商圏

本日は商圏に関してアップします。

 商圏とは文献によっていろいろ定義があるようです。その中で個人的に「一番しっくりくるな」と思ったものは“単独、あるいは集積の商業施設が顧客を吸引できる地理的範囲(「すぐ応用できる商圏と売上高予測」市原実著、同友館)”というものです。いずれにしても商圏はその店舗が成立するかどうかを判断する上で重要な基準となります。

また、商圏は商品特性でみて「最寄品商圏」と「買回品商圏」に、また、階層区分からみて「第1次商圏」「第2次商圏」「第3次商圏」に分かれます。初めに「最寄品商圏」と「買回品商圏」ですが、そもそも最寄品とは一般家庭で日常的に食べたり、使ったりするもの(飲食料・荒物・金物・医薬品・化粧品・下着類・靴下類など)のことを言い、最寄品商圏とは最寄品を買いに来る顧客が住んでいる範囲を言います。続いて「買回品商圏」です。買回品とは、品質、デザイン、価格などを比較選択して購入するようなもので、最寄品以外のことを言います。話を戻しまして「買回品商圏」ですが、定説はないのですが、中小企業庁編「診断要領等事例集」において、例えば商業集積の商圏を見ると、1次商圏が商圏内消費需要の30%以上を吸引している地域、2次商圏は上記同様の10%以上を吸引している地域、3次商圏は上記同様の5%以上を吸引している地域というようになります。ちなみに「最寄品商圏」より「買回品商圏」のほうが大きくなるのが一般的なようです。身近なものは近場で済ませますし、ブランド品を買おうと思ったら電車に乗ってデパートに行きますからこれは当然とも言えると思います。

この商圏の把握する代表的な方法には「理論商圏」による設定と「実態調査」による設定があります。理論商圏を設定する商圏分析モデルとしては“ハフモデル”等があります。ハフモデルの基本的な考え方は「買物客がある商業集積を選択する確率は、その売場面積に比例し、そこまでの距離に反比例する」というものです。

 続いて実態調査による設定ですが、こちらは地方自治体、主に都道府県が実態調査を行っている場合があるようで、そちらをもとに調べていきます。例えば青森県の八戸市。平成9年に67.6万人弱の商圏を持っていたものが、八戸市のすぐ北に位置する下田町にイオンのショッピングセンターができた影響により、平成12年には66万人弱と2.6%も商圏人口を減らしてしまったということが、青森県の出す「消費購買動向による商圏調査報告書」からわかるようです。

リアル店舗を出店する際に商圏をどれくらいの範囲で考えるのかということが重要な気がします。最近ではO2Oビジネスに代表されるようにネットの力も強くなってきていますが、リアルに店舗を持つのであれば、どのエリアからどれくらいの顧客を呼び込むかは戦略として考えておくことが必要だと思います。地政学というジャンルがあるのですが、例えばイギリスであれば島国であったため、海がお堀の役目を果たし第2次世界大戦でドイツに上陸されることはありませんでしたし、半島に位置する朝鮮でできた国は、じょうごに水を注いだときのように、中国にできた王朝の影響を大きく受けてきました。このように、どこに存在しているかで大きく運命を決定させられてしまう部分があることは否定できません。自分の意志で変えられる部分については良いように変えていくことが重要だと思います。

 (参考文献:経済産業省 商業環境の現状分析)

ランチェスター戦略

本日はランチェスター戦略についてアップします。

【ランチェスター戦略:占有率】

ランチェスター戦略においては競合他社と自社を比較し、どれだけのシェアをとればよいのかということを体系化しています。ランチェスター戦略では7つの数値をシンボル数値として設定しています。①74%。目指すべき最終目標(100%のシェアをとってしまうと競合プレイヤーがいなくなり市場が縮小)。②42%。40%のシェアを超えると2位を圧倒的に引き離し、値引きなどの消耗戦に巻き込まれず、収益力も大幅に増す。③26%。強者の最低条件の数値。この数値を下回るようだと、1位の地位は安定せず、2位との差が僅差となり、激しい消耗戦が繰り広げられ儲からなくなる。④19%。どんぐりの背比べ状態の中から上位グループに入れる数値。⑤11%。市場の中で存在感が増す数値。⑥7%。市場に存在が認められる数値。⑦3%。市場への参入段階。

