クレジットカードによる既存顧客の囲い込みに関して記載します。
現在、いろいろな小売業でクレジットカードによる顧客の囲い込みを行っています。例えば日本のあるドラッグストアでは、前月の購入金額に応じて当月のポイント還元率が変わるという制度を取っているところがあるそうです。お買い上げ額に応じてポイント還元率を増やしていくという方法は百貨店のカードでもよく見られ、例えば「東武百貨店 東武カード(年会費無料):年間お買上げ 20万円未満3%→20~50万円未満5%→50万円以上7%」「大丸 DAIMARU CARD(年会費1,050円・初年度無料):半年お買上げ 10万円未満5%→10~20万円未満6% 20~30万円未満7.5% 30万円以上10%」などといったようになっています。自社カードを活用した顧客の囲い込みは日本だけではなくアメリカでも行われていて、チェーンデパートメントストア「ブルーミングデールズ」においては、自社のクレジットカードを使用しての買物で3ポイント→化粧品やフレグランスの買物はダブルポイント→セールによっては2倍、3倍のポイント取得、となっているようで、5000ポイントにつき25ドルの買物券がもらえるとのことです。様々な施策を行い、顧客の再来店を促し固定客化することは小売業が生き残る上で非常に重要なことです。
さて、近年において日本のクレジットカードの発行枚数は年々増加傾向にあります。全体的なクレジットカードの発行枚数でみると1998年度に245百万枚が2010年度には322百万枚へ増加。その中で流通系(百貨店・量販店・流通系クレジットカード会社)を見ると1998年度63百万枚だったのに対し2010年度103百万枚へ増加。クレジットカードの発行枚数で一番多い銀行系の発行枚数が1998年度97百万枚、2010年度134百万枚の増で38.0%伸びているのに対し、流通系の伸びが62.9%ですから、流通系のクレジットカード発行枚数の伸びの高さが伺えます。流通系クレジット枚数の発行枚数の増加を踏まえると先ほどの囲い込み戦略が流通業界全体において積極的に行われているだろうことが見て取れます。
業種別の販売信用供与額の推移を見てみましても、「流通系クレジット会社 1999年35,864億円→2010年111,762億円」「サービス・小売業者等 1999年18,371億円→52,646億円」「百貨店 1999年18,156億円→2010年9,805億円」と百貨店を除いてその額は増加傾向にあります(百貨店の販売信用供与額が低下しているのは売上高が1998年9兆1773億円から2011年6兆1525億円と市場規模が縮小していることが要因として考えられます。)。この結果は、以前よりも買物の際にお客様がクレジットカードを利用することが多くなっているという証左だと思われます。昔はニコニコ現金払いとか言いましたけど時代が変わったものです。企業側はクレジットカードにより顧客の囲い込みを狙い、消費者側は買物の際、自分のメリットを最大化するにはどうしたらよいかを考えるようになってきているということでしょう。
最近、どこに行ってもポイントカードはどうですか的な流れになって、1回しか言ってない店のポイントカードが結構たまっているなんてこともあります。ポイント還元による店舗の魅力化は非常に重要なことと思いますが、一方でそれ以外の魅力も同時に高めていかないと、店側からすればポイントカード代の無駄にもなってしまうかもしれません。バランスよく全体を良くしていけるように目指すことが重要だと思います。