フードデザート

フードデザートに関して記載します。

 半年前ほどの話にはなりますが、NHKのNEWS WEBを見ていたら「イトーヨーカ堂買い物弱者支援」という特集を行っていました。内容としては、イトーヨーカ堂が遠くに買い物が出るのが難しい高齢者(買い物弱者)を支援しようと、車で団地をまわって商品を販売する、移動販売を始めたということです。近年、駅前がシャッター通り化する地方都市を中心に、満足に買い物に行けず、日々の食材確保に苦労している高齢者が増えているといいますが、東京都内の団地においても同様のことが起こっているようです。今回特集された場所は多摩ニュータウンでしたが、NHKの爆笑問題の番組では高島平団地を取り上げ、団地の高齢化がかなり進んでいるということをやっていました。高度経済成長時代、都心が拡大していた時に、いろいろと郊外に団地ができましたが、今、その団地で高齢化が急速に進んでいるようなのです。

 経済産業省の審議会「地域生活インフラを支える流通のあり方研究会」は、アンケートで買い物に苦労していると回答した高齢者の割合から、買物弱者が全国に約600万人存在すると報告しています。また、同審議会のアンケート結果によると「日常の買物に不便」と感じている60歳以上の高齢者は2000年が11.6%だったのに対し、2005年は16.6%とその割合が増加しています。2011年8月には、農林水産省農林政策研究所が日本全国の人口分布と食料品の位置関係を実際に算出し、自宅から500m以内に生鮮食料品がなく、かつ自家用車を所有していない65歳以上の高齢者が、全国に約350万人存在すると指摘しています。

 上記のような、生鮮食料品の入手が困難な状況になっている問題を、フードデザート(食の砂漠:Food Deserts)問題と言います。

 日本においてフードデザート問題は拡大してきていますが、その要因としては大都市圏の構造変容が挙げられます。東京大都市圏では2000年以降、都心への人口回帰が進んでいます。それに対し、地方都市においては、人口減少やモータリゼーションの進展、大型ショッピングセンターの郊外出店と中心商店街の空洞化が急速に進んでいます。また、郊外の住宅団地の高齢化が進み、大都市の縮小も起こってきています。これらの大都市圏の変容がひずみを生みだし、フードデザート問題を起こしているようなのです。

こういった状況の中、NEWS WEBで報道されていたような“移動販売”が行われたり、オンデマンドバスや住民・行政・企業で支える生活バスなどが登場してきたりしているようです。

 大都市圏における人口構造の変化やモータリゼーション化や政策に伴う社会環境の変化により、人々の生活が変化し、それに伴い小売業も変化を見せてきています。この流れは今後も続くことが想定されますから、それに伴い様々なものが急速に変化していくと思われます。

 (参考文献 小商圏時代の流通システム)

VMD(色彩の活用)

VMD(色彩の活用)に関して記載します。

 2013年の8月ごろに渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催していた『レオ・レオニ 絵本のしごと』に行きました。レオ・レオニは絵本作家で、1959年に孫のために作った絵本『あおくんときいろちゃん』でデビュー。教科書に載っている『スイミー』など有名で色の魔術師と称されています。さすがにその二つ名を持つだけあって色の使い方が素晴らしいなと感じました。類似色相の配色や対照色相・補色色相の組み合わせがすごいですし、ブルーアンダートーンやイエローアンダートーンを意識して描いているような絵もありました。

 (ブルーアンダートーン・イエローアンダートーン→パーソナルカラーの理論でも使用されるもの。例えば一枚の絵を描く際、使用する絵の具すべてに青(黄)を混ぜると、調和のとれた絵になる。)

さて、店舗の商品陳列においても、“色”は人に大きな印象の違いを与えます。VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)という言葉がありますが、これは、お客様がいかに売場に興味を抱き、その後、どのように店内を回遊して商品を選び、購入まで至るかを想定した売場づくりを考えていくことを言います。店舗側の都合で、売りたい商品を並べるのではなく「お客様はどう買うのか」と常にお客様視点で考えるのがVMDの基本となります。その中で、色は重要な役割を果たします。例えば商品ディスプレイを赤や橙、黄でまとめれば暖かなイメージを与えることができますし、夏をイメージしたいならビビッドな色を組み合わせたほうが夏っぽくなります。