さて、上記数値を持って専門店の売上高を例に見てみます(数値は日経MJトレンド情報源2013から)。まずカジュアル衣料売上高シェアを見てみるとユニクロが約50%の売上シェアを占めています。この数値はランチェスター戦略の理論からいくと2位を圧倒的に引き離している数値です。2位以下はポイント、ユナイテッドアローズ、ライトオンと続きますが売上高シェアは10%以下となっています。この結果はユニクロの強さを数値で裏付けているような気がします。また、家具売上高シェアを見てみるとこれまたニトリが売上高シェアを約60%。2位・3位の山新、大塚家具が10%ほどの売上シェアですから、ニトリの強さについてもユニクロ同様にその数値で裏付けられているように感じます。続いて最近、業績悪化に伴い業界再編が進んだ家電製品の売上高シェアですが、ヤマダ電機がシェア約30%。業界のトップを走っていますが、ヤマダ電機にはユニクロほどの圧倒的な強さを感じないような気がします。それは業界トップではあるものの市場占有率が2位以下を圧倒的に引き離すほど大きな数値になっていないということもあるのだと思われます。

 上記はあくまで例として売上高シェアで市場占有率をみてみましたが、ランチェスター戦略で作戦を立てていく際はもっと市場を細分化して(地域とかジャンルとか)、その占有率を見ていく形となります。つまり、勝てる分野でオンリーワンになるように市場占有率74%を目指せば他を寄せ付けないナンバーワンになれるということです。ほかの言葉でいえば集中と選択とか特化するとかいうことになるのでしょうか。ナンバーワンよりオンリーワンというよりも、オンリーワンになれればナンバーワンになるという話です。

なお、今回の内容で行くと全くの蛇足なのですが、ランチェスター戦略に「戦闘力=武器効率×兵力数の2乗」というものがあります。近代戦において敵味方が同じ武器を持っていて、味方が5人、敵が3人ならば、5の2乗-3の2乗=√16となり、味方が4人生き残って、敵は全滅という形になります。単純に引き算で味方が2人生き残って、敵は全滅とはならないのです。その件で昔読んだランチェスターの本に「だから寝ないでやればいいんだ」といったようなコメントが書いてありました。その時は「それってどうなの?」と思いました。今では寝ないでやるのは健康に良くないとは思うものの、時間を消費・浪費するのではなく、投資に使うことが必要だということを言いたかったんだろうな(個人の資質=能力×時間の2乗)と良い意味で解釈することにしています。

【ランチェスター戦略:足下の敵】

市場が成熟してくれば、各企業の市場のパイの奪い合いが始まります。その際、「自社の売上・利益をどこから奪えばよいのか」ということになりますが、ランチェスター戦略では、自社よりシェアが1ランク下の足下の敵から奪えということになっています。1ランク下よりもっと弱い会社を攻めるのではなく、足下の敵を叩く理由は、自社の伸び分と1ランク下の敵のシェアの減少分の合計分差でますので、下の敵に順位を脅かされる可能性がなくなるのです。ではどのように1ランク下の敵を叩くかというとミート戦略をとります。ミート戦略とは1ランク下の敵に合わせて同じ戦略をとり、敵の得意分野を消し去ってしまう戦略です。

