O2Oに関して記載します。
O2O(Online to Offline)とは、オンラインとオフラインの購買行動が連携し相乗効果を出す、または、オンラインでの活動がリアル店舗での購買を促すといったマーケティング手法のことです。このO2O市場は現在スマートフォンの普及もあるからか急速な伸びを見せていて、2017年度には50兆円の市場規模になると予測されています。
(2010年度には、いわゆるガラケーの従来型携帯電話が2,790万台、スマートフォンが800万台という販売台数であったが、2011年度にスマートフォンが急激に販売台数を伸ばし、2,250万台へ。2017年度には従来型携帯電話が1,406万台に対し、スマートフォンが2,972万台になると想定されている。)
O2Oの例として、2011年9月にサービスを始めたスマホアプリ「スマポ」があります。「スマポ」はユーザーが契約店舗へ行き、スマポアプリを起動し、チェックボタンを押すだけで、ポイント(1ポイント=1円)を得られる、来店促進サービスです。貯まったポイントは全国提携店舗のハウスポイントや商品券などに交換できる使い勝手の良さが特徴となっています。今まで同じようなアプリもあったようですが、GPSやWi-Fiを使っていたことから店の近くにいれば反応してしまうということがあったようです。その点、このスマポについては独自の「超音波発信機」を使用。店頭に置いた発信機が超微弱な超音波を出し、ユーザーのスマートフォンのマイクで受信する仕組みとなっていて、確実に当該場所に来店しないとポイント加算がされないようになっているようです。さらにスマポと店舗の契約は来店数に応じた従量課金制(1送客に対し30~150円程度)となっていて、店舗側にとってもコストパフォーマンスの高い販促となっています。参加企業はビックカメラやユナイテッドアローズなど。ある大型店舗では1ヶ月で1万人のスマポユーザーが来店し、うち3割が商品購入に至るという結果を残しているそうです。
Eコマースサイトの弱点を補完するという観点並びにユーザーへのサービス向上という観点からO2O戦略を取っている企業もあります。それはメガネ専門店のEコマースサイト「オーマイグラス」です。現在メガネ業界はZoffやJINSといった低価格SPAの登場や消費低迷により競争が激化しています。そのような中、オーマイグラスは大手のネット通販会社が扱いたがらないメガネをネットで販売。市価より安く豊富な種類を取り扱っています。ある意味ブルーオーシャン的な戦略ともいえると思います。大手ネット通販会社がメガネのEコマースを嫌がる理由として、顔の印象を左右するメガネは試着が必要ということと、視力測定や掛け心地を見るためフレームの微調整が必要だということがありますが、オーマイグラスは、メガネドラッグやメガネのアイガンといった老舗チェーンを含めた既存のメガネ店と提携を結び、レンズ加工やフィッティング、さらにアフターフォローまで受けられるサービスを実施しました。老舗チェーンにしても新たな顧客が得られることからオーマイグラスと組むことにはメリットがあるようです。合わせて、オーマイグラスでは無料でフレーム5本までを自宅で試せるサービスも実施しています。
ファーストリテイリンググループのブランド「ジーユー」では2013年春に、スマートフォンのジーユーのアプリを立ち上げ、画面のUFOのアイコンを押しながら「キュッキュー(990)」と叫ぶと、人気タレントのきゃりーぱみゅぱみゅのおしゃれインベーダーのカレンダーの壁紙がもらえるというキャンペーンを実施しました。ジーユーは今春から新価格戦略「990円」を掲げていて、この新戦略の認知度のアップを狙ったものとなります。ジーユーではこのきゃりーぱみゅぱみゅの企画以外にも、2013年1月には消費者がアプリを立ち上げてスマートフォンを5回シェイクすると抽選で各日1000名に「990円ジーンズ」が当たるお正月おみくじキャンペーンを4日間実施したり、3月に、新しいブランドロゴの認知度アップを目的に、ポスター、ウェブサイト、看板などにある「GU」の新しいブランドロゴにカメラをかざすとさいころが出現し、さいころをクリックすると100円クーポンが当たるというキャンペーンを実施したりしています。一連のキャンペーンは「叫んだ言葉を認識する『音声認識技術』」「シェイクの回数を判別する『加速度センサー』」「ロゴを認識する『AR技術』」などスマートフォンの最新機能を駆使したものです。しかしながらジーユーは消費者に対して楽しさや感動をアピールすることを意識して、これらIT技術は一切伝えず、意識すらもさせないようにしていたということです。また、ジーユーは費用対効果の面でも、チラシよりスマートフォンを利用したO2Oのほうが優れていると言います。紙のチラシは配布枚数が増えればコストも増えますが、アプリは配信人数が増えてもコストは変わらないからです。
以前はEコマースとリアル店舗では市場の奪い合いという関係から対立関係にありましたが、現在ではネットとリアルの区別がなくなってきています。どちらかではなくどちらも戦略的に組み込んでいく時代になってきています。時代が変わってきているということなのでしょう。
(参考文献 週刊東洋経済 臨時増刊 ネット通販大解明)