。国土交通省が2014年1月31日に発表した2013年の新設住宅着工戸数は、前年比11.0%増の98万25戸となっていて、前年比は4年連続で増加しています。新設住宅着工戸数は少子高齢化に伴う人口減少で長期的に見ると減少していくことが想定されますが、過去1996年度1,630千戸、2006年度1,285千戸、2010年度819千戸と減少が続いてきたことを踏まえれば、近年の新設住宅着工戸数の増加は家具・インテリア業界にとって明るい話題です。

しかし、このような環境下にあるものの、SPAモデルで低価格を訴求してきたニトリHDやIKEAといった大手企業は拡大する一方、中小家具店・メーカーなどは苦戦を強いられていると言います。

【円高に伴う対応】

ニトリでは例年約3割の商品を入れ替えるそうですが、2013年度は6割以上の商品を見直しています。例えば、主力商品であるソファの中心価格を4万9,900円から5万9,900円(消費増税前の税込み価格)へと切り上げを行っています。ニトリは商品の改廃を積極的に進め、高単価かつ機能性のある商品の拡充を図っているのです。大塚家具についても輸入品の値上げを実施するなど収益確保の動きを活発化しています。

【生活雑貨系の店舗に関して】

生活雑貨系では「無印良品」を展開する良品計画、東急ハンズ、ロフト、「フランフラン」主体のバルスなど多くの企業が参入していると同時に、オリジナル商品の開発や幅広い品揃えなど各社でそれぞれの強みを持っています。生活雑貨は、総合スーパーや個人店でも販売されていることから厳しい競合環境にあります。各社の強みを活かして他社と差別化し、ブランドや商品価値を訴求していくことが重要となってきます。

長いデフレを経験した消費者に対して、円安や消費増税を受けて、単純に価格を上げるのではなく、価値を伴った商品を販売していくことが、利益を上げていくためには、必要なのでしょう。

【参考 家具・インテリア・生活雑貨店各社の現状】

■家具主体

・IKEA(家具世界1位)売上高3兆5,916億円 営業利益4,526億円

…日本では6店舗、売上高674億円

・ニトリHD(家具チェーンの国内最大手)売上高3,487億円 営業利益615億円

・ナフコ(西日本地盤)売上高2,241億円 営業利益112億円

・島忠(家具・インテリア雑貨・ホームセンターを展開)売上高1,594億円 営業利益136億円

・大塚家具(中高級品、輸入品に強み)売上高545億円 営業利益11億円

・東京インテリア家具(東日本中心に展開)売上高418億円

・ミサワ(20~30代女性主要顧客)売上高51億円 営業利益3.8億円

※家具世界1位のイケアや家具国内1位のニトリHDの店舗に行って感じたことは、売場レイアウトでワンウェイコントロールがしっかりとなされていると思いました。価値ある商品を低価格で提供するイメージの強い両社ですが売場レイアウトも工夫が凝らされているように感じます。

※ミサワは「unico」ブランドの雑貨店を展開しています。若い女性に人気があり、2013年にはルミネ新宿やあべのハルカスなど人気の商業施設に次々と出店しています。

■雑貨主体

・良品計画(無印良品)売上高1,883億円 営業利益183億円

・ロフト(セブン&アイグループ)売上高861億円 営業利益22億円

・東急ハンズ(東急不動産グループ)売上高828億円 営業利益8.6億円

・サザビーリーグ(「アフタヌーンティー」など展開)売上高877億円

・パスポート(首都圏中心に雑貨専門店を展開)売上高135億円 営業利益4.6億円

・バルス(「フランフラン」が主力)店舗数156

・スタイリングライフHDプラザスタイルカンパニー 店舗数:プラザ77店 その他52店

(参考文献 会社四季報業界地図2014年版)

