来店を促す売場づくり、食品スーパー「サンシャイン」の事例に関連して記載します。
【小売業 激戦化する高知県】
高知県は人口が2005年に80万人を割り込み、年々減少を続けています。また、香川県に本拠地を置く「マルナカ」や愛媛県に本拠地を置く「フジ」「サニーマート」といった競合スーパーによる売場面積拡大が行われたり、消費者を呼び込むための低価格競争が熾烈を極めたりしています。その様子は日本の小売業各社が置かれている状況そのもののようにも感じさせます。そのような中で高知県では2002年からの6年間で約120店舗ほどのスーパーマーケットのうち、20店舗ほどが整理の対象となったり、閉店に追い込まれたりしています。
【食品スーパー「サンシャイン」の戦略】
このような状況の中にあっても、高知県に本社を置く、食品スーパー「サンシャイン」は、好調に業績を推移させていると言います。
まず、サンシャインは店のこだわりの商品を訴求しながらも、旬の商品・売れ筋、価格で買われていく商品を幅広く品揃えし、商品をお客様が比較しながら購買できるようにして買い物の楽しさを演出。他店との低価格競争に陥らないように自社の独自のポジショニングを確立しました。
また、地元の農家の方が直接青果を持ってきて販売する「産直市」売場を店舗の出入り口付近に配置。農家の方が店頭に陳列し、価格も自由に決められるような売場を作りました。一般的に食品スーパーの場合、11:30~13:30、16:30~17:30に集客のピークがあり、開店直後の集客は弱くなっています。そのためサンシャインは開店直後の集客を高めるため産直市の導入に踏み切りました。当初6名の農家の参加からスタートした産直市は今では1,800名の兼業農家が登録する規模にまでなっているそうで、農家の登録が増えたことで、多様な商品が陳列されるようにもなっているそうです。
POPの演出においても工夫を凝らしています。通常、POPは目玉商品やセール品を目立たせるために使われることが多いのですが、サンシャインではこだわりのある商品やオリジナル商品、差別化商品の近くにPOPを掲出し、その内容も来店客が知りたい情報を楽しく伝えるものとなっているそうです。
来店客が増える夕方の時間帯にはライブ販売(“マグロの解体”“カツオのたたきの実演販売”“野菜売場や総菜売場で、従業員が独自に考えた料理を自分で実演販売”“揚げ物をフライヤーで調理”などといった実演・試食販売)を、毎日店内アナウンスをかけながら行っています。ライブ販売の内容も変化させ、来店客を飽きさせない魅力を作るようにしています。なお、ライブ販売を1ヶ月も続けていると、その商品の売上が6~15倍に高まるそうです。
逆境の時代において「差別化による自らのポジショニングの確立」は顧客の囲い込み・ファンづくりに非常に重要であるということと、「顧客を楽しませる演出」を実行・継続していくことの重要性をサンシャインの成果が示唆しているようにも感じます。
(参考文献 1からのリテール・マネジメント)