本日は出店エリアのイノベーションにより成功している「コメリ」に関して記載します。
企業がイノベーションを起こせない理由の一つに小規模な市場よりも大規模な市場を狙ってしまう傾向があるということが挙げられます。将来的には大市場になる可能性があったとしても、当初の市場は小さいので、大企業はそこに参入することを避けます。市場が小さいと自社の成長率が維持しにくくなるからです。そのため、大企業になればなるほど、初めから大市場を狙ってしまい、小さな市場を育てていこうという意欲が失われてしまう傾向があります。
小売業においては人口密度が高く、商圏が大きいエリアに出店するというのがセオリーです。お客様がいなければ売上が小さくなるからです。また、土地や家賃の高い都市部を避け、クルマの使用しやすい郊外の広大な土地にショッピングセンターを作るということもよくなされます。規模を広げ商圏を広げ、クルマを利用する人を多く集客することによって売上を上げるのです。このように一般的に小売業は出店するにあたって、商圏人口を増やして自店舗の見込み客を増やす戦略を採るもので、あえて小さな商圏に出店するということはそれほどないと思われます。
しかしながら、ホームセンターのコメリは一般の小売業が行う逆を行うことで成功を治めています。コメリは農業資材カテゴリーを取り揃えたホームセンターで、「農業を営む人たち」を顧客に設定しています。出店方法はコンビニなどがよく行っているドミナント戦略を採っているのですが、他の小売業と違うところは、店舗面積が約300坪と小型でDIYと園芸用品に絞り込んだ専門店を、競合他社が目を向けず、商圏としてあまり魅力のない、地域人口が1万人程度の農村エリアに重点的に出店しているということです。この出店方法の理由の一つは競合他社との競争を避けるということ。そして二つ目は高齢者が多い農家の人を対象にしているので、顧客が自宅近くにある同店舗でほしいものを歩き回ることなく入手できる利便性があるということです。
主要顧客である農家の人たちへの対応は、商品の品揃えや出店方法のみならず、支払方法に毎年1回顧客が指定した月に一括払いできる「収穫期払い」なるものもあるそうで、いろいろと手厚くなっているそうです。
普通に考えれば人が多いところでないと商売ができないと考えてしまうのですが、コメリは農家という切り口で市場を絞り込み、農家を営む人に対応した品揃えや出店方法を採ることで、成長をしています。先入観を見直し、イノベーションを起こすことは、成長を続けるために必要なようです。
(参考文献 成功事例に学ぶマーケティング戦略の教科書)