ミート戦略というと個人的には百貨店の物産催をイメージしてしまいます。例えば池袋の西武百貨店と東武百貨店。西武池袋本店は2011年の店舗別売上高が2位。東武百貨店池袋本店は10位。JR池袋駅の線路を挟んで向かい合っている池袋を代表する2店舗です。さてこの両店舗の2013年の催事でみると、東武百貨店池袋本店では5月2日~14日まで「初夏の大北海道展」を開催していますが、それに合わせて西武池袋本店は4月20日~5月7日まで「全国味の逸品会」5月9日~13日には「素材のチカラ 味の国の菓子祭」を開催しています。あくまで僕のイメージなのですが西武池袋本店が東武百貨店池袋本店と同時期に物産展をぶつけることによって、物産展によってもたらされる東武百貨店池袋本店の集客力の増を無効化しようとしているように思います。他のエリア、新宿でみると、5月29日~6月4日に2011年店舗別売上高が14位の新宿の小田急百貨店が「北海道物産展」。5月29日~6月3日まで1位の伊勢丹新宿本店が「“チアアップ!”ニッポンの“食”展」。こちらも物産展を同時期にぶつけています。(ちなみに同時期で26位の新宿高島屋が「「大学は美味しい!」フェア」を開催しています。)経営戦略なので、本当のところはわかりません。ただ、地域1番店をより確実なものとし店舗力を強化するために、西武池袋本店が東武百貨店池袋本店を、伊勢丹新宿本店が小田急百貨店を攻撃しているように思われます。

 弱者がとる戦略は差別化ということになりますが、強者は弱者に同質化していきます。強者が弱者に合わせるのは価格競争に持ち込み、弱者の体力を奪うということもあるようです。ただ、本当の強者などごくごく一部なのでしょうから、ほとんどの場合は常に自分の特徴を出せるように努力することが重要な気も個人的にはしています。

 (ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則)

東日本大震災が消費行動に与えた影響

本日は東日本大震災が消費行動に与えた影響を見てみます。

 過日、山形県にお住まいの方と話をする機会があり、その際に福島第一原発の事故による影響で食料品を販売されている方が苦労なさっているといったような感じの話を伺いました。今では東京ではだいぶ放射線に対する意識が薄れてきているように感じますが、東北にお住まいの方は今なお放射線の被害と戦われているのだと感じました。

 日本政策金融公庫の資料より2013年1月段階の「福島第一原子力発電所事故の影響」を見てみると、現在もその影響が残っていると答えた方が、岩手・宮城・福島で71.2%(うち福島93.8%)、茨城・群馬・栃木で63.6%、青森・秋田・山形で41.4%という結果が出ていました。原発事故当初話題になったセシウム137の半減期が約30年。当然のことながら長い時間をかけて原発事故が起こした問題とは向き合っていかなければならなくなってしまっています。

 原発事故後、セシウムと合わせてヨウ素131も話題になりました。東京の浄水場を汚染しまくりミネラルウォーターが軒並みスーパーからなくなっていたのを今でも思い出します。当時、僕がスーパーへ行ったらペットボトルというペットボトルが全て売り切れていて、残っていたのは確かヘルシア緑茶だけ。今ではヘルシア緑茶とかヘルシアウォーターとかよく飲むんですが、当時は衝撃を受けた記憶があります。2011年3月のミネラルウォーターの支出の対前年同月実質増減率を総務省統計局資料から見てみると161.3%増。ほかにも支出額の対前年同月実質増減率を見てみると電池が181.2%増、カップめん43.2%増、もち43.7%増という状況でした。反対に自粛ムードの広がりもあり、宿泊料は△33.8%、入場・観覧・ゲーム代△24.7%という結果でした。これは負の要因ですが、外部環境の影響で売れる物が大きく変化するということは事実です。時代が変化したときにその変化に対応できる力をつけておかなければ時代に取り残されるということもあるような気がします。

 東日本大震災の時は徹夜をして仕事をしていましたが、夜中にも東北のみならずそれ以外の地域を震源とした地震もあり、おびえる人々を見て、日本はこのまま沈没でもしてしまうのではないかという気持ちにもなりました。ただ今でも、震災の影響で苦しんでいる人がいます。また、日本は地震の活動期に入ったともいわれ、いつまた大きな地震が来るかもわかりません。園監督の「希望の国」でのセリフの中で「一歩、二歩、三歩」といった言葉に対し「これからの日本は一歩、一歩、一歩だよ」といったようなセリフがありました。一歩、一歩、一歩と、置かれた環境や自分自身と戦っていかなければならないのかもしれません。

