スーパーのカイゼン活動 ユニーの事例

スーパーのカイゼン活動(整理・整頓)に関して記載します。

【業務の効率化・コスト削減につながる『整理・整頓』

 工場でよく5Sと言われる、「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seisou)」「清潔(Seiketsu)」「しつけ(Shitsuke)」というものがありますが、その中で、整理・整頓は業務の効率化・コスト削減を行う上での最初のステップとなる行動です。整理とは「必要なものと不要なものを分け、不要なものを捨てる」ことを、整頓とは「必要なものを必要なときにすぐに取り出せる」ことを意味しています。この整理・整頓は工場だけの話ではなく、スーパーマーケットにおいても効率化の手段として活用されているようです。

【ユニーの事例】

 東海圏をメインとする全国第3位のスーパーマーケット「ユニー」は2005年ごろ売上高の伸びが減り、売上の増加で利益を確保することが難しくなりました。そこで安定的に利益を生み出す経営体質を目指すべく、2005年3月、ユニーは経営効率化手法として当時注目を集めていた、トヨタ自動車が行うカイゼン活動の導入に踏み切りました。そのカイゼン活動の導入に当たっては、トヨタグループの中心企業である豊田自動織機の協力の下、プロジェクトを立ち上げ、アピタ東海通店の食品売場を対象に実験を行いました。その結果、1年後、同店の利益は前期比でほぼ倍増したそうです。

アピタ東海通店で最初に行われたものは「2S」と呼ばれる品揃えの「整理・整頓」でした。アピタ東海通店で行われた整理とは“来店客が求める商品と求めない商品を分け、あまり求められていない商品を棚から外す”であり、整頓とは“来店客が求める商品がどの売場にあるのかをすぐに把握できる状態にする”ということです。つまり、売れていない商品を店頭から外し、お客様が求める商品を多く取りそろえ、そして、お客様が買い物をしやすいように、欲しい商品を見つけやすくなるよう取り組んだのです。2Sを行うためにユニーは店頭に商品が並んでいない状態を「欠品(開店時に商品が並んでいない状態)」と「品切れ(16時の時点で商品が並んでいない状態)」に分けて考え、欠品や品切れが生じている商品の件数を調査し、それを集計することで、お客様から求められている商品を欠かさないようにしたのです。

【まとめとして】

 業務の効率化を行うに当たっては、整理整頓を行い無駄な動きをなくしていくことが重要です。お客様の立場であれば、欲しい商品がすぐに手に入る方がいいので、品揃えの整理・整頓はありがたいことです。機会損失を防ぎ、品揃えを強化するために、どれを整理するか(どの商品の販売を止めるか)を検討・実行し、お客様から求められている商品を補充・拡大し続けることが、大量の商品数・商品量がある中、小売店にとっては大変な作業ではあるものの、大切なことなのでしょう。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント 世界一わかりやすいコスト削減の授業)

EDLP(エブリデーロープライス)を支えるローコストオペレーションの取り組み

EDLP(エブリデーロープライス)を支えるローコストオペレーションの取り組みに関して記載します。

【西友の変化】

だいぶ前の話にはなりますが、西友がウォルマート傘下に入ってから、店内の什器が一斉に変わって、店内の雰囲気がずいぶんと変わりました。昔と比べてそぎ落とされたシンプルな店内の雰囲気になったと思います。この店内の什器内容の変更はEDLPを支える重要な施策の一つとなっています。この什器変更を行った目的とは「店舗で人手のかかる商品補充などの作業を効率的に行う」ということです。

【ローコストオペレーション 什器の工夫の事例】

 例えば、よくスーパーマーケットなどで見かける冷凍・冷蔵オープンケース。西友に行くとこの什器を見ることがないような気がします。西友では冷蔵・冷凍オープンケースの替わりにコンビニでよく見るような什器、「リーチインケース」言われるガラス扉のついた縦型の什器が使われています。この什器の使用目的は、開閉式の扉がついているおかげで、冷気が外に逃げにくく省エネ効果が高いということと、飲料や冷凍食品を一度に大量に収納できて効率がよいということです。

