本日はアベノミクス景気の今後と乗数効果に関して記載します。
【今後の景気動向に関して】
現在、2012年11月を底として景気回復局面に入っているとみられています。今回の景気回復については内需が主導する形で景気が良くなってきています。直近5四半期の経済成長を見てみると、外需が12年10~12月期、13年7月期~9月期、同年10~12月期とマイナスになっているのに対し、実質GDPは5四半期ともプラス成長を維持しています。これは民間の消費がプラス(人々がたくさんのモノやサービスを購入している)ということが要因として挙げられます。このように民間の消費が増えたのには、日経平均が12年秋に9000円前後だったのに対し、昨年末は1万6000円を超えたことによる「資産効果」が大きかったということが挙げられます。また、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の影響による節約志向に対して、消費者が「節約疲れ」をしてきたのではないかとも言われます。
このように外需ではなく内需によって景気回復が進んできているのですが、2014年の4~6月期はマイナス成長に陥るのではないかとみられています。その要因としては「消費増税による駆け込み需要の反動」や「物価上昇」による影響があります。
一旦マイナス成長に入る経済ですが7~9月期には再びプラスに転じると見込まれています。それは多くの企業がボーナスの支給額を増加していますので消費が盛り返すことが想定されているためです。また、公共投資の効果が7~9月期以降に効いてくるとみられているためです。2月上旬に成立した13年度の補正予算で公共投資が1兆円規模で上積みされていますが、この効果が発揮されてくるのです。近年、日本では公共投資は効果がなくなってきているとも言われますが、“乗数効果”により景気を押し上げる効果は今なお見込めるということです。
【乗数効果とは】
乗数効果とはマクロ経済学で用いられる経済効果で、政府支出や投資の増減がその増減額以上に国民所得を増減させることを言います。例えば、政府が公共施設の建設費などの政府支出を1兆円増加させるとすると、その支出の受け手である企業の所得が1兆円増加します。次にこの企業は取引関係にある企業への支払いなど消費を増加させ、この消費の増加分だけ再び誰かの所得を増加させることになります。このようなプロセスを繰り返して国民所得は当初の政府支出以上に増加していくのです。
この乗数効果は過去国会で取り上げられ話題になったこともありました。
いよいよ、4月から消費増税となります。2014年日本経済がどうなるかの大きなポイントの一つと言えます。4月以降の景気の動向に注目です。
〈補足〉乗数効果の追加説明
“政府支出の大きさが変化(△G)”と“国民所得の大きさが変化(△Y)の関係を考えた場合、△Y=1/(1-c(限界消費性向))×△Gとなります。限界消費性向とは国民所得が増加した時、そのうち消費の増大に割り当てられる部分を言います。
■例えば、限界消費性向を0.7として、Gが10億円から13億円に増加した場合
△Y=1/(1-0.7)×(13億円―10億円)
△Y=1/0.3×3億円
△Y=10億円
3億円の政府支出の増加で国民所得は10億円になりました。
投資額についてもGの変化と同様となり、△Y=1/(1-c)×△Iとなります。
1/(1-c)を政府支出乗数または投資乗数と言います。
上記は閉鎖経済モデルの話として記載しましたが、政府支出は景気をコントロールする重要な施策であると言えます。
(参考文献 週刊東洋経済3/29他)