ネットスーパーに関して

本日はネットスーパーに関して。

ネットスーパーとは、消費者がスーパーのホームページで商品を購入し、その商品を宅配するもので、2000年代後半から注目が集まっています。ネットスーパーはその仕組みから「店舗型(店舗に陳列されている商品を配達する仕組み)」と「倉庫型(ネットスーパー専用の倉庫(センター)から商品を配達する仕組み)」に分けられます。日本の場合はほとんどのスーパーが「店舗型」で参入しています。その理由として店舗型は倉庫型よりも初期投資が少ないことが挙げられます。実際に過去、1990年後半にアメリカのWebvan社(ネット専業スーパーマーケット)が地域ごとに流通センターを設けて営業していたのですが、費用負担が重荷になって破たんしています。日本の場合、企業によっては、ネットスーパーの導入に伴って新たに人を雇うことなく、既存の店員が店舗でピッキングや仕分け作業を行うことで、ネットスーパー導入に伴って増加するコストを抑えて運営しているのです。

さて、その店舗型ネットスーパーの基本的な流れですが、『まず顧客がインターネットでネットスーパーのホームページにアクセスし、ホームページ上で商品を選択して注文を確定する→顧客からの発注情報が配送を担当する店舗に送られる→注文を受けた店舗では店員が売場に陳列されている商品をピッキングし、ネットスーパーの専用車にて店舗から顧客の家まで届けられる。支払いはクレジットカード払いや代金引換を選べる』というものとなっています(例:ダイエーネットスーパー https://netsuper.daiei.co.jp/ イトーヨーカ堂ネットスーパー https://www.iy-net.jp/ )。

 日本におけるネットスーパーは2000年に西友が2001年にイトーヨーカ堂が数店舗で実験的に導入したことにはじまります。ネットスーパーに参入する企業が増えたのは2007年以降です。

ネットスーパーの特徴ですが、まず商品を注文してから家に届くまでのリードタイムが短くなっています。スーパーによって違いはありますが、指定時間までに注文すれば当日中に商品が配達されます。次に配達エリアですが、店舗型のネットスーパーは利用できるエリアは店舗周辺に限定されます。チェーンによって半径5km程度であったり2~3km程度であったりと商圏人口の設定に差異があることから、その範囲が異なります。また、人口密度の高い都市圏では配達エリアが狭く設定され、郊外地域では利用者を確保するため配達エリアが広く設定されているようです。3番目にネットスーパー導入に伴って企業が得られる効果ですが、現状では決して大きなものではないです。イトーヨーカ堂のIRなどで売上を見てみたのですが、2011年のイトーヨーカ堂の売上1兆3,736億円に対しネットスーパーの売上350億円(約2%)と売上に大きく貢献しているというものでもないように感じます。「2010年2月期の売上高は当初目標(200億円)を上回り、210億円になった。営業損益も通期では初めて黒字に転換した」という報道も過去あったようで、年々、会員数や売上高を伸ばしているものの、まだまだネットスーパーは収益性が高い事業ではないということが言えると思います。

 高度経済成長期以降、総合スーパーなどのチェーンストアは大量生産された商品を効率的に流通させて大衆消費者に届けてきました。その中で効率化や低コスト化が進められてきました。ところが今総合スーパーが行っているネットスーパーは配送費もかかりますし顧客の代わりに従業員が買い物をするようなものですから決して効率的なものとは言えません。この一見矛盾する施策は社会・消費環境の変化に過去の小売業の仕組みではついていくことができなくなりつつあるということを象徴しているようでもあります。小売業全体的に店舗面積は拡大し従業員も増やさずにサービスを増やしているわけですから、ネットスーパーは将来の新たな総合スーパーの仕組みに向けて現在いろいろ模索しているということを表しているのでしょう。

 (参考文献:小商圏時代の流通システム)