【ローコストオペレーション 陳列の工夫の事例】

 他の例としては、店舗の陳列棚の両側にあるエンドでは「1品大量陳列」を行うようにしているということも挙げられます。併せて、エンドで使用している棚の横には「サイドキック」と言われる陳列什器が設置され、お菓子などの小さな商品が1種類並べられています。これは1種類・1価格の商品をまとめて陳列することによって商品のボリューム感を出すと同時に、商品陳列の作業負担を減らすことを目的としています。

それ以外にも、婦人服はカウンターやワゴンに平積みされている商品は少なく、ハンガーに吊るして陳列することをメインとしています。陳列や商品移動の負担を減らすことが目的です。

【ローコストオペレーション 発注から物流システムに至る工夫の事例】

また、店内の陳列以外にも、発注から物流システムにわたって、いろいろと工夫がなされているようです。精肉の加工では、店内での作業を止め、複数の店舗に供給する商品の加工を一手に引き受けるセンターの作業に移行したそうです。また、惣菜についても店内加工を減らしていると言います。

【まとめとして】

 以上のようにEDLPという低価格戦略を継続的に実行していくために“作業効率を向上するための工夫”“発注から物流システムに至る仕組みの工夫”が行われています。安売りをするためにウォルマートは相当な企業努力を行っているということが言えます。こういった一つ一つの積み重ねがウォルマートを世界最大の小売業に押し上げた要因の一つではないかとも思います。

 (参考文献 1からのリテールマネジメント)

価格戦略の「ハイ・アンド・ロー」「エブリデーロープライス(EDLP)」について

価格戦略の「ハイ・アンド・ロー」「エブリデーロープライス(EDLP)」について記載します。

【ハイ・アンド・ロー】

「ハイ・アンド・ロー」はスーパーの特売のような、価格を下げたり、時期が過ぎると価格を上げてもとに戻したりと、価格を上下させる手法のことです。

この価格手法は消費者の購買意欲を喚起し、「プロモーション効果」がありますので、店舗への集客効果が見込めます。特定の商品を「ロスリーダー(目玉商品)」と設定し、特売価格で消費者を店舗に誘い込む戦略です。値下げしていますので、ロスリーダーとなる商品は粗利益率は低くなります。しかしながらほかの商品の購入も促せますので、全体的な粗利益率を確保することができます(この手法は「粗利ミックス」と呼ばれます)。

 他の店舗での販売価格という比較対象があることから、有名ブランドほど価格引き下げの効果は大きくなりますが、一方で消費者がイメージする「参照価格」を低下させてしまう可能性があります。参照価格とは、消費者の過去の購買経験によって作られている記憶による価値を指します。例えばペットボトルのお茶がいくらかと聞かれて「88円」と答えれば「88円」が参照価格となります。参照価格が下がると、価格を元に戻した際に購入してもらえない可能性が出てきます。消費者は一般的に、損得の「得」よりも「損」に反応する傾向があるためです。また、値引き販売はブランドイメージが下がるという危険性も含んでいます。

【EDLP】

「EDLP」ですが、これはウォルマートの価格戦略で、特売品などの価格訴求を実施せずに、毎日低価格で販売する手法です。この手法を用いることで、特売時に発生するチラシの費用・商品の値札の付け替え・特売に伴う売場の変更の手間、といった作業が不要となり、ローコストオペレーションが可能となります。値段の上げ下げがないので、売上の予測もつきやすくなり、メーカーにとっても安定的な生産で対応することができます。

【まとめとして】

 近年ではこの「ハイ・アンド・ロー」と「EDLP」2つの価格戦略を併せたものも出てきていると言います。どういった価格戦略を取るかは企業にとって重要な戦略の一つです。ウォルマートが日本市場に進出してきてEDLPの考え方も一般化してきているように思われます。今後、日本のスーパー各社がどのような価格戦略を取っていくのか、興味深くあります。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