アパレルメーカーの現状

本日は量販・百貨店販路の縮小が進むアパレルメーカーの現状に関して記載します。

【アパレルメーカーを取り巻く環境変化】

アパレルメーカーは婦人服・紳士服・子ども服などの幅広い商品を手掛ける総合力で、戦後、アパレル業界の成長を牽引してきました。しかしながら、1990年代以降になるとユニクロなどの低価格専門店が拡大してきた影響もあり、1世帯当たりの衣料品関連支出は右肩下がり。それとともにアパレルメーカーが主販路とする百貨店や量販店での販売規模は縮小していきました。2012年の衣料品市場の販路別シェアを見てみると、専門店58.2%(前年比1.2%増)、百貨店28.3%(0.7%減)、スーパー13.5%(0.4%減)と、その割合は専門店が1/2以上を占めている状況になっています。

【アパレルメーカー再編】

上記のような厳しい環境下でアパレルメーカーの再編が起こっています。かつて業界首位だったレナウンは2010年に中国の如意グループの出資を受けていました。これにより中国事業の拡大を目指したのですが苦戦を強いられます。そして2013年には如意グループの出資比率が41%から53%となり、レナウンは同グループの連結子会社になりました。2011年には東京スタイルとサンエー・インターナショナルが経営統合。TSIホールディングスが誕生し、不採算ブランドの撤退と新規チャネルへの種まきを積極的に進めています。

【今後の成長へ向けた新規チャネルの育成】

TSIホールディングスが新規チャネルへの種まきを行っているように、今後の成長のカギとして新規チャネルの育成に取り組む企業が出てきています。1990年代にいち早くSPA路線に舵を切ったワールドは、すでにファッションビルやSC向けブランドの直営店展開が主力となっています。また、ワコールも20~30代半ばのOLをターゲットとしたSPA型ブランドショップ「アンフィ」の出店を拡大。東京メトロ表参道校内のエチカなど全国68店舗に展開し(2013年3月現在)、2012年の売上高は71億6,600万円と前年比118%と成長を遂げています。

最近ではコト消費に対応してライフスタイル提案型ブランドも登場しています(ライフスタイル提案型ブランド:衣料品に限らず、生活雑貨や食品等を取りそろえ、衣食住での総合的な提案を行うブランド。カフェなど飲食を提供する店舗を持つものもあります)。2009年に千駄ヶ谷に日本1号店を出店した「ロンハーマン」はメンズ・ウィメンズ・キッズのウェア、アクセサリーや雑貨など、オリジナルブランドをはじめ、カジュアルからラグジュアリーまで商品を展開。セレクトショップ業界最大手のビームスは2012年に新業態「B:MING LIFE STORE(ビーミング ライフストア)」を立ち上げ、メンズ、ウィメンズはもとより、キッズ、ベビーまでカバー。アパレルショップとして知られている「トミーバハマ」の銀座店は街路に面してバーカウンターを設置しています。売られている商品がジャンルで区切っているのではなく、世界観やコンセプトによってセレクトされているということに特徴があります。

アパレルメーカーのSPA化やライフスタイル提案型ブランドの登場は既存の小売店との競争が発生することが容易に想定されます。今後、小売店とアパレルメーカーの業種を超えた競争も増していきそうな気もします。