大型商業施設の出店用地

本日は大型商業施設の出店用地に関してアップします。

 大型商業施設を出店するに当たり前ではありますが、それ相応に大きな土地が必要となります。特に大規模な駐車場を備えたショッピングセンターの場合には10万平米~20万平米に及ぶ規模の敷地が必要となり、その用地を確保するのは容易ではありません。そのような状態の中で大型商業施設が出店される場所にはいくつかの種類があります。

まず、主に都市の中心商業施設における再開発があります。大都市の拠点駅では1990年代以降、京都駅、名古屋駅、札幌駅、東京駅、福岡駅などの駅ビルが建て替えられ、百貨店や専門店の新規出店や増床が行われました。京都駅の伊勢丹は過去に行ったときに感じたのは、デザイン性も素晴らしく、屋上の和テイストなところが素敵でした。またそもそもは名古屋と言えば百貨店は栄の4M(松坂屋、丸栄、名鉄百貨店、名古屋三越)でしたが、名古屋駅にそびえ立つセントラルタワーの核店舗JR名古屋髙島屋ができた今では4M1Tとまで言われるようになっているようです。さて話を戻して、ほかの用地確保としては既存の大型店が建物の老朽化や更なる大規模化への必要性から建て替えられる場合もあります。また、建物をそのまま利用しつつ新たなテナントが入居する、いわゆる経費のあまりかからない「居抜き出店」もあります。これは百貨店や総合スーパーから家具や家電などの大型専門店に業態転換されることがその例です。最近だと新宿の元新宿三越アルコットの建物にできた「ビックロ」でしょうか。

 大型商業施設は上記のようにもともと商業的な土地利用ではなかった場所にももちろん出店されます。そのうちの中心となっている一つは工場跡地への出店です。工場跡地については、繊維、電気機器、自動車など多様な業種の大規模工場跡地が利用されているわけですが、これらの産業では日本国内の労働コストの上昇や円高の進行で国内での生産は競争力が困難となり、生産拠点の集約や海外移転が行われているということから、このような土地利用が行われるようになってきています。例えば埼玉県の土呂駅近くにあるステラタウン。このステラタウンはもともと富士重工業の工場跡地に作られています。あと他には昔はビール園があってなくなってしまってちょっと残念な感じではある、サッポロビール工場跡地にできたアリオ川口も例としてあります。工場以外の産業関連のものは鉄道などの交通施設の跡地があります。例えば大都市内部や周辺にあった貨物駅や操車場の跡地で、大規模な商業施設を含んで開発された例として旧国鉄の武蔵野操車場跡地(埼玉県三郷市・吉川市)などがあります。鉄道用地の再開発の場合には自動車利用だけでなく鉄道利用による集客も見込まれるところがメリットです。最近では鉄道用地の利用ということでは山手線の田町駅と品川駅の間にもう一つ駅を作るという話が出ています。これは現在建設中の高崎線・宇都宮線・常磐線を東京駅まで延伸させ東海道線と直通にするということが実現されることにより品川車両基地の大部分が不要になることから、再開発含め出ている話のようです。リニア中央新幹線のターミナルができる品川駅近辺の発展に大きな効果の期待される再開発になります。汐留エリアが土地の切り売りをしてしまったことにより再開発に大きな影響が出なかったという話も聞きますから、この新駅近辺の再開発がどうなるかは期待されます。さて、再度話をもどしまして、上記以外の用地確保としては農地からの転用があります。これも工場跡地と同様に、農地の減少、農業従業者の高齢化・減少という産業構造の変化の流れを受けてのものとなっています。

どれだけ有利な立地を確保できるかは小売業にとって重要なことですから、時代の流れをとらえてチャンスを掴めるようにしておくということが重要だと思います。

 (参考文献:小商圏時代の流通システム)

出版関連

本日は出版関連についてアップします。

 日本の出版物(書籍・雑誌の合計)の年間販売額は1996年に2兆6,563億円とピークを迎えましたが、その後減少傾向にあり、2008年にはピーク時の8割程度の2兆177億円までその販売額を落としています。そのうち、の販売額の割合は概ね2対3で書籍のほうがやや少ない販売額となっています。

