本日はターゲットのネットワーク・イノベーションに関して記載します。
【アメリカのディスカウント百貨店チェーン「ターゲット」】
ターゲットは「ファッション界の最良をディスカウント界の最良と合体させる」ことを意図した「高品質の商品をディスカウント価格で提供する良心的な店」として、地方百貨店のデイトン社の新しいディスカウント小売戦略の一環として1962年に1号店をオープンさせました。そしてターゲットを運営するターゲット・コーポレーションは、今ではアメリカの売上高第5位の小売業となっています。同社は社外の人や組織とつながることにより実績を上げてきたのです。
【ターゲット 他社とのつながりによる価値の創出】
ターゲットはアメリカのポストモダン建築を代表する建築家マイケル・グレイブスと1999年に提携し、グレイブスがデザインし、ターゲットが独占販売するキッチン用品のラインを生み出しました。それ以後、75人以上のプロダクト・デザイナーや10人以上の世界的に有名なファッション・デザイナーと提携し、同社でしか買えない商品を開発していきます。アイザック・ミズラヒ(数多くの賞を受賞している実力派デザイナー)との5年間の協働は1年あたりで3億円の利益を生み出したと言います。
また、同社はイギリスの百貨店リバティオブロンドンを始めとした小売業者と提携したり、短期間しか営業しない期間限定の店舗を出店したりしています。そして、婦人用バッグがメインのブランド、アニヤ・ハインドマーチがデザインしたハンドバッグの販売も行ったのですが、なんとオンラインで2分足らずで売り切れるという結果を残したと言います。
このような戦略を採ることで、同社は消費者の口コミと関心を高め売上の嵩上げを図ってきました。
【ネットワーク・イノベーション 他社との協働による価値の創出】
自社が単独で事業を行うのではなく他社との協働を行うことにより、自社の強みを活かしながら他社の“生産工程”“製品・サービス”“チャネル”“ブランド”といった能力や資産を利用できるようになります。また、自社が新しい製品・サービスや事業を開発する際のリスクを他社と分かち合うことにもなります。まさしくターゲットは協働を行うことにより上記のようなメリットを活用し実績を上げてきたということが言えます。
ネットワーク・イノベーションは他企業でも行われています。例えば東芝とUPSは、東芝製パソコンを配送センターでUPSが修理するように契約を結んだことにより、“東芝が修理時間の短縮”“UPSが新しい利益の獲得”という双方にメリットのある結果を生み出しました。また、ブラジルの化粧品会社ナトゥーラは世界各地の25の大学との高度な人的ネットワークを構築することで、社内の開発能力を超える成果を上げていると言います。
このようにネットワーク・イノベーションを起こすことは、企業が大きなメリットを得る結果につながるのです。
ジョイントベンチャーという言葉を聞きますが、これなども双方の強みが活かせれば単独では不可能であっただろう利益を生み出すことができます。一方で、双方の強みが活かせなかった場合はそれほど大きな利益の創出にはつながらないと思います。ネットワーク・イノベーションは協働する相手とのベクトルを合わせるということが重要にも思われます。
(参考文献 ビジネスモデル・イノベーション ブレークスルーを起こすフレームワーク10)