本日は金沢工業大学のSTP戦略に関して記載します。
【STP戦略】
STP戦略とはコトラー理論の中核的な位置づけのフレームワークでSegmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)のことを言います。このSTP戦略はセグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングの順番で進めていきます。まず、セグメンテーションで市場に点在する顧客の中から自社の顧客となるだろう塊を見つけ出します。そしてセグメントの切り口からターゲットを見つけます。そして最後にポジショニングとして、ターゲットの価値観に基づいて自社を見た時に、どうすれば競合よりも魅力的になるかを考えていきます。
【STP戦略で成功した金沢工業大学】
現在、少子化が進み18歳の人口が減少する一方、大学数は昭和60年460校→平成21年773校と増えてきています。大学経営はターゲットが減り続ける一方で競合相手が増える環境に置かれています。その中で、金沢工業大学は地方都市にある私立大学と、一見厳しい状況に置かれているにも関わらず、朝日新聞社が発行する大学ランキングでは2011年版で、学長からの評価で教育分野が6年連続1位、高校からの評価でも全国16位と、好評価を受けています。また、2008年度の就職率は99.5%で約7割が上場企業、大手企業、公務員に就職しています。
この結果を出すに当たり、金沢工業大学は1995年から、将来の少子化を見越し、地方の工業大学が生き残るために改革を実施します。同校は金沢に立地していますが、全国から入学者を集めています。入学者のターゲットとしては、偏差値50弱で理数系志望の生徒たちとしました。ターゲットとする生徒は、偏差値がそれほど高くない一方、数理系を毛嫌いする生徒ではありません。同校は研究より教育に力を注ぎ、入学してきた生徒を徹底的に教育していきます。それにより生徒たちの学力が伸びていくこととなります。また、地方にあるというデメリットを、遊ぶ場所が少ないため勉強に励めるというメリットと捉えています。こうして学力をつけた生徒たちはモチベーションが高くなっていき、企業側から見て必要な人材に育っていきます。同校のポジショニングは『教育付加価値の高い大学』です。
顧客を絞り込み自社の在り方を明確にすることで、厳しい競合環境に置かれ、その中で不利な状態にあるとしても、勝機があるということが、金沢工業大学の例から伺えます。
(参考文献 ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)