また、商品を順番に並べるときには、人の視点は「前から奥」「左から右」に流れることを意識して並べてあげることも必要です。左から右へ明度が高い色から低い色へ並べてあげたり、色相環の順番(赤橙黄緑青藍紫)に並べてあげたりするのが良いです。よくぐちゃぐちゃに色を並べていることがありますが、きれいに並べたほうが商品を探しやすくなるので、お客様視点からいけば色彩の理論を押さえた上で商品陳列をすべきでしょう。部屋がぐちゃぐちゃで汚いなと感じるのは色数が多すぎるということがあります。VPでは色をある程度絞り込むことも重要です。

 色は空気のように存在しているので意識して見て使わないといけないと思います。かなり色の世界は奥深いと思いますので。

カスタマイズ志向

カスタマイズ志向に関して記載します。

 近年、「自分のライフスタイルにこだわった商品を買いたい」という意識が全体的に高まってきていると言います。野村総合研究所の取ったアンケートの結果から見ると、自分のライフスタイルにこだわって商品を選ぶという消費者が、例えば20代男性だと2000年に34%だったのが、2012年に47%、60代女性だと2000年に18%だったのが2012年に33%と増えていて、それ以外の世代・性別においても全体的に増加傾向にあります。つまり、自分の持っているもので自分らしさを演出したいという意識を持つ消費者が増えてきているということのようです。例えばガラケーには多くの人が自分好みのストラップをつけていたと思いますし、スマホについては自分の好きなケースをつけていると思います。自分の好みに合わせて自分仕様に商品をカスタマイズするということが普通の時代になってきていると言えます。

ユニクロの商品をユザワヤなどで売っているレースやビーズ刺繍などでカスタマイズする「ユニデコ」も話題となりました。これも自分のライフスタイルに合わせた商品を購入する消費行動だと言えます。更にユニクロではこうした消費者のニーズに応えて「ユニクロカスタマイズ」というサービスの提供も始めています。商品を購入する際にオリジナルのデコレーションオーダーができるというウェブ通販のサービスで、パーカーやTシャツなどの定番アイテムに写真や文字をプリント・刺繍するなど、オリジナルな商品を作ることができます。HPではユニフォーム的な使い方が紹介されていました。

ビッグカメラ新宿東口新店では2012年からオーダーカラー家電サービスを提供しています。これは洗濯機や冷蔵庫などの家電製品の表面にフィルムを貼って、好きな色や柄を選べるようにしたものです。洗濯機や冷蔵庫といった身に着ける物以外でも、自分らしさを表現したいというニーズが出てきているということです。最近では家も中古を買って自分なりにカスタマイズする人もいるようです。これは中古物件を買ってカスタマイズして家賃を上げるという大家さんの戦略とは異なる、消費者が自分らしさを表す行動と言えます。

 消費者がカスタマイズアイテムに対して、自分だけのオリジナルの商品として愛着を高めてくれることで、ブランドへの好感度・ロイヤリティが高まります。また、カスタマイズした商品を、購入した消費者がブログやSNSなどにネタとしてアップしてくれればバイラル効果も期待できます。消費者が自分らしさを自分の持っている商品で表現したいという思いが強くなっているということは、明らかに過去の大量生産・大量消費の時代と異なってきているということが言えます。消費者の購買行動からも時代の変化が感じられる興味深い事例だと思いました。

 (参考文献 なぜ、日本人はモノを買わないのか?)

情報と消費者の関係

情報と消費者の関係に関して記載します。

 野村総合研究所の「なぜ、日本人はモノを買わないのか?」によると、現在、日本の消費者の7割が、商品やサービスを購入する際、「情報が不足していて困る」というよりも「情報が多すぎて困る」と感じているということです。インターネット上の各種評価サイト、企業ホームページ、身近な人の口コミ、店頭販売員のおススメといった、多くの断片的な情報がいろいろと入ってくることにより、意思決定が難しくなって、どれを買うべきか、そもそも買う必要があるのか判断が難しい状況になっているというのです。確かに選択肢が増えれば増えるほど選ぶのは難しくなります。

IT化が進む以前は消費者にとって情報源はマス広告やリアル店舗から入ってくるのがほとんどでした。情報は売り手側が消費者側に流していました。ところが、IT化が進むとインターネットの情報から、それまで売り手が発信していなかった情報も消費者が集められるようになってきました。消費者はインターネットによって手に入れた情報を活用し、お買い得な買い物ができるようになってきたのです。ITスキルが低い人は不利益を被るという“デジタルディバイト”なる言葉も登場します。ところが最近、多様な発信主体による大量の情報が発信され、消費者が入手する情報がますます増えてきています。その情報には矛盾するものも当然あります。このような情報過多の中、情弱と言われる状態になる人も多くいるようです。大量の情報の中で「自分が間違った判断をしてしまうのではないか」と考えている人が46%にもなるそうなのです。

