ドラッグストアに関して

本日はドラッグストアについてアップします。

ドラッグストアはその総売上高規模を年々伸ばしていて、2000年度に約2.7兆円だったものが2009年度には約5.4兆円へと成長しています。また、ドラッグストア店舗規模別構成比を見てみると2000年には30坪未満の店舗の割合が31.6%だったのに対し2007年は13.6%と減少。逆に150坪~300坪未満の店舗の割合は2000年に12.0%だったものが2007年に37.6%とその割合を増やしています。小売業全体の流れでもありますがドラッグストアにおいても店舗規模の拡大が見られます。

ところで、医薬品は医療用医薬品と一般用医薬品の大きく2つに分かれるようですが、ドラッグストアが取り扱う主力商品は一般用医薬品(大衆薬)となります。過去においては大衆薬の販売は原則として薬剤師及び薬種商販売業者のみ許可されていたため、各チェーンは各店に薬剤師を確保しなければならず、新規出店の際には障壁となっていました。一方で他業態が大衆薬販売に参入するためには薬剤師が必要となり新規参入することを難しくしていました。ですので、過去ドラッグストアは薬事法によって「規制」され「保護」されていたということになります。ところが2009年4月に施行された改正薬事法により、比較的リスクの低い第二類医薬品や第三類医薬品は薬剤師だけでなく、新たな資格となった販売登録者による販売も可能になりました。これによりドラッグストアにとっては社員に登録販売者の資格を取得させることで人員の確保し、店舗拡大や長時間営業、コスト削減が行えるようになった一方で、コンビニやスーパー・量販店などの他業態が登録販売者を確保し医薬品販売に参入できる状態となったのです。それにともなってドラッグストア業界は他業態との競合、業際化という、新たなうねりの中に突入していくことになりました。

ドラッグストアの業際化についての方向性としては大きく4つ。「バラエティドラッグ:コンビニやスーパーマーケットなど他業態との併設・合体によって利便性や買い回り性を強化する方向性」「スペシャルティドラッグ:調剤併設による処方箋への対応や薬剤師のカウンセリング販売などによって、専門性を強化する方向性」「ビューティドラッグ:エステサロンやフィットネスクラブを併設するなど、美容・健康関係での高付加価値化を目指す方向性」「ディープディスカウントドラッグ:食品や雑貨の品揃えを強化し規模の拡大により低価格を追求する方向性」上記のバラエティドラッグとしてミニストップサテライト(おにぎりや弁当、総菜などの取り扱いを強化した店)とドラッグストアの併設店、「グリーシア・ミニストップサテライト」があります。こちらは2009年から首都圏郊外を中心として出店を始めています。

また、立地戦略としてマツモトキヨシは2009年から駅ナカに「Medi+マツキヨ」を出店。通常のマツモトキヨシの店舗面積と比較して1/5の約20平米、取扱アイテム数は2割程度の2600と規模は小さいものとなりますが、登録販売者のみで販売するローコストオペレーションや来店客の多さが強みのようです。

 薬事法改正により大きな動きを見せたドラッグストアですが、今後、市販薬のネット販売がどのように影響してくるのか、というところは気になるところです。高齢化が進む社会において薬の販売の便利さと安全性は非常に重要なポイントとなると思います。ですので、ドラッグストアという業態が今後どのように進化していくのかは消費者にとっても大切なポイントになると考えます。

 本日のグラフは「今後も成長が期待されるドラッグストア市場 富国生命」「薬事日報」より。参考文献:小商圏時代の流通システム

商圏

本日は商圏に関してアップします。

 商圏とは文献によっていろいろ定義があるようです。その中で個人的に「一番しっくりくるな」と思ったものは“単独、あるいは集積の商業施設が顧客を吸引できる地理的範囲(「すぐ応用できる商圏と売上高予測」市原実著、同友館)”というものです。いずれにしても商圏はその店舗が成立するかどうかを判断する上で重要な基準となります。