店舗やSCの空調設備に関して

暑い日が続くと、店舗やSCにある空調設備は顧客視点から見るととてもありがたく感じる物ですが、その空調設備に関して記載します。

この空調設備は1980年代後半からは、店舗やSCには導入が当たり前と考えられているようです。しかしながらこの空調設備が店舗に導入されたのは、それほど昔のことではないようです。アメリカにおいてもその設備が導入されたのが1950年代に入ってからで、日本はそれよりも後になります。今でも普通の商店街においては、路上にも店内にも空調がないところもあります。たまに熱帯魚屋に行くのですが、この季節、水温が上がりすぎて魚がへたらないように、窓を全開にして外の風を入れたりしている光景を見たりします。

この空調設備、意外と曲者のようです。今日、年商1000億円あるいは店数100を超えた企業は1970年代の高収益企業の代表で、総資本対経常利益率はいずれも20%を超えていたと言います。しかしながら、今日では10%を超えるところはごくわずかだそうです。この低収益性の原因は、店舗建物または売場面積坪当たりの総資産額が大きく膨れすぎたためと言うことなのです。その原因の一つが、空調施設を含め、エスカレーター、エレベーター、オープン冷蔵ケースなど、必要以上の過剰設備にあるというのです。

 空調に関しては、お客様が入口に入ったときに「涼しい」もしくは「暖かい」と感じ、かつメイン通路にもその冷気・暖気が流れ込むようにしておけば十分なのですが、そうなっていない店舗が多々あるようです。確かに、建物によっては場所によって妙に暑かったり、妙に涼しかったり、というものがあります。

 初期段階に形を作ってしまうと、その後、無駄とわかっていても改修するのに多額の費用がかかってしまい、そのままになるというケースがあります。店舗を0から立ち上げるときには、無駄な経費が発生するような作りになっていないか十分に検討する必要がありそうです。また、営業中の店舗においても、空調の吹き出し口の位置と方向が適切で効率的な費用の使い方ができているかをしっかり見る必要がありそうです。

 (参考文献 店舗レイアウト)

コンビニの国際展開

コンビニの国際展開に関して記載します。

【コンビニの国際展開の現状】

 日本の小売業の海外進出が進んでいますが、コンビニエンスストアも同様の動きを見せているようです。2013年6月末現在でセブンイレブンは海外に35,440店舗、ローソンは2013年7月末現在で海外に466店舗、進出しています。セブンイレブンはアメリカに8,144店舗、タイに7,210店舗、韓国に7,064店舗など、台湾、マレーシア、メキシコフィリピンなどなどに展開。ローソンは中国に371店舗、インドネシアに83店舗、ハワイに3店舗、タイに9店舗となっています。

【ファミリーマートの国際展開】

ファミリーマートについては1988年に台湾に海外進出をスタートさせ、その後、韓国、タイ、中国、アメリカ、ベトナムへと拡張していきました。2009年には海外の店舗数が国内を上回り(国内7,688店舗 海外8,101店舗)、2013年7月末段階においてもその状況は変わりません。

ファミリーマートが海外展開するときにはホスピタリティの訴求に力を入れています。「心のこもった接客サービス」「魅力ある売場づくりと品質管理によるクオリティ」「隅々までの清掃」といったことを、マニュアルを活用したり、すべての進出国において研修センターを設置したりすることにより、徹底を図っています。

また、海外のコンビニではバラエティと品質にかける中食(弁当、サンドイッチ、サラダ、デザートなど)の提供に力を入れています。中食中心の商品構成を訴求するためには、商品の製造体制を整備し、鮮度を維持しながら配達する体制を構築する必要があります。ファミリーマートはその点をクリアするために、2010年5月に上海で大規模な生産能力を持つ中食工場と膨大な配送能力を備える全温度帯物流センターを擁する大規模な総合センターを設置しています。