【参考 アパレルメーカー各社に関して】

■百貨店主力の総合アパレル

・オンワードホールディングス(23区、組曲、ICB、五大陸など) 売上高2,583億円 営業利益111億円

・三陽商会(BURBERRRYをライセンス販売。EPOCA、Paul Stuart) 売上高1,076億円 営業利益58億円

・イトキン(HIROKO KOSHINO、MICHEL KLEIN) 売上高1,099億円 営業利益6.5億円

・ファイブフォックス(COMME CA DU MODE) 売上高993億円

・ラピーヌ(LAPINE BLANCHE、Pierre Cardin) 売上高111億円 営業利益2.2億円

・レナウン(如意グループ)(D’URBAN、INTERMEZZO、SIMPLE LIFE) 売上高761億円 営業利益▲5.1億円

■ファッションビル、SC主力の総合アパレル

・ワールド(UNTITLED、HusHusH、TAKEO KIKUCHI) 売上高3,364億円 営業利益71億円

・サンエー・インターナショナル(TSIホールディングス)(NATURAL BEAUTY、FREE’S SHOP) 売上高1,028億円 営業利益7.0億円

・東京スタイル(TSIホールディングス)(22 OCTOBRE) 売上高826億円 営業利益▲21億円

■下着・靴下

・ワコールホールディングス(傘下に通販PEACH JOHN) 売上高1,771億円 営業利益80億円

・福助(足袋、ストッキング等 豊田通商傘下) 売上高267億円 営業利益2.0億円

・グンゼ(紳士肌着首位) 売上高1,323億円 営業利益17億円

・ナイガイ(靴下・ストッキングの老舗) 売上高173億円 営業利益0億円

■デザイナーズブランド

・コムデギャルソン(川久保玲、渡辺淳弥)売上高150億円

・エイ・ネット(三宅デザイン事務所)(TSUMORI CHISATO、ZUCCa) 売上高187億円

・イッセイミヤケ(三宅デザイン事務所)(ISSEY MIYAKE)売上高115億円

・ヨウジヤマモト(Y’s、Yohji Yamamoto):2009年に民事再生法の適用申請、投資会社の支援下で再出発

(参考文献 会社四季報業界地図2014年版)

衣料専門店の現状

本日は衣料専門店の現状に関して記載します。

【衣料専門店:市場の低迷と競争激化】

アパレル小売市場は2008年に市場規模が10兆円を割り込んだ後も低迷が続いています。好調のイメージの強いSPAに関しても、製販一体による機動的な商品企画・投入による回転率と粗利の高さはいまだ健在のようですが、競合との同質化や過当競争に悩むブランドが増えていると言います。またH&MやZARAなどの海外ファッション勢が日本での出店エリアの拡大や別業態での上陸を着実に進めてきていることにより(H&M 2013年に関西初出店、ZARA インテリア業態でZARAHOMEを出店)、国内外企業間での競争も激化してきています。

【円安に伴う影響】

2012年末からの円安も衣料専門店に大きな影響を与えています。1年足らずで1ドルが80円から100円台になったことによって、中国など海外からの調達に依存する専門店にとって、そのことが大きな利幅圧縮要因となったのです。しまむらは2014年2月期の決算で、営業利益が前年同期比▲8.1%の418億円と5期ぶりの減益に転落してしまいました。

更にこの円安に加え中国での労務費高騰も海外からの商品調達コストを引き上げています。

この状況に対応すべく、各社はASEANやバングラデシュなど、より賃金の低い地域に生産移転を進めています。

【ワンランク上の商品展開へ】

より賃金の低い地域に生産移転を進める一方で、各社は相次いでワンランク上の商品の拡充を図っています。

しまむらは2014年2月から新疆綿やプラチナコットンなど肌触りのよい上質な素材を使用したPB「クロッシー」を展開。480円や980円の価格が定番だったTシャツで、1480円と1000円以上の価格帯での展開に踏み切りました。

ユニクロでは2013年秋冬商戦で高級素材のシルクやカシミヤを使用した高単価商品の展開をスタートさせました。主力商品のヒートテックでは通常より1.5倍暖かく単価も1.5倍する「エクストラウォーム」を新たに開発。2014年春からはフランスのファッションアイコンとして知られるイネス・ド・ラ・フレサンジュとのコラボレーションコレクションを展開。商品単価の引き上げを始めています。

商品単価の引き上げにはリスクも伴っています。レディスカジュアルのSPAハニーズは2013年秋にジャケットなどの単価を500円引き上げました。その結果、客数は10%以上減。値引き処分を余儀なくされてしまいました。消費者が商品の価値をしっかりと見極めるようになってきていますので、素材やデザイン、機能性などの付加価値を向上させることによって、粗利を確保できるようにしていかなければならないということです。

