本日は“同業との統合(水平統合)”に関して記載します。
【同業との統合(水平統合)とは】
“同業との統合”は水平統合とも呼ばれ、自社と同種の事業を営む他社を買収や合併などによって自社に統合することを言います。M&Aの最も基本的なビジネスモデルとなっており、M&Aの大半が“同業との統合”を行うためのものとなっていると言われます。
“同業との統合”を行うことにより、事業の規模とシェアが増大し、自社の業界内での順位を上げることができます。それに伴って、規模の経済が働くことによるコストダウン、顧客認知度のアップ、業界の支配力の向上、優秀な人材の獲得能力の向上させることもできるようになります。そして事業の収益性を向上させることができるのです。
例えばイオンは、かつてダイエーやイトーヨーカ堂に規模で劣っていましたが、ヤオハンやマイカルなど競合の買収を繰り返しました。それにより現在では日本最大級の小売業者となり、2013年8月にはダイエーを連結子会社化するほどに大きな企業となりました。
【事業の収益性は「業界順位」「シェア」「事業規模」に対して正の相関を持つ】
業界順位やシェア、事業規模が拡大すると事業の規模が比例的に拡大すると言います。事業規模やシェアが増大すると収益性が高まる理由は、製品単位当たりの販売費や間接費、研究開発費などのコストが減少するためです。コストの削減は競合他社との価格競争で勝利することにつながりますし、同じ価格で販売したとしても高い収益性を得ることができます。コスト削減によって得た利益によって、研究開発を積極的に行えば製品の競争力が増しますし、合理化へ向けた投資を行えばコスト競争力が更に増すことになります。生産面で見ても大きな生産量を背景とした経験曲線効果によりコスト削減につなげることができます。シェアの拡大は、市場における設備の展開密度が上がることにつながり、配送費を大きく節約できるメリットがあります。効率が上がることにより収益性が上がるというプラスのサイクルが働くということでしょう。
【事業のライフサイクルと“同業との統合”の関係】
“同業との統合”は典型的にみて、事業ライフサイクルの後半に起こってきます。事業ライフサイクルは初め先駆者が市場に参入し独占的に販売を行っていくのですが、成長期に入ると競合の市場参入が始まります。そして、一旦細分化された業界構造となりますが、その後、事業ライフサイクルが後半に向かうに従い、事業者が集約され寡占的市場が出現します。この事業ライフサイクルの後半に関連してですが、成熟した自由競争市場ではニッチな事業者を除く一般的な事業者は3社程度しか生き残ることができないそうです。これはシースとシソーディアという2人の学者によって「3の法則」と名付けられているそうです。ですので、この法則から見ると、事業ライフサイクルの後半に当たっては、業界のトップ3に入れるようにした方が良いということのようです。業界の上位にいれば顧客から一流と認識されるでしょうし、例えば小売業がメーカーに対して強い発言力を持てるようになるといったような優先的な能力を持つことができます。同業同士が合併するシーンをニュースで見ることがありますが、まさしくこのような視点からの合併なのでしょう。
同業との統合においては、統合した企業同士が規模の経済が利くように機能統合をしていくことが重要となります。組織風土の問題など難しい点もあるとは思いますが、機能統合を果たしてこそ、同業との統合の効果が発揮できるということです。
(参考文献 経営戦略を見る目と考える力を養うビジネスモデルの教科書)