需要を創造するビジネスに関して記載します。
ちょっと前に久々に都電荒川線に乗ったのですが、道路の真ん中を走ったり、普通の電車のように砕石の上にある線路を走ったりと、いろいろと変化があり、面白い電車だなと感じました。さて、この電車、都が運営しているのですが、お客様を増やすためか観光マップのようなものがあります。確かに鬼子母神やら飛鳥山やらと、ちょっとした観光スポットがあるので、普段の交通の手段というだけでなく、散歩がてらに利用するのもいいのかもしれません。都電に限らず、JRの駅にも旅行関連のポスターがよく見受けられます。都電にしてもJRにしても、利用することによって、その先に楽しいことがあるという意識を顧客の中に作っているのです。
最近、都市部ではあまり自動車の必要性を感じない人が多いと思います。自動車を維持するだけでも、駐車場代・ガソリン代・車検代・各種メンテナンスなどいろいろとお金がかかります。電車を使えば事足りますし、必要ならばレンタカーを借りればいいから、あえてお金のかかる自動車を所有する必要性がないのです。そんな中で自動車の価格や燃費をいくら安くしても、自動車が欲しくない人は買いません。自動車メーカーが消費者に自動車を欲しいと思わせるためには「自動車を買ったらこんな楽しいことがある」という意識を持たせるしかありません。その考えの下、自動車会社は様々な活動を行っているようです。トヨタの子会社である「トヨタオートモールクリエイト」は2008年に横浜市港北区に複合商業施設「トレッサ横浜」をオープンしました。もともとはトヨタグループの物流拠点だった土地に、衣食住からアミューズメントまで200店舗を超えるテナントが入る商業施設をつくったのです。総駐車可能台数は2700台。最寄駅からはバス、もしくはタクシーを利用しなければアクセスが難しい位置にあります。トヨタは「自動車でしか行けないような場所に、魅力的な施設をつくることで、自動車そのものの販促につなげよう」と考えているのです。つまり、魅力的な商業施設をつくることによって、自動車の需要を創造しているのです。
2012年正月に、東京銀座にある商業施設「マロニエコート」や新宿の「小田急百貨店」の「婚活福袋」が注目を集めました。これら福袋は「洋服を買うための商品券」「おしゃれなレストランでのお食事券」「エステやネイルサロンのサービス券」と「お相手を紹介する」という商品がセットとなっている福袋でした。2012年以前にも婚活福袋というものはあったのですが、それは婚活に使う洋服やアクセサリーなどを詰め合わせたものでした。かなりお得感があった福袋だったようですが、売上は今一つだったようです。しかしながら、2012年の婚活福袋はヒット商品となりました。理由としては「その商品を使うべき場を作った」ということ。「商品の魅力をうたうよりも、商品の魅力を発揮できる場所を用意した」ということなのです。洋服であれば、ただ単純に洋服などを売るのではなく、洋服を着るシーンを作り上げたということです。
需要を想像し創造するということが売上を上げていくのに必要な時代なのかもしれません。
(参考資料 「衝動買い」がとまらない!)