コメリの船団方式出店戦略

本日は、コメリの船団方式出店戦略に関して記載します。

【コメリの小型店出店 独自の専門性を持ったハード&グリーン】

コメリは1974年に実施された大店法による出店規制や79年の規制強化(規制対象が売場面積1500平方メートル以上から同500平方メートル超に引き下げ)といった流れを受け、「ハード&グリーン」という売場面積150坪スタイルの小型店を出店していくようになります。このハード&グリーンの特徴は、金物と工具(ハード)、園芸用品と農業資材(グリーン)の2つの商品カテゴリーに絞り込んだ、専門店指向の徹底を図ったことと、店舗バッグヤードに在庫を置くスペースを持たず、納品された商品をそのまま通路に置き、速やかに売場に陳列する作業システムを採用したことです。このコメリの戦略が同社の成長につながっています。

【コメリの集中出店戦略 船団方式】

そして、コメリは小型店を中心としながら、中・大型のホームセンターの出店も行っています。これは競争相手の大型店が近隣に出店した場合、同社の小型店の売上に影響するので、その対策として中・大型店の出店を行い競合相手に対する防御装置としています。コメリは上記のような、大きな戦艦の周辺に小さな駆逐艦を配置するように、小型店と中・大型店を組み合わせて地域市場を制覇していく独特の集中出店戦略を船団方式と呼んでいるそうです(2010年8月時点ではホームセンター1店に対して小型店6店の割合で出店)。

全体の店舗数の推移を見ると、最初に総店舗数が100店舗に達成するのに15年かかっていますが、その後、店舗数の増加度は加速。200号店は100号店達成から3年数か月、そして300号店はそれからちょうど3年。400号店以降は、ほぼ2年以内の期間に100店舗ずつ上乗せしています。チェーンストア経営のパワーとして、一度、業態を支える事業の仕組みを確立すると、全体店舗数の増大と出店数が加速化していくといいます。コメリは事業システムを確立し店舗数を拡大することに成功したと言えます。

【コメリの新店舗出店を支える配送センターの開設】

新規出店の加速度と密接に関連していることに、配送センターの配置戦略もあります。小型店の経営効率化は店舗では極力在庫を持たず、店舗作業の単純化・省力化と店舗面積の有効活用を徹底することにあります。そのための要として配送センターがあり、配送センターから1日で往復できる距離に店舗を集中出店するドミナント地域の形成が必須となってきます。コメリも各地に配送センターを開設し、その周辺地域で出店攻勢をかける戦略を繰り返し実行しています。例えば、1995年郡山流通センターを開設し、その後98年に高崎流通センターを開設。その時期に、群馬・埼玉・千葉・神奈川・東京といった関東圏への出店攻勢が始まっています。また、97年福井流通センターを開設し、2000年には三重流通センターを開設。この時期には福井・滋賀・岐阜・京都・三重など、中部から関西地区へと出店エリアが一段と拡大しています。

大量出店の戦略として、この立地条件でこの規模の店舗を出店すれば「間違いなく」これだけの売上が上がるという店舗投資予測の精度を上げることが、投資リスクの回避につながります。出店経験を積み、店舗投資予測の精度が安定すると、標準化された店舗の反復複製は迅速かつ容易に進めることができるそうです。過去の成功パターンにとらわれないということは成熟産業の視点であり、方向性を模索し成功パターンを構築し繰り返すことは、成長過程にある企業にとっては重要な戦略であるということを感じます。

(参考文献 日本の優秀小売企業の底力)

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