本日は出版関連についてアップします。
日本の出版物(書籍・雑誌の合計)の年間販売額は1996年に2兆6,563億円とピークを迎えましたが、その後減少傾向にあり、2008年にはピーク時の8割程度の2兆177億円までその販売額を落としています。そのうち、の販売額の割合は概ね2対3で書籍のほうがやや少ない販売額となっています。
次に出版物の流通経路についてみてみます。日本の出版物の大半は取次会社と呼ばれる卸売業者を通して小売業者にわたっています。そして、取次会社を形成する企業・事業所数の数は少なく30社ほどになっています(日本出版取次協会に加盟している取次会社)。そのうち書籍と雑誌の両方を取り扱っている総合取次と言われる企業はたったの7社です。それに対して2009年段階で書店は全国で14,556店。出版社は3,815社という数になっています。また、取次会社は上位2社(トーハン・日本出版販売(日版))の経営規模の寡占状態となっていて書店ルートの7割以上を占め、それぞれ売上高5,000~6,000億円強の大企業となっています。それに対して書店は1位の紀伊國屋書店が1,145億円。出版1位の集英社が約1,332億円となっています。日本の出版業界では取次会社がチャネル・リーダーとしての役割を果たしているのです。また、出版社と取次会社の本社の約8割が関東地方に集中しているのに対して、小売店で関東地方に立地しているのは全体の3割強となっています。目に見える本屋さんやネット書店の存在感が消費者からすると強いように思ってしまいますが、実は卸売業が大きな力を持っているのが出版業界ということになります。仕組みを知ることで業界に対する見え方が変わってきました。
続いて、ネット書店に関してアマゾンから見てみます。一般的にマーケティングなどの分野において8割の売上は2割の商品数の売上によってもたらされるという、パレートの法則が知られています。「定番」や「売れ筋」と呼ばれる一部の商品が全体の売上の大きな部分を占めるという経験則で、この2割の売れ筋をいかにして確保するかが経営上の重要な課題と言われてきました。ところがアマゾンはパレートの法則の考え方とは異なり、「ロングテール」と言われる部分からもたらされる収益により、強力な市場競争力を身につけています。売上高の大きい「売れ筋」の商品は商品構成全体のごく一部であり、売上高の少ない品目がその他大多数を占めているわけですが、売上高の少ない「非売れ筋」商品群のことを「ロングテール」と言います。ロングテールの商品は、商品アイテム数が多いため売上高を合計するとかなりの額に達します。書籍の場合、ベストセラーとなる商品は極めて限られていて、圧倒的多数の商品は発行部数も少なく、回転率も低いロングテール商品です。大型書店ではどうしても売れ筋商品が目立ちますが、ネット書店ではある特定のタイトルに注文が集中することはまれで、このロングテールに属している商品の売上高が経営を支えています。僕も本屋でよく買い物をするのは好きな方かと思いますが、マニアックなマンガとかは電子書籍とかネット書店で買ったりします。本屋ではそういったものは在庫がなくて、すぐに手に入らないので。こういった人が買う売上で収益を上げるのがネット書店といったところなんだな、と感じました。
(ロングテールのグラフはネットに出ていた個人的な意見ココログ版より加工。参考文献:小商圏時代の流通システム)