機械の導入による利便性の追求

機械の導入による利便性の追求に関して記載します。

 渋谷駅(渋谷第一勧業共同ビル)にバナナの自販機があります。初めて見た時は驚愕し、ずいぶん奇をてらった自販機だと思いました。しかしながらそれは自分が知らなかっただけで、この自販機、2010年の6月から設置されていて、ビジネスパーソンに利用されているようです。株式会社ドールの自販機でバナナ1本130円。手ごろでフルーツをちょっと食べたい方には便利なのでしょう。

バナナの自販機のように、様々な商品を販売する新手の自販機やスペース的に店舗を設置できない場所で消費者に利便性を提供する自販機が近年増えてきているそうです。アメリカではホテルや空港に旅行時に必要な商品を販売する自販機があったり、タクシーにノンアルコール飲料の自販機を搭載していたりするようです。日本においてはファミリーマートが「自販機コンビニ(オートマティック・スーパー・デリス(ASD))」を企業内や公共施設内に設置し、おむすび、サンドイッチ、スイーツなどの販売を行っています。

 上記のような自販機以外でも機械を使用し利便性の向上を行っているものとして、デジタルキオスクの設置というものがあります。アメリカの百貨店チェーンのコールズではサイズ切れを起こしやすい靴売場のそばにデジタルキオスクを設置。店舗で在庫のない商品や在庫切れのサイズを、その場でオンライン注文できるようにしています。さらにオーダーした商品は自宅に無料で配達されます。お客様にしてみれば、欲しい商品をその場で注文できますし、店舗側としてみれば販売のチャンスロスを防ぐことができます。(キオスク端末:街頭や店舗内に設置される、銀行のATMくらいの大きさの情報端末。液晶画面に情報を表示し、操作は画面に触れるタッチパネルを利用することが多い。例:コンビニのチケットのオンライン販売)

 韓国の地下鉄ホームの壁面には「バーチャルストア」が登場。スーパーの棚がポスターで表示されていて、その商品をスマートフォンで読み取ると、商品の発注ができ、自宅に配送されるというものです。この「バーチャルストア」、もともとはイギリスのTescoと韓国サムスンの共同出資のディスカウントストア「Home plus」のプロモーション的な企画でしたが、結果的に「Home plus」のオンラインサイトの売上が130%も増加したそうなのです。通勤のついでにホームで買物ができるとなれば、消費者にとってみれば時間の効率化が図れるという大きなメリットがありますから、この売上の増は企業側が消費者に与えたメリットがそれだけ大きかったことの表れだと思います。

 最近ではスーパーマーケットにセルフレジを導入している店があります。少量の買物の場合、並ぶよりも自分で会計したほうが早いのでセルフレジはとても便利だと思いますが、これなども機械の導入により「消費者のレジ待ちの時間を効率化する」という点で店舗の利便性を高めていると言えると思います。近年、ネットショッピングの急速な普及もあり、店頭で待つのは苦手だという人も増えていると言います。世の中が便利になればなるほど更なる便利さが求められるということでしょうか。店舗の特性によってというところではありますが、上記のような例は消費者から小売業に対してスピーディなサービスや忙しい人を満足させるサービスの強化が求められている結果の表れといったところだと思います。

(参考文献:実店舗で商品を売るにはどうしたら良いのか!?)

シニア対策

小売業が取り組んでいるシニア対策に関して記載します。

 日本においては全人口に占める65歳以上の年齢の割合が、2010年に約23%、2013年に約25%、2040年に36%、2060年には約40%と、どんどん増えていくことが想定されています。また、2011年の世帯主の年齢階級別の1ヶ月平均の消費支出(二人以上世帯)を見ると、働き盛りと思われる30~39歳が263,197円に対して60~69歳が281,022円という具合に、高齢者も多くの支出をしています。高齢になればなるほど保健医療の支出が増え(保険医療の支出 30~39歳9,424円→60~69歳14,721円)、洋服や通信の支出は40代以降減るという年齢に伴う消費構造の変化は見られますが、家庭用耐久財や書籍など支出の割合にそれほど大きな変化の見られないものもあります。何れにせよ高齢者市場は今後確実に拡大することが想定されますし、最近では元気で活動的なアクティブシニアが増加していることから、その年齢層の方を対象とした商品・サービスが強化されてきています。