このことは衣料専門店に限らないようにも感じられます。

【参考:世界の衣料専門店チェーンランキング(2012年度)】

1位 インデックス(スペイン) 売上高2兆729億円 主要ブランド「ZARA」

2位 へネス&マウリッツ(スウェーデン) 売上高1兆8,119億円 主要ブランド「H&M」

3位 ギャップ(アメリカ) 売上高1兆4,868億円 主要ブランド「GAP」

4位 リミテッドブランズ(アメリカ) 売上高9,936億円 主要ブランド「Victoria’s Secret」

5位 ファーストリテイリング(日本) 売上高9,286億円 主要ブランド「ユニクロ」

6位 ネクスト(イギリス) 売上高5,322億円 主要ブランド「next」

7位 プライマーク(イギリス) 売上高5,254億円 主要ブランド「Primark」

8位 しまむら(日本) 売上高4,920億円 主要ブランド「ファッションセンターしまむら」

9位 アバクロンビー&フィッチ(アメリカ) 売上高4,285億円 主要ブランド「Abercrombie & Fitch」

10位 アルカディアグループ(イギリス) 売上高4,018億円 主要ブランド「TOPSHOP」

インデックスが2兆円、へネス&マウリッツ、ギャップが1兆円を超える売上高を誇っています。日本のカジュアルSPA、No1のファーストリテイリングの売上高は9,286億円とインデックスと比較すると1/4ほどとなっており、グローバル競争の激しさが伺えます。

【参考:衣料専門店各社の売上高・営業利益に関して】

■カジュアルSPAの会社

・ファーストリテイリング(ユニクロ、GU) 売上高9,286億円 営業利益1,264億円

・ポイント(LOWRYS FARM、GLOBAL WORK) 売上高1,216億円 営業利益97億円

・パル(Ciaopanic、GALLARDA GALANTE) 売上高924億円 営業利益75億円

・クロスカンパニー(earth music&ecology) 売上高639億円

・ハニーズ(Honeys) 売上高619億円 営業利益47億円

■紳士服チェーン

・青山商事(洋服の青山、THE SUIT COMPANY) 売上高2,124億円 営業利益212億円

・AOKIホールディングス(AOKI、ORIHICA) 売上高1,605億円 営業利益170億円

・コナカ(コナカ、SUIT SELECT) 売上高659億円 営業利益42億円

・はるやま商事(はるやま、P.S.FA、フォーエル) 売上高523億円 営業利益28億円

■セレクトショップ

・ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS、green label relaxing) 売上高1,150億円 営業利益125億円

・ベイクルーズグループ(JOURNAL SANDARD) 売上高643億円

・ビームス(BEAMS) 売上高551億円

・トゥモローランド(TOMORROWLAND) 売上高413億円

■ジーンズカジュアル

・ライトオン(Right-on、FLASH REPORT) 売上高853億円 営業利益39億円

・マックハウス(Mac-House、Blueberry) 売上高386億円 営業利益27億円

・ジーンズメイト(JEANS MATE、ワケあり本舗) 売上高109億円 営業利益▲1.5億円

ファーストリテイリングの売上高・営業利益の大きさが国内の衣料専門店他社と比較するとわかります。

(参考文献 会社四季報業界地図2014年版 週刊東洋経済2014 4/26)

コンビニエンスストア業界の現状

本日はコンビニエンスストア業界の現状に関して記載します。

【コンビニ業界の状況】

国内コンビニエンスストアの店舗数の限界と言われた4万店を2012年に突破した後も、セブン-イレブンやファミリーマートを中心に出店競争が続いています。その中で既存店の売上高は厳しい状況にあります。そして、新規出店や商品開発を進める上位チェーンと体力のない中堅以下の格差が鮮明になってきています。

