札幌の百貨店競争とニッチ戦略

本日は札幌の百貨店競争と「ニッチ」戦略に関して記載します。

2013年10月22日に丸井今井の「大通別館」が来年秋に閉館されるという報道がありました。大通別館は本店大通館と道路を挟んでいるため、賃貸契約が満了するのに合わせて閉館するようです。

そもそも、札幌エリアは2003年の大丸札幌店の出店後、百貨店同士の競合が激しくなっているように見受けられます。大丸札幌店出店前、札幌市内には“地域一番店の丸井今井本店”“三越札幌店”“東急札幌店”“札幌西武”“ロビンソン”“丸ヨ池内”と百貨店は6つありました。そして2003年3月6日に大丸札幌店が、丸井今井本店を上回る地域最大の店舗規模でJR札幌駅に駅ビル型の百貨店としてオープン。この大丸の札幌地区進出が呼び水となって札幌地区の百貨店の生き残りをかけた競合が始まります。丸井今井や三越の別館増築により、札幌地区の百貨店の売場面積は2003年に従来の1.35倍へ。これは名古屋エリアに髙島屋、京都エリアに伊勢丹が駅ビル型の百貨店として開店した時を上回る競争の激しさでした。この厳しい競争状態の中、札幌西武、ロビンソンが閉店することとなります。一方、大丸札幌店は開店以来、好調に売上を推移させ、2009年には丸井今井を抜き、地域一番店へ。大丸札幌店の売上シェアは2004年19.3%から2009年に30.2%と10.8%も上昇。まさしく圧勝という状況です。

 大丸の進出に対して各店で対策をとったわけですが、三越札幌店と札幌西武はターゲットの絞り込みを行います。

 三越札幌店では、2002年9月に40代の「次世代アダルト」への対応強化のために、子ども・家庭用品の売場を大幅に縮小し、婦人服を拡大するという戦略を採りました。45の新規ブランドを投入し、婦人服ゾーンを1層増やし1~6階の6層と拡大。自主運営の平場を設けて、店の独自性や収益性の向上を図りました。

 札幌西武は店舗特性を明確にするため、20~30代のキャリア女性をターゲットにした店づくりにシフト。従来強かった食料品売場を廃止。キャリアファッション、トール&ラージの婦人服、女性客との連動を重視したブランド紳士服を強化しました。

このように三越札幌店と札幌西武はニッチ戦略として対象顧客を絞り込みましたが、どちらも業績が上がらず、札幌西武は市場からの撤退を余儀なくされています。まず、三越札幌店に関しては40代以上のミセス層にシフトするという戦略をとりましたが、これは地域一番店にとってもメインの顧客層であり、自らの市場を築き上げるはずが正面切って強者と戦う状況になってしまったという結果になります。そして札幌西武に関しては、キャリア女性にターゲットをシフトするほど、競争相手が百貨店ではなく、「パルコ」などのファッションビルや駅ビル専門店などとなり、結果として厳しい状況に置かれることとなりました。ニッチ戦略として自らの戦う市場を絞り込む際には競合環境も十分に鑑みてから行う必要があるということです。

 (参考文献 全国百貨店の店舗戦略2011)

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