コンビニエンスストアの商品別売上構成比

本日はコンビニエンスストアの商品別の売上構成比を見てみます。

コンビニの店舗数は年々増加傾向にあり2002年から2012年の10年間で1万店ほど店舗数を増やしています。それに合わせ年々コンビニの商品販売額は増えているのですが、その売上の商品別の構成比をみると、売れてきている商品が変わってきていることがわかります。2002年と2007年の年間商品販売額の割合を比較してみると、たばこ・喫煙具の売上の割合が10.7%から14.9%と増加しています。これは2006年からのたばこの値上げに伴う駆け込み需要の影響が考えられますが、このような外的要因がコンビニの売上に大きく影響していることが多々あります。

その他にコンビニの売上構成比に影響を与えているものに「タスポ効果」がありました。自動販売機でたばこを買うときはタスポによる成人識別が必要になったことから、2008年からコンビニの非食料品(たばこが含まれる項目)の売上が増。2007年から2008年で約3,500億円売上を伸ばしています。

 他には2011年には震災による一部商品の特需があり、乾電池や懐中電灯を含む非食品の売上が増しています(非食品2011年から2012年で4,500億円売上増)。

 震災のような例外的な特需も確かにあるのでしょうけれど、コンビニの商品別の売上推移をみる中で注目すべきはタスポだなと感じます。規制緩和によって景気を良くするというような話がありますが、法改正のような外的要因の変化で小売業を取り巻く環境が変化するということを押さえておく必要性があります。タスポの登場によりたばこ自動販売機の売上は落ちたともいいます。外的要因の変化に合わせてその都度自らを変えていくようでは、機関投資家に踊らされる株主のように損をする一方ですから、外的要因の変化にも対応できる強い体質を作ることが必要なのかもしれません。

百貨店の売上構成比

本日は百貨店の売上構成比の推移を見てみます。

データは日本百貨店協会のデータより。

2012年、家計最終消費支出は名目GDPの約60%を占めていて300兆円弱という数字になっている中、百貨店の全体的な売上は6兆ですから、全体的にみると消費支出の割合から言ってそれほど大きなウエイトを占めているわけではありません。しかしながら、景気の動向を見る上で注目される数字です。

その、百貨店の全体的な売上は2008年7兆3813億円から2012年には6超1453億円まで減少しています。

また、その流れの中で衣料品の売上構成比が36.8%から34.7%と減少したのに対し食料品の売上構成比は26.1%から28.3%と増加。1995年くらいからエンゲル係数が22%で一定の推移であることからも、百貨店の食料品の人気が裏付けられるような気がします。

小売業の地域別海外現地法人企業数

 小売業は従来内需型産業と考えられてきていましたが、日本の少子高齢化に伴う人口減少を見据えて、どんどん海外事業展開を積極的に行っているようです。ただ、その進出先の傾向としてはアジア志向が強く、特に人口増加エリアである中国本土に対しては2007年の64社に対して2011年は136社と近年多くの企業が海外進出を行っています(その他のアジア諸国 香港:2007年22社→2011年28社。 台湾:2007年27社→2011年40社 シンガポール:2007年24社→2011年33社)一方、グラフには載せていませんが同じく人口増加エリアで世界最大のGDP国となる予定のインドへは2007年2社→2011年5社と倍増しているものの、そもそもの進出企業数が圧倒的に少ないという状況。アメリカ・中南米・中東・オセアニア・アフリカについては海外進出している企業数はほとんど変化なしです。最近、中国に対するカントリーリスクが言われていましたが2011年までは圧倒的に中国市場が小売業にとっても魅力に感じられていたようです。

