成熟市場で需要を創っているブランド

本日は成熟市場で需要を創っているブランドに関して記載します。

ちょっと前に評判になった日清食品HDの「カップヌードルごはん」を食べてみました。水を入れてレンジで温めてさっとできました。意外とボリュームもあっておなか一杯になります。確かおにぎり2個分と書いてありました。この「カップヌードルごはん」、2010年8月に関西で先行販売し、2011年7月に全国販売しヒットした商品です。カップ麺全国首位の日清食品HDは「カップヌードル」という既存のブランド資産を活かし「カップヌードルごはん」を生み出しました。新規ブランドの低い「勝率」に加工食品各社が苦しむ中、存在感を増す小売業のプライベートブランドとの棲み分けを狙い、手持ちの有力ブランドを巧みに“多重活用”しているのです。

そもそも日清食品HDには既存ブランドを多重活用する制度があり、「カップヌードルごはん」以外には「麺の達人」を活用して、温度帯の異なる商品を扱うグループ会社である日清食品チルドが「つけ麺の達人」を販売するなどしています。このようなブランド商品を多重活用する戦略は、消費者の間で強まりつつある定番志向に合致したこともあり、成果を上げたようです。このようなブランドの多重活用は小売業のプライベートブランドとの棲み分けということ以外に、コンビニの棚を確保しやすいというメリットもあるようです。コンビニへの販路は、メーカー各社が次々と新商品を投入することから、新商品にとっては狭き門で継続的な販売は難しくなっています。しかしながら知名度の高いブランドを冠する商品ならば一定の売上確保も見込めるため、コンビニ側としても店頭に商品を並べやすいのです。

 話は変わりまして、カルピス。カルピスはその経験率が99.7%と認知度も非常に高いのですが、少子化が進む中で苦戦を強いられてきました。ところが最近になり業績が改善していると言います。発端は2007年に着手した外部企業とのコラボレーションによる商品の多面展開と販促です。例えば2011年6月から期間限定販売した「カルピス蒸しパン」はコンビニで支持され、通常のヒット商品の3倍の売上を記録しました。他にはカルピスを使ったカルピス入りのホットケーキの販売にもチャレンジしたようです。外食店への開拓も行っていてカルピスを使ったカクテルや料理の提案も行い、今ではカレーの隠し味に使うチェーン店もあるようです。「カルピス社員のとっておきレシピ」なる本の販売もされているようです。

カップヌードルごはんにしてもカルピスにしても、既存のブランド商品を今までとは見方を変えて販売したことにより売上が回復したようです。商品が衰退期に入る前に新たな息吹を与えて新たな成長へ繋げたということでしょうか。商品自身の持っている力を再度見直し活用することによって成長戦略へとつなげていくということの例だと思いました。また、これは余談にはなりますが、居酒屋で気づいたら「カルピスサワー」とかが出ていて、飲んでるだけでしたけど、何気なく、いろいろなところにマーケティングが仕込まれているものだなと感じました。

 (参考文献:日経MJトレンド情報源2013)

顧客の深耕度

本日は顧客の深耕度に関して記載します。

アメリカの企業でアウトドア製品で知られるL.L.ビーン社という会社があります。この会社ですが、ネットのサイトを見ると次のようなコメントが出てきます。「すべてのL.L.Bean商品はお客様に100%ご満足いただけるよう、保障されています。もしお買い上げの商品にご満足いただけない場合には、いつでもご返品ください。」というコメントです。

さてこの会社、創業した1912年に革張りの上に防水のゴムでカバーしたハンティング・シューズを100足販売しました。このシューズに100%満足保障のタグをつけて販売していたのですが、3週間で返品が始まり、最終的には100足中90足が返品されました。返品理由はシューズをカバーしていたゴムがはがれたからなのですが、この会社は90足すべての靴を取り替え、100%満足保障を実行したことにより、消費者の信頼を勝ち取りました。そして、商品の品質も向上させ、ビジネスを軌道に乗せたのです。似たような例で、全米最大の高級デパート「ノード・ストローム」もだいぶ履いてしまった靴ですら、苦情を言えば交換してくれるそうです。以上のような顧客満足度向上を重要視する経営には『顧客が感じる価値を高める』という目的があります。企業が提供する商品・サービスを顧客が価値があると考えた際にお金を払うわけで、顧客から高い価格を支払ってもらおうとするならば、企業側はそれなりの価値を顧客に提供しなければなりません。

