インドの小売業

本日はインドの小売業に関して記載します。

【世界第8位 インド小売業の概要】

インドの小売市場の規模は世界第8位と非常に大きなものとなっています。とはいうものの日本の小売業のような形のイメージとはだいぶ異なるように感じます。まず、小売業の販売額の95%がパパママ・ストアによって占められています。そして、小売産業における最大のカテゴリーは常設店舗では食品、飲料、タバコを扱う専門の小売業者となります。また、小売業の多くがセルフサービスをとることなく、『フル』サービスを実施しています。インドでは労働賃金が安く、セルフサービスによって労務費を節約する必要がないことや、店主の所得が低く、大型店舗を借りたり、投資したりすることが出来ないことが理由のようです。よって、インドのほとんどの小売店で、接客を行い、店主や店員がカウンターの背後から商品を持ち出して、顧客に見せるというシステムをとっています。

【インド 外国からの直接投資の禁止】

2006年1月にインド政府は自社製品を生産する外国の小売業者に対して、その製品をインド国内で販売してもよいと発表しました。これはナイキのような製造業者は小売店を開設することができるけれども、ウォルマートのような小売店にはそれができないということを意味します。例えばメトロ(独)はインドにウェアハウスクラブを開設していますが、これは最終消費者が一般顧客ではなく企業であるという理由からライセンスを与えられたと言います。このようなことから、インドの小売システムは外部からの影響を受けにくいということが言えます。

【インドの課税】

インドの各州においては、ある州から持ち込まれた商品には2度課税がされることになっています。一度目はその商品が生産された州で、二度目はそれが販売される州です。商品の仕入れを州内のみで行えばいいのですが、そうでなければ税金の負担が増してしまいます。その様なことから、小売業者の全国的なチェーン展開が難しくなっていると言います。

【インド小売業のプライベート・ブランド(PB)の多さ】

インドのほとんどの百貨店やスーパーマーケット・チェーンで、他のブランド品よりマージンや利益率の高い、プライベート・ブランド製品の販売促進に力を入れています。インドのビジネス財閥の一つタタ・グループの一員である「トレント」では、PBの売上が90%。インドで最古で最大の百貨店チェーン「ショッパーズ・ショップ」でPBの売上が約22%。アパレル産業として始まった百貨店「パンタルーン」は百貨店を開店するために、川下の小売部門を統合。PBの売上は80%を占めています。

また、ほとんどのスーパーマーケットでは、米、小麦、砂糖、塩、小麦粉、豆などをパッケージし直して、それをPBとして販売しています。インドで2番目に大きいチェーンであるRPGエンタープライゼスの「フード・ワールド」の売上のPBの占める割合は約22%となっています。

【宗教上の問題】

ヒンズー教において雌牛は神聖なものであるため、インド南部にあるスーパーマーケットでは牛肉は販売していないそうです。余談ではありますが、マクドナルドは、インドにおいては製造業と見なされて、出店のライセンスを取っているのですが、もちろんビーフ100%での販売は行っていません。チキンやフィレオフィッシュ、カレー風味の野菜コロッケといったものがパンに挟まれているようです。マクドナルドのみならず、小売業においても宗教が影響を与えているのです。

インドの小売業は日本のそれと比べてユニークなものであると感じます。また、市場としては大きいのに、小売各社がインドに進出していない理由というのも上記から理解できます。国の制度というものが海外進出を行う際の大きな壁になるということでしょう。

一方、2012年にインドのシン首相が小売業の外資系企業の参入を認める方針を打ち出しています。今後、インドの小売業がどう変わっていくのかも注目です。

(参考文献 変わる世界の小売業)

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