 僕たち自身の生活の部分においても、円をタンス預金するのか、銀行に預けるのか、金を買うのか、債権を買うのか、株を買うのか、不動産を買うのか、お金をどう使うのかは様々ですが、それぞれに“リスク”と“リターン”があるのは事実です。新たに企業が進出する際には僕たちの生活と同様、一時的な流行に流されるのではなく“リスク”と“リターン”をしっかりと見極めていくことがきっと必要なのでしょう。

ちょっと別の話をしますと、経営の世界でいう「ブルーオーシャン」、先行者有利という話もあります。競争が激しい分野に入り込むのではなく、市場が荒らされていないところに進出するほうが成長が望めるというものです。そして何もしなければ機会損失というデメリットをこうむるという話もあります。

 日本は人口減少エリアです。アベノミクスの成長戦略も特区とコンセッション以外期待できないという話も聞きました(まだまだ分かりませんが)。この国においては、様々な観点からその時持てる知識を最大限導引し判断しリスクを負うのは怖いけど一歩ずつ前進していくしかないのかもしれません。

楽天の英語公用化

本日は楽天の英語公用語化に関して記載します。

2012年7月に楽天が社内公用語を英語にしたことは大きく話題となりました。楽天は投資家に対する決算説明会も現在、英語で行っています(日本語の同時通訳と日本語の資料の配布はあり)。このような方向性に舵を切った理由や効果は次のようになっています。

 (1)英語公用化の理由

ゴールドマン・サックス・グループが作成したレポートによると、2006年時点では世界の12%のGDPを誇っていた日本ですが(世界2位)、2020年に8%、2035年に5%、2050年に3%に落ち込んでいくことが想定されているそうです。2050年のGDPのランキングとしては、中国が29%で世界1位、インドが16%で2位、日本はアメリカ、ブラジル、ロシアに次いで6位になると見通されています。少子高齢化に伴って日本の国内需要は減少していくことが予想されています。その様な状況下、楽天の三木谷氏は楽天が生き残るにはグローバル企業になることが必要と考え、2010年に社内公用語英語化プロジェクト「Englishnization Project」を発足させました。

 (2)英語公用語化プロジェクトの内容

 社員食堂のメニューや社員証の表記などを英語化することから始まり、日報や会議資料などの書類、会議やメールなどの社内コミュニケーションにも英語を使うようにしていきました。2010年12月の定期昇格人事から、社員の評価にTOEICのスコアも組み込んでいます。

 (3)英語公用語化の効果

 世界中から優秀な技術者の獲得、現場レベルでの多国間のコミュニケーションの活性化、世界中で成功体験の横展開、といった効果が生まれていると言います。

 昨今、小売業の海外進出が話題になっていますが、楽天に関しては海外市場への進出を買収及び提携という形で進めています。これは、現地で一からビジネスを立ち上げると軌道に乗るまで時間がかかるというデメリットを回避するという効果があります。楽天の英語公用語化は、このような海外との買収交渉を行う際に効果を発揮しているようです。

カルフールなどの小売業が日本に過去進出してきましたが、結果、撤退をしていきました。国ごとの慣習や言語などの違いは、海外進出を行う際の壁になることは容易に想定できます。楽天の英語公用語化は、日本国内市場のみに頼らず、長期に亘る企業の生き残りをかけたチャレンジの一つと言えそうです。

 (参考文献 ビジネスモデル分析術)

でんかのヤマグチ

今日は近隣に大型家電量販店があるにもかかわらず好調だと噂の電器屋『でんかのヤマグチ』に行ってみました。場所は町田にあるのですが、駅からバスで15分ほどの場所にあり、店舗の前の道も決して広くなく交通量にすごく恵まれているわけでもなさそうな場所にありました。店の中もそれほど広くなく、普通に営業していたら、大型家電量販店には決して勝てないであろうという感じでした。しかしながらこの会社、粗利益率が1996年度の25.6%から2005年度には36.4%という経営改善した結果を残しており、2006年1月31日時点で同社のハイビジョンテレビの総販売台数が単店では日本一にもなったようです。