 企業にとって消費者には段階があります。1番目が見込み客。2番目が顧客。3番目がロイヤル顧客。見込み客の段階では企業と消費者の関係は弱く、消費者はあくまで潜在的な顧客に過ぎません。続いて顧客の段階においては競争企業と価格を比べながら自社で買うかどうかを決めている段階で、進んで高い価格を払ってまで自社で商品・サービスを買ってくれようとはしない段階です。そして最後にロイヤル顧客ですが、この段階にまでなると消費者は自社にとって熱心なファンになっていて、商品・サービスの価値を非常に大きく感じて、価格が高くても喜んで支出してくれるようになります。ロイヤル顧客が増えれば企業は長期的に利益を確保しやすくなります。ロイヤル顧客をたくさん抱えている例としてカルティエやルイ・ヴィトンなどのラグジュアリーブランドが挙げられます。

 自社が消費者に与えている価値を高めていくことにより、見込み客から顧客へ、顧客からロイヤル顧客へ、徐々に消費者が自社のファンになっていきます。「与えられる存在になる」ということが生き残っていくうえでの前提になるようです。

 (参考文献:日本一わかりやすい価格決定戦略)

価格戦略(値下げ)に関して

本日は価格戦略(値下げ)に関してです。

 日本マクドナルドと言えば、店舗売上高においても経常利益額においても飲食業界でトップを突き進む企業です(2011年段階)が、過去、その業績を大きく落とした時期がありました。それは2002年6月の中間決算(1~6月)においての話ですが、その際、売上高に関して前年同月比△3.9%、経常利益、同△80.5%、税引き後利益、同△81.4%となり、大きく減収減益となりました。理由はBSE問題やインフルエンザ検出による鶏肉輸入停止による「チキンナゲット」販売中止などがあるようですが、もう一つの理由として「ハンバーガー平日半額セールの打ち切り」の影響も大きいようです。

マクドナルドの価格戦略は、1995年4月にハンバーガーの値下げが行われ、例えばハンバーガーが210円から130円、チーズバーガーが240円から160円に値下げが実施され、その後2000年2月14日には「ウィークデースマイル」プログラムが実施され、ハンバーガーが平日65円、チーズバーガーが平日80円と更なる値下げが行われるという経緯でした。「ウィークデースマイル」は大きな結果を残していて、2000年、平日の販売個数は前年比4.8%増、ハンバーガー市場でのシェアは61.8%から64.6%にアップしました。

また、この低価格戦略により、中心顧客を中学生・高校生という巨大な低価格購買層にシフトさせる結果となりました。

 売上やシェアが上がったことは良いことだったのですが、一方で「中高生で混雑度が増した結果、注文に長い列を作って待たなければならなくなった」「席さがしが大変」「若者パワーで騒がしくて落着けない」などのデメリットも発生し、ある程度高い商品でも買えるようなOLやビジネスマンのお客様がマクドナルドから離れていってしまうというデメリットも生じさせてしまいました。

このように低価格戦略を取ったことにより主力顧客層の入れ替わりが起こり、入れ替わりが起こった後は低価格の商品しか受け入れない顧客がメインとなるということがあるようです。その結果として顧客単価が低下し、収益が悪化するという現象が引き起こされます。価格以外の原因で一度離れた顧客はそう簡単には帰ってきてくれず、ただ、低価格ゆえに来店する顧客は低価格によってのみ戻ってくる、ということのようです。

 売れなければ商品を安くして販売するということもあるのでしょうが、十分に「その価格で販売していいのか」は検討した方が良いように感じます。コモディティ化の進んでいる現在では値引きを行って他社との競争に打ち勝つように対応することは、結果として将来的に自社をじり貧に陥らせてしまうということも意識しておくことが必要なようです。