ファミリーマートは、日本で構築してきたノウハウを基に、品揃えや店舗特性を対応させながら現地にあったモデルの構築に取り組んでいます。

【まとめとして】

 少子高齢化に伴い日本の市場縮小が想定される中、小売業の海外進出が進んできます。一方で海外進出を検討するに当たってはカントリーリスクを十分に織り込んでから考える必要があると思います。例えば、小売業の海外現地法人企業数のエリアごとの数値を見ると中国が多くなっています。将来到来する少子高齢化社会の前段階の状況である現在の中国に進出することは、十分に利益の創出ができることが見込めますが、過去にあった政治問題で暴徒化した人々が起こした事件を思い起こせば、日本国内で商売をするのと同様ではできないということがわかります。何でもそうなのでしょうが、物事を実行するにあたってはリスクが伴い、それを覚悟して行動を起こしていくことが必要なのでしょう。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

食品スーパー「サンシャイン」の来店促進

来店を促す売場づくり、食品スーパー「サンシャイン」の事例に関連して記載します。

【小売業 激戦化する高知県】

 高知県は人口が2005年に80万人を割り込み、年々減少を続けています。また、香川県に本拠地を置く「マルナカ」や愛媛県に本拠地を置く「フジ」「サニーマート」といった競合スーパーによる売場面積拡大が行われたり、消費者を呼び込むための低価格競争が熾烈を極めたりしています。その様子は日本の小売業各社が置かれている状況そのもののようにも感じさせます。そのような中で高知県では2002年からの6年間で約120店舗ほどのスーパーマーケットのうち、20店舗ほどが整理の対象となったり、閉店に追い込まれたりしています。

【食品スーパー「サンシャイン」の戦略】

このような状況の中にあっても、高知県に本社を置く、食品スーパー「サンシャイン」は、好調に業績を推移させていると言います。

まず、サンシャインは店のこだわりの商品を訴求しながらも、旬の商品・売れ筋、価格で買われていく商品を幅広く品揃えし、商品をお客様が比較しながら購買できるようにして買い物の楽しさを演出。他店との低価格競争に陥らないように自社の独自のポジショニングを確立しました。

また、地元の農家の方が直接青果を持ってきて販売する「産直市」売場を店舗の出入り口付近に配置。農家の方が店頭に陳列し、価格も自由に決められるような売場を作りました。一般的に食品スーパーの場合、11:30~13:30、16:30~17:30に集客のピークがあり、開店直後の集客は弱くなっています。そのためサンシャインは開店直後の集客を高めるため産直市の導入に踏み切りました。当初6名の農家の参加からスタートした産直市は今では1,800名の兼業農家が登録する規模にまでなっているそうで、農家の登録が増えたことで、多様な商品が陳列されるようにもなっているそうです。

POPの演出においても工夫を凝らしています。通常、POPは目玉商品やセール品を目立たせるために使われることが多いのですが、サンシャインではこだわりのある商品やオリジナル商品、差別化商品の近くにPOPを掲出し、その内容も来店客が知りたい情報を楽しく伝えるものとなっているそうです。

 来店客が増える夕方の時間帯にはライブ販売(“マグロの解体”“カツオのたたきの実演販売”“野菜売場や総菜売場で、従業員が独自に考えた料理を自分で実演販売”“揚げ物をフライヤーで調理”などといった実演・試食販売)を、毎日店内アナウンスをかけながら行っています。ライブ販売の内容も変化させ、来店客を飽きさせない魅力を作るようにしています。なお、ライブ販売を1ヶ月も続けていると、その商品の売上が6~15倍に高まるそうです。

 逆境の時代において「差別化による自らのポジショニングの確立」は顧客の囲い込み・ファンづくりに非常に重要であるということと、「顧客を楽しませる演出」を実行・継続していくことの重要性をサンシャインの成果が示唆しているようにも感じます。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

バックヤードの効率化「関西スーパーマーケット」

バックヤード運営の効率化、「関西スーパーマーケット」の事例に関して記載します。

【食品スーパー「関西スーパーマーケット」】

 兵庫県伊丹市に本社を置く関西スーパーマーケットという食品スーパーがあります。このスーパー、店舗は兵庫や大阪、奈良にしかなく、売上高も約1,160億円(平成25年3月期)と、業界内では中堅規模であるものの、食品スーパー業界の中では知らない人はおそらくいないと言われているほど有名らしいのです。その理由としては、創業以来、日本の食品スーパーが直面してきた生鮮食品の販売に関する難しい問題を解決し、経営効率を大きく改善させる効果をもたらした企業だからだと言います。