この『でんかのヤマグチ』のすごいところは、大型家電量販店に対抗すべくお客様へのきめ細かいサービスを実施するため、3万世帯あった顧客リストを切り捨て、13,000世帯に絞り込みを行ったことです。それによりきめ細かいサービスを実現し大型家電量販店にも負けない力をつけたのです。ある方から聞いたのですが、お客様がでんかのヤマグチの社員に留守番を頼むこともあるそうで、それほどの信頼関係が築けているらしいのです。  前にダイシン百貨店に行ったこともあるのですが、ここは半径500mシェア100%を目指す地域密着型百貨店で一時話題になりました。『ダイシン百貨店』と『でんかのヤマグチ』と共通している戦略は“焦点を絞り込み差別化すること”。自分しかできないことを生み出し提案していくことが成長につながっていくのでしょう。

百貨店の現状

本日は百貨店の現状に関して記載します。

【2014年4月消費増税前の百貨店の状況】

百貨店の市場規模は年々縮小していましたが、アベノミクスの効果により2012年には既存店ベースでの全国百貨店売上高が16年ぶりに増収に転じました(なお、2012年度の百貨店の業界規模6兆1,453億円)。この背景には株価の回復による資産効果の高騰があります。この2年間で日経平均は最安値8,000円台から最高値16,000円台まで株高となりましたので、この数字からも資産効果の大きさが伺えます。さて、資産効果高騰により百貨店ではバッグなどのブランド商品、宝飾品、時計などの高額品が好調に推移しました。また、「グッチ」や「シャネル」といったラグジュアリーブランドは円安を理由に値上げをしましたが、売上の勢いが止まることはありませんでした。

店舗面では2012年11月に阪急梅田本店の増改装開業、2013年3月に伊勢丹新宿本店の改装開業、6月にあべのハルカス近鉄本店のタワー館先行開業とありましたが、それらの集客も好調に推移していました。

このように消費増税前の百貨店の業況は好調に推移していたわけですが、その一方で、主力の婦人衣料全体が改善していませんでした。百貨店にとって衣料品は収益の源泉的な役割を果たしています。例えば三越伊勢丹の商品別粗利益率を見てみると、衣料品31.7%、身の回り品・雑貨・家庭用品26~29%、食料品21.5%となっており、衣料品の売上の維持拡大が百貨店の利益率を高めるのに重要な役割を果たすことが分かります。ファストファッション等との競合がある中、衣料品分野で多業態に対する競争力をつけていくことも百貨店業界には必要そうです。

また、アベノミクスの効果が東名阪などの大都市圏に限定されているとも言われています。アベノミクスが成功するかどうかは成長戦略がカギを握っています。成長戦略の成果がどのようになるか、そしてそれによりアベノミクスが株価をどれだけ押し上げることができるのか。そのことが、どれだけ百貨店売上を押し上げるのかにもつながってきますので、気になるところです。

【消費増税後の百貨店の状況】

消費増税に対して事前に各社は自主企画品や高級化路線の強化(三越伊勢丹HD)やテナント積極誘致(Jフロントリテイリング)などで独自性を強め、拡販を図る動きを付けていました。

そして、百貨店大手3社が5月1日に発表した4月の売上速報は、三越伊勢丹が前年同期比7.9%減、Jフロントリテイリングが15.3%減、高島屋が13.6%減という結果で、減少幅は予想を下回るものでした。前回平成9年3月の消費増税の際の駆け込み需要は全国百貨店売上高を23%増加させました。それに対して今回の消費増税前の3月の各社の売上高は駆け込み需要の影響で3割ほど伸びましたので、4月は反動減で「20%程度の影響」を懸念する声も上がっていました。ですので、その想定を下回る結果だったというわけです。

【参考 百貨店各社の現状】

■全国展開大手

・三越伊勢丹HD

百貨店最大手。売上高1兆2,369億円。営業利益266億円

・Jフロントリテイリング

大丸主導でローコスト経営を推進。12年8月にパルコを買収。売上高1兆927億円。営業利益308億円

・高島屋

全国に大型店を擁す。売上高8,703億円。営業利益254億円

・そごう・西武(セブン&アイHD子会社)

