本日は“価値システムの変化による脅威:キングジムの戦略”に関して記載します。
【価値システムとは】
価値システムとは「収益モデルを支える事業のつながり」のことを言います。“収益モデル”は、儲けの仕組みのことで、企業が顧客に「商品・サービス」を提供し、その対価として顧客から代金をいただくという仕組みです。そして“事業のつながり”とは、例えばメーカーであれば「原材料の採掘→部品の製造→製品の製造→製品の流通→最終消費者への製品の販売」というようなことを言い、製品・サービスが顧客の手元に届くまでの一連の流れのようなことを言います。この価値システムが変化する時、既存の企業の脅威となることがあるのです。
【キングジムの戦略】
キングジムは主に家庭用の文具を製造、販売する会社で、主力であるファイルを中心とした文房具やテプラなどの電子文具も多数開発している企業です。このキングジムが2012年7月1日付で広島に本社を持つドリームネッツより電子書籍出版・書店開設サービス「wook(ウック)」運営事業を譲り受けることに合意しました。
電子書籍出版・書店開設サービス「wook」は「誰にでも簡単に電子書店を開設できる」をコンセプトにした電子書籍・出版ソリューション事業です。「wook」を使うことで、誰にでもインターネット上に独自の電子書店を開設でき、さらには簡単な操作で電子書籍の作成や販売も可能になるそうです。「wook」で提供される電子書籍は、パソコンはもちろんのことiPad、iPhone、Android端末からでも専用のビューアアプリを使用して閲覧が可能です。
同社の流通網を活用し事業の拡大を狙っています。このキングジムの「電子書籍・出版」市場参入は従来からある出版社などの収益を目減りさせる可能性がある“脅威”となります。電子書籍の出版が普及していくということは、今までの「出版社→印刷会社→製本会社→出版卸売業者→リアル書店」の流れが途中で省略される可能性があるということです。これにより、著者から顧客の手元まで届く今までの事業のつながりが変化し、それに合わせて従来からある既存の企業が衰退に追い込まれる可能性が出てくるのです。
価値システムは、顧客に提供する新商品や新サービスの出現により変化する可能性があります。例えば“ポケベルに対する携帯電話”“フィルムカメラに対するデジタルカメラ”“ワープロに対するパソコン”が挙げられます。また、新しい儲けの仕組みが出現することによっても、価値システムは変化する可能性があります。これはアマゾン登場(リアル店舗に対するネット店舗の登場)が、従来からある「出版卸売業→リアル書店」という価値システムを変化させたという例が挙げられます。
キングジムでは「wook」によって自費出版のサポートも行っているようです。ネットの普及により“出版をする”ということの垣根が低くなってきているようにも感じさせられます。社会の環境変化はどの時代にもあるのでしょうけれど、その変化は大きな流れとなって確実に僕たちの生活を変化させていくのでしょう。そのことを織り込んだ行動が大切だとも言えると思われます。
(参考文献 明解!経営戦略がわかる~消費者視点から読み解く“戦略”のキホン~)