本日はレストラン「ひらまつ」の個別ブランドの展開による事業規模の拡大に関して記載します。
アベノミクスの効果により景気指標は上向いてきているものの、外食産業においては依然として価格のデフレ傾向が続いていると言われます。その中でひらまつなどの一部の高級業態を採る企業に関してはアベノミクスの恩恵を受けているそうです。
このひらまつですが、直営店舗や百貨店などの商業施設へテナント出店しているレストランになります。ひらまつは6つのレストランブランド(Hiramatsu(ひらまつ)、ASO(アソ)、PAUL BOCUSE(ポール・ボキューズ)、HAEBERLIN(エーベルラン)、POURCEL(プルセル)、D&D LONDON)を持っており、出店する場所にふさわしいタイプを選んだ上で出店し、店舗運営を行っています。
そもそも、レストラン業は料理人が経営者を兼ねるケースが多く、売上と企業規模が制約されがちです。高付加価値を売りにしたい場合、販路や店舗数を増やすとブランド価値が下がってしまいます。また、多店舗の展開による規模の拡大を目指した場合、ブランド価値が弱くなりますので、手ごろな価格の商品を販売することになります。すると、競合企業との価格競争に陥ることになります。
そのような前提条件がある中、ひらまつは6つの個別のブランドを作ることにより、店舗数を増やしても、ブランドの価値を希薄化させず、事業の規模を拡大しています。このように同じカテゴリー内に複数の商品を投入する際に、それぞれ個別のブランドを投入することを個別ブランド戦略と言います。例えばトヨタ自動車であればセダンカテゴリーに「カローラ」「カムリ」「プリウス」「マークX」を投入していたり、JT社であれば「マイルドセブン」「セブンスター」を投入していたりする戦略です。この戦略を採ることにより、一つのブランドで失敗しても、他のブランドで成功すれば問題ないというリスク分散が図れるというメリットがあります。
個別ブランド戦略を採るにあたってはブランド間の的確なポジショニングを採ることが難しくなります。ひらまつはこの点を考慮し、個別ブランドの役割や適用する範囲、相互の関係性などを明確にすみ分けています。例えばPAUL BOCUSEの下にはMaison PAUL BOCUSE(メゾン・ポール・ボキューズ)、Jardin PAUL BOCUSE(ジャルダン・ポール・ボキューズ)、BRASSERIE PAUL BOCUSE(ブラッスリー・ポール・ボキューズ)を配置するという戦略を採っているのですが、Maison PAUL BOCUSEとJardin PAUL BOCUSEは夜の顧客単価が1万5000円以上なのに対し、BRASSERIE PAUL BOCUSEは同3000~5000円というような形となっています。
このように個別ブランド戦略を採ることにより、店舗ごとに顧客層が異なるため、同社内のレストランどうしで競合が起きることなく、企業規模を拡大していくことができます。ただ、やはり自らのブランドとしてのポジショニングをどこにするか理解した上で行動しなければならないですし、それがあった上での個別ブランド戦略となると思います。位置づけを明確にすることが重要だと思います。
(参考文献 成功事例に学ぶマーケティング戦略の教科書)