 次に出版物の流通経路についてみてみます。日本の出版物の大半は取次会社と呼ばれる卸売業者を通して小売業者にわたっています。そして、取次会社を形成する企業・事業所数の数は少なく30社ほどになっています(日本出版取次協会に加盟している取次会社)。そのうち書籍と雑誌の両方を取り扱っている総合取次と言われる企業はたったの7社です。それに対して2009年段階で書店は全国で14,556店。出版社は3,815社という数になっています。また、取次会社は上位2社(トーハン・日本出版販売(日版))の経営規模の寡占状態となっていて書店ルートの7割以上を占め、それぞれ売上高5,000~6,000億円強の大企業となっています。それに対して書店は1位の紀伊國屋書店が1,145億円。出版1位の集英社が約1,332億円となっています。日本の出版業界では取次会社がチャネル・リーダーとしての役割を果たしているのです。また、出版社と取次会社の本社の約8割が関東地方に集中しているのに対して、小売店で関東地方に立地しているのは全体の3割強となっています。目に見える本屋さんやネット書店の存在感が消費者からすると強いように思ってしまいますが、実は卸売業が大きな力を持っているのが出版業界ということになります。仕組みを知ることで業界に対する見え方が変わってきました。

 続いて、ネット書店に関してアマゾンから見てみます。一般的にマーケティングなどの分野において8割の売上は2割の商品数の売上によってもたらされるという、パレートの法則が知られています。「定番」や「売れ筋」と呼ばれる一部の商品が全体の売上の大きな部分を占めるという経験則で、この2割の売れ筋をいかにして確保するかが経営上の重要な課題と言われてきました。ところがアマゾンはパレートの法則の考え方とは異なり、「ロングテール」と言われる部分からもたらされる収益により、強力な市場競争力を身につけています。売上高の大きい「売れ筋」の商品は商品構成全体のごく一部であり、売上高の少ない品目がその他大多数を占めているわけですが、売上高の少ない「非売れ筋」商品群のことを「ロングテール」と言います。ロングテールの商品は、商品アイテム数が多いため売上高を合計するとかなりの額に達します。書籍の場合、ベストセラーとなる商品は極めて限られていて、圧倒的多数の商品は発行部数も少なく、回転率も低いロングテール商品です。大型書店ではどうしても売れ筋商品が目立ちますが、ネット書店ではある特定のタイトルに注文が集中することはまれで、このロングテールに属している商品の売上高が経営を支えています。僕も本屋でよく買い物をするのは好きな方かと思いますが、マニアックなマンガとかは電子書籍とかネット書店で買ったりします。本屋ではそういったものは在庫がなくて、すぐに手に入らないので。こういった人が買う売上で収益を上げるのがネット書店といったところなんだな、と感じました。

 (ロングテールのグラフはネットに出ていた個人的な意見ココログ版より加工。参考文献:小商圏時代の流通システム)

ドラッグストアに関して

本日はドラッグストアについてアップします。

ドラッグストアはその総売上高規模を年々伸ばしていて、2000年度に約2.7兆円だったものが2009年度には約5.4兆円へと成長しています。また、ドラッグストア店舗規模別構成比を見てみると2000年には30坪未満の店舗の割合が31.6%だったのに対し2007年は13.6%と減少。逆に150坪~300坪未満の店舗の割合は2000年に12.0%だったものが2007年に37.6%とその割合を増やしています。小売業全体の流れでもありますがドラッグストアにおいても店舗規模の拡大が見られます。