【セブン-イレブンに関して】

セブン-イレブンはパウチ惣菜など使い切りサイズの品揃えを厚くして、高齢者や単身者の支持を得ています。また、2013年に淹れたてコーヒーを導入し、一部ファストフード店の顧客を奪って業態を超えた顧客の争奪戦となりました。出店数を加速させており、2012年度に1350店、2013年度に1500店と出店しています。

【ローソンに関して】

2013年10月にローソンはキャッチコピーを「マチの健康ステーション」へ変更し、高齢化による顧客の健康志向が今後増すことを想定し、「健康に配慮した商品ならローソン」を連想させるような店づくりを進めています。2013年にローソン初の直営調剤薬局併設店、ローソンホーム薬局蒲田店がオープン。在宅介護を受けている人に薬の出張調剤を行っています。その中で宅配する薬と一緒にコンビニのお菓子を持っていくこともあるそうです。東京都大田区にある久が原一丁目店では、無料で使えるタニタの業務用体組成計を設置し、顧客の定期的な来店を促しています。その他、野菜販売の拡大、医薬品の販売に取り組み、健康をテーマとした店づくりを試験的に行っています。

【ファミリーマートに関して】

ファミリーマートは2012年10月に新PBの「FamilyMart collection」を立ち上げ、品揃えの幅を拡大。高質な商品を開発し、価格よりも質を重視した戦略を採っています。また国内の新規出店においては地方都市や駅ナカを中心に展開。2012年に大阪市営地下鉄の駅構内に2012年開店したり、2013年に近畿日本鉄道と駅ナカ売店・コンビニ事業について業務提携し、近鉄の駅ナカ売店等をファミリーマート店舗に順次転換していくことに基本合意したりしています。

【コンビニの大量出店に伴って】

コンビニが大量出店するのに伴って、加盟店オーナーが不足するという問題が発生しているようです。各チェーンとも一人のオーナーが複数の店舗を経営する「複数店経営」を推進しているようです。店舗の質を維持しつつ、大量出店を続けられるかは、各チェーンの対策にかかっています。

【参考:現在のコンビニエンスストア各社の状況】

コンビニ売上高1位はセブン-イレブン・ジャパン。チェーン全店売上高3兆5,084億円で、営業利益1,867億円とコンビニ業界では群を抜く利益水準となっています。全店平均日販は66.8万円とこちらも高水準。国内店舗数は1万5,072店です。

続く売上高2位はローソン。チェーン全店売上高は1兆9,065億円、営業利益662億円。全店平均日販54.7万円、国内店舗数は1万1,130店となっています。

3位は伊藤忠系のファミリーマート。チェーン全店売上高は1兆5,845億円、営業利益431億円、全店平均日販52.3万円、国内店舗数は9,481店となっています。前述のように鉄道10社(西武・東武・京成などとも提携)と駅売店で提携し駅ナカでも強みを見せています。

4位はユニーグループ・ホールディングスの完全子会社、サークルKサンクス。チェーン全店売上高8,788億円、営業利益182億円、全店平均日販46.7万円、国内店舗数6,242店となっています。

5位はイオンが54%出資する、ファストフードに特色のあるミニストップ。チェーン全店売上高、3,526億円、営業利益50億円、全店平均日販46.5万円、国内店舗数2,192店となっています。イオンとの連携を強化し、惣菜や日配品を拡大しています。

その他のコンビニとして、神奈川など首都圏を中心に展開するスリーエフ(チェーン全店売上高977億円、営業利益0.5億円)、北海道を中心に展開するセイコーマート(チェーン全店売上高1,846億円、営業利益17億円)、広島が地盤のポプラ(チェーン全店売上高868億円、営業利益2.1億円)、2013年7月に山崎製パンが吸収合併したデイリーヤマザキ(チェーン全店売上高2,256億円、営業利益▲6.9億円)、中部・近畿を中心に展開するココストア(チェーン全店売上高1,089億円)などあります。

コンビニ業界においても他業態との競争が激化しています。例えば2014年からアマゾンが自社で酒販売を開始するなど、ネット企業が食品・飲料分野での販売を拡大しています。今後、ネット企業を含め、縮小する国内市場のパイの奪い合いが激化してくることが想定されます。

