ペットフードに関して

本日はペットフードに関連して記載します。

ペットフードの購買者は、ほとんどが家庭の主婦で、食べるのはもちろん犬や猫といったペットになります。その中でキャットフードに関してですが、1990年代、日本のキャットフード業界は実際にキャットフードを食べる猫のために、栄養のバランスや美味しさ(食いつきの良さ)を競っていました。まさしく食べる側の顧客視点に立って企業間で競争を繰り広げていたようです。そういった状況の中で世界最大の食品・飲料ブランドのネスレがキャットフードの缶のサイズを半分にすることによってキャットフードのシェアを劇的に伸ばしました。当時、キャットフードは185グラム缶が主流でしたが、185グラムの大きさでは食べ残す猫が多かったようです。そのことに対して主婦は不満を持っていました。そこで、この点に着目したネスレが、食べきりサイズのシングルサーブ缶(90グラム)の販売をスタートしました。今でこそ、スーパーに行くと90グラムくらいの大きさのキャットフードがたくさん売っていますが、当時はきっと画期的だったのでしょう。日本のキャットフード業界が基本的に「利用者である猫が好む食事は何か」という軸でしか競ってこなかったことに対し、ネスレは実際の購買者である主婦層のニーズを詳細に調べ、食べ残しの無駄をなくしたい(コスト削減したい)というニーズを発見し、新たな市場を開拓したのです。さらにネスレは、そのシングルサーブ缶を、グラム単位としては185グラム缶より高い価格設定にして、高級ブランドとして展開。独自のポジションを確立したということです。

 買手は単一ではなく、実際に物を買う『購買者』以外にも様々な存在が関わっていることがあります。実際に物を購入する購買者以外の存在として、購買者と利用する者が違ければ『利用者』がいます。これは先のネスレの例でいくと購買者が主婦で利用者が猫です。子供に携帯電話を持たせている親も購買者と利用者が異なる例でしょう。また、場合によっては購買者に影響を与える者(『影響者』)も存在します。この例としてはテレビで「これ良い」と芸能人とかが言うとたくさん売れたりする時の芸能人が影響者に当たると思います。ネスレのように、買手を一塊で見るのではなく、ニーズや立場の違う買手の連鎖として捉え、それぞれの違いに着目することによって、新たな成長につなげることができるということです。

 昔アメリカでは今の日本と同じように鉄道が主な交通手段だったと言いますが、今ではバスや飛行機にそのシェアを奪われているそうです。その原因として鉄道会社が自分たちの事業を輸送事業ではなく鉄道事業と考えていたため、自分たちの顧客がバス等ほかの交通手段を使ったとしても、うちは鉄道会社だから関係ない、と考えてしまったからだと言います。このことからも一定の枠組みの中に縛られた考え方をするのではなく、業界の常識よりも全体を広く見渡す力を養っておくことも必要だと言えます。

 (参考文献:『日本のブルー・オーシャン戦略』『100円のコーラを1000円で売る方法』)

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