ところで、医薬品は医療用医薬品と一般用医薬品の大きく2つに分かれるようですが、ドラッグストアが取り扱う主力商品は一般用医薬品(大衆薬)となります。過去においては大衆薬の販売は原則として薬剤師及び薬種商販売業者のみ許可されていたため、各チェーンは各店に薬剤師を確保しなければならず、新規出店の際には障壁となっていました。一方で他業態が大衆薬販売に参入するためには薬剤師が必要となり新規参入することを難しくしていました。ですので、過去ドラッグストアは薬事法によって「規制」され「保護」されていたということになります。ところが2009年4月に施行された改正薬事法により、比較的リスクの低い第二類医薬品や第三類医薬品は薬剤師だけでなく、新たな資格となった販売登録者による販売も可能になりました。これによりドラッグストアにとっては社員に登録販売者の資格を取得させることで人員の確保し、店舗拡大や長時間営業、コスト削減が行えるようになった一方で、コンビニやスーパー・量販店などの他業態が登録販売者を確保し医薬品販売に参入できる状態となったのです。それにともなってドラッグストア業界は他業態との競合、業際化という、新たなうねりの中に突入していくことになりました。

ドラッグストアの業際化についての方向性としては大きく4つ。「バラエティドラッグ:コンビニやスーパーマーケットなど他業態との併設・合体によって利便性や買い回り性を強化する方向性」「スペシャルティドラッグ:調剤併設による処方箋への対応や薬剤師のカウンセリング販売などによって、専門性を強化する方向性」「ビューティドラッグ:エステサロンやフィットネスクラブを併設するなど、美容・健康関係での高付加価値化を目指す方向性」「ディープディスカウントドラッグ:食品や雑貨の品揃えを強化し規模の拡大により低価格を追求する方向性」上記のバラエティドラッグとしてミニストップサテライト(おにぎりや弁当、総菜などの取り扱いを強化した店)とドラッグストアの併設店、「グリーシア・ミニストップサテライト」があります。こちらは2009年から首都圏郊外を中心として出店を始めています。

また、立地戦略としてマツモトキヨシは2009年から駅ナカに「Medi+マツキヨ」を出店。通常のマツモトキヨシの店舗面積と比較して1/5の約20平米、取扱アイテム数は2割程度の2600と規模は小さいものとなりますが、登録販売者のみで販売するローコストオペレーションや来店客の多さが強みのようです。

 薬事法改正により大きな動きを見せたドラッグストアですが、今後、市販薬のネット販売がどのように影響してくるのか、というところは気になるところです。高齢化が進む社会において薬の販売の便利さと安全性は非常に重要なポイントとなると思います。ですので、ドラッグストアという業態が今後どのように進化していくのかは消費者にとっても大切なポイントになると考えます。

 本日のグラフは「今後も成長が期待されるドラッグストア市場 富国生命」「薬事日報」より。参考文献:小商圏時代の流通システム

商圏

本日は商圏に関してアップします。

 商圏とは文献によっていろいろ定義があるようです。その中で個人的に「一番しっくりくるな」と思ったものは“単独、あるいは集積の商業施設が顧客を吸引できる地理的範囲(「すぐ応用できる商圏と売上高予測」市原実著、同友館)”というものです。いずれにしても商圏はその店舗が成立するかどうかを判断する上で重要な基準となります。

また、商圏は商品特性でみて「最寄品商圏」と「買回品商圏」に、また、階層区分からみて「第1次商圏」「第2次商圏」「第3次商圏」に分かれます。初めに「最寄品商圏」と「買回品商圏」ですが、そもそも最寄品とは一般家庭で日常的に食べたり、使ったりするもの(飲食料・荒物・金物・医薬品・化粧品・下着類・靴下類など)のことを言い、最寄品商圏とは最寄品を買いに来る顧客が住んでいる範囲を言います。続いて「買回品商圏」です。買回品とは、品質、デザイン、価格などを比較選択して購入するようなもので、最寄品以外のことを言います。話を戻しまして「買回品商圏」ですが、定説はないのですが、中小企業庁編「診断要領等事例集」において、例えば商業集積の商圏を見ると、1次商圏が商圏内消費需要の30%以上を吸引している地域、2次商圏は上記同様の10%以上を吸引している地域、3次商圏は上記同様の5%以上を吸引している地域というようになります。ちなみに「最寄品商圏」より「買回品商圏」のほうが大きくなるのが一般的なようです。身近なものは近場で済ませますし、ブランド品を買おうと思ったら電車に乗ってデパートに行きますからこれは当然とも言えると思います。