(参考文献 会社四季報2014年版業界地図 週刊東洋経済2014 4/26)

スーパーマーケット業界の現状

本日はスーパーマーケット業界の現状に関して記載します。

【厳しい状況の続くスーパーマーケット業界】

アベノミクスによる売上の嵩上げ効果があった中においても、スーパーマーケット業界は他業態からの攻勢を受けて厳しい状況に置かれていました。震災後、買いだめの特需があり、2011年に売上が上昇に転じたものの、特需が一巡した後は再び減少基調になりました。既存店の売上高は16年連続で減少しています。

上記の要因として、ユニクロのようなファストファッションの台頭が挙げられます。スーパーの稼ぎ頭は粗利益率30%内外の衣料品ですが、この分野の売上がファストファッションという低価格の衣料専門店に浸食されたのです。このことに対応すべく各社は衣料品売場を縮小し、利益率の低い食品売場を拡張し、売上・利益の確保を図ろうとしました。ところが、医薬品の高い利益率を背景とした採算を度外視したドラッグストアの食品販売の拡大やコンビニの大量出店により、食品事業自体が圧迫されてしまいました。

そして、この状況に対応すべくスーパー各社は、出店強化、PBの拡大、合従連衡によるスケールメリットの追求で対抗してきているのです。

【スーパー再編の波】

上記のような厳しい状況の中、生き残りをかけてスーパー再編が行われています。2013年4月には原信ナルスHDとフレッセイHDが経営統合。この統合により、両社の資産とノウハウの共有や人材・組織能力の強化、事業基盤の拡大を図っています。また、同年同月イオンはJフロントリテイリングからピーコックストアを買収。ダイエーも子会社化しています。そしてイトーヨーカ堂も2013年8月に北海道の食品スーパー、ダイイチへ出資をしています。このようにスーパーマーケット業界は続々と合従連衡によるスケールメリットの拡大を図ってきています。

【新業態:都市型ミニスーパー】

コンビニやドラッグストアなどの攻勢に防戦一方だったスーパーマーケット業界ですが、都市型スーパーの新業態「都市型ミニスーパー」で反攻策に打って出ています。東京都心部で出店を続けるイオンの「まいばすけっと」は2013年2月に店舗数が500を超え、2013年度は運営会社が黒字転換しました。都市型ミニスーパーの先駆けであるマルエツが手掛ける「マルエツプチ」は現在56店舗を出店しており、同社の基幹業態の一つとなっています。特徴は豊富な品揃えで、品目数4000~1万。2000~3000のコンビニや他ミニスーパーをしのぎます。棚の高さを通常のスーパーが1.6メートル(5~6段)のところ、マルエツプチでは1.9メートルで最大9段にし、商品の絞り込みよりも品揃えを優先し、売上の嵩上げを狙っています。「都市型ミニスーパー」の都心部での展開が加速しており、まいばすけっとやマルエツプチ以外にも、ユニーのミニピアゴやイトーヨーカ堂の食品館などが都市型の小型スーパーを展開しています。

少子高齢化が進む中、首都圏においては人口の増加が見込まれています。そのために今まで他エリアで展開していたスーパーも首都圏進出を進めているようです。

【参考:現状のスーパー各社の状況】

売上高1位はイオンで、売上高5兆6,853億円、営業利益1,909億円。それにセブン&アイホールディングスが、売上高4兆9,916億円、営業利益2,956億円で続きます。

ユニーグループ・ホールディングス、イズミヤ、フジが3社で共同商品開発をしています。

共同仕入れ機構としては、CGC(Olympic、原信、ナルス、フレッセイ、マミーマートなど)、ニチリウ(オークワ、サンエーなど)、八社会(相鉄ローゼン、東武ストアなど)、オール日本スーパーマーケット協会(天満屋ストア、マルヨシセンター、ヤマナカなど)があります。外資系は、ウォルマート・ジャパン・ホールディングス(西友:売上高7,387億円)やコストコがあり、カルフール(仏)やテスコ(英)は日本から撤退しています。

