本日は量販・百貨店販路の縮小が進むアパレルメーカーの現状に関して記載します。
【アパレルメーカーを取り巻く環境変化】
アパレルメーカーは婦人服・紳士服・子ども服などの幅広い商品を手掛ける総合力で、戦後、アパレル業界の成長を牽引してきました。しかしながら、1990年代以降になるとユニクロなどの低価格専門店が拡大してきた影響もあり、1世帯当たりの衣料品関連支出は右肩下がり。それとともにアパレルメーカーが主販路とする百貨店や量販店での販売規模は縮小していきました。2012年の衣料品市場の販路別シェアを見てみると、専門店58.2%(前年比1.2%増)、百貨店28.3%(0.7%減)、スーパー13.5%(0.4%減)と、その割合は専門店が1/2以上を占めている状況になっています。
【アパレルメーカー再編】
上記のような厳しい環境下でアパレルメーカーの再編が起こっています。かつて業界首位だったレナウンは2010年に中国の如意グループの出資を受けていました。これにより中国事業の拡大を目指したのですが苦戦を強いられます。そして2013年には如意グループの出資比率が41%から53%となり、レナウンは同グループの連結子会社になりました。2011年には東京スタイルとサンエー・インターナショナルが経営統合。TSIホールディングスが誕生し、不採算ブランドの撤退と新規チャネルへの種まきを積極的に進めています。
【今後の成長へ向けた新規チャネルの育成】
TSIホールディングスが新規チャネルへの種まきを行っているように、今後の成長のカギとして新規チャネルの育成に取り組む企業が出てきています。1990年代にいち早くSPA路線に舵を切ったワールドは、すでにファッションビルやSC向けブランドの直営店展開が主力となっています。また、ワコールも20~30代半ばのOLをターゲットとしたSPA型ブランドショップ「アンフィ」の出店を拡大。東京メトロ表参道校内のエチカなど全国68店舗に展開し(2013年3月現在)、2012年の売上高は71億6,600万円と前年比118%と成長を遂げています。
最近ではコト消費に対応してライフスタイル提案型ブランドも登場しています(ライフスタイル提案型ブランド:衣料品に限らず、生活雑貨や食品等を取りそろえ、衣食住での総合的な提案を行うブランド。カフェなど飲食を提供する店舗を持つものもあります)。2009年に千駄ヶ谷に日本1号店を出店した「ロンハーマン」はメンズ・ウィメンズ・キッズのウェア、アクセサリーや雑貨など、オリジナルブランドをはじめ、カジュアルからラグジュアリーまで商品を展開。セレクトショップ業界最大手のビームスは2012年に新業態「B:MING LIFE STORE(ビーミング ライフストア)」を立ち上げ、メンズ、ウィメンズはもとより、キッズ、ベビーまでカバー。アパレルショップとして知られている「トミーバハマ」の銀座店は街路に面してバーカウンターを設置しています。売られている商品がジャンルで区切っているのではなく、世界観やコンセプトによってセレクトされているということに特徴があります。
アパレルメーカーのSPA化やライフスタイル提案型ブランドの登場は既存の小売店との競争が発生することが容易に想定されます。今後、小売店とアパレルメーカーの業種を超えた競争も増していきそうな気もします。
【参考 アパレルメーカー各社に関して】
■百貨店主力の総合アパレル
・オンワードホールディングス(23区、組曲、ICB、五大陸など) 売上高2,583億円 営業利益111億円
・三陽商会(BURBERRRYをライセンス販売。EPOCA、Paul Stuart) 売上高1,076億円 営業利益58億円
・イトキン(HIROKO KOSHINO、MICHEL KLEIN) 売上高1,099億円 営業利益6.5億円
・ファイブフォックス(COMME CA DU MODE) 売上高993億円
・ラピーヌ(LAPINE BLANCHE、Pierre Cardin) 売上高111億円 営業利益2.2億円
・レナウン(如意グループ)(D’URBAN、INTERMEZZO、SIMPLE LIFE) 売上高761億円 営業利益▲5.1億円
■ファッションビル、SC主力の総合アパレル
・ワールド(UNTITLED、HusHusH、TAKEO KIKUCHI) 売上高3,364億円 営業利益71億円
・サンエー・インターナショナル(TSIホールディングス)(NATURAL BEAUTY、FREE’S SHOP) 売上高1,028億円 営業利益7.0億円
・東京スタイル(TSIホールディングス)(22 OCTOBRE) 売上高826億円 営業利益▲21億円
■下着・靴下
・ワコールホールディングス(傘下に通販PEACH JOHN) 売上高1,771億円 営業利益80億円
・福助(足袋、ストッキング等 豊田通商傘下) 売上高267億円 営業利益2.0億円
・グンゼ(紳士肌着首位) 売上高1,323億円 営業利益17億円
・ナイガイ(靴下・ストッキングの老舗) 売上高173億円 営業利益0億円
■デザイナーズブランド
・コムデギャルソン(川久保玲、渡辺淳弥)売上高150億円
・エイ・ネット(三宅デザイン事務所)(TSUMORI CHISATO、ZUCCa) 売上高187億円
・イッセイミヤケ(三宅デザイン事務所)(ISSEY MIYAKE)売上高115億円
・ヨウジヤマモト(Y’s、Yohji Yamamoto):2009年に民事再生法の適用申請、投資会社の支援下で再出発
(参考文献 会社四季報業界地図2014年版)