 上記に関連して、2004年、コロンビア大学のシーナ・イェンガーが行った調査で面白いものがあります。年金の401Kプランの選択で、選択肢の幅が2から11に増えると年金プランの参加者が75%から70%に減少し、さらに59まで増やすと61%まで減ってしまったというのです。更に残った人もリターンの少ないプランを選択するという結果となったそうです。過度の選択の要求が選択を放棄させ、判断を誤らせたというのです。確かに選択肢が多いとこういうことがあると思います。携帯電話のプランなどは上記のような感じだと思います。

 情報化社会に伴い、消費者が商品を選ぶことが難しくなっている、ということは興味深い現象だと思います。消費者は情報に踊らされずに自ら選ぶ力をつけていく、小売り側はどんなに情報が多くても消費者を引き付ける魅力をつけていく、そんなことが大事になってきている時代なのかもしれません。

 (参考文献 なぜ、日本人はモノを買わないのか?)

求められる感覚的な情報

情報化社会にリアル店舗で求められる感覚的な情報という内容で記載します。

インターネット通販が急成長をしていますが、そのような状況の中においても約7割の消費者が「インターネットで商品を買う場合でも、実物を店舗などで確認する」といいます。この理由のトップとしてあがっているのが「微妙な色合いや質感、サイズなど、見ないとわからない詳細な情報を知りたい」というものです。その次に「手触り、におい、フィット感など、感覚的に気に入るかを確認したい」というものです。つまり、消費者は「文字ではわからない感覚情報」を求めてリアル店舗に訪れているのです。詳しい商品説明や、わかりやすい説明、売れ筋情報や裏話、ブランド自体の人気などは、インターネットで簡単に誰でも入手することができるようになっています。そのために消費者はリアル店舗に、視覚・触覚・感覚などの五感で判断する感覚情報を求めるようになってきているようなのです。ちょっとネットで調べれば、どんどん知識が手に入るので、消費者は知識を補完するためにリアル店舗での感覚的な情報を求めるということでしょう。

 最近では、リアル店舗では商品の検討や確認だけを行い、実際の購入は検索が簡単なオンラインショップで価格の安いところなどを探して行うという、“ショールーミング”という消費者の行動があると言われています。このショールーミングに対するため、ヨドバシカメラでは店内の全商品に専用アプリで読み込み可能なバーコードの設置を行っています。これにより、商品情報検索、価格、商品レビューやQ&Aなどの情報照会、リアルタイムの店舗在庫検索と店舗受け取りの申し込み、オンラインでの注文が行えます。ヨドバシカメラはスマホやPCと店舗を専用アプリで融合し、店頭でしか得られない楽しさを演出しているとも言えます。

また、ここ数年、菓子メーカーのアンテナショップが話題になっています。これらのお店では話題作りのための限定品販売などともに、ショップ内で調理して、良い香りを漂わせたり、出来立ての製品を味わってもらったりするなど五感に訴えかける取り組みがなされています。例えば横浜中華街の「ベビースターランド」では出来立てのベビースターラーメンが食べられますし、東京駅一番街にあるカルビーのアンテナショップ「カルビープラス」では、揚げたてのポテトチップスをイートインコーナーで食べることができます。お菓子はコモディティ化が進みやすく、価格競争に陥ることがありますが、上記のようにショップで五感を通した経験を味わってもらうことにより、消費者の経験価値を高め、ブランドロイヤリティを高めるという効果が期待されます。

 情報化社会という社会環境の変化に伴い、消費者の購買行動に変化が訪れています。この変化を踏まえ、リアル店舗の強化を図っていくことが求められています。時代が変わっても、リアル店舗が消費者に足を運んでもらうためには、立地や品揃え、サービス、接客などなど、強みを尖らし、消費者に感動を与えられるような店づくりを目指していくことが必要そうです。

 (参考文献 「なぜ、日本人はモノを買わないのか?」「リアル店舗で商品を売るにはどうしたら良いか!?」)