 (参考文献:価格決定戦略)

家電流通システム

本日は家電流通システムに関して記載します。

 気になるCMを観ました。日立のCMで街の電器屋さんのCMです。地域に密着して世代を超えて皆様のお役に立っています的なCMなのですが、「なぜ、今なのか?」という疑問が出てきました。

 日本の家電流通システムにおいて、その中心を担う小売業の勢力は過去3回の入れ替わりがありました。まず初めに1950年代後半以降、松下電器産業(現パナソニック)や日立製作所、東芝などの家電メーカーが自社の製品を専売する小売店を組織化していた時代です。そしてその次に主に1980年代から1990年代にかけて日本電気専門大型店協会(NEBA)に加盟する家電量販店が台頭した時代です(NEBA加盟店の特徴は、それぞれ出自とする地域に地盤を持ち、会員間同士の出店地域が重ならないような棲み分けが行われていたことと、メーカーとの協調関係があり価格競争を抑制していた、というような特徴がありました)。そして直近の1990年後半以降においては少数の量販店とカメラ系と呼ばれる大都市のターミナルに店舗を立地させる量販店の成長・拡大です。これらの量販店の特徴としては、「郊外に大規模な駐車場を備える、あるいはターミナル駅付近に立地するなど集客を意識した立地となっていること」「店舗の大型化で多数の家電メーカーの商品を取り扱えるえること」「大量仕入れによるコストダウンとそれを可能にする多店舗化の実現」「価格訴求力を示すための大量の宣伝広告」といったものがあります。そして今現在の流れにおいては、中小チェーンは大企業への統合もしくは店舗の閉店を余儀なくされていますし、さらには上位チェーンにおいても企業間の合従連衡が行われています。

そもそも現在の家電量販店における上位チェーンは地方都市を出自とするものが多く、ロードサイド型店舗を基盤として、スケールメリットを背景とした店舗網を構築してきました。「自社による情報・物流システムの構築や地価の安い郊外地域への出店によるローコストオペレーション」「中小規模店を潰し大規模な店舗を出店するスクラップ・アンド・ビルドによる店舗の大型化」によって成長を図ってきたのです。近年では地方での市場が飽和状態にあることと、地価の下落や居抜き物件の活用により、地方都市出自の家電量販店が大都市へも出店してきています。

2010年に売上高2兆円まで行った2000年代の家電量販店の主役、ヤマダ電機についても上記のような動きを今までつけてきました。一方で、「コスモス・ベリーズ」というフランチャイズ・ボランタリーチェーンも同時に展開し、小型店への進出も図っています。

 今までスケールメリットを活かし低価格で商品を提供してきた家電量販店ですが、地方のみならず大都市圏においても競争が激しくなる中で、市場は飽和状態にあります。そこで大型店ではカバーしきれない商圏をカバーするような小型店が再評価されるようになってきているようです。小型店ならでは行える商品説明、アフターサービスの充実といったことにより、消費者との関係をしっかり築き上げ、従来のマス・マーケティングの追求に加えてワンツーマン・マーケティングを組み合わせた営業を展開していこうという動きになってきているようです。また、高齢化社会においては懇切丁寧なサービスが重要になることもポイントです。大型店ではこの部分がフォローしきれないため小型店のサービスは強みになるようです。

 始めに話を戻しますと、日立のCMは家電量販店による店舗の大型化一辺倒からの変化も踏まえ、再度見直されている小型店のサービスをアピールすることで市場の獲得を狙っているのではなかろうかと考えた次第です。

 (参考文献:小商圏時代の流通システム)

総合スーパーの戦略の転換

本日は総合スーパーの戦略の転換に関してアップします。

 今日、イオングループの「まいばすけっと」に行ってみました。「まいばすけっと」とはイオングループの都市型小型食品スーパーマーケットです。今日行った店は駅から歩いて5,6分のところにあり、周辺地域は静かな住宅街でした。「まいばすけっと」は店の外から見るとコンビニのような佇まい。しかしながら、店自体はコンビニよりちょっと大きめの規模で展開しているように感じました。また、コンビニとの違いは店内で販売しているものがほとんど100%近く食料品。しかも安め。チェーン店の什器陳列に見られるような店舗レイアウトになっていてコンビニとはそういったところも違うかなという感想を持ちました。