イオンは2011年を起点とする3ヶ年のイオングループ中期経営計画において、グループ共通戦略の一つに、シニア層への商品・サービスなどを強化し飛躍的な成長を目指す「シニアシフト」を掲げています。その一環としてシニア世代を年齢にとらわれず豊かに人生を楽しむ世代と捉え、「GRAND GENERATION(グランド・ジェネレーション)」と名付けました。そして、2012年9月に55歳以上を対象とした「G.Gイオンカード」「G.G WAON」を誕生させ、年金支給日の15日を「G.G感謝デー」に制定し、「イオン」「マックスバリュ」「イオンスーパーセンター」などの店舗でこれらのカードを使用すると支払額が5%引きとなるサービスを実施しています。イオン同様、セブン&アイ・ホールディングスに関しても、電子マネー「ナナコ」に2012年4月から65歳以上対象の「シニアナナコカード」を設け、年金支給日の15日をシニアナナコデーとして、衣料、食料、住まい品を表示価格より5%引きしています。また、店舗購入商品の宅配サービス「きいろい楽だ」の配送料金を通常315円から80円に割引なども実施しています。

2012年3月1日に新しい建物に建て替えてオープンしたダイエー赤羽店はヤングと子供をカットした「アクティブシニアの館」へとリニューアルを行いました。商圏の居住者の4割が50歳以上、2人以下の少人数世帯が72%という状況の中、シニア向けのMDを強く意識して「こだわり」「美容・健康」「趣味・ライフスタイル」をキーワードに店づくりを行っています。なお、施設面から見ても、この店舗のエスカレータ、とてもゆっくりです。

コンビニもシニアの取り込みを大きな課題としていまして、ファミリーマートは、元気で毎日はつらつと過ごすアクティブシニアを「おとな」と位置付け、新しいおとなのコンビニ文化創造を目指し、2010年9月に「おとなコンビニ研究所」を立ち上げました。実際にアクティブシニアの声を聞いて開発した「おとなコンビニ研究所」の商品は、見た目や彩り、素材、ひと手間かけた調理、健康や環境への配慮などをコンセプトに作られています。また、シニア扱いされることを嫌うアクティブシニアの声を反映して、まとめてコーナー化するのではなく、各カテゴリーの商品の一つとして陳列されています。

シニア世代がかわいい孫に買ってあげるということを狙って、アメリカでは10月の第3日曜日を「孫の日」としてキャンペーンを展開しています。日本においても日本百貨店協会が10月第3日曜日をまごの日と制定しPRを図っています。アメリカにおいては特定の日の設定だけでなく、多くの小売業が「Upromise(ユープロミス)」と提携して、孫の教育資金としてポイントを蓄えることもしています(Upromiseとはお買い物額の何%かを大学の学資としてUpromiseの口座に貯金することができるシステム)。

 社会の変化に対応して様々な動きが出てきています。そして身近なところで変化が着々と進んでいます。気づかずスルーしてしまいそうなことの中にも社会の変化を裏付ける何かがある場合があるのかもしれません。

 (参考文献:実店舗で商品を売るにはどうしたら良いのか!? データ:流通統計資料集)

小売業各社の客層の拡大に向けた対策

本日は小売各社の客層の拡大に向けた対策に関して記載します。

 日本の家族の世帯数の推移をみると近年増加傾向にあり、国立社会保障・人口問題研究所の資料によると、世帯数総数は1980年に35,824千世帯に対し2010年には51,842千世帯に増加しています。この内訳を見ると単独世帯の増加の割合が大きく、1980年7,105千世帯に対し2010年に18,457千世帯と急増。核家族に関しては夫婦のみの世帯やひとり親と子の世帯が増加傾向にあるのに対し、夫婦と子の世帯は減少傾向にあり、1家族当たりの人数が減ってきているということが言えます。この流れの中、単独世帯、いわゆるお一人さまを取り込むための商品やサービスが増えています。年末年始のイベントのお一人さま需要が多いことを踏まえて、三越が小分けの歳暮「三越個包ギフト」を用意したり、ローソンが1~2人前のクリスマス用オードブル販売を行ったりするなど、個食向け商品の販売を始める企業が出てきています。また、焼き肉店「ひとり」という店では一人客専用の焼き肉店でテーブルとテーブルの間に背の高い仕切りを作り、一人でも気兼ねなく焼き肉を食べられるようにしています。このように時代の流れを見て、新たに増加してきている市場“お一人さま”をターゲットにして客層の拡大を狙う企業が出てきます。