この商圏の把握する代表的な方法には「理論商圏」による設定と「実態調査」による設定があります。理論商圏を設定する商圏分析モデルとしては“ハフモデル”等があります。ハフモデルの基本的な考え方は「買物客がある商業集積を選択する確率は、その売場面積に比例し、そこまでの距離に反比例する」というものです。

 続いて実態調査による設定ですが、こちらは地方自治体、主に都道府県が実態調査を行っている場合があるようで、そちらをもとに調べていきます。例えば青森県の八戸市。平成9年に67.6万人弱の商圏を持っていたものが、八戸市のすぐ北に位置する下田町にイオンのショッピングセンターができた影響により、平成12年には66万人弱と2.6%も商圏人口を減らしてしまったということが、青森県の出す「消費購買動向による商圏調査報告書」からわかるようです。

リアル店舗を出店する際に商圏をどれくらいの範囲で考えるのかということが重要な気がします。最近ではO2Oビジネスに代表されるようにネットの力も強くなってきていますが、リアルに店舗を持つのであれば、どのエリアからどれくらいの顧客を呼び込むかは戦略として考えておくことが必要だと思います。地政学というジャンルがあるのですが、例えばイギリスであれば島国であったため、海がお堀の役目を果たし第2次世界大戦でドイツに上陸されることはありませんでしたし、半島に位置する朝鮮でできた国は、じょうごに水を注いだときのように、中国にできた王朝の影響を大きく受けてきました。このように、どこに存在しているかで大きく運命を決定させられてしまう部分があることは否定できません。自分の意志で変えられる部分については良いように変えていくことが重要だと思います。

 (参考文献:経済産業省 商業環境の現状分析)

ランチェスター戦略

本日はランチェスター戦略についてアップします。

【ランチェスター戦略:占有率】

ランチェスター戦略においては競合他社と自社を比較し、どれだけのシェアをとればよいのかということを体系化しています。ランチェスター戦略では7つの数値をシンボル数値として設定しています。①74%。目指すべき最終目標(100%のシェアをとってしまうと競合プレイヤーがいなくなり市場が縮小)。②42%。40%のシェアを超えると2位を圧倒的に引き離し、値引きなどの消耗戦に巻き込まれず、収益力も大幅に増す。③26%。強者の最低条件の数値。この数値を下回るようだと、1位の地位は安定せず、2位との差が僅差となり、激しい消耗戦が繰り広げられ儲からなくなる。④19%。どんぐりの背比べ状態の中から上位グループに入れる数値。⑤11%。市場の中で存在感が増す数値。⑥7%。市場に存在が認められる数値。⑦3%。市場への参入段階。

さて、上記数値を持って専門店の売上高を例に見てみます(数値は日経MJトレンド情報源2013から)。まずカジュアル衣料売上高シェアを見てみるとユニクロが約50%の売上シェアを占めています。この数値はランチェスター戦略の理論からいくと2位を圧倒的に引き離している数値です。2位以下はポイント、ユナイテッドアローズ、ライトオンと続きますが売上高シェアは10%以下となっています。この結果はユニクロの強さを数値で裏付けているような気がします。また、家具売上高シェアを見てみるとこれまたニトリが売上高シェアを約60%。2位・3位の山新、大塚家具が10%ほどの売上シェアですから、ニトリの強さについてもユニクロ同様にその数値で裏付けられているように感じます。続いて最近、業績悪化に伴い業界再編が進んだ家電製品の売上高シェアですが、ヤマダ電機がシェア約30%。業界のトップを走っていますが、ヤマダ電機にはユニクロほどの圧倒的な強さを感じないような気がします。それは業界トップではあるものの市場占有率が2位以下を圧倒的に引き離すほど大きな数値になっていないということもあるのだと思われます。