【廃棄ロス・機会損失を減らした関西スーパーマーケットの手法】

 生鮮食品は食品スーパーにとっては毎日お客様がご来店してくださるきっかけとなる重要な商品群です。一方で生鮮食品は取り扱いが難しいものです。パックを作る際に包丁を入れて加工しますが、そのことにより鮮度の低下が早くなるからです。そのため、長時間店頭に置いておくことができず、一定の時間で商品を捨てなければならないという“廃棄ロス”が発生してしまいます。また、廃棄ロスのことばかり考えて、仕入れや加工する商品(パック)の数を減らすと、品切れしていることにより売れないという“機会損失”が発生してしまいます。

この問題に対して関西スーパーは1960年代半ばに、廃棄ロス・機会損失を減らすために「店頭で売れた分だけバックヤードでパックの追加生産し、商品補充をする」という仕組みを作りました。また、加工のスピードを速め、適切な商品補充を行えるようにもしました。当時、生鮮食品は肉屋・魚屋・八百屋といった専門知識と技術を持った職人にしかできないと考えられてきました。そのため当時の食品スーパーでは職人に高い給料を払って業務を行ってもらったり、専門店にテナントとして入ってもらったりしていたようなのです。しかしながら、関西スーパーは自社雇用によるバックヤードでの「作業の分業化」を行うという新たな仕組みを作ることで、直営でも生鮮食品の販売を運営できるようにしました。自動車を組み立てるときに、タイヤ、ハンドル、シートなど役割を分担して取り付けていくように、生鮮食品の加工作業も複数の社員で分業したのです。また、狭いバックヤードを最大限有効活用できるよう、各工程の作業担当者が割り当てられた作業台の前からできるだけ動かなくても済むような「流れ作業」の方法を作り上げました。これはカートと呼ばれるキャスター付きの運搬器具を導入し、加工作業が終わったら次の工程へ加工品をカートに乗せ運搬し、最終的にはそのカートで売場の商品補充も行えるということを行いました。

【まとめとして】

商品の販売を行う際には売場にだけ目を配るのではなく、その他の部分にも目を配らせることが必要です。例えばバックヤードの商品ストック場がごちゃごちゃであれば、商品を探すのに手間取ってお客様をお待たせしてしまうことになります。関西スーパーのようにバックヤードの使い方を効率的・効果的になるように工夫すれば、新たな顧客満足にもつながっていきます。目に見えない部分だからこそ、その活用方法をしっかり検討することが必要なのかもしれません。

(参考文献 1からのリテールマネジメント)

LINE

LINEを軸にして記載します。

LINEが8月21日に音楽配信やECサービスに参入すると発表しました。また、ビデオ通話機能なども追加するようです。今回のこの発表の中で特に注目すべき点はECサービスへの参入だと考えます。LINEのECサービス「LINE MALL」は今秋スタートを予定していますが、企業が出展するショッピングモールに加え、ユーザー同士が売買を行えるC2C(Consumer to Consumer)プラットフォームとしても構築し、「いつでもどこでも、誰でも簡単に商品の売買を行うことができる」ようにするというのです。すでにEC市場にはアマゾン(昨年売上高7,500億円余り)や楽天(昨年4,430億円余り)という大きな企業が存在していますので、どこかの企業を買収でもしない限り、新規参入するのは大変ではないかと個人的には考えましたが、そういったどこかの企業を買収するとかそういったことでもなさそうです。LINEが人気になった理由として大きなものにスタンプがありますが、その「スタンプを買う」などの行為の中で、アプリ内課金が一般化してきています。また、ローソンのクーポン(O2O)に見られるように、企業の公式アカウントがいろいろと出てきています。そういったところからLINEはECサービスの新規参入が可能であると踏んでいるようです。

