バックヤード運営の効率化、「関西スーパーマーケット」の事例に関して記載します。
【食品スーパー「関西スーパーマーケット」】
兵庫県伊丹市に本社を置く関西スーパーマーケットという食品スーパーがあります。このスーパー、店舗は兵庫や大阪、奈良にしかなく、売上高も約1,160億円(平成25年3月期)と、業界内では中堅規模であるものの、食品スーパー業界の中では知らない人はおそらくいないと言われているほど有名らしいのです。その理由としては、創業以来、日本の食品スーパーが直面してきた生鮮食品の販売に関する難しい問題を解決し、経営効率を大きく改善させる効果をもたらした企業だからだと言います。
【廃棄ロス・機会損失を減らした関西スーパーマーケットの手法】
生鮮食品は食品スーパーにとっては毎日お客様がご来店してくださるきっかけとなる重要な商品群です。一方で生鮮食品は取り扱いが難しいものです。パックを作る際に包丁を入れて加工しますが、そのことにより鮮度の低下が早くなるからです。そのため、長時間店頭に置いておくことができず、一定の時間で商品を捨てなければならないという“廃棄ロス”が発生してしまいます。また、廃棄ロスのことばかり考えて、仕入れや加工する商品(パック)の数を減らすと、品切れしていることにより売れないという“機会損失”が発生してしまいます。
この問題に対して関西スーパーは1960年代半ばに、廃棄ロス・機会損失を減らすために「店頭で売れた分だけバックヤードでパックの追加生産し、商品補充をする」という仕組みを作りました。また、加工のスピードを速め、適切な商品補充を行えるようにもしました。当時、生鮮食品は肉屋・魚屋・八百屋といった専門知識と技術を持った職人にしかできないと考えられてきました。そのため当時の食品スーパーでは職人に高い給料を払って業務を行ってもらったり、専門店にテナントとして入ってもらったりしていたようなのです。しかしながら、関西スーパーは自社雇用によるバックヤードでの「作業の分業化」を行うという新たな仕組みを作ることで、直営でも生鮮食品の販売を運営できるようにしました。自動車を組み立てるときに、タイヤ、ハンドル、シートなど役割を分担して取り付けていくように、生鮮食品の加工作業も複数の社員で分業したのです。また、狭いバックヤードを最大限有効活用できるよう、各工程の作業担当者が割り当てられた作業台の前からできるだけ動かなくても済むような「流れ作業」の方法を作り上げました。これはカートと呼ばれるキャスター付きの運搬器具を導入し、加工作業が終わったら次の工程へ加工品をカートに乗せ運搬し、最終的にはそのカートで売場の商品補充も行えるということを行いました。
【まとめとして】
商品の販売を行う際には売場にだけ目を配るのではなく、その他の部分にも目を配らせることが必要です。例えばバックヤードの商品ストック場がごちゃごちゃであれば、商品を探すのに手間取ってお客様をお待たせしてしまうことになります。関西スーパーのようにバックヤードの使い方を効率的・効果的になるように工夫すれば、新たな顧客満足にもつながっていきます。目に見えない部分だからこそ、その活用方法をしっかり検討することが必要なのかもしれません。
(参考文献 1からのリテールマネジメント)