セブン&アイのグループ力を活用。売上高7,984億円。営業利益100億円

・エイチ・ツー・オー・リテイリング

2011年、博多阪急開業。2012年11月に旗艦の阪急梅田本店グランドオープン。売上高5,251億円。営業利益106億円

■JR・電鉄系

・近鉄百貨店

あべのハルカスが2014年オープン。売上高2,707億円

・東急百貨店

2012年渋谷ヒカリエ内に専門店街「ShinQs」開業。売上高2,061億円

・東武百貨店

東京スカイツリー隣接地に商業施設「ソラマチ」開業。売上高1,505億円

・小田急百貨店

新宿店が旗艦店。売上高1,467億円

・ジェイアール東海高島屋

JRグループが59%、高島屋が33%出資。売上高1,112億円

・ジェイアール西日本伊勢丹

JRグループが60%、三越伊勢丹HDが40%出資。JR京都伊勢丹、JR大阪三越伊勢丹運営。売上高942億円

・京王百貨店

シニア向けに強み。売上高901億円

■地方特化型

・井筒屋

北九州地盤。売上高872億円。営業利益29億円

・松屋

銀座本店に経営資源集中。売上高715億円。営業利益10億円

・大和

北陸地盤。大丸流ノウハウの導入で再建中。売上高508億円。営業利益5.7億円

・さいか屋

神奈川地盤。事業再生ADR完了。売上高395億円。営業利益8.1億円

※事業再生ADR:過剰債務で苦しむ企業に対して、金融支援を与えて再建を目指す制度のこと。

上記以外の老舗百貨店として、藤崎(宮城)、丸広百貨店(埼玉)、天満屋(岡山)、福屋(広島)、トキハ(大分)、鶴屋百貨店(熊本)、山形屋(鹿児島)などがあります。

【2012年度店舗別売上高】

1位伊勢丹新宿本店 売上高2,368億円。前年比0.8%

2位西武池袋本店  売上高1,791億円。前年比1.5%

3位三越日本橋本店 売上高1,631億円。前年比▲1.2%

4位阪急梅田本店  売上高1,446億円。前年比16.1%

5位高島屋横浜店  売上高1,317億円。前年比0.0%

6位高島屋日本橋店 売上高1,261億円。前年比1.5%

7位高島屋大阪店  売上高1,199億円。前年比1.8%

8位松坂屋名古屋店 売上高1,132億円。前年比1.9%

9位そごう横浜店  売上高1,052億円。前年比4.2%

10位阪神梅田本店  売上高892億円  前年比▲3.4%

(参考文献 会社四季報業界地図)

通販の現状

本日は通販の現状に関して記載します。

【増加する通販の市場規模】

通販は成長し続けている市場です。日本通販販売協会のデータを見ると、2002年の通販売上高が26,300億円に対し、2012年は54,100億円と2倍の規模へと成長しています。また、2012年度の通販売上高前年比は6.3%増と他の小売業態と比べても高い成長率を見せており、1998年以来14年連続で市場は増加傾向です。通販市場が成長した要因としては“アマゾンの大幅増収”“スマホ・タブレットの普及に伴うネット通販の成長”“BtoB通販企業の成長”といったことがあるようです。

【市場の拡大を牽引するネット通販の状況】

ネット通販の成長が通販市場の規模拡大の牽引役となっているのですが、その中でもアパレルの拡大余地が大きいようです。そのため「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイが先駆者ですが、アマゾンと楽天の2強もアパレル分野を強化して猛追。NTTドコモがファッション通販のマガシークを子会社化するなど、ネット通販のアパレルを舞台とした各社の戦いも起こっています。

2013年1月に最高裁が第1類・第2類の医薬品についてネット販売を一律に禁じた厚生省の省令を「違法」と認定したことをきっかけとした、市販薬のネット販売の動きも気になるところです(なお2013年11月に安倍首相が市販薬のネット販売を一部規制することに支持を表明しています)。

