ヤフーショッピングの採ったビジネスモデル「敵の収益源の破壊」

本日はヤフーショッピングの採ったビジネスモデル「敵の収益源の破壊」に関して記載します。

【「ヤフーショッピング」の出店にかかる費用の無料化】

2013年10月、仮想モール「ヤフーショッピング」は、出店の初期費用2万1000円と月額利用料2万5000円を無料化し、更には売上に対して1.7~6.0%課していた手数料もただにしました。これは同社のライバルで日本における主要なネットポータルである楽天やアマゾンがネットショッピングを主たる収入源としていることを踏まえた戦略です。これによって楽天は出店や取り扱いを有料のまま据え置けば競争力を削がれ、無料にすれば収益源を失うという難しい選択を迫られました。上記のようなヤフーショッピングが採ったビジネスモデルを「敵の収益源の破壊」と言います。

【自社の不利な市場を焦土化する「敵の収益源の破壊」】

「敵の収益源の破壊」とは以下のようなビジネスモデルのことを言います。まず、競合が主な収益源とする市場で、無料、もしくは極めて低い利益の販売を行い、市場の収益性を意図的に破壊します。それによって競合の収益源は破壊され、力が削がれていきます。その一方で、自社が主力とする市場で競合に勝っていきます。このビジネスモデルは他社との収益構造の違いを利用した価格戦略で優位に立つという戦略ではなく、競合の力を削ぐことにより相対的な優位性を獲得することを目指したビジネスモデルです。

ヤフーショッピング、アマゾン、楽天の2012年7~9月→2013年7~9月の対前年同期比成長率を見てみると、楽天やアマゾンが二桁成長を続ける中で、ヤフーショッピングはマイナス成長となっていました。ヤフーショッピングは楽天やアマゾンの優位性が増している中でサービスの無料化を実施したわけです。「敵の収益源の破壊」のビジネスモデルを取る企業は、無料化ないし低価格した市場からの利益はなくなってしまいますが、もともと収益の上がっていない市場であることと、自社の収益源は異なったところにあるため、致命的なダメージを受けることはありません。ヤフーショッピングとしては勝負がつきつつある市場で敵の収益源を破壊しようとしたのです。ちなみに、ヤフーは出店料と手数料の無料化によって出店数が増加し、自社サイトに対する広告出稿量が大幅に増加すると見込んでいます。

「敵の収益源の破壊」を実行すると、競合との信頼関係も破壊され、競合とシェアを分け合いながら共存するという状況ではなくなります。また、顧客が無料に慣れてしまい、業界において将来にわたって課金できなくなり、当該市場が永久に焦土化する可能性があります。

例えば、マイクロソフトは競合のネットスケープとの戦いに勝てないとみると、それまで優良だった高機能ブラウザを無料にして、ネットスケープの収益源を破壊。同社を市場から駆逐しました。そしてその結果、ネットユーザーがブラウザは無料という常識を持ってしまいました。

競合と勝負するために様々なビジネスモデルが使用されています。「敵の収益源の破壊」のようなビジネスモデルは行う側はもちろん、行われる可能性のある側も知っておいた方が良いビジネスモデルだと思われます。

(参考文献 ビジネスモデルの教科書)

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