本日はネットスーパーに関して。
ネットスーパーとは、消費者がスーパーのホームページで商品を購入し、その商品を宅配するもので、2000年代後半から注目が集まっています。ネットスーパーはその仕組みから「店舗型(店舗に陳列されている商品を配達する仕組み)」と「倉庫型(ネットスーパー専用の倉庫(センター)から商品を配達する仕組み)」に分けられます。日本の場合はほとんどのスーパーが「店舗型」で参入しています。その理由として店舗型は倉庫型よりも初期投資が少ないことが挙げられます。実際に過去、1990年後半にアメリカのWebvan社(ネット専業スーパーマーケット)が地域ごとに流通センターを設けて営業していたのですが、費用負担が重荷になって破たんしています。日本の場合、企業によっては、ネットスーパーの導入に伴って新たに人を雇うことなく、既存の店員が店舗でピッキングや仕分け作業を行うことで、ネットスーパー導入に伴って増加するコストを抑えて運営しているのです。
さて、その店舗型ネットスーパーの基本的な流れですが、『まず顧客がインターネットでネットスーパーのホームページにアクセスし、ホームページ上で商品を選択して注文を確定する→顧客からの発注情報が配送を担当する店舗に送られる→注文を受けた店舗では店員が売場に陳列されている商品をピッキングし、ネットスーパーの専用車にて店舗から顧客の家まで届けられる。支払いはクレジットカード払いや代金引換を選べる』というものとなっています(例:ダイエーネットスーパー https://netsuper.daiei.co.jp/ イトーヨーカ堂ネットスーパー https://www.iy-net.jp/ )。
日本におけるネットスーパーは2000年に西友が2001年にイトーヨーカ堂が数店舗で実験的に導入したことにはじまります。ネットスーパーに参入する企業が増えたのは2007年以降です。
ネットスーパーの特徴ですが、まず商品を注文してから家に届くまでのリードタイムが短くなっています。スーパーによって違いはありますが、指定時間までに注文すれば当日中に商品が配達されます。次に配達エリアですが、店舗型のネットスーパーは利用できるエリアは店舗周辺に限定されます。チェーンによって半径5km程度であったり2~3km程度であったりと商圏人口の設定に差異があることから、その範囲が異なります。また、人口密度の高い都市圏では配達エリアが狭く設定され、郊外地域では利用者を確保するため配達エリアが広く設定されているようです。3番目にネットスーパー導入に伴って企業が得られる効果ですが、現状では決して大きなものではないです。イトーヨーカ堂のIRなどで売上を見てみたのですが、2011年のイトーヨーカ堂の売上1兆3,736億円に対しネットスーパーの売上350億円(約2%)と売上に大きく貢献しているというものでもないように感じます。「2010年2月期の売上高は当初目標(200億円)を上回り、210億円になった。営業損益も通期では初めて黒字に転換した」という報道も過去あったようで、年々、会員数や売上高を伸ばしているものの、まだまだネットスーパーは収益性が高い事業ではないということが言えると思います。
高度経済成長期以降、総合スーパーなどのチェーンストアは大量生産された商品を効率的に流通させて大衆消費者に届けてきました。その中で効率化や低コスト化が進められてきました。ところが今総合スーパーが行っているネットスーパーは配送費もかかりますし顧客の代わりに従業員が買い物をするようなものですから決して効率的なものとは言えません。この一見矛盾する施策は社会・消費環境の変化に過去の小売業の仕組みではついていくことができなくなりつつあるということを象徴しているようでもあります。小売業全体的に店舗面積は拡大し従業員も増やさずにサービスを増やしているわけですから、ネットスーパーは将来の新たな総合スーパーの仕組みに向けて現在いろいろ模索しているということを表しているのでしょう。
(参考文献:小商圏時代の流通システム)