 上記はあくまで例として売上高シェアで市場占有率をみてみましたが、ランチェスター戦略で作戦を立てていく際はもっと市場を細分化して(地域とかジャンルとか)、その占有率を見ていく形となります。つまり、勝てる分野でオンリーワンになるように市場占有率74%を目指せば他を寄せ付けないナンバーワンになれるということです。ほかの言葉でいえば集中と選択とか特化するとかいうことになるのでしょうか。ナンバーワンよりオンリーワンというよりも、オンリーワンになれればナンバーワンになるという話です。

なお、今回の内容で行くと全くの蛇足なのですが、ランチェスター戦略に「戦闘力=武器効率×兵力数の2乗」というものがあります。近代戦において敵味方が同じ武器を持っていて、味方が5人、敵が3人ならば、5の2乗-3の2乗=√16となり、味方が4人生き残って、敵は全滅という形になります。単純に引き算で味方が2人生き残って、敵は全滅とはならないのです。その件で昔読んだランチェスターの本に「だから寝ないでやればいいんだ」といったようなコメントが書いてありました。その時は「それってどうなの?」と思いました。今では寝ないでやるのは健康に良くないとは思うものの、時間を消費・浪費するのではなく、投資に使うことが必要だということを言いたかったんだろうな(個人の資質=能力×時間の2乗)と良い意味で解釈することにしています。

【ランチェスター戦略:足下の敵】

市場が成熟してくれば、各企業の市場のパイの奪い合いが始まります。その際、「自社の売上・利益をどこから奪えばよいのか」ということになりますが、ランチェスター戦略では、自社よりシェアが1ランク下の足下の敵から奪えということになっています。1ランク下よりもっと弱い会社を攻めるのではなく、足下の敵を叩く理由は、自社の伸び分と1ランク下の敵のシェアの減少分の合計分差でますので、下の敵に順位を脅かされる可能性がなくなるのです。ではどのように1ランク下の敵を叩くかというとミート戦略をとります。ミート戦略とは1ランク下の敵に合わせて同じ戦略をとり、敵の得意分野を消し去ってしまう戦略です。

ミート戦略というと個人的には百貨店の物産催をイメージしてしまいます。例えば池袋の西武百貨店と東武百貨店。西武池袋本店は2011年の店舗別売上高が2位。東武百貨店池袋本店は10位。JR池袋駅の線路を挟んで向かい合っている池袋を代表する2店舗です。さてこの両店舗の2013年の催事でみると、東武百貨店池袋本店では5月2日~14日まで「初夏の大北海道展」を開催していますが、それに合わせて西武池袋本店は4月20日~5月7日まで「全国味の逸品会」5月9日~13日には「素材のチカラ 味の国の菓子祭」を開催しています。あくまで僕のイメージなのですが西武池袋本店が東武百貨店池袋本店と同時期に物産展をぶつけることによって、物産展によってもたらされる東武百貨店池袋本店の集客力の増を無効化しようとしているように思います。他のエリア、新宿でみると、5月29日~6月4日に2011年店舗別売上高が14位の新宿の小田急百貨店が「北海道物産展」。5月29日~6月3日まで1位の伊勢丹新宿本店が「“チアアップ!”ニッポンの“食”展」。こちらも物産展を同時期にぶつけています。(ちなみに同時期で26位の新宿高島屋が「「大学は美味しい!」フェア」を開催しています。)経営戦略なので、本当のところはわかりません。ただ、地域1番店をより確実なものとし店舗力を強化するために、西武池袋本店が東武百貨店池袋本店を、伊勢丹新宿本店が小田急百貨店を攻撃しているように思われます。