また、商圏は商品特性でみて「最寄品商圏」と「買回品商圏」に、また、階層区分からみて「第1次商圏」「第2次商圏」「第3次商圏」に分かれます。初めに「最寄品商圏」と「買回品商圏」ですが、そもそも最寄品とは一般家庭で日常的に食べたり、使ったりするもの(飲食料・荒物・金物・医薬品・化粧品・下着類・靴下類など)のことを言い、最寄品商圏とは最寄品を買いに来る顧客が住んでいる範囲を言います。続いて「買回品商圏」です。買回品とは、品質、デザイン、価格などを比較選択して購入するようなもので、最寄品以外のことを言います。話を戻しまして「買回品商圏」ですが、定説はないのですが、中小企業庁編「診断要領等事例集」において、例えば商業集積の商圏を見ると、1次商圏が商圏内消費需要の30%以上を吸引している地域、2次商圏は上記同様の10%以上を吸引している地域、3次商圏は上記同様の5%以上を吸引している地域というようになります。ちなみに「最寄品商圏」より「買回品商圏」のほうが大きくなるのが一般的なようです。身近なものは近場で済ませますし、ブランド品を買おうと思ったら電車に乗ってデパートに行きますからこれは当然とも言えると思います。

この商圏の把握する代表的な方法には「理論商圏」による設定と「実態調査」による設定があります。理論商圏を設定する商圏分析モデルとしては“ハフモデル”等があります。ハフモデルの基本的な考え方は「買物客がある商業集積を選択する確率は、その売場面積に比例し、そこまでの距離に反比例する」というものです。

 続いて実態調査による設定ですが、こちらは地方自治体、主に都道府県が実態調査を行っている場合があるようで、そちらをもとに調べていきます。例えば青森県の八戸市。平成9年に67.6万人弱の商圏を持っていたものが、八戸市のすぐ北に位置する下田町にイオンのショッピングセンターができた影響により、平成12年には66万人弱と2.6%も商圏人口を減らしてしまったということが、青森県の出す「消費購買動向による商圏調査報告書」からわかるようです。

リアル店舗を出店する際に商圏をどれくらいの範囲で考えるのかということが重要な気がします。最近ではO2Oビジネスに代表されるようにネットの力も強くなってきていますが、リアルに店舗を持つのであれば、どのエリアからどれくらいの顧客を呼び込むかは戦略として考えておくことが必要だと思います。地政学というジャンルがあるのですが、例えばイギリスであれば島国であったため、海がお堀の役目を果たし第2次世界大戦でドイツに上陸されることはありませんでしたし、半島に位置する朝鮮でできた国は、じょうごに水を注いだときのように、中国にできた王朝の影響を大きく受けてきました。このように、どこに存在しているかで大きく運命を決定させられてしまう部分があることは否定できません。自分の意志で変えられる部分については良いように変えていくことが重要だと思います。

 (参考文献:経済産業省 商業環境の現状分析)

ランチェスター戦略

本日はランチェスター戦略についてアップします。

【ランチェスター戦略:占有率】

ランチェスター戦略においては競合他社と自社を比較し、どれだけのシェアをとればよいのかということを体系化しています。ランチェスター戦略では7つの数値をシンボル数値として設定しています。①74%。目指すべき最終目標(100%のシェアをとってしまうと競合プレイヤーがいなくなり市場が縮小)。②42%。40%のシェアを超えると2位を圧倒的に引き離し、値引きなどの消耗戦に巻き込まれず、収益力も大幅に増す。③26%。強者の最低条件の数値。この数値を下回るようだと、1位の地位は安定せず、2位との差が僅差となり、激しい消耗戦が繰り広げられ儲からなくなる。④19%。どんぐりの背比べ状態の中から上位グループに入れる数値。⑤11%。市場の中で存在感が増す数値。⑥7%。市場に存在が認められる数値。⑦3%。市場への参入段階。

