本日は小売各社の客層の拡大に向けた対策に関して記載します。
日本の家族の世帯数の推移をみると近年増加傾向にあり、国立社会保障・人口問題研究所の資料によると、世帯数総数は1980年に35,824千世帯に対し2010年には51,842千世帯に増加しています。この内訳を見ると単独世帯の増加の割合が大きく、1980年7,105千世帯に対し2010年に18,457千世帯と急増。核家族に関しては夫婦のみの世帯やひとり親と子の世帯が増加傾向にあるのに対し、夫婦と子の世帯は減少傾向にあり、1家族当たりの人数が減ってきているということが言えます。この流れの中、単独世帯、いわゆるお一人さまを取り込むための商品やサービスが増えています。年末年始のイベントのお一人さま需要が多いことを踏まえて、三越が小分けの歳暮「三越個包ギフト」を用意したり、ローソンが1~2人前のクリスマス用オードブル販売を行ったりするなど、個食向け商品の販売を始める企業が出てきています。また、焼き肉店「ひとり」という店では一人客専用の焼き肉店でテーブルとテーブルの間に背の高い仕切りを作り、一人でも気兼ねなく焼き肉を食べられるようにしています。このように時代の流れを見て、新たに増加してきている市場“お一人さま”をターゲットにして客層の拡大を狙う企業が出てきます。
新たな客層の拡大という点で他の例としては、大丸松坂屋が2012年のクリスマスにO2Oによるネット客の獲得を図る動きをみせました。野村総合研究所の『インターネット経済調査報告書』によると、2010年度のデータを使用した結果、国内において市場規模約110兆円のリアル店舗での購買行動のうち、「インターネットからの情報収集に基づく消費(お2O)」による消費規模は約22兆円という結果になっています。その状況の中、大丸松坂屋はミクシィとの共同事業に取り組みクリスマス商戦の集客拡大を図ったのです。ミクシィがネット上で展開するクリスマスイベント「ミクシィクリスマス」には、期間中200万人以上の人々が参加するのですが、大丸松坂屋はそこに注目し、今まで百貨店をあまり利用しなかった年齢層の店舗への誘導を狙ったのです。
また、銀座三越とプランタン銀座は20~30代の女性客獲得策として女子会を活用。2012年に「GINZAテラスナイト」という、人気レストランの特別メニューの提供・コスメや占いの無料体験などが楽しめる女子会を開催しています。
人口の減少が進む日本において、多くの業種業態において客層の拡大が必要となってきます。その中で上記のように新たな客層を取り込む動きを見せる企業が出てきています。自ら変化をしていかなければ生き残ることができない時代。このような動きは今後も継続していくと思われます。
(参考文献:実店舗で商品を売るにはどうしたら良いのか!?)