 弱者がとる戦略は差別化ということになりますが、強者は弱者に同質化していきます。強者が弱者に合わせるのは価格競争に持ち込み、弱者の体力を奪うということもあるようです。ただ、本当の強者などごくごく一部なのでしょうから、ほとんどの場合は常に自分の特徴を出せるように努力することが重要な気も個人的にはしています。

 (ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則)

東日本大震災が消費行動に与えた影響

本日は東日本大震災が消費行動に与えた影響を見てみます。

 過日、山形県にお住まいの方と話をする機会があり、その際に福島第一原発の事故による影響で食料品を販売されている方が苦労なさっているといったような感じの話を伺いました。今では東京ではだいぶ放射線に対する意識が薄れてきているように感じますが、東北にお住まいの方は今なお放射線の被害と戦われているのだと感じました。

 日本政策金融公庫の資料より2013年1月段階の「福島第一原子力発電所事故の影響」を見てみると、現在もその影響が残っていると答えた方が、岩手・宮城・福島で71.2%(うち福島93.8%)、茨城・群馬・栃木で63.6%、青森・秋田・山形で41.4%という結果が出ていました。原発事故当初話題になったセシウム137の半減期が約30年。当然のことながら長い時間をかけて原発事故が起こした問題とは向き合っていかなければならなくなってしまっています。

 原発事故後、セシウムと合わせてヨウ素131も話題になりました。東京の浄水場を汚染しまくりミネラルウォーターが軒並みスーパーからなくなっていたのを今でも思い出します。当時、僕がスーパーへ行ったらペットボトルというペットボトルが全て売り切れていて、残っていたのは確かヘルシア緑茶だけ。今ではヘルシア緑茶とかヘルシアウォーターとかよく飲むんですが、当時は衝撃を受けた記憶があります。2011年3月のミネラルウォーターの支出の対前年同月実質増減率を総務省統計局資料から見てみると161.3%増。ほかにも支出額の対前年同月実質増減率を見てみると電池が181.2%増、カップめん43.2%増、もち43.7%増という状況でした。反対に自粛ムードの広がりもあり、宿泊料は△33.8%、入場・観覧・ゲーム代△24.7%という結果でした。これは負の要因ですが、外部環境の影響で売れる物が大きく変化するということは事実です。時代が変化したときにその変化に対応できる力をつけておかなければ時代に取り残されるということもあるような気がします。

 東日本大震災の時は徹夜をして仕事をしていましたが、夜中にも東北のみならずそれ以外の地域を震源とした地震もあり、おびえる人々を見て、日本はこのまま沈没でもしてしまうのではないかという気持ちにもなりました。ただ今でも、震災の影響で苦しんでいる人がいます。また、日本は地震の活動期に入ったともいわれ、いつまた大きな地震が来るかもわかりません。園監督の「希望の国」でのセリフの中で「一歩、二歩、三歩」といった言葉に対し「これからの日本は一歩、一歩、一歩だよ」といったようなセリフがありました。一歩、一歩、一歩と、置かれた環境や自分自身と戦っていかなければならないのかもしれません。

コンビニエンスストアの商品別売上構成比

本日はコンビニエンスストアの商品別の売上構成比を見てみます。

コンビニの店舗数は年々増加傾向にあり2002年から2012年の10年間で1万店ほど店舗数を増やしています。それに合わせ年々コンビニの商品販売額は増えているのですが、その売上の商品別の構成比をみると、売れてきている商品が変わってきていることがわかります。2002年と2007年の年間商品販売額の割合を比較してみると、たばこ・喫煙具の売上の割合が10.7%から14.9%と増加しています。これは2006年からのたばこの値上げに伴う駆け込み需要の影響が考えられますが、このような外的要因がコンビニの売上に大きく影響していることが多々あります。