LINEが人気になった理由のスタンプも今ではFacebookなどSNSでも使えるようになってきています。また、SNSの特徴として新たなSNSが登場すると、ユーザーごと他のSNSに移動してしまうという問題があることから、LINEは日常的なインフラとしての役割を果たせるように、今回のような挑戦を試みるようです。LINEは8月21日時点で2億3000万人のユーザーがいて、昨年比で460%の増となっています。また、「有料スタンプ課金」「ファミリーアプリ課金」「BtoBマーケティング」「ライセンスやキャラクターグッズ」といった売上で4~6月期の売上高は約98億円(前年同期比32倍)というように急成長を遂げています。今だからこそ新たな攻めに出て、独自のポジショニングを築き上げようとしているのかもしれません。

 話はずれますが、ソーシャルメディアは潜在顧客を育成し、顧客との関係性を深めていくことを得意とします。マス4媒体やOOH広告(交通広告・屋外看板など)が絨毯爆撃のように情報を発信ことができるのに対し、ソーシャルメディアはバズ(口コミによる話題化)で広がっていきます。LINEはお店と組んだ屋外看板などをよく見るような気がしますが、このOOH広告による情報発信とバズによる情報拡散をうまく活用し、それぞれの特徴を使い分けているような気がします。また、LINEは情報がリアルタイムで流れるのでソーシャルメディアマーケティングとしてそのポジショニングを位置付けるとtwitterのような位置づけに当たるのかもしれません。

 今回のこのLINEのニュースで驚いたのは「C2C」ビジネスという言葉です。BtoBやBtoCならよく聞きますが、C2Cという言葉には不思議な衝撃がありました。そもそもヤフオクなどで個人間の売買が一般的になってきているような気もしますし、アフィリエイトやドロップシッピングといったものもあります。モノを売買するということが企業間や店舗間に留まらない時代が到来してきているということなのかもしれません。

都道府県別の人口推移

都道府県別の人口推移に関して記載します。

 日本全体の人口が減っていく中で、その減り方には場所ごとに差があります。県別の2010年から2040年の想定値の推移を見てみると、例えば、北海道では551万人から419万人(△24.0%)、青森県では137万人から93万人(△32.1%)、岩手では133万人から94万人(△29.3%)、南の方では鹿児島県が171万人から131万人、宮崎県が114万人から90万人(△21.1%)、長崎県では143万人から105万人(△26.6%)というような推移となっていて、大体の道府県で人口が2割から3割ほど減っていくことが想定されます。一方で東京都が1316万人から1231万人(△6.5%)、神奈川県が905万人から834万人(△7.8%)と、人口減少が他の道府県と比較して緩やかになっていて、今後、東京都心部への人口の集中が進んでいくことが想定できます。ちなみに埼玉や千葉においては団塊の世代が多く住んでいることから、埼玉△12.4%、千葉△14.0%と東京都近郊ではあるものの、人口の減少は東京・神奈川と比べると大きくなると想定されています。(ちなみに人口の減少が最も少ないことが想定されているのは沖縄県で139万人から137万人(△1.4%)。)

 地方においても、比較的都市部への人口の集中が想定されていて、農山村では人口が減り続けます。日本全体の中で東京という大都市を中心に人口が集まるように、地方でも都市部へ人口が集中していくようです。そうなると、地方の中でも特に田舎の方では、全く人が住まない地域が増えていきます。人口の半数以上が65歳以上の地域を「限界集落」というようですが、そういった地域では人口がどんどん減っていき、医者や店がどんどんなくなっていき、その地域だけでは生活ができなくなってきます。

 人口の面では、少子高齢化社会と言われていますが、同時に都市部への人口集中が起こっていくことが想定されます。人口の推移によって地域の経済力も決まってきますので、このことは今後注視しておきたい内容です。

 (参考文献 データでわかる2030年の日本)

