本日はグーグルを支える広告収入に関して記載します。
グーグルは優れた検索システムを持つ会社として創業されましたが、当時は事業を軌道に乗せるために、「検索エンジンが集めた膨大なデータを処理・保存するための大量のコンピュータを手に入れる資金を調達する」ということと「優れた検索エンジンを使って十分な収益を上げるビジネスモデルを考案すること」という2つの課題をクリアする必要がありました。これらの課題を解決し、更にグーグルの急成長の原動力となったものが、アドワーズとアドセンスという2つの広告サービスの開発でした。
アドワーズは検索連動型広告、あるいはリスティング広告と呼ばれるサービスで、2000年にスタートしました。この検索連動型広告はとても画期的なものでした。アドワーズが開発されるまでのインターネット広告は、例えば“資産運用”という項目を検索する人は“投資”が好きだろうから“投資信託”の広告を載せるという風な出稿が一般的だったようです。しかしながら、資産運用と検索したからといって投資信託とは限らず、株や土地やFXを考えているのかもしれませんし、資産運用と検索しない人の中にも投資信託に興味を持っている人がいるかもしれません。これに対してアドワーズは投資信託と検索した人にダイレクトに投資信託の広告を見てもらうことが出来ます。広告媒体としてのグーグルにとっては少ない表示回数で多くのクリックが期待できるため、多くの広告収入を稼ぐことが出来ます。また、グーグルに広告を出稿する広告主にとっては、クリックした回数にしたがって広告費を払えばいいことから広告の費用対効果を明らかにできるというメリットがあります。
アドセンスは2003年からスタートしたサービスで、ホームページやブログの運営者が自社のサイトの中にグーグルの広告を表示することによって収入を得る仕組みです。グーグルのアルゴリズムが運営者のサイトを分析し、サイトの内容に適した広告を自動的に配信・表示します。サイトを訪れた人が広告をクリックすると、広告主がグーグルに広告料を支払い、グーグルに支払われた広告料からグーグルの取り分を差し引いた金額を運営者に支払われます。
グーグルの売上内訳をみると、広告収入が2兆8,399億円と売上の96.4%(2011年12月期)を占めています。GmailやGoogle翻訳など様々なサービスを取り扱っていますが、グーグルの収益を支えているのはまさしくアドワーズやアドセンスといった広告収入だと言えます。
このアドワーズやアドセンスに絡んで、マイクロソフトとの関係で興味深い件がありました。グーグルは自社の戦略や事業計画などの情報公開をあまりしないと言われているようですが、これは過去のマイクロソフトとの関係が影響しているようです。マイクロソフトのビル・ゲイツは有望なサービスを提供しており、自社のサービスに役立つと考えた企業に対しては買収の提案を行っていました。マイクロソフトからの買収案を受け入れれば問題ないのですが、もしその提案を断ったとなると、マイクロソフトは自社の優秀なエンジニアと潤沢な資金を使って類似のサービスの提供を始め、もともとサービスを提供していた買収を断った企業に大ダメージを与えていたそうです。これはミート戦略と言われる強者が敵対する弱者を打ち負かすときに使う戦略で、強者が弱者と同じようなことを行うことにより、弱者の特徴を打ち消してしまうのです。そういった事態を避けるために、グーグルは株式公開直前まで、できるだけ財務情報を公表しないようにして広告事業の成功を隠し続けていたそうなのです。
アドワーズやアドセンスは広告として画期的な物だと思います。ネットの膨大なデータを活用した効果的・効率的な広告は今後より成長していくように思われます。
(参考文献 ビジネスモデル分析術)