ネット通販が成長する中で、その上位寡占化も進んでいるようです。2012年の直近に利用した通販の企業・カタログに関するデータを見ると“男性:1位アマゾン19.6%、2位楽天8.3%、3位ジャパネットたかた3.6%”“女性:1位アマゾン8.5%、2位楽天6.6%、3位ニッセン4.2%”となっており、アマゾンと楽天を利用する割合が多いです。更に両社の利用者数は年々上昇しています。

【ネット通販に押されるカタログ通販】

ネット通販に勢いがある一方で、かつて主役であったカタログ通販に勢いがないようです。大手のニッセンホールディングスや頒布会形式(シリーズ制の雑貨などを毎月送る通信販売)を得意とする千趣会は、女性向けアパレルの品揃えが中心で、ネット通販との競い合いが厳しくなっています。その状況に対し、カタログ経費の効率化やネット販売の強化により生き残りを図っています。

2012年にヤフーとアスクルが業務提携を結んだり、楽天がケンコーコムを子会社化したり、といった動きがあり、今後、通販業界においても再編が進んでいくことも想定されます。

【参考:通販・テレビ通販各社の現状】

■カタログ系

・ニッセンホールディングス

カタログ通販大手。売上高1,766億円。営業利益6.0億円

・千趣会

「ベルメゾン」中心のカタログ通販大手。売上高1,457億円。営業利益21億円

・ベルーナ

50代以上向けのカタログ通販主体。売上高1,178億円。営業利益70億円

・ディノス・セシール

下着などに強いセシールとテレビ通販も行うディノスが合併。売上高1,171億円。営業利益18億円

・カタログハウス

「通販生活」を展開。売上高301億円。営業利益27億円

■テレビ系

・ジュピターショップチャンネル

24時間365日生放送が特徴。売上高1,271億円。営業利益203億円

・ジャパネットホールディングス

テレビ通販「ジャパネットたかた」運営。売上高1,170億円

・QVCジャパン

アメリカテレビ通販大手と三井物産の合弁会社。売上高997億円

・オークローンマーケティング

「ショップジャパン」「ヒルズコレクション」を運営。NTTドコモの子会社。売上高594億円。営業利益43億円

■ネット系

・アマゾン

EC世界最大手。売上高5兆8,038億円(うち日本は7,410億円)。営業利益642億円

・楽天

「楽天市場」を運営。売上高4,434億円。722億円

・ケンコーコム

医薬品や健康食品を中心に販売。楽天子会社。売上高179億円。営業利益▲1.3億円

・ヤフー

「Yahoo!ショッピング」運営。売上高3,429億円。営業利益1,863億円

・スタートトゥデイ

衣料品サイト「ZOZOTOWN」運営。売上高350億円。営業利益85億円

・マガシーク

衣料品ネット通販。NTTドコモ参加。売上高94億円。営業利益▲5.0億円

■オフィス系

・大塚商会

「たのめーる」を運営。売上高5,157億円。営業利益282億円

・アスクル

文房具通販大手。売上高2,266億円。営業利益68億円

・カウネット

オフィス通販準大手。コクヨの子会社。売上高787億円

■健康食品・化粧品系

・ディーエイチシー(DHC)

化粧品・サプリメント中心に展開。売上高1,141億円。営業利益144億円

・ファンケル

無添加化粧品メーカー。売上高828億円。営業利益38億円

・サントリーウエルネス

サントリー子会社。「セサミン」など健康食品展開。売上高584億円。営業利益77億円

・ドクターシーラボ

オールインワンタイプの化粧品で成長。売上高390億円。営業利益89億円

・山田養蜂場

ローヤルゼリー、はちみつなど健康食品に強み。売上高310億円

・わかさ生活

ブルーベリーの健康食品がヒット。売上高183億円

(参考文献 会社四季報業界地図2014年版)