本日は都市型百貨店化した地方百貨店に関して記載します。
1990年中盤からの大店舗法の規制緩和を受け、2000年代には次々に量販店系の大型SCが開業しました。この動きの中で地方百貨店においては郊外型の大型SCとの競合が起こり、経営環境の厳しさが増しました。また地方百貨店が抱える課題として、“店舗規模が限られてしまう”“海外ブランドなどの有名ブランドが地方には入りにくいといった商品の仕入れ面で不利”といったものがあります。本来であれば店舗面積や潜在的な顧客数が少ない地方百貨店はそのあり方を特化し強みを強化すべきなのでしょうが、それができず、また例え特化したとしても人口が少ないため来店客数を伸ばせないだろうという恐れがあります。そのため、ファミリー層もミセス層も富裕層も、と総花的な売場展開を続けるという結果になってしまうようです。
そのような中、SCとの競合からの生き残りをかけ、本格的な都市型百貨店を目指す地方百貨店が出てきたようです。その一つが大和富山店。旧店舗からの移転に伴い、約100億円を投資し売場面積を25,300平方メートルと従来店舗の倍に拡張。既存店舗の中心顧客層の利便性を高めるとともに、上質・高級志向の顧客層、先進性・新しい情報を求めるヤング~アダルト層への対応を行い、幅広い顧客層に支持される店舗づくりを目指しました。新規ブランドはコーチ、ハンティングワールド、スワロフスキー、アンリシャルパンティエなどなど、北陸初47ブランド、富山初77ブランドと刷新を行いました。このように大和富山店は店舗面積を拡大し有名ブランドを展開することで都市型百貨店化しました。また、東京・京都・地元の名店を集積した本格的なレストラン街を設ける一方、従来の年配ミセス顧客にもなじみが持てるファミリーレストランを地下に設けるなどしています。ここが大和富山店の戦略の上手なところだと思います。リニューアルを行う時に対象顧客ターゲットを全面的に変えてしまうと、今までの顧客が自店舗から離れてしまい、売上が落ちてしまうからです。
都会的で洗練されたブランドファッションや質や機能を備えた本物商品が常備で展開し、喫茶・レストランを併設する都市型百貨店化した地方百貨店。メリットとしては、従来の地域の百貨店や量販スーパーとの差別化が図れることです。逆にデメリットとしては経営的に運営コストがかかるため、売上が取れない場合は利益を創出しにくい体質になるということです。
SCという競合の登場により動き出した、生き残りをかけた地方百貨店の戦略は興味深いものがあります。
(参考文献 全国百貨店の店舗戦略2011)