 「まいばすけっと」は店舗形態としてコンビニに類似していますが、“営業時間が7時(8時)~23時まで”“売上高に占める生鮮食料品の割合が約30%”“商品の価格設定が総合スーパー(イオン)や食料品スーパーに準じている”といった点からコンビニとは異なる性格を持っています。2011年12月現在、東京23区、川崎市、横浜市に出店地域を集中させていて店舗数は238店舗。「居抜き物件」を出店先に選び建設にかかる初期投資を抑え、大量出店につなげてきました。商圏規模についてはコンビニほどの店舗面積ということもあるためか、基本的に半径300m以内かつ2000世帯以上に設定されています。

 過去、イオンは広い用地が確保できる郊外地域あるいは既成市街地の工場跡地に広域型ショッピングセンターを出店する戦略を取っていました。この戦略は1990年代から2000年代前半までは集客力を高める手段として確立していましたが、2006年に改正された都市計画法で広域型ショッピングセンターによる出店が難しくなりました。また、少子高齢化に伴う市場の縮小の影響で、広域型ショッピングセンターの出店は飽和状態にもなっています。自動車での利用を前提としたイオンにとって、広域型ショッピングセンターに替わる業態の開発を模索していました。その中で大都市内部の既成市街地は人口密度の高さから食料品に対する潜在的な需要が見込める有力な市場であるにもかかわらず、地価価値が高く大型店の展開が難しく、イオンにとって未開拓の地域でした。そこで「まいばすけっと」を大量出店し、短期間で大都市内部の既成市街地へのシェア拡大を図ったということになります。

 次にイトーヨーカ堂を見てみます。イトーヨーカ堂は2000年代に関東地方へ出店した34店の大半が東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県の大都市圏に限定されていて、ドミナントエリアとして東京大都市圏に深耕化を図っています。そして、2000年代後半イトーヨーカ堂は新たな広域型ショッピングセンター「Ario」を開発。また、既存店を業態転換したディスカウントストア「ザ・プライス」を展開。このような重層的な店舗展開をドミナントエリア(東京大都市圏)で行うことにより、勢力の維持と多様な消費者の需要を満たそうとしています。

イオンがとっている戦略にしてもイトーヨーカ堂がとっている戦略にしても、業態として総合スーパーに依存しないビジネスモデルを構築しようと試みているということが言えます。世界の小売業売上高ランキングの14位と17位の企業がチャレンジし続けています。変化への対応・現状を維持することに留まらないための努力が市場から求められているのかもしれません。

 (参考文献:小商圏時代の流通システム)

まちづくり3法

今日はまちづくり3法に関してアップします。

まちづくり3法とは「生活環境への影響など社会的規制の側面から大型店の出店の新たな調整の仕組みを定めた『大規模小売店舗立地法(大店立地法)』」、「中心市街地の空洞化を食い止め活性化活動を支援する『中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律(中心市街地活性化法)』」、「土地の利用規制を促進する『(改正)都市計画法』」の3つの法律を総称して言う法律で1998年に成立されました(大店立地法のみ2000年施行)。

まちづくり3法は都市計画の観点から大型店の立地を規制していこうと創設された法律でしたが、近年の店舗面積の拡大、中小小売業の事業所数の減少が表している通り、大型店の出店増加や郊外立地、店舗の大規模化は止まらず、中心市街地の空洞化も進んでいきました。そのような状況を受け、2006年に都市計画法と中心市街地活性化法が改正。都市機能の郊外への拡散の抑制、中心市街地の再生、都市のコンパクト化とにぎわいの回復を目指した法改正が行われたのです。

