鴻海(こうかい)精密工業の“アンバンドリング”

本日は鴻海(こうかい)精密工業の“アンバンドリング”に関して記載します。

【成長する企業 鴻海精密工業】

フォックスコンの名前でも知られる鴻海精密工業は、台湾に本社を構え主な生産拠点を中国とする企業です。1974年の創業当時は小規模な企業でしたが、2011年にはグループの年間9兆7126億円の売上高に達し、その額は日立製作所や日産自動車の連結売上高を超える規模です。アップルのiPhone、ソニーのゲーム機やパソコン、モトローラ社の携帯電話など世界各地の大企業から高度な製品の生産を請け負っていて、各種パーツのOEM供給・筐体の組み立てを行っている老舗企業として世界規模の市場では名高い企業となっています(OEM:発注元企業のブランドで販売される製品を製造すること)。この鴻海精密工業の成長の理由には“アンバンドリング”というビジネスモデルにありました。

【アンバンドリングとは】

アンバンドリングとはビジネスの特色ごとにバリューチェーンを分け、特定の業務だけに特化するビジネスモデルを言います。ビジネスの特色は「顧客ビジネス」「インフラビジネス」「製品ビジネス」の3つに分けます。

・顧客ビジネス:顧客のニーズに即した商品やサービスを見つけて顧客に結び付ける。

・製品ビジネス:創造的な新製品やサービスを開発。

・インフラビジネス:物流、製造、取引処理など、毎日の業務を支える設備を管理する業務。

上記3つの仕事はそれぞれ求められるスキルや経済原理が異なりますので、一つの組織として活動していると、組織に矛盾が出たり、妥協が生まれたり、効率が悪くなったりします。そのことから、特色が違うビジネスは別会社にした方が、それぞれが強い企業になれるというわけです。例えば日本の電力会社を発電と送電部門を別会社にするということは、このアンバンドリングの考え方の一種となります。

【鴻海精密工業のアンバンドリング】

鴻海精密工業は自社の事業を上記の「インフラビジネス」に特化し、生産だけに経営資源を集中し、高度な製造ノウハウを蓄積していくことで、成長を遂げていきました。かつてはメーカーが自社で工場を持つのが普通のスタイルでしたが、近年、自社工場を持たず、企画と設計だけを手掛けるファブレスメーカーが増えています(例:任天堂・セガ・ダイドードリンコ等)。そうした企業は請負会社に対して、難解な設計や製造、並びに大量生産を求めてきます。それに対して鴻海精密工業はインフラビジネスに特化することにより、その期待に応えたのです。

企業の成長には強みを伸ばすことが一つの手段ですが、アンバンドリングはまさしくそのような手法であると思います。

さて、鴻海精密工業は3月10日に年内に1万5000人の新規採用を計画していて、新規採用者の配属先はクラウドやeコマースなどの次世代事業領域が含まれるという報道がなされました。同社は携帯端末市場の飽和により、その利幅が縮小していて、従来のビジネスモデルからの脱却を図ろうとしています。同社のこの選択が吉と出るか凶と出るか、注目されます。

(参考文献 図解&事例で学ぶ ビジネスモデルの教科書)

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