幅広い顧客の囲い込み

幅広い顧客の囲い込みに関して記載します。

 「この商品はこの店で買う」という店舗のファンの新規獲得並びに固定客化するための競争相手は、同じエリアの小売店でした。少し前まで、価格や品ぞろえに大差がない場合は、一度来店してくれたお客様にポイントカードなどの特典を付ければ、それ相応に優位に立てました。ところが今では、ネットの影響により、消費者は人気商品の最安値はネットを探索すればすぐに出てくるし、これまでは集めることができなかった不特定多数の口コミも簡単に手に入れられるようになっています。一般の消費者がお得情報を簡単に大量に入手できるようになったことにより、少しくらいのポイントでは顧客の囲い込みを行えなくなってきました。

その影響から、新たな顧客の囲い込みの考え方がここ10年~15年の間に出てきました。「ポイント探検倶楽部(www.poitan.net/)」というサイトがあるのですが、ここを見ると小売店やサービス業で貯められるポイントはかなりの範囲で互換性を持っていることがわかります。例えばイオンリテールの「WAONポイント」や洋服の青山の「AOYAMAポイント」をJR東日本のSuicaポイントに交換できたり、「りそな銀行」や「東京電力」のポイントを高島屋のポイントに交換できたりします。中でも「Tポイントカード」はこのポイントの互換性に関しては代表的で、20以上の業種、100を超える店舗で同一のポイント(100円で1ポイントの「Tポイント」)を貯めることができます。その中には「ファミリーマート」や「ガスト」など、生活に密着した消費行動と深く関わりを持つ店舗が数多くあります。

また新たな顧客の囲い込みという視点から行くと「地域密着型のポイント」というものもあります。2009年より池袋の「ヤマダ電機LABI1」が池袋の飲食店が加盟する地域密着型ポイントサービス「エクポ」と連携を開始し、池袋の飲み屋でヤマダポイントが貯まるし、貯めたヤマダポイントを使って池袋の飲み屋で使うことができるようになりました。今ではヤマダ電機の新宿進出とともにエクポの使用範囲も広がり、池袋・渋谷・新宿・上野の加盟店で使えるようにもなっているようです。

 最近、どこでもかしこでもポイントカードを発行していて財布の中がカードでパンパンになって、結局使わずに捨ててしまう、なんてこともありました。結局、興味が持たれないものは捨てられてしまうのです。情報が簡単に手に入るようになった時代だからこそ、自らの店舗や商品のファンになってもらうために、魅力のアップが必要不可欠でしょうし、上記のような新たな視点での考え方も必要になってきていると思われます。

 (参考文献 「衝動買い」が止まらない!)

ドン・キホーテ

本日は「ドン・キホーテ」について記載します。

ドン・キホーテは1978年に東京の西荻窪で「泥棒市場」という名前で小規模の店舗からスタートしました。その2年後、いったん「株式会社ジャスト」とし卸売業に鞍替えしますが、1989年に再び小売業へ。1995年には現在の「株式会社ドン・キホーテ」に商号を改称します。翌年には店頭市場(現ジャスダック)に株式上場し、さらに1998年東証2部上場、2000年に東証1部へ上場と急成長を遂げていきます。小さな個人商店がたったの20年余りで一部上場の企業にまで成長したのです。

このドン・キホーテ。店内はごちゃごちゃとして通路が狭く、スーパーでみられるような陳列方法とは真逆の方法をとっています。このドン・キホーテの独創的な陳列方法は「ジャングル陳列」もしくは「圧縮陳列」と呼ばれているそうです。この陳列方法をすることによって次のような効果を目論んでいるようなのです。まず、通路に棚が出ていたりしていて人が一列にならないと通れないような通路スペースを作ることにより、顧客の流れを止めて渋滞を作り、商品に目が行きやすくするようにしています(このような陳列方法を突き出し陳列と言います)。これにより商品と顧客の接触回数を増やすことができ、衝動買いを誘発できます。また、どこに何があるかがわかりづらいので、顧客は店内をぐるぐる回ることとなります。顧客が店内をぐるぐる回ることにより、回っている間に顧客自身に意識していなかった需要を思い出させるということを狙っています。更には、かごやワゴンに投げ込んだままの状態に見せる陳列を行うなど(これをジャングル陳列と言います。)、無造作感、何気なさを演出することにより、安さを顧客に印象付けることもしています。費用対効果的な観点から見て、売場面積当たりのアイテム数を増やすことで、一商品当たりの家賃が下がるということ、並びに従業員一人あたりのアイテム数を増やすことで、一商品当たりの人件費を下げられる、ということも目論んでいるようです。この陳列方法の実践が、きっとドン・キホーテの強みになっているのだと思われます。