まちづくり3法に限定していうと、そもそも大型店の立地の流れは出店場所が「都市計画法」上、立地しても良い場所かどうかで判断された上で、可能な場所であれば「大店立地法」の届け出による審査で立地が決まります。

その都市計画法ですが、大型店の立地に影響する制度として大きく「区域区分」と「用途区分」の2つあります。「区域区分」はすでに市街地を形成している区域と概ね10年以内に優先的、計画的に市街化を図るべき区域の「市街化区域」と市街化を抑制すべき「市街化調整区域」とに区分する制度です。そういえば町を歩いているとたまに空き地のような場所に「ここは市街化調整区域です」という看板が立っているのを見たような気がします。次に「用途区分」に関してですが、「市街化区域」を更に細分化するイメージで、住宅、商業、工業など市街地の大枠としての土地利用を定めているもので、現在12種類あります。身近な例だと、よく不動産の図面で載っているもので商業とか工業とかでしょうか。以上のようにこの法律により、まず市街地と市街地でない区分にわけ、無秩序な市街地拡大の防止と良好な市街地の形成を図り、そして市街地では住宅用地や商業用地、工業用地などに区分し、住み良いまちを形成しようとしています。

さて、まちづくり3法が1998年にできたにもかかわらず、大型店の出店攻勢が衰えず、店舗立地の郊外化と店舗の大型化に歯止めがかからなかったかということについてですが、2006年の都市計画法改正以前では大型店の立地は市街化調整区域では原則不可だったのですが、非線引き白地地域や都市計画区域外・第2種住居地区や準工業地区では大型店の立地に床面積の制限がなかったということがあります。こういったことを受けて2006年に都市計画法と中心市街地活性化法が改正されたのです(大規模集客施設の立地は近隣商業地域、商業地域、準工業地域に限定された)。この法改正後、チェーンストアはショッピングセンターの新規出店を減退させるとともに、大型店とコンビニの中間的な食料品スーパーなどの出店を増やしているようです。

 様々な法律や社会の仕組みの変化に伴って商環境は変わってきます。ただ、どう変わるか100%わかるわけではありません。ヤマダ電機が郊外で力をつけて、都心部に進出し、今では世界の小売業売上高ランキング34位に入っているように、日々着実に実力をつけるように努力していくしかないのかもしれません。

 (参考文献:小商圏時代の流通システム)

世界の小売業売上順位

本日は世界の小売業売上高順位をアップします。

 世界の小売業の中で圧倒的な売上高を誇っているのはダントツ1位のウォルマート(米)。2位のカルフール(仏)の売上高を約3,000億ドルも突き放してトップに君臨しています。うちの近くにもウォルマート傘下の西友がありますが、ちょっと前だとKY(価格安く)と言って販売していました。このウォルマートEvery Day Low Priceという低価格戦略、物流管理、コスト削減を推し進めて急速に成長、世界最大の売上にまでなった企業です。ただ成長の一方で焼畑商業を行っているということで批判されたこともあるようです。(焼畑商業:個人商店や地元資本しか存在しないような小都市に進出し、安売り攻勢で地元の競合商店を次々に倒産に追い込んだ挙句、不採算を理由に撤退するという焼畑農業的な戦略)続いて2位が先ほどのカルフール。世界各地にスーパーマーケットチェーンを展開している企業ですが、世界で初めてスーパーマーケットと百貨店を結合したハイパーマーケットの概念を導入した企業です。(ハイパーマーケット:衣食住全てを扱う郊外立地の倉庫型・集中レジ方式の総合スーパーの1つの形態。主にヨーロッパで多くみられる形態)3位はテスコ(英)。こちらはハイパーマーケット、スーパーマーケット、コンビニを展開。金融、電気通信、ガソリンスタンド、通信販売などにも手を広げています。4位はメトロ(独)。ドイツの大手百貨店、小売会社カウフホーフを傘下に持つ企業です。5位がクローガー(米)スーパーマーケットチェーンでガソリンスタンドも営業。スーパーでガソリンスタンドも営業している部分がなんとなくアメリカっぽいなと感じました。

