「行動経済学:ハーディング効果」に関して記載します。
【行動経済学の考え方】
従来の伝統的な経済学では人間を経済的な合理性や経済的打算にのみしたがって行動する存在として扱っていましたが、行動経済学においては、基本的に経済主体としての人間は常に合理的な行動をとるとは限らず、時に非合理的な行動もとるという考え方をします。
【“赤信号、みんなで渡れば怖くない”=ハーディング効果】
この行動経済学の一つの考え方の中に「ハーディング効果」というものがあります。このハーディング効果とは、一般的に人間は物事が適切か否かの判断を行うよりも多くの人々と同じ行動をとることに安心感を得て、他人の行動に追従したり同調したりする意識が強くなる傾向がある、ということを言います。簡単な例だと「赤信号みんなで渡れば怖くない」です。
【アメリカ、ドッキリカメラでの事例】
この件で、アメリカで行われたドッキリカメラの興味深い事例がネットに出ていました。それは騙される側の人が診察してもらうために病院に行くと、待合室の人みんなが裸という状況を作り、その状況に遭遇したら騙される側の人はどうするかという番組だったようです。その結果、診察に来た人の中には騙す側の人のまねをして裸になってしまった人がいるというのです。人は意識して常に考え、行動し続けないと、自分というものをしっかり持てなくなってしまうことがあるようです。
【ハーディング効果がもたらす購買意欲】
さて、このハーディング効果は古くから人々の購買意欲をかき立てる手法として利用されてきました。例えばレストランで行列ができていると、それを見ただけで、そのレストランは美味しいに違いないと判断され、行列が行列をつくるという状況になることが挙げられます。このことを踏まえて、レストランで表に椅子を並べるという作戦があります。そうすることにより「当店は行列ができる店です」という見せ方ができ、集客につながるという作戦です。
またハーディング効果の活用例として、数量限定版のように、あえて販売点数を絞り込むことにより、人だかりを作るというものがあります。あるゲーム会社では新機種を市場に投入する際に供給量を抑えるということがあるようです。ジャニーズ等の限定版のCD・DVDとかもこれに当たるのでしょうか。
最近だとイトーヨーカドーの鈴木敏文氏が行動経済学の本を出しているなど、小売業を営んでいる人はある程度抑えておくべき内容なのかもしれません。一方で消費者側の立場としてみると行動経済学に基づいて店舗側が売上を拡大するために特定の作戦を行っていると判断できるようになっておくと買い物をする際の面白みが増すような気がします。
(参考文献 行動経済学の基本がわかる本)