その他にコンビニの売上構成比に影響を与えているものに「タスポ効果」がありました。自動販売機でたばこを買うときはタスポによる成人識別が必要になったことから、2008年からコンビニの非食料品(たばこが含まれる項目)の売上が増。2007年から2008年で約3,500億円売上を伸ばしています。

 他には2011年には震災による一部商品の特需があり、乾電池や懐中電灯を含む非食品の売上が増しています(非食品2011年から2012年で4,500億円売上増)。

 震災のような例外的な特需も確かにあるのでしょうけれど、コンビニの商品別の売上推移をみる中で注目すべきはタスポだなと感じます。規制緩和によって景気を良くするというような話がありますが、法改正のような外的要因の変化で小売業を取り巻く環境が変化するということを押さえておく必要性があります。タスポの登場によりたばこ自動販売機の売上は落ちたともいいます。外的要因の変化に合わせてその都度自らを変えていくようでは、機関投資家に踊らされる株主のように損をする一方ですから、外的要因の変化にも対応できる強い体質を作ることが必要なのかもしれません。

百貨店の売上構成比

本日は百貨店の売上構成比の推移を見てみます。

データは日本百貨店協会のデータより。

2012年、家計最終消費支出は名目GDPの約60%を占めていて300兆円弱という数字になっている中、百貨店の全体的な売上は6兆ですから、全体的にみると消費支出の割合から言ってそれほど大きなウエイトを占めているわけではありません。しかしながら、景気の動向を見る上で注目される数字です。

その、百貨店の全体的な売上は2008年7兆3813億円から2012年には6超1453億円まで減少しています。

また、その流れの中で衣料品の売上構成比が36.8%から34.7%と減少したのに対し食料品の売上構成比は26.1%から28.3%と増加。1995年くらいからエンゲル係数が22%で一定の推移であることからも、百貨店の食料品の人気が裏付けられるような気がします。

小売業の地域別海外現地法人企業数

 小売業は従来内需型産業と考えられてきていましたが、日本の少子高齢化に伴う人口減少を見据えて、どんどん海外事業展開を積極的に行っているようです。ただ、その進出先の傾向としてはアジア志向が強く、特に人口増加エリアである中国本土に対しては2007年の64社に対して2011年は136社と近年多くの企業が海外進出を行っています(その他のアジア諸国 香港:2007年22社→2011年28社。 台湾:2007年27社→2011年40社 シンガポール:2007年24社→2011年33社)一方、グラフには載せていませんが同じく人口増加エリアで世界最大のGDP国となる予定のインドへは2007年2社→2011年5社と倍増しているものの、そもそもの進出企業数が圧倒的に少ないという状況。アメリカ・中南米・中東・オセアニア・アフリカについては海外進出している企業数はほとんど変化なしです。最近、中国に対するカントリーリスクが言われていましたが2011年までは圧倒的に中国市場が小売業にとっても魅力に感じられていたようです。

 僕たち自身の生活の部分においても、円をタンス預金するのか、銀行に預けるのか、金を買うのか、債権を買うのか、株を買うのか、不動産を買うのか、お金をどう使うのかは様々ですが、それぞれに“リスク”と“リターン”があるのは事実です。新たに企業が進出する際には僕たちの生活と同様、一時的な流行に流されるのではなく“リスク”と“リターン”をしっかりと見極めていくことがきっと必要なのでしょう。

ちょっと別の話をしますと、経営の世界でいう「ブルーオーシャン」、先行者有利という話もあります。競争が激しい分野に入り込むのではなく、市場が荒らされていないところに進出するほうが成長が望めるというものです。そして何もしなければ機会損失というデメリットをこうむるという話もあります。

 日本は人口減少エリアです。アベノミクスの成長戦略も特区とコンセッション以外期待できないという話も聞きました(まだまだ分かりませんが)。この国においては、様々な観点からその時持てる知識を最大限導引し判断しリスクを負うのは怖いけど一歩ずつ前進していくしかないのかもしれません。