本日はJR京都伊勢丹出店後の京都地区の百貨店に関して「藤井大丸」「京都近鉄百貨店」の2店舗を中心にピックアップして記載します。
1997年9月、伊勢丹とJR西日本の合弁JR西日本伊勢丹が、京都駅にJR京都伊勢丹を開店しました。JR京都伊勢丹は当初、売場面積32,000平方メートルと京都市内の百貨店では4番目の規模ではあるものの、「ファッションの伊勢丹」をテーマに開店。建物自体が斬新なデザイン(中央吹き抜け、幅26メートル、高低差30メートル、空中経路など)で、施設構成も充実したもの(ホテルや900強の座席数のあるシアター、充実したレストラン街など)で、話題性もあり、開店当初、予想を上回る集客力を発揮したといいます。
この新規参入に対して、既存の髙島屋、大丸、近鉄百貨店、阪急百貨店、地元の藤井大丸が迎え撃つ形となったわけですが、地域一番店の髙島屋京都店は都市型百貨店、大丸京都店はキャリア層やヤング層への対応強化という特徴化を図り、店舗の差別化を図りました。京都地区百貨店の売上シェアを2000年と2009年の対比でみると、髙島屋京都店は35.3%から35.1%へとほぼ変わらず、大丸京都店は26.2%から27.2%へと若干増。一方JR京都伊勢丹は16.0%から25.0%へとシェアを高め、大丸京都店に追いつく勢いです。
さて、京都の都心部、四条にある小型百貨店の藤井大丸ですが、この店舗は、前は京都中心部にはなかった丸井・パルコ的な店づくりを行うことで、顧客からの支持を得ていきます(注:丸井は現在店舗が河原町にあります)。1996年9月から20億円をかけて、対象顧客をヤング、OLゾーンに絞って、段階的に改装していき、特定のテイストで婦人・紳士・子供のファッション、生活雑貨、食料品まで取り揃えた専門店集積ビルへと変化していきました。また、地下の食料品のスーパーは着実に顧客を集めるポイントとなっているようです。現在、地下の食料品売場と同じフロアに化粧品売場があり、女性客の買い回りを狙っているところは面白い気がしました(匂いの面を考慮してコンサルを行うようなタイプの売場ではありませんでした。)。
京都駅前地区にあった京都近鉄百貨店は1995年3月に160億円を投じて11,000平方メートル増床し、売場面積を従来から1.4倍に拡大。1997年くらいまで京都駅ビル開業効果の余波で、飲食、食料品は好調に推移していたといいます。その流れの中で、京都近鉄百貨店はOLキャリア、若者狙いのコンセプトへ店舗の舵を切っていきます。その結果、同店の売上は1997年前年比91.6%、1998年81.3%、1999年85.5%と年々売上高を落としていきます。2000年には一部百貨店部分を残し、「GAP」「無印良品」「ソフマップ」などの専門店を導入し、さらに店舗の方向性を変えていきます。またそれと同時に、シニアの従来顧客層を対応とした紳士カジュアル売場を強化。店舗のコンセプトをコロコロと変えていきます。その結果、2007年に閉店となりました。
大阪地区で小売業の競争が激しくなる中、京都地区もその戦いに巻き込まれていきます。競争が激しくなる中、店舗のコンセプトを固定し、そのポジショニングを明確し、より一層特徴を尖らせていくことが求められると想定されます。
(参考文献 全国百貨店の店舗戦略2011)