百貨店の現状

本日は百貨店の現状に関して記載します。

【2014年4月消費増税前の百貨店の状況】

百貨店の市場規模は年々縮小していましたが、アベノミクスの効果により2012年には既存店ベースでの全国百貨店売上高が16年ぶりに増収に転じました(なお、2012年度の百貨店の業界規模6兆1,453億円)。この背景には株価の回復による資産効果の高騰があります。この2年間で日経平均は最安値8,000円台から最高値16,000円台まで株高となりましたので、この数字からも資産効果の大きさが伺えます。さて、資産効果高騰により百貨店ではバッグなどのブランド商品、宝飾品、時計などの高額品が好調に推移しました。また、「グッチ」や「シャネル」といったラグジュアリーブランドは円安を理由に値上げをしましたが、売上の勢いが止まることはありませんでした。

店舗面では2012年11月に阪急梅田本店の増改装開業、2013年3月に伊勢丹新宿本店の改装開業、6月にあべのハルカス近鉄本店のタワー館先行開業とありましたが、それらの集客も好調に推移していました。

このように消費増税前の百貨店の業況は好調に推移していたわけですが、その一方で、主力の婦人衣料全体が改善していませんでした。百貨店にとって衣料品は収益の源泉的な役割を果たしています。例えば三越伊勢丹の商品別粗利益率を見てみると、衣料品31.7%、身の回り品・雑貨・家庭用品26~29%、食料品21.5%となっており、衣料品の売上の維持拡大が百貨店の利益率を高めるのに重要な役割を果たすことが分かります。ファストファッション等との競合がある中、衣料品分野で多業態に対する競争力をつけていくことも百貨店業界には必要そうです。

また、アベノミクスの効果が東名阪などの大都市圏に限定されているとも言われています。アベノミクスが成功するかどうかは成長戦略がカギを握っています。成長戦略の成果がどのようになるか、そしてそれによりアベノミクスが株価をどれだけ押し上げることができるのか。そのことが、どれだけ百貨店売上を押し上げるのかにもつながってきますので、気になるところです。

【消費増税後の百貨店の状況】

消費増税に対して事前に各社は自主企画品や高級化路線の強化(三越伊勢丹HD)やテナント積極誘致(Jフロントリテイリング)などで独自性を強め、拡販を図る動きを付けていました。

そして、百貨店大手3社が5月1日に発表した4月の売上速報は、三越伊勢丹が前年同期比7.9%減、Jフロントリテイリングが15.3%減、高島屋が13.6%減という結果で、減少幅は予想を下回るものでした。前回平成9年3月の消費増税の際の駆け込み需要は全国百貨店売上高を23%増加させました。それに対して今回の消費増税前の3月の各社の売上高は駆け込み需要の影響で3割ほど伸びましたので、4月は反動減で「20%程度の影響」を懸念する声も上がっていました。ですので、その想定を下回る結果だったというわけです。

【参考 百貨店各社の現状】

■全国展開大手

・三越伊勢丹HD

百貨店最大手。売上高1兆2,369億円。営業利益266億円

・Jフロントリテイリング

大丸主導でローコスト経営を推進。12年8月にパルコを買収。売上高1兆927億円。営業利益308億円

・高島屋

全国に大型店を擁す。売上高8,703億円。営業利益254億円

・そごう・西武(セブン&アイHD子会社)

セブン&アイのグループ力を活用。売上高7,984億円。営業利益100億円

・エイチ・ツー・オー・リテイリング

2011年、博多阪急開業。2012年11月に旗艦の阪急梅田本店グランドオープン。売上高5,251億円。営業利益106億円

■JR・電鉄系

・近鉄百貨店

あべのハルカスが2014年オープン。売上高2,707億円

・東急百貨店

2012年渋谷ヒカリエ内に専門店街「ShinQs」開業。売上高2,061億円

・東武百貨店

東京スカイツリー隣接地に商業施設「ソラマチ」開業。売上高1,505億円

・小田急百貨店

新宿店が旗艦店。売上高1,467億円

・ジェイアール東海高島屋

JRグループが59%、高島屋が33%出資。売上高1,112億円

・ジェイアール西日本伊勢丹

JRグループが60%、三越伊勢丹HDが40%出資。JR京都伊勢丹、JR大阪三越伊勢丹運営。売上高942億円

・京王百貨店

シニア向けに強み。売上高901億円

■地方特化型

・井筒屋

北九州地盤。売上高872億円。営業利益29億円

・松屋

銀座本店に経営資源集中。売上高715億円。営業利益10億円

・大和

北陸地盤。大丸流ノウハウの導入で再建中。売上高508億円。営業利益5.7億円

・さいか屋

神奈川地盤。事業再生ADR完了。売上高395億円。営業利益8.1億円

※事業再生ADR:過剰債務で苦しむ企業に対して、金融支援を与えて再建を目指す制度のこと。

上記以外の老舗百貨店として、藤崎(宮城)、丸広百貨店(埼玉)、天満屋(岡山)、福屋(広島)、トキハ(大分)、鶴屋百貨店(熊本)、山形屋(鹿児島)などがあります。

【2012年度店舗別売上高】

1位伊勢丹新宿本店 売上高2,368億円。前年比0.8%

2位西武池袋本店  売上高1,791億円。前年比1.5%

3位三越日本橋本店 売上高1,631億円。前年比▲1.2%

4位阪急梅田本店  売上高1,446億円。前年比16.1%

5位高島屋横浜店  売上高1,317億円。前年比0.0%

6位高島屋日本橋店 売上高1,261億円。前年比1.5%

7位高島屋大阪店  売上高1,199億円。前年比1.8%

8位松坂屋名古屋店 売上高1,132億円。前年比1.9%

9位そごう横浜店  売上高1,052億円。前年比4.2%

10位阪神梅田本店  売上高892億円  前年比▲3.4%

(参考文献 会社四季報業界地図)

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