大阪小売業の戦い

本日は2013年の大阪小売業の戦いに関して記載します。

 大阪は百貨店戦争が巻き起こっています。2011年にJR大阪駅北側の駅ビルにJR西日本と三越伊勢丹が共同出資する「JR大阪三越伊勢丹」が売場面積50,000平方メートルの規模で開業しました。それに伴い、梅田(キタ)地区では阪急うめだ本店が店舗の建て替えで従来の1.38倍規模の84,000平方メートルへと大型化。大丸梅田店も64,000平方メートルへと1.60倍増床。梅田地区の2005年と2012年の面積比は1.63倍となり、かなりの激戦区となっています。キタだけでなくミナミでも百貨店の増床がなされます。2009年に大丸心斎橋店のそごう店舗買収による増床で80,000平方メートルへ。2011年に難波の髙島屋大阪店が78,000平方メートルへ増床。このように大阪市の各地で百貨店の大規模な増床が一気に巻き起こっています。

そして2013年、4月26日にJR大阪駅北側に複合施設「グランフロント大阪」が開業し、6月13日に阿倍野地区で複合ビル「あべのハルカス」が部分的に営業スタートとなりました。グランフロントはオフィスビルや産官学の交流拠点「ナレッジキャピタル」、マンション、商業施設などで構成されています。この商業施設の開業にJR大阪三越伊勢丹は危機感を募らせているといいます。同店の初年度売上高は当初目論んでいた550億円に達することができず、その6割程度となる310億円でした。2012年においても売上高、来店客数ともに前年を下回りました。そのような中で同社の親会社、JR西日本は、JR大阪三越伊勢丹の一部売場に外部専門店を導入し、早くも2015年春に新装開業する計画を表明しています。あべのハルカスは近鉄グループによる高さ300メートル高層ビルで、百貨店、展望台、ホテル、オフィスで構成されます。2014年春に開業となります。このあべのハルカスの近鉄百貨店阿倍野店の売場面積はなんと100,000平方メートルへ。フルライン、フルターゲットの品揃えで百貨店から離れていた若者や家族層を取り戻す考えです。あべのハルカスの高さ300メートルは日本一となりますので、阿倍野に2014年日本一高いビルと日本一広い百貨店が誕生するというわけです。

このような形で大阪の商業施設の巨大化が継続的に進んでいくわけですが、各店が売上確保のために広域からの集客が必要となる結果、大阪の顧客吸引力が増す(商圏が拡大する)ことが考えられるようです。日本政策投資銀行の試算では2014年度の梅田地区の商業施設売上高は、JR大阪三越伊勢丹が開業した2011年度との対比で1平方メートルあたりの売上高は横ばいで107万円なのですが、売上高は23%増の5800億円になると試算しています。7月下旬に日本経済新聞が京都市、神戸市などに住む20歳以上の男女1242人から回答を得た調査によると、京都に住む人の20%、神戸に住む人の31%がグランフロントへ行ったと回答しており、「近いうちに行くつもり」という回答を加えると、それぞれ40%、53%になったそうです。このように大阪の顧客吸引力が増すことに対して、神戸、京都地区の百貨店も顧客を奪われまいと対抗して改装するという百貨店増床・改装の連鎖反応が関西一円で活性化し始めているといいます。

 小売業の売場面積が拡大する中で、単純に施設を作れば売れるという状況ではなくなってきています。今後、大阪エリアにおいて、各店舗がどのような対策を打って売上の維持拡大を図っていくか、非常に興味深いものがあります。

 (参考文献 日経MJトレンド情報源2014)

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