周辺産業の統合

本日は周辺産業の統合に関して記載します。

【周辺産業の統合とコングロマリット】

周辺産業の統合とは、顧客に対して同時に提供される製品やサービスを扱う周辺産業の事業を統合することによって価値を作り出すビジネスモデルのことを言います。周辺産業を統合することによって、自社製品と周辺の産業が提供する製品との融合を図ります。そして融合したことにより生み出された付加価値を加えた製品を提供したり、製品のチューニングを行って顧客に問題解決方法を提案できるような製品を提供したりします。

例えばメディパルホールディングスという、医療用医薬品、一般用医薬品、医療機器、日用品、化粧品、トイレタリーを主力取扱品目とする流通グループがあるのですが、この企業は医薬品卸と日雑卸という従来別々に存在していた業界を統合して、卸機能の規模拡大や効率化を図りました。そしてそれに合わせてドラッグストアなどへの商品の一括供給を目指しています。

周辺産業の統合に関連して、コングロマリットについても触れておきます。コングロマリットは、技術的にも市場的にも互いに関連性のない事業の集合から形成される複合企業のことを言います。例えばソニーがソニー生命、ソニー銀行、ソニー損保などに進出しているということがこのコングロマリットの事例として挙げられます。リテール関係でいえば、セブン&アイホールディングスが流通業のコングロマリットと言えるでしょう。コングロマリットはある程度隣接する産業の事業で構成されていることが多いことから、周辺産業の統合とも言える部分があります。1990年代後半から2000年代前半に欧米においてコングロマリット解体の流れがありましたが、日本においてはこの流れは起きませんでした。現在では、周辺産業での諸事業が1つの企業の下にあるということが、総合性を発揮できるという意味を持ってきているとも言います。

【周辺産業の統合が起こるタイミング】

周辺産業の統合は事業ライフサイクルの後半に多く起こるそうです。その理由としては以下のようなことが理由として挙げられます。まず、事業ライフサイクルの後半では、イノベーションが尽きてしまい、各社での模倣が進みます。そのことにより事業単体での競争力向上が尽きてきます。また市場が飽和し事業単体では成長をしにくくなってきます。企業が成長をしていくために周辺産業を統合していくのです。また、資本の蓄積が進み財務的にも統合の素地が形成されることもその背景として挙げられます。

【周辺産業の統合が効果を発揮するには】

周辺産業の統合では、同業との統合のように生産設備の統合や仕入規模の拡大が行えるわけではなく、物流統合やチャネルへの交渉力の向上、IT基盤の統合、サプライチェーンの統合などに留まるため、規模の経済も限定的なものにとどまります。そのため、顧客にとって意味のある価値を提供するためには、複数の種類の異なる商品の組み合わせから新たな価値を生み出したり、顧客に大幅なコストダウンをもたらしたりすることが必要となってきます。そのためには商品を並列的に供給するだけでは不十分となり、それら商品を統合できる手法を持ち合わせていることが求められてくると言います。

周辺産業の統合はコスト削減などの効果よりも、統合した後に顧客に何を提供できるようになるのか、ということが重要となりそうです。

(参考文献 経営戦略を見る目と考える力を養うビジネスモデルの教科書)

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