それ以下では7位にコストコ(米)。ウェアハウス・クラブ(会員制倉庫型卸売小売)チェーンです。入荷したままのバレットに乗っている商品を大型の倉庫に並べて販売することにより、管理や陳列にかかるコストなどを徹底的に抑えるようにしています。また8位のザ・ホームデポ(住宅リフォーム・建材資材・サービスの小売りチェーン)や9位に入っている薬局チェーンのウォルグリーン(米)。この辺りは特徴持った小売業がランキング上位に入ってきているなと感じました。

さて、続いて日本の企業はどれぐらいの順位なのかですが、最も上位に14位にセブン&アイが入ってきています。続いて16位にイオン。この2社はなるほどという気もしますが、34位にはなんとヤマダ電機がランキングされていました。百貨店数社も100位以内にランクインしていまして、伊勢丹三越が64位。Jフロントが94位。髙島屋が100位という順位になっていました。 あくまで順位なので年々変化するでしょうけれど、ウォルマートの圧倒的な売上高にはびっくりしました。売上高が高いだけでなく純利益でも169億ドルと非常に高い数字を出しているので、その点でも驚きでした。世界の順位を見てみて日本の小売の企業が世界でどれくらいの順位なのかなどいろいろわかり興味深いものがありました。

ネットスーパーに関して

本日はネットスーパーに関して。

ネットスーパーとは、消費者がスーパーのホームページで商品を購入し、その商品を宅配するもので、2000年代後半から注目が集まっています。ネットスーパーはその仕組みから「店舗型(店舗に陳列されている商品を配達する仕組み)」と「倉庫型(ネットスーパー専用の倉庫(センター)から商品を配達する仕組み)」に分けられます。日本の場合はほとんどのスーパーが「店舗型」で参入しています。その理由として店舗型は倉庫型よりも初期投資が少ないことが挙げられます。実際に過去、1990年後半にアメリカのWebvan社(ネット専業スーパーマーケット)が地域ごとに流通センターを設けて営業していたのですが、費用負担が重荷になって破たんしています。日本の場合、企業によっては、ネットスーパーの導入に伴って新たに人を雇うことなく、既存の店員が店舗でピッキングや仕分け作業を行うことで、ネットスーパー導入に伴って増加するコストを抑えて運営しているのです。

さて、その店舗型ネットスーパーの基本的な流れですが、『まず顧客がインターネットでネットスーパーのホームページにアクセスし、ホームページ上で商品を選択して注文を確定する→顧客からの発注情報が配送を担当する店舗に送られる→注文を受けた店舗では店員が売場に陳列されている商品をピッキングし、ネットスーパーの専用車にて店舗から顧客の家まで届けられる。支払いはクレジットカード払いや代金引換を選べる』というものとなっています(例:ダイエーネットスーパー https://netsuper.daiei.co.jp/ イトーヨーカ堂ネットスーパー https://www.iy-net.jp/ )。

 日本におけるネットスーパーは2000年に西友が2001年にイトーヨーカ堂が数店舗で実験的に導入したことにはじまります。ネットスーパーに参入する企業が増えたのは2007年以降です。

ネットスーパーの特徴ですが、まず商品を注文してから家に届くまでのリードタイムが短くなっています。スーパーによって違いはありますが、指定時間までに注文すれば当日中に商品が配達されます。次に配達エリアですが、店舗型のネットスーパーは利用できるエリアは店舗周辺に限定されます。チェーンによって半径5km程度であったり2~3km程度であったりと商圏人口の設定に差異があることから、その範囲が異なります。また、人口密度の高い都市圏では配達エリアが狭く設定され、郊外地域では利用者を確保するため配達エリアが広く設定されているようです。3番目にネットスーパー導入に伴って企業が得られる効果ですが、現状では決して大きなものではないです。イトーヨーカ堂のIRなどで売上を見てみたのですが、2011年のイトーヨーカ堂の売上1兆3,736億円に対しネットスーパーの売上350億円(約2%)と売上に大きく貢献しているというものでもないように感じます。「2010年2月期の売上高は当初目標(200億円)を上回り、210億円になった。営業損益も通期では初めて黒字に転換した」という報道も過去あったようで、年々、会員数や売上高を伸ばしているものの、まだまだネットスーパーは収益性が高い事業ではないということが言えると思います。