また、接客がほとんどなくても商品を選べるような売場づくりをするため、大量のPOP作戦をとっています。実際店舗に行くと、数字はほとんど赤文字、いろいろなところにPOPが掲出されています。新宿の店では、鞄売場のところに「機内持ち込みサイズ表」なるものがあって、販売員に聞かなくても、自分で鞄のサイズを実際に図れるような工夫もしていました。POPには「一度買った人は9割がリピーターに(お菓子のPOP)」「これでどんな時でも大丈夫(コスプレ用ナース服のPOP)」「倉庫ごと買い取ったので、この値段です!(輸入菓子のPOP)」など、顧客の背中を押すような言葉のPOPや安い理由を説得力あるコメントで主張するPOPもあったそうです。

 今までにない陳列方法やPOP作戦によって急成長を遂げてきたドン・キホーテ。新たな戦略の開発とその戦略をぶれることなく実践しているということが、成功の原因のように思われます。

 (参考文献 「衝動買い」が止まらない!)

需要を創造するビジネス

需要を創造するビジネスに関して記載します。

ちょっと前に久々に都電荒川線に乗ったのですが、道路の真ん中を走ったり、普通の電車のように砕石の上にある線路を走ったりと、いろいろと変化があり、面白い電車だなと感じました。さて、この電車、都が運営しているのですが、お客様を増やすためか観光マップのようなものがあります。確かに鬼子母神やら飛鳥山やらと、ちょっとした観光スポットがあるので、普段の交通の手段というだけでなく、散歩がてらに利用するのもいいのかもしれません。都電に限らず、JRの駅にも旅行関連のポスターがよく見受けられます。都電にしてもJRにしても、利用することによって、その先に楽しいことがあるという意識を顧客の中に作っているのです。

 最近、都市部ではあまり自動車の必要性を感じない人が多いと思います。自動車を維持するだけでも、駐車場代・ガソリン代・車検代・各種メンテナンスなどいろいろとお金がかかります。電車を使えば事足りますし、必要ならばレンタカーを借りればいいから、あえてお金のかかる自動車を所有する必要性がないのです。そんな中で自動車の価格や燃費をいくら安くしても、自動車が欲しくない人は買いません。自動車メーカーが消費者に自動車を欲しいと思わせるためには「自動車を買ったらこんな楽しいことがある」という意識を持たせるしかありません。その考えの下、自動車会社は様々な活動を行っているようです。トヨタの子会社である「トヨタオートモールクリエイト」は2008年に横浜市港北区に複合商業施設「トレッサ横浜」をオープンしました。もともとはトヨタグループの物流拠点だった土地に、衣食住からアミューズメントまで200店舗を超えるテナントが入る商業施設をつくったのです。総駐車可能台数は2700台。最寄駅からはバス、もしくはタクシーを利用しなければアクセスが難しい位置にあります。トヨタは「自動車でしか行けないような場所に、魅力的な施設をつくることで、自動車そのものの販促につなげよう」と考えているのです。つまり、魅力的な商業施設をつくることによって、自動車の需要を創造しているのです。

2012年正月に、東京銀座にある商業施設「マロニエコート」や新宿の「小田急百貨店」の「婚活福袋」が注目を集めました。これら福袋は「洋服を買うための商品券」「おしゃれなレストランでのお食事券」「エステやネイルサロンのサービス券」と「お相手を紹介する」という商品がセットとなっている福袋でした。2012年以前にも婚活福袋というものはあったのですが、それは婚活に使う洋服やアクセサリーなどを詰め合わせたものでした。かなりお得感があった福袋だったようですが、売上は今一つだったようです。しかしながら、2012年の婚活福袋はヒット商品となりました。理由としては「その商品を使うべき場を作った」ということ。「商品の魅力をうたうよりも、商品の魅力を発揮できる場所を用意した」ということなのです。洋服であれば、ただ単純に洋服などを売るのではなく、洋服を着るシーンを作り上げたということです。

 需要を想像し創造するということが売上を上げていくのに必要な時代なのかもしれません。

 (参考資料 「衝動買い」がとまらない!)