さて、上記数値を持って専門店の売上高を例に見てみます(数値は日経MJトレンド情報源2013から)。まずカジュアル衣料売上高シェアを見てみるとユニクロが約50%の売上シェアを占めています。この数値はランチェスター戦略の理論からいくと2位を圧倒的に引き離している数値です。2位以下はポイント、ユナイテッドアローズ、ライトオンと続きますが売上高シェアは10%以下となっています。この結果はユニクロの強さを数値で裏付けているような気がします。また、家具売上高シェアを見てみるとこれまたニトリが売上高シェアを約60%。2位・3位の山新、大塚家具が10%ほどの売上シェアですから、ニトリの強さについてもユニクロ同様にその数値で裏付けられているように感じます。続いて最近、業績悪化に伴い業界再編が進んだ家電製品の売上高シェアですが、ヤマダ電機がシェア約30%。業界のトップを走っていますが、ヤマダ電機にはユニクロほどの圧倒的な強さを感じないような気がします。それは業界トップではあるものの市場占有率が2位以下を圧倒的に引き離すほど大きな数値になっていないということもあるのだと思われます。

 上記はあくまで例として売上高シェアで市場占有率をみてみましたが、ランチェスター戦略で作戦を立てていく際はもっと市場を細分化して(地域とかジャンルとか)、その占有率を見ていく形となります。つまり、勝てる分野でオンリーワンになるように市場占有率74%を目指せば他を寄せ付けないナンバーワンになれるということです。ほかの言葉でいえば集中と選択とか特化するとかいうことになるのでしょうか。ナンバーワンよりオンリーワンというよりも、オンリーワンになれればナンバーワンになるという話です。

なお、今回の内容で行くと全くの蛇足なのですが、ランチェスター戦略に「戦闘力=武器効率×兵力数の2乗」というものがあります。近代戦において敵味方が同じ武器を持っていて、味方が5人、敵が3人ならば、5の2乗-3の2乗=√16となり、味方が4人生き残って、敵は全滅という形になります。単純に引き算で味方が2人生き残って、敵は全滅とはならないのです。その件で昔読んだランチェスターの本に「だから寝ないでやればいいんだ」といったようなコメントが書いてありました。その時は「それってどうなの?」と思いました。今では寝ないでやるのは健康に良くないとは思うものの、時間を消費・浪費するのではなく、投資に使うことが必要だということを言いたかったんだろうな(個人の資質=能力×時間の2乗)と良い意味で解釈することにしています。

【ランチェスター戦略:足下の敵】

市場が成熟してくれば、各企業の市場のパイの奪い合いが始まります。その際、「自社の売上・利益をどこから奪えばよいのか」ということになりますが、ランチェスター戦略では、自社よりシェアが1ランク下の足下の敵から奪えということになっています。1ランク下よりもっと弱い会社を攻めるのではなく、足下の敵を叩く理由は、自社の伸び分と1ランク下の敵のシェアの減少分の合計分差でますので、下の敵に順位を脅かされる可能性がなくなるのです。ではどのように1ランク下の敵を叩くかというとミート戦略をとります。ミート戦略とは1ランク下の敵に合わせて同じ戦略をとり、敵の得意分野を消し去ってしまう戦略です。

