垂直統合:川上統合によるブラックボックス化

本日は垂直統合:川上統合によるブラックボックス化に関して記載します。

【川上統合の実施によるブラックボックス化とそのメリット】

垂直統合の一種である川上統合(自社の事業領域の仕入れ側へ展開すること)を実施することによって、内製化率を上げて粗利を大きくすることができます。また、自社が使用する部品や製造装置・工具などが競合他社に供給されることを防ぎ(製造工程をブラックボックス化する)、競合による模倣を防止し、自社の競争優位を維持・強化することができます。つまり、社内でのバリューチェーンを長くして、川上側で製造する部品や製造装置を社外に販売しないことによって、競合は部品や製造装置を手に入れることができなくなりますし、それらに関した情報が社外に流出することがなくなります。その結果、競合が自社と同等の製品を製造することができなくなるわけです。

ファスナーの製造で世界の45%のシェアを占めるYKKは、ファスナーだけでなくファスナーの製造装置を内製しています。YKKがファスナーの製造装置を外販しないことによって、YKKのファスナー製造工程がブラックボックス化して、競合は同じ品質のファスナーを製造することができなくなってしまいます。

【川上統合のデメリット】

日本の家電業界は部品も自社で生産する川上統合モデルを長年採ってきました。そして、韓国の家電メーカーが追い上げてきたことを見て、川上統合を強化。キーデバイスを内製して外販しないことでブラックボックス化して差別化を徹底しようとしました。その代表がシャープの「亀山モデル」です。亀山モデルはパネルを内製して工程をブラックボックス化してしまうことによりテレビの差別化を行おうとしました。ところが家電のような極めて細分化された市場で垂直統合を行うと、川上側への投資を十分に回収できずに、かえってコスト高となってしまい、競争力が落ちるという結果を招いてしまいました。シャープの亀山工場は、2011年に亀山第1工場がアップル社のiPhoneやiPad用ディスプレイの専用工場となっているようですし、第2工場も2012年に一時操業を休止するといった厳しい状況に置かれているようです。また、亀山工場の拡大版である境工場への投資で苦境に陥っているようです。

垂直統合戦略の一種である川上統合の実施に当たっては、その統合を行うことによって十分に効果が発揮できるかどうかを検証したうえで実施する必要があります。統合すれば価値を作り出せるというわけではなく、統合によって得られる技術面での囲い込みによる優位性と、統合によってかかるコスト高といったリスクを比較した上で実施に移していくことが必要なようです。

(参考文献 経営戦略を見る目と考える力を養うビジネスモデルの教科書)

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