 高度経済成長期以降、総合スーパーなどのチェーンストアは大量生産された商品を効率的に流通させて大衆消費者に届けてきました。その中で効率化や低コスト化が進められてきました。ところが今総合スーパーが行っているネットスーパーは配送費もかかりますし顧客の代わりに従業員が買い物をするようなものですから決して効率的なものとは言えません。この一見矛盾する施策は社会・消費環境の変化に過去の小売業の仕組みではついていくことができなくなりつつあるということを象徴しているようでもあります。小売業全体的に店舗面積は拡大し従業員も増やさずにサービスを増やしているわけですから、ネットスーパーは将来の新たな総合スーパーの仕組みに向けて現在いろいろ模索しているということを表しているのでしょう。

 (参考文献:小商圏時代の流通システム)

大型商業施設の出店用地

本日は大型商業施設の出店用地に関してアップします。

 大型商業施設を出店するに当たり前ではありますが、それ相応に大きな土地が必要となります。特に大規模な駐車場を備えたショッピングセンターの場合には10万平米~20万平米に及ぶ規模の敷地が必要となり、その用地を確保するのは容易ではありません。そのような状態の中で大型商業施設が出店される場所にはいくつかの種類があります。

まず、主に都市の中心商業施設における再開発があります。大都市の拠点駅では1990年代以降、京都駅、名古屋駅、札幌駅、東京駅、福岡駅などの駅ビルが建て替えられ、百貨店や専門店の新規出店や増床が行われました。京都駅の伊勢丹は過去に行ったときに感じたのは、デザイン性も素晴らしく、屋上の和テイストなところが素敵でした。またそもそもは名古屋と言えば百貨店は栄の4M(松坂屋、丸栄、名鉄百貨店、名古屋三越)でしたが、名古屋駅にそびえ立つセントラルタワーの核店舗JR名古屋髙島屋ができた今では4M1Tとまで言われるようになっているようです。さて話を戻して、ほかの用地確保としては既存の大型店が建物の老朽化や更なる大規模化への必要性から建て替えられる場合もあります。また、建物をそのまま利用しつつ新たなテナントが入居する、いわゆる経費のあまりかからない「居抜き出店」もあります。これは百貨店や総合スーパーから家具や家電などの大型専門店に業態転換されることがその例です。最近だと新宿の元新宿三越アルコットの建物にできた「ビックロ」でしょうか。

 大型商業施設は上記のようにもともと商業的な土地利用ではなかった場所にももちろん出店されます。そのうちの中心となっている一つは工場跡地への出店です。工場跡地については、繊維、電気機器、自動車など多様な業種の大規模工場跡地が利用されているわけですが、これらの産業では日本国内の労働コストの上昇や円高の進行で国内での生産は競争力が困難となり、生産拠点の集約や海外移転が行われているということから、このような土地利用が行われるようになってきています。例えば埼玉県の土呂駅近くにあるステラタウン。このステラタウンはもともと富士重工業の工場跡地に作られています。あと他には昔はビール園があってなくなってしまってちょっと残念な感じではある、サッポロビール工場跡地にできたアリオ川口も例としてあります。工場以外の産業関連のものは鉄道などの交通施設の跡地があります。例えば大都市内部や周辺にあった貨物駅や操車場の跡地で、大規模な商業施設を含んで開発された例として旧国鉄の武蔵野操車場跡地(埼玉県三郷市・吉川市)などがあります。鉄道用地の再開発の場合には自動車利用だけでなく鉄道利用による集客も見込まれるところがメリットです。最近では鉄道用地の利用ということでは山手線の田町駅と品川駅の間にもう一つ駅を作るという話が出ています。これは現在建設中の高崎線・宇都宮線・常磐線を東京駅まで延伸させ東海道線と直通にするということが実現されることにより品川車両基地の大部分が不要になることから、再開発含め出ている話のようです。リニア中央新幹線のターミナルができる品川駅近辺の発展に大きな効果の期待される再開発になります。汐留エリアが土地の切り売りをしてしまったことにより再開発に大きな影響が出なかったという話も聞きますから、この新駅近辺の再開発がどうなるかは期待されます。さて、再度話をもどしまして、上記以外の用地確保としては農地からの転用があります。これも工場跡地と同様に、農地の減少、農業従業者の高齢化・減少という産業構造の変化の流れを受けてのものとなっています。