インストアマーチャンダイジング

インストアマーチャンダイジングに関して記載します。

【インストアマーチャンダイジングとは】

 売上の構成要素を分解すると「売上高」=「来店客数」×「客単価」となります。売上高を上げるためにはお客様の数を増やすか、一人あたりのお客様の買上金額を上げていけばいいわけです。しかしながら「来店客数」を増やすためには広告など宣伝費を使った店外活動が必要となり、多額の経費を使用することとなります。一方で「客単価」は「商品単価の増加」×「買上点数の増加」と考えることができ、店内での対策、すなわち“店舗レイアウト”“陳列棚の管理”“陳列法やフェイシングの管理”“POPなどの設置”“デモンストレーション”の技術・レベルを高めていくことによって増やしていくことが可能となります。

この店頭における効率的な販売を促進していくことをインストアマーチャンダイジングと言います。つまり、インストアマーチャンダイジングは“資本(売場)と労働の生産性を最大化しようとする活動”を意味しています。そして、このインストアマーチャンダイジングは体系的にスペースマネジメントとインストアプロモーションに分かれています。

【スペースマネジメント】

この2つの体系のうちの一つ、スペースマネジメントとは売場スペースを最大限に活用し、売場生産性を向上させる手法のことを言います。売場の生産性を上げるために客単価を上げていく必要があるのですが、客単価は以下のように分解できます。

■客単価(買上金額)=導線長×立寄率×視認率×買上率×買上個数×商品単価

 客単価を上げようと思ったら、上記の一つ一つを向上させていくことが必要です。ワンウェイ・コントロールのようなレイアウトにより、店内を歩いてもらう距離を長くしたり、店内の見通しを良くして売場の回遊性をよくしたり(導線長)、ディスプレイやPOP、カラーコーディネーションのレベルを上げ、お客様に商品をより発見してもらいやすくしたり(視認性)、接客技術を向上し、より高いものを買ってもらえるようにしたり(商品単価)、そういった対策を一つ一つ丁寧にレベルを上げていくことが客単価の上昇につながります。

 店内レイアウトを工夫したり、陳列方法を工夫したり、といった手段をとる目的は客単価の上昇にあります。こういった手段を目的化せずに本来ある目的をしっかり見据えて、一つ一つ実践していくことが店舗の運営にとっては必要だと思われます。

【インストアプロモーション】

 前段で、スペースマネジメントに関して記載しましたが、インストアマーチャンダイジングの体系としてインストアプロモーションというものもあります。インストアプロモーションとは小売店頭において、単なる情報提供をするだけでなく、ライフスタイル等に関する積極的な提案を行うことで、お客様の動機形成や意思決定の過程に直接影響を及ぼそうとする活動のことを言います。つまり、インストアプロモーションとは店内における販売促進活動のことを言い、価格主導型のものと非価格主導型のものに分けられます。

【インストアプロモーション:価格主導型と非価格主導型】

まず、価格主導型のインストアプロモーションとは定番商品の特売や値引き、クーポンなどのことを指します。それに対して非価格主導型のインストアプロモーションとは、クロスマーチャンダイジングやデモンストレーション販売など、ライフスタイルを提案するようなことを指します。

【インストアプロモーションの実態】

 現在、インストアプロモーションは大半の小売業によって展開されていますが、その内容としては、バーゲンなどの価格訴求が圧倒的に多く、ライフスタイル提案などの非価格的な提案は影を潜めている状態です。また、効果測定やフィードバックが行われておらず、投入した費用の効率化も行われていないようです。

【値引き販売の弊害】

値引き販売を乱用することには問題があります。一度、値引きされると、消費者の購買経験によってつくられている記憶による価格(参照価格)が低下し、店頭表示価格はその参照価格を下回らないと購買されなくなってしまうからです。このような状況になると、店頭表示価格を次第に下げざるを得なくなり、その商品を販売しても十分な利益を確保できない、という流れになってしまいます。値引き販売は瞬間風速的な意味合いを持つけれども、長く続けるべきではないということでしょう。特に現在は必要のないものは買わない人が増えていますから、利益を痛めるような値引きは控えたほうが良いと言えます。

 店内での販売力を強化していくことは、本来の商売の力を強化するという意味合いで、非常に重要な対策であると考えます。そのためにはイメージで物事を進めるのではなく、理論的に考察して積み重ねていくことが大事です。