フードデザート

フードデザートに関して記載します。

 半年前ほどの話にはなりますが、NHKのNEWS WEBを見ていたら「イトーヨーカ堂買い物弱者支援」という特集を行っていました。内容としては、イトーヨーカ堂が遠くに買い物が出るのが難しい高齢者(買い物弱者)を支援しようと、車で団地をまわって商品を販売する、移動販売を始めたということです。近年、駅前がシャッター通り化する地方都市を中心に、満足に買い物に行けず、日々の食材確保に苦労している高齢者が増えているといいますが、東京都内の団地においても同様のことが起こっているようです。今回特集された場所は多摩ニュータウンでしたが、NHKの爆笑問題の番組では高島平団地を取り上げ、団地の高齢化がかなり進んでいるということをやっていました。高度経済成長時代、都心が拡大していた時に、いろいろと郊外に団地ができましたが、今、その団地で高齢化が急速に進んでいるようなのです。

 経済産業省の審議会「地域生活インフラを支える流通のあり方研究会」は、アンケートで買い物に苦労していると回答した高齢者の割合から、買物弱者が全国に約600万人存在すると報告しています。また、同審議会のアンケート結果によると「日常の買物に不便」と感じている60歳以上の高齢者は2000年が11.6%だったのに対し、2005年は16.6%とその割合が増加しています。2011年8月には、農林水産省農林政策研究所が日本全国の人口分布と食料品の位置関係を実際に算出し、自宅から500m以内に生鮮食料品がなく、かつ自家用車を所有していない65歳以上の高齢者が、全国に約350万人存在すると指摘しています。

 上記のような、生鮮食料品の入手が困難な状況になっている問題を、フードデザート(食の砂漠:Food Deserts)問題と言います。

 日本においてフードデザート問題は拡大してきていますが、その要因としては大都市圏の構造変容が挙げられます。東京大都市圏では2000年以降、都心への人口回帰が進んでいます。それに対し、地方都市においては、人口減少やモータリゼーションの進展、大型ショッピングセンターの郊外出店と中心商店街の空洞化が急速に進んでいます。また、郊外の住宅団地の高齢化が進み、大都市の縮小も起こってきています。これらの大都市圏の変容がひずみを生みだし、フードデザート問題を起こしているようなのです。

こういった状況の中、NEWS WEBで報道されていたような“移動販売”が行われたり、オンデマンドバスや住民・行政・企業で支える生活バスなどが登場してきたりしているようです。

 大都市圏における人口構造の変化やモータリゼーション化や政策に伴う社会環境の変化により、人々の生活が変化し、それに伴い小売業も変化を見せてきています。この流れは今後も続くことが想定されますから、それに伴い様々なものが急速に変化していくと思われます。

 (参考文献 小商圏時代の流通システム)

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