ミート戦略というと個人的には百貨店の物産催をイメージしてしまいます。例えば池袋の西武百貨店と東武百貨店。西武池袋本店は2011年の店舗別売上高が2位。東武百貨店池袋本店は10位。JR池袋駅の線路を挟んで向かい合っている池袋を代表する2店舗です。さてこの両店舗の2013年の催事でみると、東武百貨店池袋本店では5月2日~14日まで「初夏の大北海道展」を開催していますが、それに合わせて西武池袋本店は4月20日~5月7日まで「全国味の逸品会」5月9日~13日には「素材のチカラ 味の国の菓子祭」を開催しています。あくまで僕のイメージなのですが西武池袋本店が東武百貨店池袋本店と同時期に物産展をぶつけることによって、物産展によってもたらされる東武百貨店池袋本店の集客力の増を無効化しようとしているように思います。他のエリア、新宿でみると、5月29日~6月4日に2011年店舗別売上高が14位の新宿の小田急百貨店が「北海道物産展」。5月29日~6月3日まで1位の伊勢丹新宿本店が「“チアアップ!”ニッポンの“食”展」。こちらも物産展を同時期にぶつけています。(ちなみに同時期で26位の新宿高島屋が「「大学は美味しい!」フェア」を開催しています。)経営戦略なので、本当のところはわかりません。ただ、地域1番店をより確実なものとし店舗力を強化するために、西武池袋本店が東武百貨店池袋本店を、伊勢丹新宿本店が小田急百貨店を攻撃しているように思われます。

 弱者がとる戦略は差別化ということになりますが、強者は弱者に同質化していきます。強者が弱者に合わせるのは価格競争に持ち込み、弱者の体力を奪うということもあるようです。ただ、本当の強者などごくごく一部なのでしょうから、ほとんどの場合は常に自分の特徴を出せるように努力することが重要な気も個人的にはしています。

 (ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則)

東日本大震災が消費行動に与えた影響

本日は東日本大震災が消費行動に与えた影響を見てみます。

 過日、山形県にお住まいの方と話をする機会があり、その際に福島第一原発の事故による影響で食料品を販売されている方が苦労なさっているといったような感じの話を伺いました。今では東京ではだいぶ放射線に対する意識が薄れてきているように感じますが、東北にお住まいの方は今なお放射線の被害と戦われているのだと感じました。

 日本政策金融公庫の資料より2013年1月段階の「福島第一原子力発電所事故の影響」を見てみると、現在もその影響が残っていると答えた方が、岩手・宮城・福島で71.2%(うち福島93.8%)、茨城・群馬・栃木で63.6%、青森・秋田・山形で41.4%という結果が出ていました。原発事故当初話題になったセシウム137の半減期が約30年。当然のことながら長い時間をかけて原発事故が起こした問題とは向き合っていかなければならなくなってしまっています。

 原発事故後、セシウムと合わせてヨウ素131も話題になりました。東京の浄水場を汚染しまくりミネラルウォーターが軒並みスーパーからなくなっていたのを今でも思い出します。当時、僕がスーパーへ行ったらペットボトルというペットボトルが全て売り切れていて、残っていたのは確かヘルシア緑茶だけ。今ではヘルシア緑茶とかヘルシアウォーターとかよく飲むんですが、当時は衝撃を受けた記憶があります。2011年3月のミネラルウォーターの支出の対前年同月実質増減率を総務省統計局資料から見てみると161.3%増。ほかにも支出額の対前年同月実質増減率を見てみると電池が181.2%増、カップめん43.2%増、もち43.7%増という状況でした。反対に自粛ムードの広がりもあり、宿泊料は△33.8%、入場・観覧・ゲーム代△24.7%という結果でした。これは負の要因ですが、外部環境の影響で売れる物が大きく変化するということは事実です。時代が変化したときにその変化に対応できる力をつけておかなければ時代に取り残されるということもあるような気がします。

 東日本大震災の時は徹夜をして仕事をしていましたが、夜中にも東北のみならずそれ以外の地域を震源とした地震もあり、おびえる人々を見て、日本はこのまま沈没でもしてしまうのではないかという気持ちにもなりました。ただ今でも、震災の影響で苦しんでいる人がいます。また、日本は地震の活動期に入ったともいわれ、いつまた大きな地震が来るかもわかりません。園監督の「希望の国」でのセリフの中で「一歩、二歩、三歩」といった言葉に対し「これからの日本は一歩、一歩、一歩だよ」といったようなセリフがありました。一歩、一歩、一歩と、置かれた環境や自分自身と戦っていかなければならないのかもしれません。