本日はダイレクトモデルに関して記載します。
【ダイレクトモデルとは】
ダイレクトモデルとは、従来産業バリューチェーンに存在していた間にあるチャネルをスキップして、直接最終顧客へ自社の商品やサービスを販売するビジネスモデルのことを言います。このビジネスモデルを採用している具体例とするとアスクルが挙げられます。
従来チャネルを通じて販売されていた商品・サービスを直接販売しますので、中間マージンやリベートが不要となります。それに伴って粗利が深くなることで低価格販売が可能になり、チャネルを通じて販売している競合と比較して価格的に優位に立つことができます。
このダイレクトモデルが採用されるようになってきた背景には、近年、インターネットの登場、ウェブEC技術の発達、CRM技術、コールセンター技術やその受託ビジネス、決済サービス、宅配サービスといった社会的な環境が整ってきたことにより、チャネルを介することなく最終顧客に販売することのハードルが低くなったことにあります。
【チャネルを介しての販売にないダイレクトモデルのメリット】
ダイレクトモデルではチャネル販売にはない利点が生まれます。
まず、個々の購買者の情報を直接収集することができるということです。この収集した情報を分析やプロモーションに活用することができます。また、顧客の声を収集して製品改良や新製品の開発に反映させたりすることもできるようになります。
ダイレクト販売ではリアル店舗のような空間的な制約もありません。よって、品揃えに制約を持たないことからロングテールでの売上確保も期待できます。
【アスクルとカウネット:過去の関係に縛られないメリット】
チャネルを支配している既存の事業者は、既存の売上をチャネルに依存していればいるほど、そのチャネルに対しての配慮をすることとなり、ダイレクトモデルを容易に採用することができません。コクヨはカウネットという名前でダイレクトモデルに参入していますが、それはアスクルから大きく遅れてのスタートでした。しかもチャネルへの配慮から卸と小売を二重に商流(商流:商品の流通において、物的な流れである物流に対し、受注・発注・出荷・在庫保管・販売管理など取引関係の流れ)に介在させるモデルとなっていて、中間マージンの排除という意味では不利なモデルを採用せざるを得ない状況となっているそうです。それに対して、アスクルは大きく頼る既存業者がなかったためにダイレクトモデルを採用することができました。このようにダイレクトモデルは新規参入に適したビジネスモデルと言えます。
〈参考〉
アスクル:商品点数、107,000点 1,000円以上で送料無料。
カウネット:商品点数、64,900点 1,500円以上で送料無料。
両社ともに、登録料・年会費無料。365日以内返品可。
(2011年データ)
【ダイレクトモデルのデメリット】
ダイレクトモデルではネットで他社との条件比較が容易になることや、ダイレクトモデルを好む顧客セグメントは価格感応度が高い傾向にあるので、価格と性能だけの勝負になる傾向にあると言います。ダイレクトモデルを採用すると既存のチャネルを介するモデルに対しては優位に立てますが、ダイレクトモデル同士の戦いになると価格競争に陥る危険性があります。
また、ECサーバーや出荷センター、コールセンターなどダイレクト独特の新たな業務が加わりますので、単純に中間のチャネルがなくなる代わりにリスクが発生する可能性が出てきます。例えば、ECによる取引は返品率が意外と高いようですので、そういった点は事前に織り込んでおく必要がありそうです。
既存企業の立場からすると、古くからあるチャネルとの関係性をどのように位置づけて、新規参入企業から市場シェアを奪われないようにしていくか、十分に検討することが必要そうです。
(参考文献 経営戦略を見る目と考える力を養うビジネスモデルの教科書)