どれだけ有利な立地を確保できるかは小売業にとって重要なことですから、時代の流れをとらえてチャンスを掴めるようにしておくということが重要だと思います。

 (参考文献:小商圏時代の流通システム)

出版関連

本日は出版関連についてアップします。

 日本の出版物(書籍・雑誌の合計)の年間販売額は1996年に2兆6,563億円とピークを迎えましたが、その後減少傾向にあり、2008年にはピーク時の8割程度の2兆177億円までその販売額を落としています。そのうち、の販売額の割合は概ね2対3で書籍のほうがやや少ない販売額となっています。

 次に出版物の流通経路についてみてみます。日本の出版物の大半は取次会社と呼ばれる卸売業者を通して小売業者にわたっています。そして、取次会社を形成する企業・事業所数の数は少なく30社ほどになっています(日本出版取次協会に加盟している取次会社)。そのうち書籍と雑誌の両方を取り扱っている総合取次と言われる企業はたったの7社です。それに対して2009年段階で書店は全国で14,556店。出版社は3,815社という数になっています。また、取次会社は上位2社(トーハン・日本出版販売(日版))の経営規模の寡占状態となっていて書店ルートの7割以上を占め、それぞれ売上高5,000~6,000億円強の大企業となっています。それに対して書店は1位の紀伊國屋書店が1,145億円。出版1位の集英社が約1,332億円となっています。日本の出版業界では取次会社がチャネル・リーダーとしての役割を果たしているのです。また、出版社と取次会社の本社の約8割が関東地方に集中しているのに対して、小売店で関東地方に立地しているのは全体の3割強となっています。目に見える本屋さんやネット書店の存在感が消費者からすると強いように思ってしまいますが、実は卸売業が大きな力を持っているのが出版業界ということになります。仕組みを知ることで業界に対する見え方が変わってきました。

 続いて、ネット書店に関してアマゾンから見てみます。一般的にマーケティングなどの分野において8割の売上は2割の商品数の売上によってもたらされるという、パレートの法則が知られています。「定番」や「売れ筋」と呼ばれる一部の商品が全体の売上の大きな部分を占めるという経験則で、この2割の売れ筋をいかにして確保するかが経営上の重要な課題と言われてきました。ところがアマゾンはパレートの法則の考え方とは異なり、「ロングテール」と言われる部分からもたらされる収益により、強力な市場競争力を身につけています。売上高の大きい「売れ筋」の商品は商品構成全体のごく一部であり、売上高の少ない品目がその他大多数を占めているわけですが、売上高の少ない「非売れ筋」商品群のことを「ロングテール」と言います。ロングテールの商品は、商品アイテム数が多いため売上高を合計するとかなりの額に達します。書籍の場合、ベストセラーとなる商品は極めて限られていて、圧倒的多数の商品は発行部数も少なく、回転率も低いロングテール商品です。大型書店ではどうしても売れ筋商品が目立ちますが、ネット書店ではある特定のタイトルに注文が集中することはまれで、このロングテールに属している商品の売上高が経営を支えています。僕も本屋でよく買い物をするのは好きな方かと思いますが、マニアックなマンガとかは電子書籍とかネット書店で買ったりします。本屋ではそういったものは在庫がなくて、すぐに手に入らないので。こういった人が買う売上で収益を上げるのがネット書店といったところなんだな、と感じました。

 (ロングテールのグラフはネットに出ていた個人的な意見ココログ版より加工。参考文献:小商圏時代の流通システム)