計画的な店舗レイアウト

計画的な店舗レイアウトの実施で売上をアップさせるということに関して記載します。

【ウォルグリーンのレイアウト】

アメリカのドラッグストア、ウォルグリーンのセルフ売場商品の粗利益率は約36%と高くなっているそうですが、その要因の一つにレイアウトがあるというのです。ウォルグリーンでは顧客の可能購買高を『「可能購買高(100%)」=「計画購買(顕在ニーズ)(20~30%)」+「衝動購買(潜在ニーズ)(70~80%)」』という考え方をしていて、顧客の買物の7割~8割が衝動買いと捉えているようです。ウォルグリーンの幹部は「利益の上がらない店舗の特徴の一つは顧客を計画購買商品の購入だけで帰していることにある。そのため衝動購買に始まり、衝動購買で終わるレイアウトが重要だ」と述べています。ウォルグリーンでは、レイアウトというものを人間の行動学上から、また、心理学上から深く研究し、形作ってきました。このことが売上、利益の向上に大変重要になってきているとのことなのです。

【通路が狭いと買わない】

 過日、あるお店に入ったときに通路が狭すぎて、奥に行くのが面倒になって店を出てしまったことがありました。店舗内を十分に顧客がくまなく見られるようにするためには、しっかりした導線を確保し、魅力的なレイアウトを作っていくことが非常に重要になってくると考えます。例えば導線を十分に確保するためには、お客様の体の幅を大まかに捉えておくことも大切です。「繁盛店が必ずやっている商品陳列最強のルール」によるとお客様の体の幅は、女性40cm、男性45cm、ベビーカー57cm、こども35cm、親子88cm、車椅子63cmとのことです。衝動購買を増やすためには顧客の店内滞留時間を増やすことが重要です。そのためにはレイアウトに関する知識を押さえておくことが重要だと考えます。

 (参考文献 「実店舗で商品を売るにはどうしたら良いか!?」「繁盛店が必ずやっている商品陳列最強のルール」)

百貨店 婦人服販売の転換点

「百貨店:現在の流れに至る、婦人服販売の転換点」に関して記載します。

1970年代から「ミッシーカジュアル」という市場が登場しました。これが現在の百貨店の婦人服の流れを作っていったようです。そもそも、ミッシーとはミスのような若々しいミセスという意味となります。ミッシーカジュアル登場前の婦人服はスーツかワンピースであり、それも既製服はわずか。プレタポルテとイージーオーダーが全盛でした。それに対してミッシーカジュアルは、スーツやワンピースのような単品の販売ではなく、シャツやボトム、カーディガンなど単品を組み合わせて着こなしを提案する販売方法を使うもので、複数の商品の買上げを意図するコーディネイト販売をするものとなります。それが当時新鮮な概念だったようです。ミッシーカジュアルの登場により、それまで大手百貨店の紳士服と婦人服の売上はほぼ均一でしたが、婦人服関連商品に圧倒的なウエイトが置かれるようになったようです。

このミッシーカジュアル登場前から百貨店は欧米のファッション動向から必ず日本でも既製服主流の時代が来ることを見通していて、海外高級ブランドの導入を図っていました。例えば、大丸が1953年10月にクリスチャン・ディオールと独占契約をしたり、59年に高島屋がフランスのデザイナー、ピエール・カルダンと提携をしたりしています。そういった流れの中で60年代後半から70年代にかけて「既製服化率」が急上昇し、アパレル消費が急速に拡大することとなります。

アパレル業界から大手百貨店に登場したミッシーカジュアルは次のようなものがあります。まず、東京スタイルは1971年に伊勢丹向けに「マイルド」、三越に「エバン・ピコン」をストアブランドとして提供。また、西武百貨店、小田急百貨店に「レポルテ」をNBとしてスタート。樫山も伊勢丹をメイン売場に「アミエル」を立ち上げ、その後「ジェーンモア」もスタート。レナウンは「アデンダ」、三陽商会は「バンベール」をスタートさせます。このような流れの中で、1971年から80年までのほぼ10年をかけて、各アパレルメーカーのミッシーカジュアルの売上は年商100億円規模の基幹ブランドへと成長していきます。80年度の販売実績を見るとアデンダが107億円、レポルテ(「エバン・ピコン」「マイルド」含む)が97億円、バンベールが95億円、ジェーンモアが70億円といった数字です。これらアパレル業界の基幹ブランドが百貨店の婦人服の売上を押し上げることにもなったのです。

 上記から、既製服がこれだけ当たり前になってからそれほど時間が経っていない、ということも言えます。欧米の流れを見て既製服の時代が来ることを察知し、そして、1970年代からコーディネイト販売という大きな流れができあがっていったようです。日頃から当たり前だと思ってしまうようなことでも、時代の流れの中で作られたものだということがわかります。

 (参考文献 現代アパレル産業の展開)