家電流通システム

本日は家電流通システムに関して記載します。

 気になるCMを観ました。日立のCMで街の電器屋さんのCMです。地域に密着して世代を超えて皆様のお役に立っています的なCMなのですが、「なぜ、今なのか?」という疑問が出てきました。

 日本の家電流通システムにおいて、その中心を担う小売業の勢力は過去3回の入れ替わりがありました。まず初めに1950年代後半以降、松下電器産業(現パナソニック)や日立製作所、東芝などの家電メーカーが自社の製品を専売する小売店を組織化していた時代です。そしてその次に主に1980年代から1990年代にかけて日本電気専門大型店協会(NEBA)に加盟する家電量販店が台頭した時代です(NEBA加盟店の特徴は、それぞれ出自とする地域に地盤を持ち、会員間同士の出店地域が重ならないような棲み分けが行われていたことと、メーカーとの協調関係があり価格競争を抑制していた、というような特徴がありました)。そして直近の1990年後半以降においては少数の量販店とカメラ系と呼ばれる大都市のターミナルに店舗を立地させる量販店の成長・拡大です。これらの量販店の特徴としては、「郊外に大規模な駐車場を備える、あるいはターミナル駅付近に立地するなど集客を意識した立地となっていること」「店舗の大型化で多数の家電メーカーの商品を取り扱えるえること」「大量仕入れによるコストダウンとそれを可能にする多店舗化の実現」「価格訴求力を示すための大量の宣伝広告」といったものがあります。そして今現在の流れにおいては、中小チェーンは大企業への統合もしくは店舗の閉店を余儀なくされていますし、さらには上位チェーンにおいても企業間の合従連衡が行われています。

そもそも現在の家電量販店における上位チェーンは地方都市を出自とするものが多く、ロードサイド型店舗を基盤として、スケールメリットを背景とした店舗網を構築してきました。「自社による情報・物流システムの構築や地価の安い郊外地域への出店によるローコストオペレーション」「中小規模店を潰し大規模な店舗を出店するスクラップ・アンド・ビルドによる店舗の大型化」によって成長を図ってきたのです。近年では地方での市場が飽和状態にあることと、地価の下落や居抜き物件の活用により、地方都市出自の家電量販店が大都市へも出店してきています。

2010年に売上高2兆円まで行った2000年代の家電量販店の主役、ヤマダ電機についても上記のような動きを今までつけてきました。一方で、「コスモス・ベリーズ」というフランチャイズ・ボランタリーチェーンも同時に展開し、小型店への進出も図っています。

 今までスケールメリットを活かし低価格で商品を提供してきた家電量販店ですが、地方のみならず大都市圏においても競争が激しくなる中で、市場は飽和状態にあります。そこで大型店ではカバーしきれない商圏をカバーするような小型店が再評価されるようになってきているようです。小型店ならでは行える商品説明、アフターサービスの充実といったことにより、消費者との関係をしっかり築き上げ、従来のマス・マーケティングの追求に加えてワンツーマン・マーケティングを組み合わせた営業を展開していこうという動きになってきているようです。また、高齢化社会においては懇切丁寧なサービスが重要になることもポイントです。大型店ではこの部分がフォローしきれないため小型店のサービスは強みになるようです。

 始めに話を戻しますと、日立のCMは家電量販店による店舗の大型化一辺倒からの変化も踏まえ、再度見直されている小型店のサービスをアピールすることで市場の獲得を狙っているのではなかろうかと考えた次第です。

 (参考文献:小商圏時代の流通システム)

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