本日はブランドの買収と再生に関して記載します。
【ブランド買収・再生を行っている企業例】
同種の複数のブランドを買収して持株会社の傘下に置き、かつ、ブランドを統合せず独立の事業体として維持するようなビジネスモデルを「ブランドの買収・再生」と言いますが、このビジネスモデルを採ることでブランド単体では出せない規模の経済を獲得することができます。このビジネスモデルを採る例として、フランスのLVMH、フランスのKERING(ケリング)、スイスのRICHEMONT(リシュモン)、イギリスのDIAGEO(ディアジオ)が挙げられます。LVMHはベルナール・アルノー氏が率いる巨大なブランドグループで傘下に、ルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオール、フェンディなど60以上のファッション、化粧品、酒類などの高級ブランドを買収・所有しています。ケリングはグッチ、ボッテガ・ヴェネタ、プーマを傘下に、リシュモンはカルティエ、IWC、ピアジェ、ヴァンクリーフ&アーペル、ラルフローレンを傘下に、ディアジオはギネスのような酒類ブランドを傘下にしています。
【ブランド買収・再生による価値の創造】
ブランドの買収では多くの場合、破綻したブランドを買収し既存の他のブランドから経営陣を送り込んで再生させます。その際にブランドの持つ設計やデザインといった特徴はそのままブランドに残す一方で、購買や物流、製造といったオペレーションを統合していきます。その過程の中で価値を生み出していきますが、その要因は以下のようなものとなっています。
一つ目に、ブランドを買収する際、ブランド自体を買収するのではなく、ブランドを所有する事業体を買収することになるわけですが、ブランド自体に価値があっても、事業の業績が悪ければブランドの評価もそれに引きずられることが挙げられます。つまり、買収を行う際にブランドの価格が過小評価されているということです。また、現状のブランドの評価が悪かったとしてもブランドの認知度が高ければ、ブランドイメージの内容を入れ替え・改善していくことが可能です。この点もブランドの価格が過小評価されることにつながります。
次に、既にブランド企業を所有しているグループの場合、経営者を他のブランド企業から注入することができることも、買収により価値を作り出せる要因となります。高級ブランドは創業者やその一族が経営に当たっていることが多く、中には経営スキルが低く、野放図な経営を行っている企業があります。しかし既に成功したブランド事業を持っているグループは広告、プライシング、チャネルマネジメント、顧客接点管理などの経営ノウハウを持った人材を育成するフィールドを持っています。それによりブランドを買収し再生する過程で価値を生み出していくことができます。
最後に、ブランドは希少価値を保つために規模を拡大できないのですが、企業全体で購買や物流などの機能を集約しコストダウンを行えることで価値を生み出していくことができるということが挙げられます。また、免税店などのチャネルに対して大きな影響力を持つことができるという点もあるようです。
持株会社を作るということには、各ブランドの希少性を維持するとともに、規模の経済により利益を拡大することができるというメリットがあるようです。
(参考文献 経営戦略を見る目と考える力を養うビジネスモデルの教科書)