(参考文献 会社四季報2014年版業界地図 週刊東洋経済2014 4/26)

ダイレクトモデル

本日はダイレクトモデルに関して記載します。

【ダイレクトモデルとは】

ダイレクトモデルとは、従来産業バリューチェーンに存在していた間にあるチャネルをスキップして、直接最終顧客へ自社の商品やサービスを販売するビジネスモデルのことを言います。このビジネスモデルを採用している具体例とするとアスクルが挙げられます。

従来チャネルを通じて販売されていた商品・サービスを直接販売しますので、中間マージンやリベートが不要となります。それに伴って粗利が深くなることで低価格販売が可能になり、チャネルを通じて販売している競合と比較して価格的に優位に立つことができます。

このダイレクトモデルが採用されるようになってきた背景には、近年、インターネットの登場、ウェブEC技術の発達、CRM技術、コールセンター技術やその受託ビジネス、決済サービス、宅配サービスといった社会的な環境が整ってきたことにより、チャネルを介することなく最終顧客に販売することのハードルが低くなったことにあります。

【チャネルを介しての販売にないダイレクトモデルのメリット】

ダイレクトモデルではチャネル販売にはない利点が生まれます。

まず、個々の購買者の情報を直接収集することができるということです。この収集した情報を分析やプロモーションに活用することができます。また、顧客の声を収集して製品改良や新製品の開発に反映させたりすることもできるようになります。

ダイレクト販売ではリアル店舗のような空間的な制約もありません。よって、品揃えに制約を持たないことからロングテールでの売上確保も期待できます。

【アスクルとカウネット:過去の関係に縛られないメリット】

チャネルを支配している既存の事業者は、既存の売上をチャネルに依存していればいるほど、そのチャネルに対しての配慮をすることとなり、ダイレクトモデルを容易に採用することができません。コクヨはカウネットという名前でダイレクトモデルに参入していますが、それはアスクルから大きく遅れてのスタートでした。しかもチャネルへの配慮から卸と小売を二重に商流(商流:商品の流通において、物的な流れである物流に対し、受注・発注・出荷・在庫保管・販売管理など取引関係の流れ)に介在させるモデルとなっていて、中間マージンの排除という意味では不利なモデルを採用せざるを得ない状況となっているそうです。それに対して、アスクルは大きく頼る既存業者がなかったためにダイレクトモデルを採用することができました。このようにダイレクトモデルは新規参入に適したビジネスモデルと言えます。

〈参考〉

アスクル:商品点数、107,000点 1,000円以上で送料無料。

カウネット:商品点数、64,900点 1,500円以上で送料無料。

両社ともに、登録料・年会費無料。365日以内返品可。

(2011年データ)

【ダイレクトモデルのデメリット】

ダイレクトモデルではネットで他社との条件比較が容易になることや、ダイレクトモデルを好む顧客セグメントは価格感応度が高い傾向にあるので、価格と性能だけの勝負になる傾向にあると言います。ダイレクトモデルを採用すると既存のチャネルを介するモデルに対しては優位に立てますが、ダイレクトモデル同士の戦いになると価格競争に陥る危険性があります。

また、ECサーバーや出荷センター、コールセンターなどダイレクト独特の新たな業務が加わりますので、単純に中間のチャネルがなくなる代わりにリスクが発生する可能性が出てきます。例えば、ECによる取引は返品率が意外と高いようですので、そういった点は事前に織り込んでおく必要がありそうです。

既存企業の立場からすると、古くからあるチャネルとの関係性をどのように位置づけて、新規参入企業から市場シェアを奪われないようにしていくか、十分に検討することが必要そうです。

(参考文献 経営戦略を見る目と考える力を養うビジネスモデルの教科書)