小売業者が国際化する理由

本日は小売業者が国際化する理由に関して記載します。

【国際化の理由その1】成長の可能性が低い、成熟した国内市場の限界を超えたい時

ライフサイクルの経過の中で成熟期に到達した小売フォーマットは国内市場において右肩上がりに成長を続けることが難しくなります。しかし、外国市場に出ると、その小売フォーマットが新しくて興味深いものと見なされる可能性があります。

例えば、1980年代後半にアメリカで普及のピークにあったウェアハウスクラブ(会員制倉庫型卸売小売のことで例としてはコストコ)は、アメリカを抜け出し、アジアや南アメリカの市場で活気を持って展開されました。また、「トイザらス」はアメリカにおける出店が飽和状態だと判断し、アジアやヨーロッパへの進出をスタートさせました。

小売業者は、国内に留まって新しい小売フォーマットを考え出すよりも、外国市場に打って出たほうがリスクは小さいと考えて、外国へ進出していきます。そのようなことから、国外へ拡張する小売業者は一般的に大規模小売業者となります。

【国際化の理由その2】投資を多角化する必要性

「卵は一つのかごに盛るな」という格言があるようですが、投資を行う際、分散投資をすればリスク回避につながります。国際化をする際、小売フォーマットを多角化するのではなく、あくまで分散投資という観点から多角化をすることがあります。

【国際化の理由その3】規制によって本国での拡張に制限がある場合

多くの国で“小売の拡張の制限”“小売業者による従業員の解雇の制限”“営業時間を規制”といった厳格な規則があります。日本においては「大店法」という法律が過去にあり、大規模小売店を出店しようと思った場合、その地域の中小小売業者にお伺いを立てなければならないという時代がありました。今はアメリカの要求により、この法律はなくなっていますが、このような話は日本だけではありません。例えばベルギーには「パドロック法」、フランスには「ロワイエ法」と呼ばれる同様の法律があります。

【国際化の理由その4】ユニークな小売フォーマットを所有している

ある小売業者がイノベーションを起こし、新たな小売フォーマットを発明したとしても、それが特許や著作権で保護されるわけではないので、競合他社はすぐにそれを模倣することが出来ます。ユニークな小売フォーマットをもつ小売業者がそのフォーマットの価値を最大限活かそうとするならば、他社の模倣に先んじて、外国市場に積極的に拡張することが一番となります。ファストファッションの「ザラ」は迅速な在庫補充システムを開発し、回転率が高く、すぐに買わないと商品が店頭からなくなるという感覚を消費者に与えていますが、この小売フォーマットを持って、積極的に海外に進出しています。

【国際化の理由その5】本国での競争が激しい

競争の激しい市場において、小売業者が成長の可能性が高く競争が激しくない他の市場へ参入することがあります。この例としてアメリカの「Kマート」があります。Kマートはディスカウント小売業においてウォルマートにトップを譲ることとなりました。その中でKマートは、ウォルマートと直接対決をして、アメリカ市場でカニバリゼーション(共食い)をおこすのであれば、対決を避け、国際市場へ拡張していこうということを選択。メキシコに進出します。ただ、この進出は失敗に終わっています。

【国際化の理由その6】本国の景気悪化

景気の後退は、早い段階で小売業者に大きなダメージを与えます。本国市場が経済の低成長期に入っている場合は、国際的な展開を行っていくことが求められます。

【国際化の理由その7】先発者優位

小売業が成功を収める条件として、良好な立地を見出すことが挙げられます。そのため、最初に良好な立地を獲得することが重要となってきます。

現在、日本の多くの小売業が海外に進出しています。全体的な理由としては、少子高齢化に伴う国内市場の縮小やオーバーストア化による日本市場での競争激化といった理由があるためでしょう。また上記に加え、成熟した小売フォーマットやユニークな小売フォーマットが海外へ進出していくということも、海外に進出していく小売業を個別で見る際、一つの指標となると思います。

(参考文献 変わる世界の小売業)

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