 新たな客層の拡大という点で他の例としては、大丸松坂屋が2012年のクリスマスにO2Oによるネット客の獲得を図る動きをみせました。野村総合研究所の『インターネット経済調査報告書』によると、2010年度のデータを使用した結果、国内において市場規模約110兆円のリアル店舗での購買行動のうち、「インターネットからの情報収集に基づく消費(お2O)」による消費規模は約22兆円という結果になっています。その状況の中、大丸松坂屋はミクシィとの共同事業に取り組みクリスマス商戦の集客拡大を図ったのです。ミクシィがネット上で展開するクリスマスイベント「ミクシィクリスマス」には、期間中200万人以上の人々が参加するのですが、大丸松坂屋はそこに注目し、今まで百貨店をあまり利用しなかった年齢層の店舗への誘導を狙ったのです。

また、銀座三越とプランタン銀座は20~30代の女性客獲得策として女子会を活用。2012年に「GINZAテラスナイト」という、人気レストランの特別メニューの提供・コスメや占いの無料体験などが楽しめる女子会を開催しています。

 人口の減少が進む日本において、多くの業種業態において客層の拡大が必要となってきます。その中で上記のように新たな客層を取り込む動きを見せる企業が出てきています。自ら変化をしていかなければ生き残ることができない時代。このような動きは今後も継続していくと思われます。

 (参考文献:実店舗で商品を売るにはどうしたら良いのか!?)

クレジットカードによる既存顧客の囲い込み

クレジットカードによる既存顧客の囲い込みに関して記載します。

 現在、いろいろな小売業でクレジットカードによる顧客の囲い込みを行っています。例えば日本のあるドラッグストアでは、前月の購入金額に応じて当月のポイント還元率が変わるという制度を取っているところがあるそうです。お買い上げ額に応じてポイント還元率を増やしていくという方法は百貨店のカードでもよく見られ、例えば「東武百貨店 東武カード(年会費無料):年間お買上げ 20万円未満3%→20~50万円未満5%→50万円以上7%」「大丸 DAIMARU CARD(年会費1,050円・初年度無料):半年お買上げ 10万円未満5%→10~20万円未満6% 20~30万円未満7.5% 30万円以上10%」などといったようになっています。自社カードを活用した顧客の囲い込みは日本だけではなくアメリカでも行われていて、チェーンデパートメントストア「ブルーミングデールズ」においては、自社のクレジットカードを使用しての買物で3ポイント→化粧品やフレグランスの買物はダブルポイント→セールによっては2倍、3倍のポイント取得、となっているようで、5000ポイントにつき25ドルの買物券がもらえるとのことです。様々な施策を行い、顧客の再来店を促し固定客化することは小売業が生き残る上で非常に重要なことです。

さて、近年において日本のクレジットカードの発行枚数は年々増加傾向にあります。全体的なクレジットカードの発行枚数でみると1998年度に245百万枚が2010年度には322百万枚へ増加。その中で流通系(百貨店・量販店・流通系クレジットカード会社)を見ると1998年度63百万枚だったのに対し2010年度103百万枚へ増加。クレジットカードの発行枚数で一番多い銀行系の発行枚数が1998年度97百万枚、2010年度134百万枚の増で38.0%伸びているのに対し、流通系の伸びが62.9%ですから、流通系のクレジットカード発行枚数の伸びの高さが伺えます。流通系クレジット枚数の発行枚数の増加を踏まえると先ほどの囲い込み戦略が流通業界全体において積極的に行われているだろうことが見て取れます。

 業種別の販売信用供与額の推移を見てみましても、「流通系クレジット会社 1999年35,864億円→2010年111,762億円」「サービス・小売業者等 1999年18,371億円→52,646億円」「百貨店 1999年18,156億円→2010年9,805億円」と百貨店を除いてその額は増加傾向にあります(百貨店の販売信用供与額が低下しているのは売上高が1998年9兆1773億円から2011年6兆1525億円と市場規模が縮小していることが要因として考えられます。)。この結果は、以前よりも買物の際にお客様がクレジットカードを利用することが多くなっているという証左だと思われます。昔はニコニコ現金払いとか言いましたけど時代が変わったものです。企業側はクレジットカードにより顧客の囲い込みを狙い、消費者側は買物の際、自分のメリットを最大化するにはどうしたらよいかを考えるようになってきているということでしょう。

 最近、どこに行ってもポイントカードはどうですか的な流れになって、1回しか言ってない店のポイントカードが結構たまっているなんてこともあります。ポイント還元による店舗の魅力化は非常に重要なことと思いますが、一方でそれ以外の魅力も同時に高めていかないと、店側からすればポイントカード代の無駄にもなってしまうかもしれません。バランスよく全体を良くしていけるように目指すことが重要だと思います。